中間支援団体の社会的価値評価の話があり、いくつか先行する研究をチェックしてみる。
一つは、公社研がおこなった、マイクロソフト社と育てあげネットの「IT研修を活用した若者就労支援プロジェクト」をSROI評価した事例がある。
もう一つは、グランドワーク三島が内閣府・地域社会雇用創造事業「グラウンドワーク・インキュベーション」の社会的効果を算出した事例である。
社会的価値の評価はソーシャルビジネスの研究分野の中でも最も注目されている分野の1つである。
前者の研究は、
IT講習を受講した場合の進路達成率(45.5%)と受講しなかった若者サポートステーションの進路決定率(39.6%)の差(5.9%)を社会的価値として、年収をベースに価値評価してある。
プロジェクトの社会的価値(便益)/請負金額(コスト)=5.6倍、5年間の継続累計は21.3倍という結果を導いている。
流れは、サービス提供した側が第三者に評価を依頼する構造のため、たいていは高い評価が出る形となる。政府の助成金が使われているので、どうしても成果を示したいというインセンティブを与えている。この点が事業仕分けとは根本的に異なる点だ。
本来ならば、例えば、 内閣府・地域社会雇用創造事業を請け負っている中間支援団体の全てが政府の依頼により、第三者評価を受け、プログラム間の効果の高低を比較し、その原因が追求する形が理想的である。
以上の結果も、専門家の眼からみるとだいぶ杜撰な計算が行われているからだ。
私の関心は、単なる計算を確認するのではなく、その数値からどういうインプリケーションを導くことができるか、という点である。
- SROIを使用する際の注意点は何か?
- アウトカム、便益の定量化は納得できるものか? その他の可能性はないのか?
- SROIという単一の手法だけでいいいのか? 他の手法も使うべきではないのか?
- SROIが高いことは具体的に何を意味するのか?
- どうして高いSROIにつながっているのか? その論拠が納得感ある形で示されているのか?
- 高いSROIをこのプロジェクトの効果に限定して考えることができるか?
- 高いSROIが出るながら、政府としてもっとこのプログラムを拡大することが公益を高めると考えていいものなのかどうか?
- 政府が他のプログラムとの費用対効果に使えるほど頑強な結果と考えることができるかどうか?
- この結果を、新しい政府とサービス提供者との公契約に盛り込むことができないか?
- ソーシャルインパクトボンドが成立する条件を満たしているか?