2011年3月5日土曜日

ソーシャルメディアのROIをどう測るべきか? エンゲージメントROIの提案

Altemeterは140名のソーシャルストラテジストにアンケートし、2011年何を目指しているのか?を質問している。我々はここから何を読み取るべきなのか?

事実1
アンケートでは、最もフォーカスすべき目標は、Creating ROI measurementが48.3%でトップ

事実2
何を成功の指標としているかで、ソーシャルストラテジトの65.5%は、Retweets,comments,fans,likes,followers,members
と答えている。

ファインディング1
ROIという観点からマーケティングを考えようとパラダイムシフトが進んできている。従来のマーケティングはPLの観点から語られることが多かった。この点は明らかな進歩。

ファインディング2
ROIは、分子に成果の金額、分母は投資金額である。
アンケートでは成果指標は、Retweets,comments,fans,likes,followers,membersなどがあがり、実際にはROI測定はできていないことがわかる。

ファインディング3
問題は、ROI分子の成果を金額で算出することが難しいことである。その結果、分子の成果金額が測れず、分母の、どれくらいの投資が妥当なのかもわからない。ここにソーシャルストラテジストの共通の悩みがある。

私の見解1
ROIはビジネス、業種、会社によって、顧客の生み出す価値はそれぞれ違うので、リアルな部分、ウェブサイトとの統合を含めないと算出することが難しい。ここがソーシャルストラテジストの今年の課題となっている。

では、どのようにソーシャルメディアのROIを測定すべきか?
Quoraをみても、この問題を誰も明快に解決できていないようだ。

私の提案
私は、エンンゲージメントの観点からROIを測定すべきだと考える。エンゲージメントで顧客(顧客になるプロセスを含めて)をいくつかの階段(Ladder of Engagement)にわけ、それぞれの階段をあげる効果(確率)、そしてそれぞれの階段の顧客生涯価値を算出する。これによって、ソーシャルメディアによって、コンテクストを作る、もしくはエンゲージメントを強化した効果を算出できることになる。私はこれを「エンゲージメントROI」と定義したい。結局はこの部分を算出できないとROIが出すことができないことがわかるはずだ。

ペプシ「リフレッシュ・プロジェクト」からマーケッターが学ぶべき7つの教訓

 キャンペーンは華々しかったが、ペプシの実際の売上は減少した。このソーシャルメディア最大規模のキャンペーンは失敗だったのか? ここからマーケッターは何を学びとれるか?

教訓1
まずは、お金、賞金コンテストで参加者をつっても、いくらFacebookページの300万人参加者を増やすことができたとしても、ビジネスのプラス効果は期待できないという冷徹な事実だ

教訓2
ペプシは、消費者とエンゲージメントの架け橋(Ladder of Engagement)をかけることに失敗した。コンテント参加者の関心は賞金を獲得するだけでペプシを飲むこと、ペプシのことは考えなかった。


教訓3
キャンペーン参加者の行動要因が、カンパニー以外の外部(賞金コンテスト)に作った場合、特に、コミュニケーションデザインをよっぽど考えないと、エンゲージメントを作ることができないという事実だ。

教訓4
カンパニー固有のコンテクスト、原点、ストーリー、ユーザーがそれぞれ持っているそのブランドに持っている思いなどのコンテクストをベースにエンゲージメントを作る方が望ましい

教訓5
短期的な効果はなかったが、長期的なキズナを作ることはできたのでは?という反論もないわけではない。パターンとしては4パターンあるが、ベイズ条件付き確率の可能性は低いとみるほうが妥当だ。

エンゲージメントパターン
短期× 長期× 可能性高い
短期× 長期○ 可能性低い
短期○ 長期× 可能性はほどほど
短期○ 長期○ 可能性は低い

短期×とういう条件付き確率では、長期的な効果も×となる可能性が高い

教訓6
認知度が高いコンシューマー製品ではソーシャルメディアキャンペーンでカニバリゼーションが起こる可能性があることもこのキャンペーンで明らかになった

教訓7
ペプシはアメリカの事例ではあるが、本質的な要素が多く、この事例から日本のマーケッターはソーシャルメディアプロジェクトの本質を学ぶべし

2011年3月4日金曜日

ソーシャルメディア時代に有効なビジネスモデルはただ1つになった

ソーシャルメディア時代に、有効なビジネスモデルはただ1つになった

ソーシャルメディアの時代に入り、極端に言うと、全ての企業がInformation Companyになりつつある。

そこで、企業の関心は、自社の情報財(コンテンツ、ヒストリー、ストーリー)をどう広めてそこからマネタイズしていくかである。

そういう意味では、ビジネスモデルもただ1つになりつつある。
自社の情報財からいかに収益をあげるかである。

いろいろなパターンはあるが、情報財からいかに多角的、複合的に収益源を作り出せるかがポイントである。ハル・バリアンという有名な経済学者が情報財から収益をあげる10通りのバージョンニング戦略を考え出しました(HBR:Versioning the smart way to sell information)。

実際は、情報財から収益を最大化するには2つ方法があります

1.情報価値が低下しないようにする
2.お客が感じる情報財の価値とプライシングを一致させる

ハル・バリアンは2で10通りの戦略を考えだしましたが、当社は1を含めて、ソーシャルメディアを使い情報財から収益をあげる33通りの戦略を考えだしました!

2011年3月3日木曜日

成功するコミュニティは弁証法的アウフヘーベン(止揚)を伴う

成功するコミュニティは弁証法的アウフヘーベン(止揚)を伴う

 企業は自分のビジネスに役立たせることを目的にコミュニティをつくる
しかし、成功したコミュニティはもはやその企業のものではなくなり、コミュニティメンバーのものとなる

成功するコミュニティ運営者は、
・モノを売るというよりもコミュニティを育てようとする
・自分たちの宣伝・プロモーションよりも、コミュニティメンバーに貢献し価値をもたらすことを重視する
・コントロールよりも、明快さを重視する

 では、一体何の為に企業はコミュニティを作るのか?

 お客様の本当のインサイト、ニーズ、考え方、生き方を傾聴し、知ること、そして、その繋がりが本当の意味でその企業のビジネスに価値をもたらすことを可能とするのだ。

 コミュニティは本質的に弁証法的なアウフヘーベン(止揚)を伴うものなのだ。

自分のために作る→うまくいくと自分の手を離れる→コミュニティメンバーのためになる+本当の意味で自分のためになる

まさに、キリスト的には放蕩息子のような話ですね。

ソーシャルメディア時代の危機管理

ソーシャルメディア時代の危機管理

 David scottの Real-Time Marketing and PRで、ソーシャルメディア時代の危機管理のあり方などをいろいろと述べている。

 事前に対処すべきこと、ルールなどを記述している。しかしながら、事前のルールは、事前の想定の範囲内でおこるシナリオにしか対応できない。現代の危機の特徴は、その伝播経路、スピード、そして企業に与えるダメージという点で往々に想定範囲からはずれてしまうのが特徴でもある。

 David scottが特に強調していたのは、オープンであることと正直さである。これはルールではなく、お客さん対する姿勢、社会に向き合うスタンスである。この2つの要素は、PR担当者だけに限られるわけではなく、社員全体に求められるものである。

 弁護士の言う通りに、不利なことを言わない、ノーコメント、謝罪しないなどの従来の指導を守り通しても、ソーシャルメディア時代にうまく機能しないことが既に証明されている。JR福知山線脱線事故のように、裁判の判決が民意の感情も考慮して決められるケースがますます増えているからである。

 この点も考え合わせると、社員全体にオープンであることと正直さをどのように浸透させるかが危機管理上も極めて重要である。やはり危機管理の最強のツールは企業文化なのかと考えられなくもない。ただし、企業文化には会社よってどのくらいコントローラブルかどうかという目的達成性の別の問題がある。

2011年3月2日水曜日

Klout現象を考える 信用創造メカニズム

Klout現象を考える 信用創造メカニズム

 Jeremiah Owyangが「Klout for Business: A Useful Metric –but an Incomplete View of Your Customer」で、
Kloutという単一の指標に依存しすぎることに警鐘をならしている。米国では、それだけKloutの影響力が大きくなってきたというべきだろう。日本はまだKloutの有用性を啓蒙する段階にあると思う。

 信用という目に見えないものが可視化させることのメリットとデメリット。昔は、信用という目に見えないが重要な資産は、長い間の努力と誠実性のもとに築かれるもので、一朝一夕に築くことはできないと言われていた。

 ところが、人と人とのつながりが可視化され、さらには数値化すると、信用(正しくは信用指数)を築くスピードが桁違いにスピードアップした。

 信用が創造されるプロセスは、取引があった人が「あの人は信用できる」と感じる→それを直接取引がない人にも伝えることでレバレッジがきくというプロセスが必要だ。ソーシャルメディアによって、この後者のレバレッジが段違いにきくようになった。レバレッジがききすぎるがゆえに、ある意味でバブル的な要素も当然含まれるようになる。昔の1対10のレバレッジ比率が今や1対1000、1対10000になっている。

 また、信用指数が目に見えたり数値化できるために、またそれを大きくするメリットも生じるために、本人がその数値を高めるために躍起になるという現象も生んでいる。これがパーソナルブランディングと言われている分野だ。

 いずれにしろ、バブルははじける。信用(指数)を創造していくスピードも早ければ、崩壊するスピードもまた早い。本物の実力と本物の信用を得ることでしか生き残ることは難しいだろう。