FacebookがローカルSNSを抜き去ることができるのは実名制ではなく、エコノミクスの違いが最大の理由
Facebookが多くの国で楽々とローカルSNSを抜き去る現象が起こっている。日本でもmixiを早々に抜き去るのではないかと関係者は戦々恐々としている。その理由に、Facebookが実名制であることを理由として挙げる論者が多い。果たして本当だろうか?
まず、SNSのエコノミクスを考えてみよう。
SNSのエコノミクスを説明する「メトカーフの法則」がある。ネットワークの価値は、そのネットワークに接続されたすべてのノード数のほぼ2乗に比例して増加するという論理である。この理論によれば、先行したSNS事業者は圧倒的に有利になり負けることはありえない。Nの差が乗数の差を生むからだ。
しかしながら、後発Facebookが先行するローカルSNSを次々に抜き去っている。なぜ、メトカーフの法則では説明できない現象が起こっているのか? この理由は何か? 秘密はエッジランクになる。
エッジランクとは以下の3要素を考慮して、ニュースフィードにどの情報を表示するかを決めるFacebookのアルゴリズムである。
1.どれだけ頻繁にファンページでユーザーが交流したか?
2.交流の種類(コメントの方が高く評価される)
3.ファンページで発信したことが最近かどうか?
先行するローカルSNSをFacebookが抜き去ることができるのは、エッジランクのエコノミクスが、メトカーフの法則よりも強力だからだ。これは実名制であるかどうかとは直接には関係はない。
2つの効率性の違いを数理的に証明するのは難易度が高い。直感的に理解してみよう。
メトカーフはノードが増えると、接続ノード数の増加で価値の増加と解釈する。ただし、これはあくまで可能性の話であることに注意が必要だ。例えると、友達が2人から5人に増えたらその間に友達になる可能性が1通りから10通りに増えたに過ぎないのだ。だが、実際に交流する友達になるかどうかはまた別の話しだ。
エッジランクは、可能性に過ぎないネットワーク全体は使わないが、実際に交流するネットワーク間のコミュニケーションルートの高密度性を示す。これが強力なパワーを生み出す。一言で言えば、メトカーフの法則とエッジランクの違いは可能性と実現の差である。
これは特に、SNSの友達になる人数が実際には150人以下である場合特にエッジランクのエコノミクスがより強力になる理由なのだ。
これが、FacebookがローカルSNSを抜き去る理由であり、実名制とは直接関係ない、経済エコノミクスの効率性の差なのだ。
株式会社ソーシャルインパクト・リサーチ代表パートナー。慶応大学大学院(KBS)卒。早稲田大学院環境エネルギー研究学科博士課程在籍中。証券アナリスト。持続可能な社会の実現のために、ソーシャルインパクトの評価測定、そしてソーシャルインパクトをお金にかえる仕組みを提案。ソーシャルインパクトの評価測定、インパクトファンドの運営等を事業としておこなう。Twittier:kumataku1
2011年3月10日木曜日
2011年3月9日水曜日
ソーシャルメディア比較優位理論
経済学に「比較優位」という考え方がある。国の貿易の必要性を説明するのに用いられる考え方である。A国とB国でそれぞれ得意なものに特化し、得意でないものを貿易によってまかなう国は、貿易をしない場合に比べて、はるかに両方の国が豊かになるという考え方だ。
現在広告・マーケティング業界に起こっている現象にもこの理論を当てはめることができる。
表面的な現象は、マス媒体からネット広告、さらにソーシャルメディアへのシフトが進んでいる。
この現象の裏には、「マーケティング」は誰が主体におこなうのが全体最適性を高めるのか、という問題がある。
従来のマーケティングの主体である企業から、消費者、生活者がマーケティングの主体に変わることで、全体効率性を高める比較優位理論が成り立っているのだ。
厳密に比較優位理論を説明すると、特化するのは他社に対して優位である絶対優位性である必要はなく、自社の相対的優位性で構わないのだ。
国でもそうだが、相対的な比較優位で交易をしない国の将来はどうなるか? 自分の得意な部分に特化して、得意でないものを交易によって調達する国よりも貧しくなる。
企業はうまく消費者にマーケティングをバトンタッチできる企業は栄えるし、そうでない企業は滅んで行くと予言できる。
食べログや、価格コム、@cosmeなど口コミをうまく活用して競争優位を獲得してきた企業はいち早くこの事実に気付いた企業だ。
ソーシャルメディアの時代が訪れ、第2段階の競争もスタートしつつある。単に口コミを自社サイトに他社に先駆けて取り入れるだけでは競争優位を築くのが難しくなるだろう。これまでのような大きな差は縮まりつつあるのだ。この事実にいち早く対応でない企業は第2段階の競争では勝ち残ることは難しくなるだろう。
現在広告・マーケティング業界に起こっている現象にもこの理論を当てはめることができる。
表面的な現象は、マス媒体からネット広告、さらにソーシャルメディアへのシフトが進んでいる。
この現象の裏には、「マーケティング」は誰が主体におこなうのが全体最適性を高めるのか、という問題がある。
従来のマーケティングの主体である企業から、消費者、生活者がマーケティングの主体に変わることで、全体効率性を高める比較優位理論が成り立っているのだ。
厳密に比較優位理論を説明すると、特化するのは他社に対して優位である絶対優位性である必要はなく、自社の相対的優位性で構わないのだ。
国でもそうだが、相対的な比較優位で交易をしない国の将来はどうなるか? 自分の得意な部分に特化して、得意でないものを交易によって調達する国よりも貧しくなる。
企業はうまく消費者にマーケティングをバトンタッチできる企業は栄えるし、そうでない企業は滅んで行くと予言できる。
食べログや、価格コム、@cosmeなど口コミをうまく活用して競争優位を獲得してきた企業はいち早くこの事実に気付いた企業だ。
ソーシャルメディアの時代が訪れ、第2段階の競争もスタートしつつある。単に口コミを自社サイトに他社に先駆けて取り入れるだけでは競争優位を築くのが難しくなるだろう。これまでのような大きな差は縮まりつつあるのだ。この事実にいち早く対応でない企業は第2段階の競争では勝ち残ることは難しくなるだろう。
2011年3月8日火曜日
会社にソーシャルメディアをあわせるか、ソーシャルメディアに会社をあわせるか、それが問題だ
Briansolisは「ソーシャルメディアに会社を適用させること」を提唱している。私も基本的には同じ考えだ。
最近よく経営者から質問されるのは、「何かソーシャルメディアを使って新しいビジネスをしたいが何かないか?」。しかしながら、この質問からは正解を導くことはできないと思う。間違った質問からは正解は導かれることはない。
質問の前提には、「自分の会社はこのままでいい、それほど本質は変わらないが、ソーシャルメディアという新しいツールを自分がうまく使うことはできないか」ということが暗黙の前提とされている。会社が変わらなくてもいいという前提がまず間違いであるし、自分の会社は何かという大前提を間違えている。次に、自分がツールを使う主体的な存在であるという認識も間違いだ。
ソーシャルメディアの時代に問うべき正しい質問は・・・これはまた今度まとめたい。
情報コミュニケーション理論に「コンテント−コンテクスト理論」がある。コンテントは内容、中身を意味し、コンテクストは文脈/状況を意味する。この理論が今注目されているのにはいくつかの理由がある。
理由1
暗黙のコンテクストが、目に見えるコンテントよりも、結果にはるかに大きな影響があるからだ。
理由2
全ての企業がInfromation comapanyに変わりつつある。自らの情報資産が最大の経営資源になっている。だから、すべての企業は情報編集者のような振る舞いをみにつけなければならない。情報が流れる前提にはコンテント−コンテクストがある。
理由3
ソーシャルグラフの可視化によって、ソーシャルグラフがこれまでにないスピード、規模で拡散してきている。また、そのソーシャルグラフを企業自体がコントロールすることができなくなってきている。どう効果的なコンテクストを作る出すかの重要性が増しているのだ。
自分の会社の役割はコンテンツを届けることと考えるか、コンテクストを築く存在と捉えるか、些細な違いに見えるが結果は全く異なるものになると思う。
振り返ってみると、真のマーケティングはコンテクストの創造と共有にあることがわかる。ビジネスとは何かと考えると、モノやサービスを提供することではなく、生活者との関わりの中でコンテクストを創造し共有すること、という考え方に転換できるかどうか? そのコンテクストがイメージ化され、そしてその中にサービスや情報が位置づけられ立体化され、ストーリーができて、感情というキズナが生まれる・・・。そのコンテクストを作り出し、編集し直す作業は企業と生活者の協同によるものであり、そしてそこでは意図しない創発を生み出すこともできる、という考え方に転換できるかどうか? (井関利明の説明を一部修正)
最近よく経営者から質問されるのは、「何かソーシャルメディアを使って新しいビジネスをしたいが何かないか?」。しかしながら、この質問からは正解を導くことはできないと思う。間違った質問からは正解は導かれることはない。
質問の前提には、「自分の会社はこのままでいい、それほど本質は変わらないが、ソーシャルメディアという新しいツールを自分がうまく使うことはできないか」ということが暗黙の前提とされている。会社が変わらなくてもいいという前提がまず間違いであるし、自分の会社は何かという大前提を間違えている。次に、自分がツールを使う主体的な存在であるという認識も間違いだ。
ソーシャルメディアの時代に問うべき正しい質問は・・・これはまた今度まとめたい。
情報コミュニケーション理論に「コンテント−コンテクスト理論」がある。コンテントは内容、中身を意味し、コンテクストは文脈/状況を意味する。この理論が今注目されているのにはいくつかの理由がある。
理由1
暗黙のコンテクストが、目に見えるコンテントよりも、結果にはるかに大きな影響があるからだ。
理由2
全ての企業がInfromation comapanyに変わりつつある。自らの情報資産が最大の経営資源になっている。だから、すべての企業は情報編集者のような振る舞いをみにつけなければならない。情報が流れる前提にはコンテント−コンテクストがある。
理由3
ソーシャルグラフの可視化によって、ソーシャルグラフがこれまでにないスピード、規模で拡散してきている。また、そのソーシャルグラフを企業自体がコントロールすることができなくなってきている。どう効果的なコンテクストを作る出すかの重要性が増しているのだ。
自分の会社の役割はコンテンツを届けることと考えるか、コンテクストを築く存在と捉えるか、些細な違いに見えるが結果は全く異なるものになると思う。
振り返ってみると、真のマーケティングはコンテクストの創造と共有にあることがわかる。ビジネスとは何かと考えると、モノやサービスを提供することではなく、生活者との関わりの中でコンテクストを創造し共有すること、という考え方に転換できるかどうか? そのコンテクストがイメージ化され、そしてその中にサービスや情報が位置づけられ立体化され、ストーリーができて、感情というキズナが生まれる・・・。そのコンテクストを作り出し、編集し直す作業は企業と生活者の協同によるものであり、そしてそこでは意図しない創発を生み出すこともできる、という考え方に転換できるかどうか? (井関利明の説明を一部修正)
2011年3月6日日曜日
エンゲージメントROI 全く新しいマーケティングパライダムなんです
前回のレポート「ソーシャルメディアのROIをどう測るべきか」は、とくかくむちゃくちゃ、業界の方々に読まれています。今回のレポートはさらにインパクトを与えられると思います。前回レポートが理解できなかった方も、今回のレポートを丁寧に読めば必ず理解できると思います。
エンゲージメントROIの考え方、有用性を理解する上で、最も参考になるのがソーシャルゲーム、DeNAモバゲーのケースである。
モバゲーは四半期で52億円の広告費を使っている。なぜこんなに使うのか? 基本フリーゲームなのになぜこんなに広告するのか? 会員ユーザーを獲得するため?
本当の理由はエンゲージメントデータを入手するためだ。フリーだけでゲームを楽しんでいる人達はモバゲーに何も提供していないと思っているが、実はエンゲージメントデータを提供しているのだ。フリーの経済メカニズムをほとんどの人が誤解している。
エンゲージメントのデータと顧客生涯価値を結びつけることで、とてつもなく儲けの機会を手にすることができることをモバゲーのケースは示しているのだ。
以下、DeNAの公表データである。
100万人登録時に月間コイン売上1億円売上るための目安
■ ユーザの継続率(登録X日後におけるDAU/登録者数)
・ユーザ登録後 7日後 30〜40%
・ユーザ登録後 14日後 25〜35%
・ユーザ登録後 30日後 20〜30%
■課金率
5〜10%(対MAU)
■課金単価
1,500〜3,000円/月
ユーザーの登録からの日数ごとの継続率がエンゲージメントデータである。これを注意深くウオッチしていくと、そのソーシャルゲームはヒットするのかどうかが予測できる。ヒットの兆しのエンゲージメントデータを示すゲームに、さらに広告費を投入し大ヒットの確率をさらに高めることができるのだ。
これは、弊社、(株)ソーシャルインパクト・リサーチが提唱する「情報からどうやったら収益を最大化できるか」という方法論である。答えはエンゲージメントROIを算出し、それを戦略的に活かしていくというのが答えである。これは、これまでとは全く新しいマーケティングパラダイムである。私は「リアルタイムDマーケティング」という形で体系化した。
この新しいパラダイムを受け入れますか? それとも拒否しますか? ご意見を是非お聞かせ下さい。興味がある方々と意見交換もできたらと思います。
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