2012年11月10日土曜日

政策の定量評価の必要性

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 もともと、ソーシャルインパクト指数は、内閣府の社会的企業の雇用創造事業で、助成金採択された社会起業家のインパクト評価として開発されたものである。

 従来のSROIと比較して、効率性と効果性の両方を包括した分、その汎用性、応用可能性が高くなっている。

 政策コンサルタントのアドヴァイスもあり、このソーシャルインパクト指数は、政策評価の評価に効果を発揮することがわかったので、このための修正を考えてみたい。(書きながら思考を構築しているわけで着地点は現時点では考えられていない)

 ソーシャルインパクト指数を用いて政策を評価することで何がいいかというと、数値で示せる分だけ、わかりすさを高めるとともに、政策間の比較可能性を高めることができる点だ。予算が緊縮となり、政策の優先順位をつける必要性が高まっている。

①社会的課題の深刻さ
 まず、ある政策の優劣を判断する際には、やはり、その政策がどのような社会的な課題を取り組むかというテーマ性がある。政策でターゲットとする社会的課題が、重大な、深刻な、緊急的な、社会的課題に取り組む政策価値の方が、他の条件を一定とすると、政策価値が高いと考えられる。

 それは、より多くの人に影響する度合い×その影響の深刻度と捉えられるだろう。この深刻度には、可逆性、不可逆性という区別も必要となる。不可逆的な課題(とりかえしがつかない課題)ほど、重要度が高いと言える。

②社会的投資対効果
 政策効果は、インプットに比較したアウトプット、アウトカムが高いほど、つまり、アウトカム/インプットの比率が高いほど、政策価値は高いと言える。この数値がいくらであれば実行すべきかどうかというハードルレート設定はなかなか難しい問題だ。いつも問題となるのが、アウトカムをどう金銭換算するかという点である。政策目的は金儲け(商業)ではないので、金銭価値にしにくいアウトカムを正しく評価するということは極めて重要な点である。そのアウトカムを代表するKPIを設定するということも必要だろう。

③波及効果
 政策効果は一時的効果ではなく、持続的な効果を評価(重視)する必要がある。地域、時間の広がり、つまり、「影響度の範囲の特定」である。波及効果が高い政策ほど政策効果が高いと言える。教育などの投資に関しては特にこの点は重要だ。

④スピード
 ある政策を実行して、すぐに効果がでるほど、その政策効果は高いと言える。このスピードは社会的投資効果とあわせて考える必要がある。スピードが遅くても、社会的投資効果が高い倍率であれば、良い政策と言えるからである。

⑤政策実行基盤
 当然、政策は実行する予算、人材の確保が必要となる。そうでなければ絵に描いた餅となるからである。

 以上により、少なくと、政策を比較する際に、5つの軸を設定し、政策の定量評価が可能となる。今度、原発再稼働問題、生活保護問題などで、このフレームワークで定量評価をしてみたい。

マイケルポーターのCSV実践の第1ステップは?

 マイケル・ポーターの共有価値(CSV)という考えが徐々に広まりつつある。では、具体的にどう実践していくのかという点になると??になってしまう企業が多い。

 CSVでは、株主価値からステークホルダー全体価値に視点を移す必要があり、まずは、ステークホルダーの影響度を定量的に測定することを薦めたい。

例えば、以下は、ソーシャルゲーム業界(ゲームプラットーマー)のステークホルダーの定量評価の実例である。


以下ステップ

①まずは、ステークホルダー全体をリストアップする。今回は10のステークホルダーをリストアップした。

 ステークホルダーはなるべく幅広くとる必要がある。現在は影響が低いステークホルダーが将来的には大きな影響度を持つことも少なくない。また、自身単独では影響が低いステークホルダーが他のステークホルダーと連携することで大きな影響を与えることも珍しいことではないのだ。

②そのステークホルダーのプラスの影響を評価する。

③そのステークホルダーのマイナスの影響を評価する。

④そのプラスとマイナスを合計する。(加算すること、マイナスの影響度を減算しない)

⑤そのステークホルダーの行動可能性を評価する。

⑥合計値×行動可能性を掛け合わせる。

 ソーシャルゲーム業界では当初はプラットフォーマーは利用者を獲得する人気ゲームを集め、プラットフォームの魅力を高める必要があり、ゲームデベロッパーを囲い込むかが重要な競争軸であった。

 しかしながら、高額請求などの批判が強まるにつれ(まさに、社会的価値がクローズアップしてきた)、様々なステークホルダーが影響度が高まっている。消費者庁、ゲーム利用者の親など、未成年を取り巻くステークホルダーの影響と行動可能性が高まってきたのだ。だから、ゲームプラットフォーマーは、この点を考慮しながら、より持続的な成長を図るべく戦略の転換が図られている。どう戦略的にステークホルダーをマネージメントするかで、上記の考え方が役に立つだろう。

 注意点としては、影響度の高まっているステークホルダーに注目すること、また、行動可能性が高まっているステークホルダーも注意が必要である。その行動を引きおこす可能性があるイベントも事前に予測しておくべきだろう。

これは、ポーターのCSV実践の第1段階のステップと位置づけられる。

公益資本主義の修正点


  公益資本主義を押し進める上で、米国と日本の違いをどう考慮に入れる必要があるのか?という点が問題となってくると思います。

以下の疑問が当然湧いてくる。
 「米国と日本では状況が異なるのではないか? 日本では投資家の力はそれほど強くない。そうすると、処方箋は、短期的なリターンを狙う投資家の力、権限を弱めることではないのではないか?

 日本のこの20年の低迷を考えると、長期的に日本株に投資してきた投資家は大きな損を出した。例えば、ソニー、パナソニック、シャープの株価は20年で時価総額を大きく減らした。まさに日本は家電産業に投資していたのだ。結果としては、残念ながら、その投資は実らなかった。

 ソニー、パナソニック、シャープの凋落は、投資家が短期的な圧力を欠けた結果というよりは、経営陣が長期的な視点、戦略的視点、グローバルな視点を欠いた結果、他の国のプレーヤー(韓国、台湾、中国)に競争優位を保つことができなかった。経営陣の視野=従業員の視野となり、大胆な改革ができなかった点である。環境変化が大きな時代にはこの点が大きくマイナスとして働く。

 このゲームを考える際に、①どのステークホルダーがパワーを持っているか? ②そのプレーヤーの視野は長いのか短いのか? ③意思決定は戦略的なのか? そうではなくオペレーション的なのか? という軸が重要となる。

 米国は、投資家が大きなパワーをもつ→投資家の短期思考が企業の意思決定に大きな影響をもつという意味で、投資家に長期的な視点をもつように促すことは正しい。

 日本は、従業員がパワーもつ→従業員は長期的な視野をもつが戦略的な視点は欠ける。このため、いかに従業員出身の経営者、経営陣に、戦略的な思考を実行するように促すか? という点がより重要になってくる。

 そうでないと、投資家に長期的に投資してくれと言っても、この20年で長期投資したら大きく価値を下げたではないか? 戦略的な思考で運営しない限りは長期的には投資できないと言われ、ニワトリが先か卵が先かの循環論に陥るだろう。

外部性の大きな産業の歪んだインセンティブ


 繰り返し金融危機が起こるのは、お金を儲けようとする欲望と、それを満たす投資機会にアンバランスがあるからだと思います。

 問題なのは、金融セクターは外部性、社会に与える様々な影響が大きいので、金融危機が起こった結果、世界全体、国民全体が大きな影響を受ける点です。この点をあるため、大きな金融危機が起こると国が危機に陥った民間金融機関を救済しようとします。

金融セクターはレバレッジによって、ばくちが成功すると大もうけ

失敗すると、そのツケは国民に回される、

まさに損しない博打をしているのと変わりません。言葉を言い換えると、国民のお金で博打しているのと変わりません。

もう一つ、外部性が大きな産業にエネルギー産業、電力会社が挙げられます。

東電の場合も、原発がうまく機能する場合は自分たちの利益となり、

原発事故が起こると、損害が大きすぎて、国民の税金が投入される、

これも金融と同じ構造で、大多数の国民が原発を望んでいないにも関わらず、国民のお金で原発という博打をしている、同じ構造になります。

つまり、外部性が大きな産業は歪んだインセンティブをもちやすい、ということが言えると思います。

2012年11月9日金曜日

何故、今、公益資本主義が必要とされるのか?

 昨日は、原丈人さん率いるアライアンス・フォーラム主催の公益資本主義を考える日本円卓会議に参加。

 何故、今、公益資本主義なのか? 何故、新しい資本主義を考える必要性があるのか?

 その理由は、これまでの資本主義を支えてきた前提が正しくなかったか? もしくは、その前提に変化が生じたからである。

 これまでの資本主義の一番の大前提は「アダムスミスのパラダイムである。神の見えざる手、つまり、市場メカニズムによって、ミクロの競争がマクロの安定をもたらす、私欲が公益をもたらすというのが大前提になっていた。

 しかしながら、この大前提は必ずしも正しくないケースがある。個々の企業が一生懸命に儲けようと、ROEを高めるために競争しても、それが結果として、公益を損なうケースが生じうるのだ。

 実際は、外部性が生じると、ミクロの競争はマクロの安定をもたらさない。アダムスミスパラダイムは成立しない。福島原発事故を考えると、外部性が生じると、国の、地球の持続可能性を損なうケースも起こりうるのだ。
この企業と社会の関係が変化したことによって、企業が外部性にどう対処していくかが非常に重要になってきた。
 これからの経営のあるべき姿は、外部性を内部化することその外部性をソーシャルイノベーションによって宝の山にすることができるかどうかだろう。




2012年11月7日水曜日

株価パフォーマンスの説明要素?



 株価パフォーマンスをどの要素、変数で一番説明力が高いか?を研究している。この研究は現在の資本主義の根本前提を明らかにするという点が面白い。

 普通の常識は、いかに儲けることができるかという収益性指標や、資本効率、ROEの説明力が高いと考えるだろう。

 しかしながら、実際はROE単独での説明力は株価パフォーマンスではマイナスになっている。これは、ROEという単独情報は株価に既に織り込まれるので、その情報は投資に価値を生み出すことができないという、効率性市場の観点から説明ができるだろう。

 私が開発した、サステナブル指数は株価パフォーマンスの相関は0.34と、単独指標では最も株価パフォーマンスをうまく説明できる

このサステナブル指数は、営業利益がどの程度、企業の信頼、企業ソーシャルキャピタルを高めることに寄与できるかを指標化したものである。

 利益を最終目標ではなく、信頼を最終目標として位置づけた方が、株価パフォーマンスをうまく説明できるという点が非常に興味深いのだ。

ソーシャルインパクトボンドの本質


  英国に続き、米国においてもソーシャルインパクトボンド(SIB)の発行が予定されている。残念ながら、日本ではまだSIBは発行されたことはない。私は、ここ数年で日本でもSIBが広まっていくのではないかと予想している。

 SIBの本質は一体何だろうか? 

多くの論者は、社会的成果と投資家のリターンを結びつけたことを挙げているが、私はこの点がSIBの本質ではないのではないかと考えている。

私は、SIBの本質は、(社会リターンという)外部性を、(投資家にとっての経済リターンに)内部化する交換・変換するメカニズムにあると考えている。

 例えば、あるプロジェクトに投資するとします。そのプロジェクトは、経済的リターンをX%生み出します。そして、それと同時に、様々な利害関係者に社会的リターンY%も生み出しているとする。

これまでは、投資家は経済的リターンX%だけを分配されてきた。そして、Y%は通常の金融商品では無視されてきたのです。このY%を例えば金銭価値Z%に交換してくれる団体があれば、投資家は、X%+Z%を分配することが可能となるわけです。

 つまり、投資家は、これまでは、投資家が無視してきた外部性、すなわち社会的リターンを内部化することが可能となるのである。

 そのためには、プロジェクトに生じる社会的リターンを経済リターンに交換してくれる交換主体が必要になります。これが、政府だったり、財団であるわけです。

交換によって、ある意味の比較優位が成立することになる。

 このことで、社会的には、経済リターンでは成立しえなかったプロジェクトが、社会的リターンを考慮すると、民間ベースでも成立可能になる可能性を押し広げることになります。