2010年11月6日土曜日

実名性が信頼経済の基盤か?

「ソーシャルな問題」の解決には、「ソーシャルな解決法」が向いている。昨日は「最新ソーシャルファイナンス研究会」でmaneo(株)の妹尾社長をお招きし、講演後、妹尾社長に参加者に考えてもらいテーマを2つ設定しワールドカフェ形式でグループディスカッション、全体セッションと進んだ。このグループディスカッションの中から鋭い視点がいくつも出された。

 私が「ソーシャルな問題」と言っているのは、誰かが唯一の正解をもっているわけでなく、その解決のための情報が広く分散されている状態にある問題のことを意味している。このような問題には、対話形式のいわば「ソーシャルな解決法」が向いている。

 ソーシャルファイナンスはお金の貸し手側に経済的なリターンと社会的なリターンを提供する。現在は貸金法の規制もあり、貸し手も借り手も匿名性になっている。ソーシャルレンディングのソーシャルな部分と匿名性が矛盾しているのではないかという指摘がなされた。この点は慧眼だと思う。

 日本でも、SNSはmixiの匿名性から、Twitter、Facebookの実名性に移りつつある。オープン、ソーシャルにおいて、実名で顔が見えるという効果は非常に大きい。匿名のプラットフォームは信頼の基盤としては危い部分をもっている。
 まさに、この点はソーシャルファイナンスにおいても、ソーシャルメディアにおいても、匿名から実名に移ることによって、プラットフォームが信頼経済の基盤となるという未来の方向性が示されているのではないか? 
 

2010年11月5日金曜日

コトラーのマーケティング3.0は幻想or現実?

 ソーシャルメディア業界ではやっているコトラーのマーケティング3.0のリアリティをチェックしてみたい。

顧客(ユーザー)の感じる価値はピラミッド型になっている。
下層から、ファクト、機能ベネフィット、情感ベネフィット、パーソナリテイ、コアバリュー。わかりにくいコアバリューはユーザーがその企業とつながりを保ちたいという一体感である。

ユーザー価値はユーザーが評価判断するものである。決して企業側ではない。この前提を忘れる、もしくは前提としないことが議論を混乱させるもとになっている。

多くの企業がユーザーに以上の価値の全てを提供しようとする。しかしながら、それを決める、受け取るのはユーザーであって企業ではない。

実際は、多くの企業が提供できる価値はファクト、機能レベルにとどまっている。優れた企業が、上部の、情感ベネフィットやパーソナリテイを提供することができる。そして、本当に偉大な企業がコアバリューを提供することができる。今の日本なら、ユニクロ、ソフトバンク、日本マクドナルドなど本当に数少ないだろう。

ソーシャルメディアがいくら普及しようが、この事実はあまり変わらない。コアバリューまでを提供することができる企業はごくわずかだ。むしろ、仮面がはがされる透明性の時代にはより少ない会社しかコアバリューを提供できないかもしれない。

この辺りがマーケティング3.0のパラダイムをすんなりと我々が受け入れられない根本原因だと思う。「ソーシャルメディア時代だから、コアバリューを提供しましょう」と言っても、受け取るのがユーザー側だから、多くの企業は受け取ってもらえない。その辺りの現実を身にしみている企業が多いため、マーケティング3.0に「そうはいってもね・・・」という反応となり、すんなり乗れきれないのだ。

2010年11月4日木曜日

ソーシャルメディア時代の新しい購買モデル(AAS熊沢モデルの提唱)

ソーシャルメディア時代の新しい購買モデル(AAS熊沢モデルの提唱)

 マーケティング分野で長く使われてきた購買モデルはAIDMAである。1. Attention(注意)→2. Interest(関心)→3. Desire(欲求)4. Memory(記憶)→5. Action(行動)。

 ネット時代に入り、消費者の購買プロセスは変化したため、電通によりAISASモデルが提唱された。
1. Attention(注意)→2. Interest(関心)→3. Search(検索)→4. Action(行動、購入)→5. Share(共有、商品評価をネット上で共有しあう)

 では、ソーシャルメディア時代にはどういう購買モデルが妥当なのか、AISASモデルはどう変わる可能性があるのかを考えてみた。

 Facebookで自分の趣味嗜好に近い友達がいいね!と言っていたら、そのようなソーシャルフィルタリングを介すると、モデルは以下のように短縮化される。
1Attention(注意)→4 Action(行動、購入)→5 Share(共有、商品評価をネット上で共有しあう)

Interest(関心)とSsarch(検索)はソーシャルフィルタリングによってプロセスから省くことができる。

 AAS熊沢モデルでプロセスが短縮されるので注意から購買までの時間も短縮される。企業にとってはリアルタイムマーケティングの必要性が高まっていくだろう。また、これまでは注意から行動までの抜け落ちが大きかったが、その抜け落ち率は低下する。しかし逆に、比較購買の必要性が減ると、このソーシャルグラフ上に入っていない商品・製品は最初から消費者の購買選択肢から除外されてしまう。

今後さらに実際にどうかを観察していきたい。まだアイデア段階なのでご批判ください。

ソーシャルメディア VS ソーシャルファイナンス

ソーシャルメディア VS ソーシャルファイナンス

 明日、「最新ソーシャルファイナンス研究会」がスタートする。ソーシャルファイナンスというと、NPOバンク的なアプローチをとる方が多いが、私は、お金を仲介する業態や機関によって整理するのではなく、果たす機能によってソーシャルファイナンスを整理し直そうと考えています。売り手と借り手を結びつけるために、仲介機関がどのような機能を果たしているのか? 

 取引がなぜおこなわれるのか? 逆に取引がなぜおこなわれないのか? この疑問を解く鍵は「取引には取引コストがかかる」という単純なものだ。この研究したのが、ノーベル経済学賞を受賞したロナルド・コースやオリバー・ウィリアムソンだ。私の大学院での論文が、フランチャーズチェーンによって、なぜ直営戦略とFC戦略をとる違いが生じるのか? その理由を計量的に研究するテーマだった。実はこれも取引コストの経済学の応用問題なのである。

 現在、社会的な事業に十分にお金が回っているとは言いがたい。つまり取引がおこなわれていない。取引コストが高いからだ。この問題は「お金の出し手とお金の受け手の間の取引コストを仲介機関がまだ十分に引き下げることに成功していない」と言い換えることができる。
 どのような情報を提供すれば、また、どのような補完的なシステムを導入すれば、取引コストを下げられるか? ソーシャルメディア普及によるソーシャルグラフが信用情報の可視化を可能とし、貸し手からも意味と価値を持ってきている点も興味深い。ソーシャルファイナンスとソーシャルメディアの融合領域である。この辺りを(株)maneoの妹尾社長をお招きして、参加者とワールドカフェで意見交換してみたい。

 この辺りは、間違いなくソーシャルファイナンスの最先端の研究分野で、参加者も蒼々たるメンバーとなった。ソーシャルベンチャーの経営者の参加率が高くないのが今回は残念ではあるが、世の中にこの英知をフィードバックしていきたいと考えています。

2010年11月3日水曜日

2WayコミュニケーションからMany to Manyコミュニケーションへ

2WayコミュニケーションからMany to Manyコミュニケーションへ

「ぬるま湯がいいのか悪いのか?」で議論されていますが、私はこう考えます。
日本のソーシャルメディア業界が進歩、進化するためには、どんどん議論があっていいんじゃないかと思います。

 まだ皆、Facebookのコメントにどういうこと書いていいのか? どこまで批判しても許されるのかなど、戸惑っている状態だと思います。「役立つ情報提供してくれてありがとう」みたいな挨拶程度のものが多いです。その情報の有用性は、書いた人とコメントくれた人の2Way コミュニケーションに限定されます。他の第三者からの情報有用度ははっきり言って低いです。「あなたはそういうけど、私はこう考える。その根拠は・・・」ぐらいの方が第三者的には面白いし有用です。FacebookのコメントはMany to Many のコミュニケーションなんですから。その辺りがまだ無意識に誤解されているんだと思います。

 比喩的に言いますと、参加者はそれぞれ役者に徹した方がいいと思います。役者は観客を盛り上げてなんぼですから。最低限のルール、個人攻撃はしないなどを守って、活発に議論していきたいと思います。

2010年11月2日火曜日

これまでのマーケティング体系をぶっつぶす

 ソーシャルマーケティングというと、通常は社会の変革などを目的とした啓蒙的マーケティングのことを意味しています。コーズマーケティングやソーシャルメディアを活用するマーケティング(SMM),Nonprofitマーケティングと位置づけとしては並立的です。しかしながら、企業の役割として、社会全体のことを考えて行かなければ立ち行かないし、マーケティングも成り立たない時代に入りました。企業のマーケティングも社会全体の善にプラスにならなければ消費者にも受け入れられることが難しくなっています。というわけで、私はソーシャルマーケティングをより上位概念として、その下に、コーズマーケティングやソーシャルメディアマーケティング、Nonprofitマーケティングに包括する形に体系化したいと考えています。

 そして、マーケティグを考える際にも、単に売れるか? 単に株主にプラスになるか?だけではなく、社会全体、ステークホルダー全体にプラス価値を本当にもたらしているか? 短期的のみならず中長期的にも社会全体にプラスとなっているか? 経済的なリターンのみならず、ソーシャルリターンも含めたソーシャルなインパクトを与えうるかという観点から、結果効果重視の計量的な、ソーシャルな価値をはっかり示すマーケティングを今後進めて行きたいと考えています。

 つきましては、11月15日から、「最新ソーシャルマーケティング研究会」をスタートする予定ですので、ご興味ある方は是非ご参加くださいませ。
詳しくは http://tweetvite.com/event/ntup

新たなパーソナルブランド確立法:ソーシャルサーフィンの薦め

 この2年をみると、ソーシャルメディア分野ではパーソナルブランドを急激に高めたのは、質の高いブログを継続的にアップしできる多産能力のもった人たち。ループスの斉藤さんとイケダハヤトさんなど。
 今後価値が高まりそうなのは、情報集約フィルタリング能力とソーシャルサーフィンのスキル(後述)だと思う。
 時間が少なくなると中々質の高いブログでも全部ちゃんと読めなくなるし、その辺りをフィルターしたり、まとめてくれるキュレーターの存在は本当にありがたい。時間を節約させてくれるという価値を読者に提供している。この辺りはホリエモンや佐々木さんがよく言っていることだ。

 もう一つ、今後求められるのはソーシャルサーフィンのスキルだと思う。ソーシャル化の波に乗る能力のことである。Facebookが普及しつつあり、その特徴はなんと言っても豊富なコミュニケーション機能。自分は一次情報を生み出すのではなく、その一次情報の便乗し、質の高いコメントや批判、評論するというあり方である。私はこの能力を造語だがソーシャルサーフィンと呼びたい。どこに波が来ているのか、どこに波が来そうかを的確に予測して、あっちこっちと顔を出す。自分のホームベース(ブログ)は持たずに。そんなありかたもソーシャルの波に乗る方法としては考えられる。

2010年11月1日月曜日

熊村剛輔さんにこんな質問したら怒られるかな?

 日本マイクロソフトの熊村剛輔さんが講演されるので参加してみた。せっかくなので、熊村さんに昔から思っている質問をぶつけてみた。「(私)日本MSのソーシャルメディア戦略はうまくいっているんですか?」答えは、「この場でうまくいってないなんて言えるわけないじゃないですか(苦笑)」「(私)ソーシャルメディアの厚いバイブルを苦労して作りましたけど、他の会社にも作ることを薦めますか?」「ケースバイケースで少人数の会社には必要ないでしょう」。うまく言っているという根拠は?と聞きたかったが今回は時間切れ。

 講演自体は軽妙なテンポで内容も面白く自然に入り込むことができた。さすがプロのサックス奏者。スライドで説明されたのは以下の通り(間違えがあったらゴメンナサイ)。
Social Influence Marketing is more than WOM
Social strategy begins with your digital strategy.
Your owned platform can be just as social as Facebook.
Every traditional marketing objective can be made social.
Measurement must be actionable.
 欧米はソーシャルメディア利用者が多いから、現実的に、企業もソーシャルメディア対応し、全体デジタル戦略の一部として位置づけられている。測定は、アクションに結びつく形で計測されているという話。

 日本でもソーシャルメディアの目標設定・効果測定が常に問題になるが、本当にアクションにつながる意味ある実行性がある指標をモニターしているのかどうかが問われる。今後、リアルタイムマーケティングがさらに進むと、この部分をさらに磨く必要がある。

2010年10月31日日曜日

スケダチ高広伯彦氏のマーケティング論を読み解く

最近何かと話題の
スケダチ高広伯彦氏のマーケティング論を読み解く

 宣伝会議10/1号に、スケダチ高広伯彦さんが寄稿している。ちなみに私は同氏には直接の面識はない。

簡単に要約すると
・キャンペーンを企画する際には、①シナリオ、②コンテクスト、③コンテンツの順に考える
・ ①シナリオは企業側の意思、②コンテクストはターゲットとなる人と結びつく文脈、③コンテンツはコンテクストの具現化と位置づけている。シナリオの最終ゴールは常に「商品の価値をターゲットにうまく説明すること」に設定
・商品とターゲットを結びつけるものとして「コミュニケーション資産」と「メディア利用態度」を把握が必須
・ソーシャルメディア活用ではユーザーのつぶやくしかけと仕組み作りが必要
・今の時代は、消費者の間で話のネタに入らないと広告は広がらない。考える手順と発想法を変えるべき。

以上の話から分かる点は、
・高広氏もソーシャルメディア時代にマーケティングは変わらなければならないという認識を持っている
・ソーシャルメディアは手段としての重要性は鑑みつつも、特に重視しているのは、ユーザーと商品を結びつけるコンテクスト作りである。
・ユーザーがメディアするが、それはコントロールできるものではない。企画の中に、話題となる必然性(コンテクスト作り)が重要

私が解釈するに、高広氏は、コンテクストをより上位に位置づけ、ソーシャルメディアを手段、道具としてその下位に位置づけているのではないか? だから、IT系のソーシャルメディアコンサルの方々が「ソーシャルメディア万歳!」と叫ぶ時に、「それは手段でしょ。コンテクスト作りがより重要であり、それは各キャンペーンなりいろいろ考えて工夫しないと、手段(道具)を振り回してもうまくいかないよ」と警鐘を鳴らしている、と考える。