2014年12月5日金曜日

今後、日本は、安倍政権は定常経済モデルを目指すべき?


ハーマン・デイリー教授の「定常経済」は可能だ!という岩波ブックレットを読んでみた。改めて、我々が成長というパラダイムに囚われすぎていることに気づかされる。

成長しなければ様々な社会課題は解決できないと思い込んでいる。

安部政権も同じだ。

格付け機関も、成長が鈍化すれば国も、そしてそのサブシステムの企業の格付けも下げるのが当たり前になっている。果たしてこのドグマは真実なのか?

 これに対して、デイリー教授は、先進国においては成長よりも定常経済を目指すべきだと提言している。かつては経済成長の制約条件は人口資本だったが、現在は天然資源、自然資本になっているからである。

これまでの企業モデルは自然資本を出来るだけ多く使うことで利益を上げてきたのに対して、今後の企業モデルはより少ない自然資本を使い質の高い製品サービスを生み出すべきだと考えている。

皮肉なことに、安倍政権も成長に強く囚われていることが、唯一最大のリスクになっている。最終的には、経済を成長するためには増税が不可欠だという、全く真実とは反対の結論を導くだろう。つまり、背理法で前提が間違っていることが証明されるのである。


2014年12月4日木曜日

自然資本を考慮した投資手法とは?



自然資本は、これまでは企業にとってコストフリーと捉えられることも多く、外部性や希少性が価格に十分に反映されてこなかった。自然を企業にとっての資本、社会にとっての資本であるという捉え方がされるようになったのも、まだごくごく最近の話である。

IIRCの統合報告も、企業活動を6つの経営資本の循環モデルとして提示し、これまであまり顧みられなかった自然資本や社会資本にフォーカスをあてるようになってきている。

 今後の環境規制の強化、自然の枯渇や価格高騰や様々なシステマチックリクスの連鎖を考えると、企業の自然資本への過度な依存が将来の経営リスクとなる時代がやってくる。

こう考えると、投資家サイドも、企業の「自然資本リスク」を考慮した投資が必要となるし、また、今後、新しい投資指標やメトリックス、投資のモノサシが求められる。

我々SIR社は社会・自然資本コストを考慮した投資評価指標、投資フレームワークの開発を進めている。非財務情報(自然資本、社会資本etc)と財務指標を統合する新しい投資評価指標、非財務情報と企業を結合するモデルを開発し、バックテストにおいても非常に有効に機能することを確認できている。

今後の想定するシナリオは、

1ステージ
非財務情報(ソーシャルインパクト、企業活動の環境や社会への影響)を投資家の投資決定情報に変わる
            ⇩
2ステージ
ソーシャルインパクトが企業活動のKPIやモデルにより広範に組み込まれる。
             ⇩
3ステージ
持続可能な社会の実現に貢献する

以上のステージが進んでいくだろう。

2014年12月3日水曜日

地球にやさしい企業への投資はそうでない企業への投資よりも3倍お得?



 TOPIX 1832社を対象としたビッグデータ解析で、炭素排出効率の高い企業と低い企業どちらに投資すべきかを調べてみました。

 CO2排出効率の高い企業を独自KPI(重要指標)でセレクトした上位50社とCO2排出効率の低い企業下位50社の過去5年間のモデル投資ポートフォリオをつくって投資リターンを比較してみました。

CO2排出効率の高い企業の投資リターン
トータルリターン:114.24%
TOPIXリターン:86.66%
超過リターン:27.58%
と大幅に超過リターンを生み出しました。

CO2排出効率の下位50社の投資リターン
トータルリターン:45.66%
TOPIXリターン:86.66%(同じ)
超過リターン: ▲41.00%大幅に、TOPIXをアンダーパフォームしています。

ちなみに、下位50社のモデル投資ポートフォリオの内訳は以下のようになります。

炭素効率性が高いか低いかの非財務情報は投資の意思決定の情報として十分に価値がありそうです。
 ①財務情報と②非財務情報、③株価評価指標、④トータルリターンがどのように結びつくかのモデル化は、投資家としても、また企業にとっても有用な情報になるのではないdしょうか?

 これまでのソーシャルインパクト・リサーチ社のビッグデータ解析では、社会的資本関係よりも、自然資本関係の非財務情報の方が株価との相関度は高いという結果が出ています。どうしてだか、分かる人いらっしゃいますか?

非財務情報は投資にどの程度有効か?

  今、非財務情報と財務情報の関係、また、非財務情報と企業価値との関係をTOPIX(1832社)のビッグデータ解析をして、モデル作りをしています。

 一般的には、いわゆるESGは社会や環境に良くても、企業価値、株価にはそれほど影響を与えないか、むしろマイナスに作用するのではないかと思われている人も多いのではないかと思います。しかしながら、今回のビッグデータ解析ではその予想を大幅に覆す結果になったので、非常に面白いです。

一例を挙げると、
TOPIXでROE7%以上の銘柄に5年間のモデル投資ポートフォリオを作って投資すると、

5年間の累積トータルリターン
:70.22%
TOPIX:86.66%
実は、 ROE7%以上の超過リターンはマイナス16.43%でした。

これに対して、
CO2排出効率の高い企業を独自のKPIでセレクトし上位50社加えると、
トータルリターン:135.42%
TOPIXリターン:86.66%(同じ)
超過リターン:48.66%
と大幅に超過リターンを生み出しました。



 この結果が意味していることの1つは、ROE
という公開情報だけでは超過リターンを得ることが難しく、CO2排出効率という非財務情報、かつその情報をまた投資家が十分に活かしていない非財務情報を活用することが、投資リターンを高めていく上で非常に有効であることを示しています。

 投資に有効である非財務情報、自然資本関係で12個、社会資本関係で8つ、発見することができました。こういうデータをたくさん蓄積していくと、持続可能投資研究所みたいなものが出来そうです。