2010年9月18日土曜日

ソーシャルグラフが付加する情報価値って何なの?

 今、起こっているソーシャルメディア革命を、コミュニケーション理論で説明するとどう解釈できるかを考えてみたい。

 コミュニケーション理論では、コンテンツ、コンテクスト、そしてコミュニケーションが重要な概念になる。AとBでコンテクストを共有しているとそこにコンテンツが流れ、コミュニケーションが成立する。逆にコンテクストを共有していないとそこはコンテンツの流れが悪くなり、コミュニケーションが成立しづらくなる。

 文化論的にいうと、高いコンテクストを有する国と低いコンテクストを有する国がある。日本はハイコンテクスト、米国はローテクストと言われる。外国の方がいくら日本語を学んでも、なかなかコミュニケーションが難しいのは、日本がハイコンテクスト国だからである。

 ソーシャルグラフは、いわば自分を含むコンテクストのことを意味している。人と人とのつながり(友人、知り合い関係)というコンテクストである。このコンテクストをオープンにすることで、自分にあったコンテンツが流れやすくなるメリットが生じる。つまり、自然と自分にあったコンテンツ、情報が流れてくるメリットを得ることができるのだ。

 企業の立場からすると、自分たちのコンテンツとコンテクストをうまくマッチングさせることで、ユーザーにあったコンテンツを提供でき、コミュニケーションが円滑にすることができる。一度、この視点で自分たちのビジネスを抽象度を高くして考え直してみることをおすすめする。

2010年9月17日金曜日

ソーシャルグラフデザイナーって何?

インターネットがソーシャルネットに変わる時、何がどうかわるのか?

人と人の関係       → 人ともの、コンンテンツの相互関係
ネットとリアルの分離   → ネットとリアルのより深い融合(生活空間)
クローズド        → オープン化
SNS           → ソーシャルグラフプロバイダー
SNS収益(広告モデル)  →SNS収益(ソーシャルグラフアクセスフィー)
SEO(検索エンジン最適化)→SGO(ソーシャルグラフの最適化)
情報を集める時代へ    →情報が集まる時代へ
コマース業者、CP     →ソーシャルグラフデザイナー

 現在、mixiがソーシャルグラフプロバイダーを標榜している。今後、ビジネスモデルも広告モデルからソーシャルグラフへのアクセスにチャージしていく形に変わるだろう。コマース業者やコンテンツ業者(CP)も、SEOからSGOを重視に変化し、この過程で必然的にグーグルからFacebookなどのソーシャルグラフプロバイダーへのパワーシフトが生じていく。

 コマース業者やコンテンツ業者(CP)はソーシャルグラフプラバイダーから提供されるソーシャルグラフとどう連結し、ソーシャルグラフプロバイダーから提供される情報と自社が所有する情報のマッチングを図り、経済価値を生み出していくかというデザイン思考が必要になる。

ソーシャルグラフデザイナーという言葉は私の造語ですが、というわけで、ソーシャルグラフデザイナーという視点なり、考え方が今後重要になっていくと予想しています。

2010年9月16日木曜日

ソーシャルメディア時代の企業像?

ザッポスの伝説から何を学ぶか?

 今月のHBRはザッポスのCEOトニー・シェイのインタビューが掲載されている。ザッポスはソーシャルメディアの申し子のように思われているが、インタビューでは在庫管理、コールセンター、顧客サービス、企業文化などベタな話が多かった。

 ザッポスは、広告にかけるお金があるなら顧客サービスに投資すべきと考える。顧客が口コミでマーケティングしてくれるからという理由からだ。顧客サービスはコストではなく投資と捉えている点がユニークだ。

 また、顧客対応にマニュアルはなく、個人的なきずなを育むことをモットーにしている。従来のマーケティングはROIを計算するとき顧客生涯価値を一定と考えるが、徹底した顧客サービスで顧客の心にブランドとのきずなを作ることで顧客生涯価値を向上できると考えている。ザッポスにとって企業文化を最大の差別化の武器である。

 日本にここまで徹底した会社は聞かない。ネット上の口コミの影響力が増すにつれ、従来型広告は力を失い、本物の顧客サービスがよりペイする傾向が強まることは重要な傾向である。これは、広告の投資効果(残存効果、ブランド形成効果)が薄れているということだ。ザッポスから、ソーシャルメディア時代の今後の企業像を導くことができるだろう。

2010年9月14日火曜日

ソーシャルメディアポリシー:ソーシャルメディアポリシー立案

 今日は、ADKインタラクティブ総研のソーシャルメディアポリシーを策定した方からお話を聞く機会があった。策定の背景としては、「コミュニケーションのプロならソーシャルメディアのプロでもありたいという思い」と、「他社に先駆けて知見を高めたい」という理由から。

 悩ましかった点はポリシーの適用対象。広告業の場合は制作会社も自社内に普通に机をもって仕事をしているので情報は筒抜け。自社社員のみならず制作会社も適用対象にするかどうかが悩ましい点だ。

 社長ツイッターも、外部からみると会社の公式見解ととられる可能性も高いので、このポリシーの適用対象になっているそうだ。そこは面白い。

 社員向けの内部版ポリシーでは具体的な事例を提示することで理解を深める工夫をしている。例えば、社員がツイッターで「これからmixiと打ち合わせ」とつぶやいた場合にどういう影響が起こるか? 具体的に考えていくと様々なリスクがこの一言でも引き起こす可能性はあるのでなかなか悩ましい。また、ポリシーを破った場合に罰則を設けるのかどうかなども明確には決めがたい。

 各社の事情があるのでよいポリシー、悪いポリシーはないという見解をとられていた。ここは私と意見が異なるところ。公表するソーシャルメディアポリシーは潜在ユーザーとのコミュニケーションのベース、コンテクストになることを目的としているので、その目的を十分に果たす要件を満たすポリシーかどうかが問われるので、よいポリシーと悪いポリシーは分かれる。逆説的に、だからこそ、各社がオーダーメイドで各社の事情を配慮してポリシーを立案する必要があるのだ。最近、個人ブログでもポリシーを掲げている方もいらっしゃる。これもまた同じ意味からだ。

2010年9月13日月曜日

「団体ホームページで寄付集め失敗しないコツ」

 セミナーに参加。自分が寄付を集めるビジネスを展開するつもりはないが、ソーシャルなお金の流れには注目している。また、社会の課題解決とビジネスの利益追求をどう両立させるかは私の研究テーマ。寄付をして頂くくらいの共感をどう集めるかは重要。

 これまでのネット募金は、クリック募金、寄付ポータルサイト経由、決済事業者経由。最近ではツイッター募金も加わる。これはあくまで他力なので、NPO団体としては自力で、自社ホームページでどう寄付を募るかが課題。

 流れは、①サイトの実力把握→②目標設定→③ターゲット設定→④寄付ページのコンテンツメッセージ。①Google Analyticsなどでよくホームページの来訪者の動きをモニターして設計、コンテンツ制作に活かすことが必要。②目標設定は年間収支計画からブレークダウンしたり、現実的に現在のユニークユーザーの1%程度を目標にしたり。③ターゲットは、既接触者をどう寄付者に変えるかがポイント。④メッセージではファーストルックや見出しを大切にし、寄付したくなるストーリー作りが大切。寄付のボタンを大きく目立つ色にするのも効果があるそうだ。

 ネットの寄付者の年齢層は20代後半から30代前半で男女比は半々とのこと。緊急災害援助はものすごく寄付が集まるそうだ。モバイル募金はまだハードルがかなり高い。本気で日本の寄付市場を育てるつもりならば、お金持ちの方やシニアー層が寄付していただく後押し(税制その他)が必要だろう。

ソーシャルメディア活用の話は全くなし。ホームページとソシャルメディアをどう連携させていくかは今後の重要なテーマだと思うのだが・・・

ソーシャルメディア:売上リンクとミッションリンク

 企業側がソーシャルメディアの活用で、効果測定をどうすればいいのか、KPI設定にどの指標を採用するのがいいかなどが悩みどころになる。コンサル会社はきっちとした目標設定しなければならないと盛んに言うが、いざ実際にどの指標を使えばいいか企業側が質問しても明確に答えることができないのが実情だ。実際にソーシャルメディアの活用が売上にどうつながっているかという「売上リンク」の考え方である。

 NPO、社会的企業の場合はどうか? ソーシャルメディアを活用した、情報発信、情報収集、コミュニケーションなどの機能からどう具体的なアクションにつなげていくかが課題になる。一番重要なのは自分たちのミッションを効果的に伝え、ミッション実現の推進力を得ること。自分たちのソーシャルメディアを活用したアクションがミッション実現にどうつながるかという「ミッションリンク」という考え方である。

 透明性の時代になり、企業も時代にあった社会的・文化的なメッセージを製品、行動に入れることが信頼の元になってきている。この辺りの理論構築ができないと成功が難しくなる。要はコンセプトとストーリー作りである。

 だから、企業側も、ソーシャルメディアを活用する上で、「売上リンク」とともに、「ミッションリンク」のデュアルシステムをとるのがいいというのが私の考えである。

2010年9月12日日曜日

プロボノという働き方の選択

プロボノという働き方の選択

 自分がプロジェクトマネジャーとして関わるプロボノ活動が一段落ついたので、自分なりの考え方をまとめておきたいと思います。

 自分はこれまでVCで成長企業の調査は何千社とやってきましたが、社会的起業のリサーチは初めての体験でした。いろいろと学びがありました。VCの調査では、その企業がIPOまで成長できるかが判断基準ですが、社会的起業の場合は成長至上主義ではないのでミッションが最初に重要になってきます。

 実はここでいきなり難題がふりかかります。そのミッションも、経営者の、その団体の価値観に基づき、何が社会にとって重要な課題なのかという主観的考えに基づくもので、必ずしもプロボノ支援側の価値観と同じというわけではありません。ここにあまりにギャップが大きい場合はプロボノを行うことが難しくなると思います。

 また、社会的な課題の解決方法も様々です。起業家が考えているアプローチがミッションに対して有効性が高いかも冷静にもう一度考えてみる必要があります。

 今回は3名のリサーチャーで社会起業家をサポートする体制でした。プロボノのプラス面は、バックグランドの違う人とコーワークし、新鮮な情報や刺激を受けられる点が挙げられます。逆に、問題点は、グループワークの常ですが、特定の人に極度に負担が生じるケースがあり、それをどうプロマネするかとバッファリングをどうするかは考えたほうがいいです(中間組織側に負担がかかるケースもあります。穴をあけると、プロボノとは言え、起業家に迷惑をかけてしまうリスクが生じてしまいます。

 目的や期間が限定されている方がやりやすい面がありますが、先ほど言った負担が短期的に特定の人に生じるリスクも高くなります。プロボノ中間支援組織は、各リサーチャーのスキル、起業家のビジネスプランの課題をうまくマッチングされることが必要になります。

 経営資源の少ない社会起業家にとっては、多くの人の共感を得て、組織外の人に応援してもらうことは必要となります。そういう意味で、うまくプロボノを活用できることは社会起業にプラスになると思います。

 ただし、通常のプロボノは、支援対象をNPOに限定したり、まだまだ使い勝手がよくありません。社会起業側とプロボノ支援者側の両方の満足度を高める方法はまだたくさんあると思います。今回のプロボノ体験を踏まえて、今後、世の中に新しいプロボノ体系を提示したいと思います。プロボノが、日本の文化に根ざした、社会起業の不可欠なインフラになる可能性は十分にあると思います。

 日本に寄付の文化を立ち上げるよりもプロボノの文化を立ち上げる方がよっぽど現実的というが私の率直な感想です。