2013年1月16日水曜日

中間支援組織のSROI分析はどうあるべきか?

社会的企業の中間支援組織のSROI分析はどうあるべきか?

社会的企業の中間支援組織の社会的価値(SROI)はどう計算したらいいのか?

 グランドワーク三島の地域社会雇用創造事業で、「社会的効果に係る第三者評価調査報告書」(抜粋)を公開されているhttp://www.gwmishima.jp/modules/information/index.php?lid=623

 この報告書では、個別社会起業家のプロジェクトのSROIの合計が中間支援組織のSROIという計算がなされている。

果たして、そうだろうか?

 例えば、ある企業が、事業A、事業B、事業Cをもっていた場合は、事業Aの価値+事業Bの価値+事業Cがその企業の企業価値になるかというと、そうではない。

現在おこなっている事業AからCに加えて、事業Dをおこなう可能性、ケイパビリティも含めて、ゴーイングコンサーンを前提とする企業の価値になるはずである。

 その事業を生み出すもとになる、人材の能力、組織のケイパビリティ、起業家をスケールアウトさせる仕組みの価値を加えるべきである。いや、むしろ、そちらが中間支援組織団体の価値となるのだ。

以前、アマゾンの企業価値を評価した際に、本を販売して儲ける価値に加えて、ビデオ、衣服など様々な領域に事業展開できるリアルオプション価値を加えて、算出した。これと同じロジックが成り立つだろう。プラットフォームの価値を考える必要があるのだ。

2013年1月14日月曜日

2013年のソーシャル業界の方向性

 2013年のソーシャル業界の方向性を考えてみたいと思います。以下の図表(Social Impact Chart)のように考えると見通しが良くなります。


 まずは、①社会的価値をどうする創造するのかがスタートラインとなります。昨年「ソーシャルビジネスの新潮流」という本を書き、その中で「ソーシャルビジネスモデル」という考え方を示すことができました。ビジネスモデルキャンバスを応用して、ソーシャルインパクトをその中に組み込みました。サービスの受益者とお金の支払い手が異なるケースが多いソーシャルビジネスではこのソーシャルインパクトをビジネスモデルに組み込むことが非常に重要となります。また、社会的価値を生み出すには様々なセクターの協力が必要という認識が高まり、Collective Impactという考え方など理論化が進んできています。当社のリサーチャーで働いて下さっている方が慶応SFCの大学院でこの実証研究をする予定です。

 次は、②社会的価値評価です。SROIやSIR社で開発したソーシャルインパクト指数がああります。SROIが効率性指標なのに対して、ソーシャルインパクト指数は効率性と効果性の両方を取り入れた指標であり、SROIの計算の煩雑さを改善することができます。実際にSROIを算出した人はわかるのですが、SROIの絶対的数値に本質的な価値はなりません。それなのに、SROIの計算に厳密性を求めるのは全く愚かなことなのです。これがSROIが普及しない本質的な理由です。

 その社会的価値が生み出されると、それを投資に活かす③社会的投資の分野や、④社会的認証、法人格が関連してきます。前者は英国で生まれたソーシャルインパクトボンドが昨年はアメリカのニューヨーク市で発行されました。今年は日本型SIBが発行すべく努力したいと思います。この分野は公契約の第一人者である、明治大学の塚本先生、明治学院大学の西村先生と一緒にやりたいと思っています。

 もう一つの社会的価値評価の応用としては、④社会的認証があります。政府、州などの公的に認めるものと、第三者認証の2つがあり、特に、後者のB-Corporationの動きが注目されます。 原丈人の公益資本主義の認定など、この分野でも日本独自の動きが出てくるでしょう。

 大きな流れは、NPOと企業の境界が曖昧になり、共通の評価基準、モノサシを求める動きが、両方のセクターの垣根をさらに低くすることになるでしょう。

2013年1月13日日曜日

ソーシャルインパクトボンド(SIB)の発行実現要件


新年から、日経でソーシャルインパクトボンド(SIB)が取り上げられていたので、今年は日本でもSIBを実現させようという動きが出てくるだろう。

では、具体的にSIBの発行の実現要件を考えてみたい。
まず、参考にすべきなのは、私がプレゼンで使った以下の図表である。


この図表の要点は、SIBは公的サービスの節減分に対して成果達成コスト、介入コストが少ないほど効果があるという点である。これがSIBが予防サービスに用いられる理由でもある。

説明してみよう。
政府は何らかの社会的課題を解決するために介入をしており、その政府コストがかかっている。例えば若者就労支援を考えてみる

 仮にその若者が失業保険をもらっているとすると、約200万円の直接的な政府支出がかかる。これは直接コストだが、若者就労サポートセンター等の間接的な維持コストなどもかかってくる。

単純化のために、政府コストは200万円としよう。
この介入コストをSIBを発行して調達しようとする。

SIBの発行要件

要件1: 
政府コストはSIB発行によって低くなること

要件2:
介入コスト(初期投資)と投資家へのリターンの合計値(又はその期待値)は、SIB発行による節約分の範囲内に収まること

要件3:
投資家にとっては介入コストへの投資、その投資からのリターン(利子)は期待ベースでリスクを上回るリターンを提供すること

SROIの観点から考えてみる。

SROIは以下のように定義できる。
SROI=(経済的便益+社会的便益)/投資金額

介入コストは、分母の投資金額にあたる。
政府の節約分は分子の社会的便益にあたる。他にも、失業者が職を得ることによる心理的満足、次年度以降も雇用維持された場合の経済便益等も考えられる。

単純に考えると、このSROIが高いほどSIB発行要件を満たすので発行しやすくなる。


数値を当てはめてみよう。
現在、若者の失業者のコストが失業保険費の直接コストのみで200万円としよう。

介入コスト=50万円
投資家のリターン=5万円
SIB後の政府コスト=50万円
とすると、SROI3倍になる。
以上の想定では、投資家は10%のリターンを得る。

後、重要なことは、

要件4: 
SIBを支払うアウトカム成果の評価測定ができること。

後、見逃されやすいが、

要件5: 
SIBのアウトカム成果の評価は投資家への利払いの前になされなければならない。

以上の5点が、単純化したSIB発行の要件と言えるだろう。