2012年7月19日木曜日

クックパッドからソーシャルビジネスの未来を考える


クックパッドとTABLE FOR TWOも用いた、ビジネスモデルジェネレーションのワークショップをおこなった。

まず、何故この企業を選んだか? その理由について述べたい。今回はクックパッドについて。

クックパッドが面白いのは、この会社は97年に設立されて10年間全く儲からなかった。それが、10年たってビジネスモデルができると狂ったように儲かるようになり営業利益率で約50%という高収益企業になった、ことがまず興味深い。経営者にはとてつもない根気と執念がある。

クックパッドの資産は無償でレシピを投稿してくれる人たちの無償の行為によって支えられている。それを可能とするデザイン、インターフェースからいろいろ学ぶことができるはずだ。ソーシャルビジネスをやっている人は共感、共感というワリには、この当りに鈍感な人が多い。ユーザーに価値ある経験を提供できなければ共感は得られない。クックパッドは忙しい主婦を相手にしているから、検索のスピード、レスポンスにものすごい投資をしているのだ。そのインターフェース、ユーザーの価値ある経験が投稿してくれるユーザーを支えているのだ。この無償で価値ある資産を共感で集めることができ、この資産を使った複数のビジネス、顧客を生み出せることが、クックパッドの高収益体質を支えている。

裏側の利益を生み出す仕組みも面白い。普通の人はクックパッドを無料ユーザーとしてク利用しているが、有料課金があり、これがかなり収益を支えるようになっている。無料会員の約5〜6%ぐらいの数にあたる。無料と有料の間に機能の差(人気レシピの検索等)を設けて、エンゲージメントの階段の違いを作り、有料課金を可能としている。この当りは、クラウドファンディングでも使われるテクニックだ。

実は無料のユーザーは会社に何も貢献していないかというと、とんでもない話だ。彼らの投稿やコミュニケーションがあるから有料ユーザーが生み出される。無料ユーザーの外部性というものが有料課金ユーザーを引き寄せる蜜のような役割を果たしている。ソーシャルゲームの無料、有料会員も同じ理屈だ。

また、ミツカンの酢を使ったレシピコンテストのような打ち出し方をしており、メーカー企画も、ユーザーからすると広告のような感じがしない。広告のように感じさせない広告はユーザーとメーカーのwin-winの優れた広告である。この中立性を生み出せるという点にメーカーはものすごく魅力を感じるのだ。

最後に、私がワークショップの参加者に聞いたのは、「クックパッドはソーシャルビジネスではないですか?」という質問である。みな、ソーシャルとは何か? 営利企業はソーシャルとは言えないのか? どういう要件を満たせばソーシャルビジネスと言えるのかを考えてみてもらいたい。

このケースを徹底的に学ぶとソーシャルビジネスを考えるヒントがたくさん見えてくるので、是非トライしてもらいたい。


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