2011年12月9日金曜日

ソーシャルインパクトボンド

社会的なインパクトを測定できると様々なスキームの開発も可能となる(英:ソーシャルインパクトボンド)

例えば、マイクロソフトの「IT活用による若者就労支援」を例に考えてみよう。

政府が11百万円の助成金、NPOとマイクロソフトがIT教育→その結果、31名の就労支援に成功
社会的便益/31名の200万円の年収+政府(所得税+社会保険料)35万円の収入増 31名×35万円=約11百万円 全体SROI=6.6倍
政府は1年間で実は費用を回収できてしまう

 例えば、政府がソーシャルベンチャーに就業者1人当り35万円支払う契約を結ぶ、
ソーシャルベンチャーは投資家に対して就業者1人当り32万円支払う契約(利回り3%)を結び、資金調達することも可能となる。

このメリット:
政府のリスクがなくなる(成果報酬で支払うことができる)
ソーシャルベンチャーは資金調達できる(インセンティブ契約となる)
投資家は投資機会が得られる

→社会的なインパクトが算出できたことで可能となる

ソーシャルベンチャーの存在意義=外部性、市場取引できない分野や領域→政府 or NPO/ソーシャルベンチャーと捉える人が多いが、

実は、外部性があっても、正しくその社会への効果、アウトカムが測定できたら、市場取引にすることが可能となることがわかる

2011年12月8日木曜日

SROIレポートからみえてきたこと

マイクロソフトの「IT を活用した若者就労支援プロジェクト」に関わる評価調査報告書を読んでいます。この中に、SROI分析がなされています。

なかなか興味深い事実が示されています。

このプログラムで政府が支払った費用は11416千円です。

その結果、
このプログラムで31人が就業に成功し、政府は、所得税額の増加と社会保険料徴収の増加で
31人×(84千円+264千円)=10788千円の収入増が見込まれます。

つまり、1年でほとんど政府は税金を回収できてしまうのです!
単にワードやエクセルを教える費用を一時的に負担するだけで、、、。

これが事実なら、是非、正規教育の中にこのプログラムを入れることを要望します、

また、民間業者に、就業が成功した場合(1年間の就業が条件)に、成功報酬で費用を支払うというインセンティブ契約を結ぶことができるはずです。1人当り約38万円程度で、

このように、アウトカムが金銭価値で示されると、いろいろな事実が浮き彫りになるとともに、より正しい意思決定に使うことができると思います。

2011年12月7日水曜日

SROIの分析レポートが出ましたね



 マイクロソフトの「若者就労支援プロジェクト」に関わる評価調査報告書が公表された。この中で、(株)公共経営・社会戦略研究所がSROI分析をおこなっている。日本の実例でSROI分析がなされるのは珍しいので、貴重なレポートである。

分析の結論は、
このプロジェクトのSROIを単年度5.6倍、5年間累計で21.28倍なので、非常に効果的なプログラムと結論づけている。

話はそんなに難しい話ではない。

①マイクロソフトが若者の無業者に対して、NPOサポートステーションを介して、ワード、エクセル等の教育をおこなう

②その結果、就業率がアップ。そのアップした部分を社会的な便益と考えて、その人がもらう給料で金銭価値換算をする

③マイクロソフトの受託費用約11百万円と比較した、価値の増加を倍率を示す=SROI、という流れだ。


SROIは価値分析として経済的な価値と社会的な価値の総計を捉える点が特徴であるが、就労支援の効果を初年度の就業者の年収で換算しているが、これは経済的な価値に近いものだ。

税金の使い道という観点からは、単に倍率が高いこと、プログラムの効果が高いこと=積極的に展開すべきとは言えない。つまり、その効果の便益がどこに及ぶかが問題なのだ。便益の最大の受益者である本人である場合、他のステークホルダーに対して対して便益が及ばない場合、それは本人が自己負担すべきではないかという意見もありうるからである。

また、SROIの倍率が高い原因が、どこから生じているのかがわからなければ、それは改善に有効なツールとも言えないだろう。

いずれにしてもいいケースなので、じっくり研究してみたい。

2011年12月4日日曜日

原丈人さんの公益資本主義の考え方

原丈人さんは公益資本主義という考え方を提唱している。
現在の資本主義の問題点を鋭く指摘していると思う。

簡単に考え方を整理すると2つある。

会社は株主のものという前提→短期的な株価の最大化を目標(経営陣にはストックオプションという餌)→ROE重視→長期的な研究開発やベンチャー投資がおこなわれない→新産業が育たない

金融セクターはもうけ第一主義→ベンチャー投資はせずに、ばくちにうつつをぬかす→ゼロサムゲーム→変動が大きくなる→金融危機が毎年起こる+貧富の差の拡大

そこで、企業の公益性を考える必要性を強く訴えている。

私が解釈するに、公益性はある意味では経済の外部性、スピルオーバー効果のことだと思う。

企業が私的な利益を追求するだけでは、社会の富を増やすことはできない。その公益性を考えて行動するように、考え方や税制などの仕組みを作り直す必要があるという主張である。

資本主義3.0の枠組みと共通する考え方である。
私は、経営の目標を経済的価値と社会的価値のトータルにし、ベンチマークは株価、時価総額の代わりに、ソーシャルキャピタルを、ROEの代わりにSROIやソーシャルインパクト指数を使うことを提案したい。経営目標を達成するためには、測定可能な指標が必要となるからだ。

これまでは目に見えなかったので実感しづらかった、つながりの効果、外部性を可視化、測定することが必要だろうと思う。