2014年2月7日金曜日

広告の外部性の内部化


今度、「企業2020の世界」の著者、パヴァンススクデフが来日する。この本は企業、産業は外部性をどう内部化すべきかを説いた本で、4つの提言をおこなっている。

  1. 外部性を開示すること。
  2. 資産課税をおこなうこと。
  3. 広告に対する説明責任を課すこと。
  4. レバレッジを制限すること。

3の広告に説明責任を課すというアイデアが自分的には面白い。広告の外部性を説明責任を課すということで内部化させるという発想である。
元と泡の関係でいうと、説明責任を課すとどこまでが広告の元で、どこまでが泡なのかがはっきりする。一体、本当の元は全体の何分の1まで縮小するのか? 泡のないビールのようにまったく味気ないものなってしまうのか?

別の味方をすると、広告をコンテンツとコンテクストにわけた場合、コンテクストがどのくらいの重要性をもっているのかという思考実験でもある。

広告会社にとって社会的価値評価の可能性?


広告会社にとって、社会的価値評価はどういう意味、どういう可能性をもつのか?

 資本主義の大前提は市場メカニズムが社会的最適につながるということ。しかしながら、市場メカニズムで評価されない外部性が生じる場合は市場に任せていても社会的最適は達成されない(市場の失敗)

そこで、政府の必要性が正当化される。しかしながら、当然、政府の失敗も起こる→NPOや社会的企業の必要性

 近年、企業活動の影響のトレーサビリティの高まり、またソーシャルメディアが普及し情報の拡散力があがり、企業が外部性を無視することが、社会にとって最適でないとともに、企業にとっても最適ではなくなってきている(社会からのしっぺ返し、炎上)


→そこで、企業自ら、企業活動の外部性(社会的価値の評価)を経営に取り込み、自己修正する必要性が高まってきている。(外部性の内部化)

 マイケルポーターもCSVを提唱し、企業経営の目的は経済的利益とともに社会的利益の両方を最大化するべきだと提唱。

 また、経済価値と社会的価値の両方を高める(ソーシャルイノベーション)ためには、企業のその境界を乗り越え、様々なセクターと協力、恊働する必要が高まり、恊働により社会へのインパクトをどう高めるか、collective impactという考え方も生まれている。

現在、様々な社会的価値の評価基準・評価手法、また認証などが出てきている段階。

一方、従来の広告の効果の低下も進んでいる。広告は自分の会社や製品の情報を広め、取引先や顧客からの信頼を高める手段(自己証明)であるが、

インターネットやソーシャルメディアの普及とともに、自己証明の効果は低下し、生活者は自分の知人や信頼する専門家からの情報や判断を購買の判断基準にするようになっている。つまり、社会的証明の重要性が高まっている
 このような流れは広告業の未来にとって、このような意味をもつのか? 広告会社はこの流れにどのように取り組むべきなのか? どこにリスクがあり、どこにビジネスチャンスがあるのか?
 
以上のような点を20-30ページのレポートにまとめる予定です、、ご興味ある方はご連絡下さい(e-mail:takukumazawa@gmail.com)

2014年2月5日水曜日

ソーシャルインパクト・リサーチのお仕事


ソーシャルインパクト・リサーチのお仕事

 最近、どんなお仕事をしているのですか?、どんなきっかけで会社を始められたのですか?と聞かれることが多い。

 もともとはベンチャーキャピタルで投資をしてきました。総額で800億円ぐらいベンチャー投資に関わってきました。自分自身は経済合理性の非常に強い人間です。しかしながら、リーマンショックを経て、資本主義は、ひいては自分がやってきたベンチャーキャピタルという仕事は人間、人類を本当に幸せにしているのか?という疑問を持つようになりました。

投資家は儲けが第一優先、企業は利益のみを考えて行動すると、環境や社会への影響(=ソーシャルインパクト)が生じています。

これまでの経済学は、
企業価値=株主に対する利益と算定してきたが、
本当の企業価値=株主に対する利益+社会や環境への影響(=ソーシャルインパクト)
と定義すべきではないかと改宗しました(笑)。

そこでベンチャーキャピタルを辞めて、ソーシャルインパクトの測定方法をいろいろと研究してみました。会社名はソーシャルインパクト・リサーチとつけました。

ソーシャルインパクトの評価測定コンサルを、企業向け、中間支援組織、NPO、行政向けに提供しているのが一つの仕事となっています。

実際、一番大きな仕事は大企業向けで、社会的価値の評価、そのソーシャルインパクトをどうすれば事業価値、企業価値全体を高めることができるかをコンサルしています。

 例えば、最近はブラック企業がメディアで批判されています。利益を最優先して従業員は使い捨て。それが中長期的に持続可能かどうか? その会社の社会的価値が低いと、短期的に利益をあげても、評判が下がり、ゆくゆくは応募数も下がり、従業員の質・モチベーションも低下し、最後には利益もあげられなくなる。

では、どうすれば、社会的価値を高めるとともに、それを事業価値を高めることにつなげることができるか等が考えるべきテーマになります。この辺りは超大企業でもまだ解答をもっていないのが現状です。

他にも、環境価値をどう評価すべきか、企業の活動の環境への影響を会計システムにどう統合できるかなどアカデミック的にもチャレンジングなテーマにも取り組んでいます。

 難しい言い方をすると、外部性の内部化です。これが資本主義を後100年間、持続可能にする上では必要だと考えていて、それを金融メカニズムを通じて解決する処方箋を出すのが私のミッションです。


2014年2月4日火曜日

広告代理店とSIR社の比較


大きな広告代理店と当社(ソーシャルインパクト・リサーチ社)を比較するのもおこがましいかもしれないが

広告代理店の資産は
媒体、クリエイティブ、クライアント、クライアントとのつながり、リーチ、アテンション、コンテンツ

当社の資産は
インパクト評価、社会的価値の算出、社会的価値を企業価値に転換する方法論、ビジネスモデル立案、ステークホルダーの価値、コンテクスト

この2つの資産をかけあわせると

広告代理店×ソーシャルインパクト・リサーチ→何を生み出すことができるか???

単純化すると、
コンテンツ×コンテクスより大きな意識・行動変容を生み出す可能性
というかけ算が成り立つ可能性がある。

現在はコンテンツの時代と言われるが、本当はコンテクストによって、人と人とのつながりによって、情報の取捨選択がおこなわれるので、コンテクストの重要性がより高まっているからだ。

CSVマトリクスによる分析



昨日、広告代理店の方との議論の中で、

  CSVマトリクス(縦軸:経済的価値、横軸:社会的価値)をプロットしたもので、例えば、ソーシャルゲーム系の会社はある時期、非常に高い事業価値を提供した、しかしながら、社会的価値は低いものだった。

そこにとどまっていては何故ダメなのですか?という質問があった。



現実をみてみよう。
 ソーシャルゲーム系の会社は一時は我が春を謳歌した。第2象限(高い経済的価値:低い社会的価値)。しかしながら、未成年の高額請求問題やコンプガチャの修正により、第3象限(低い経済的価値、社会的価値は改善)にリポジショニングを迫られることになった。

 つまり、高い経済的価値、低い社会的価値のセットは長期的には持続可能ではないのである。確率的には、社会的価値を改善しない限りは高い経済的価値を維持するのは難しくなる。

 今後、このCSVランキングを日本の時価総額上位100社ぐらいでレーテイングしてみたい。

2014年2月3日月曜日

インパクト評価は通貨になりうるか?


ソーシャルセクターでインパクト評価、例えばSROIによって、プロジェクトや事業の価値を客観的に示すことができるのではないかという期待感が高まりつつある。

いわば、インパクト評価が通貨になるのではないかという期待である。

通貨になる条件は、誰もが同じような価値として受け取ることができることである。その結果として、流通性が生まれる。

しかしながら、私はインパクト評価に対する過度の期待は大きな失望のもとになるのではないかと懸念する。

現状は、中途半端な、自己目的的なインパクト評価が横行し、数字が一人歩きし、 逆に、SROIやインパクト評価の信頼性が失われるリスクの方が高いように思われる。

プラス面
NPOや企業CSRの社会的価値評価が普及する

マイナス面
数字の1人歩き
逆に、SROIの信頼性が失われる

第三者評価によって客観性を担保しようとして、上から目線で価値の代理変数を設定しても、そのプロジェクト関係者からの共感は得られないだろう。

そのプロジェクトのインパクトは何か? 社会的な価値が本来何を意味するのかを、やはり関係者を含めて議論することからスタートするべきだろうと思う。