2012年12月7日金曜日

オバマ政権のソーシャルインパクトボンド(SIB)



オバマ政権の予算は総額3.7兆ドル
中身は、安全保障、ヘルスケア、防衛、輸送、教育、、、

しかし、最も興味深い部分は
0.003%の部分

たった1億ドルだけど、、、


それは何だろうか???

ソーシャルインパクトボンド(SIB

SIBって何?

SIBはパブリックセクターが改善された社会的なアウトカムに対してお金を成功報酬で支払う契約のことなんだ

それってどういうこと?

基本的に、民間からの投資によってパブリックサービスの支出をまかなう仕組み。ただし、政府は、そのプロジェクトが完遂できた時、つまり社会が良くなった時のみお金を支払う仕組みなんだ。

そこにキッカーがある。だから、投資家は社会が良くなると得をするし、社会が良くならないと損をする仕組み。

政府はそのプログラムが成功した時のみお金を支払えばいい

納税者はそのプログラムが社会を良くすることに失敗した場合はお金を支払う必要はない

すごくいいように聞こえるけど、何か落とし穴はないの?

どんなプログラムも万能ということはなく、プラスマイナスがあるよね、

プラスは、SIBは公的な問題を解決するイノベーションを促すことになる

もう1つのプラスは、納税者のお金がうまく働かなかったソリューションに使われることはないというのはいいことだね、

政府はそのプログラムがうまくいくことで節約されたお金で支払えばいい

プロジェクトを請け負った業者はスタートからお金を使えるしね。

では、マイナスは何かな?

マイナスは、結果を測定するのに時間がかかるし難しい面もある

また、マイナスとして、プラン実行するには政府を含めて調整も必要なことも挙げられるね、

コスト削減分以上の成果に対しては誰がお金を支払うのだろう? 例えばもし、住宅供給プログラムが健康保険に入っていない人のER(救急センター)受診数を減らしたり、保護施設に入れない子供たちを学校で保護したり犯罪を減らしたりしたとしたら? 保健省か?厚生省か?それとも刑務所の予算から出すのか?

一つのプログラムから複数の効果(コスト削減)が生まれたら、どこが成果を支払うの?
これに対してはまだ答えがないんだ。
 
もしSIBが成功するなら、政府が公共サービスの予算がない途上国では非常に有望だよね、

凄く可能性があるよね、投資家と社会的課題を結びつけるのがまさにソーシャルインパクトボンドだからね



2012年12月6日木曜日

ソーシャルイノベーションカンパニー調査を斬る

 日本財団のソーシャルイノベーションカンパニー調査の報告会に参加。私も、この調査には企画段階で関わっていたので、報告書の質が低レベルになってしまったのは非常に残念。何故こうなってしまったのか? 自戒も込めて問題点を指摘しておこう。

内容的には、
ソーシャルイノベーションカンパニーという視点で包括的なアンケートやりました。個別ヒアリングで、比較的うまくいっている企業群を3通りのカテゴリーをまとめましたという流れ。

その3つのカテゴリーとは、
   従来は、政府、自治体等が行ってきた社会的課題をビジネスの手法で解決している企業
   短期的な収益を超えた長期的な視点から取り組みを行っている企業
   NGONPOとの連携によって社会課題を解決する人材育成をおこなっている企業
ざっとこんな感じ。

問題点
  1. アンケートと3つのカテゴリーの関係性が全く見えない。1700社という膨大なアンケートやったのだから、そこからインプリケーション、そこからの仮説をもとに個別ヒアリングにつなげるべきだろう。これは報告書作成の際の基本的なレベルの話。
  2.  マイケルポーターの共有価値との関連 CSR業界はポーターの共有価値の考え方が注目されている。ポーターの共有価値(CSV)の話がレポートには出ているが、ソーシャルイノベーションカンパニーと共有価値との関連が明確化されていない。
  3. 3つのカテゴリーの関係がわからない。ソーシャルイノベーションカンパニーは、①or②or③のどれか1つを満たせばいいとすると、条件が弱すぎる。この3つのカテゴリーはロジックモデルで言うと、インプット、活動レベルのものであり、最終成果、ソーシャルイノベーションにどう繋がっているのがわからない。
  4. カテゴリーの3つもよくみるとおかしい。カテゴリー①は一般的なソーシャルビジネスの定義。ソーシャルイノベーションカンパンー=ソーシャルビジネスをおこなっている企業ではないだろう。このことからすると、この①はソーシャルイノベーションカンパニーの条件とするのは間違い
  5. 調査の骨格の作り方に失敗 今回の調査は、ソーシャルイノベーションカンパニーの定義が曖昧なままにアンケートをスタートし、その結果、何をインサイトとして発見しようとしているのかが見えなくなってしまった。ソーシャルイノベーションカンパニーはどういう条件なのか、判断基準を示すことができていない。当然、読者にも伝わらない。
  6.  最後の「ソ—シャルイノベーションカンパニーの普及に向けた課題と今後の展望」は、内容のレベルが低すぎる。これでは大学生のレポートだ。ここが一番重要な箇所でしょう。
  7. 本来は、ソーシャルイノベーションカンパニーの客観的な評価基準を世の中に提示しようとしたのだが、ソーシャルインパクト・リサーチ社との条件が折り合わず、残念ながら今回は失敗に終わった。個別レポートの量を多くすることで、何とか取り繕う繕おうとしているのだが、その点が読者からすると見え見えで、内容が希薄化して読む気を失わせる。 つまり、報告書が読み手からすると、コストパフォーマンスが非常に低い報告書となっている。
教訓:内容を熟考した上でアンケートを作り出しましょう。とりあえず、アンケートを出すと、その後の修復は難しい。戦略の間違いは戦術では挽回することはできない。

2012年12月5日水曜日

ソーシャルインパクトボンドの可能性?


 明治大学、公社研の塚本先生の英国視察報告会に参加した。特にソーシャルインパクトボンド(SIB)を重点とした視察報告。

 ソーシャルインパクトボンド(SIB)は英国で20103月に発行された、社会貢献と投資家のリターンの両立を目指す新しい形の金融商品である。最初のSIBはピーターボロウ刑務所の出所者の再犯率の低下に適用された。しかし、SIB発行はこれまでのところこの1件にとどまっている。

ポイントしては以下の4点。

   果たしてSIBは英国においてうまく機能しているのか? 

 うまくいっているかどうかの基準は、利払い、元本返済がきちんとなされているのか? 本当に再犯率の低下につながっているのか? トータルの政府コストの削減につながっているのか? 

②今後、英国ではSIBはどのくらいの普及が見込まれるのか?
 インパクトインベストメントは盛り上がってきているが、SIBはその一部でしかない。今後、SIBはどういう分野に適用され、ソーシャルインパクトインベストメントの中でどのくらいの位置づけを占める可能性があるのか? 

③また、日本にSIBを持ち込むことは可能なのか? 法制上の問題はないのか?

 社会課題の解決には長い時間が必要である。対して、日本の財政予算は単年度主義である。社会課題の解決を目指すSIBは長期になる。この点が、SIBを日本で持ち込む場合のネックにならないか?

SIBが普及しない理由としてリスクの高さを挙げられていたが本当か?

 SIBが普及しない、広まらない理由して原本が0になる可能性、そのリスクの高さを挙げる意見もあった。しかし、全ての債券は0になるリスクはあるし、リスクリターンを変える方法はいくらでもある。英国のSIBはハイリスクハイリターン型であったが、ニューヨーク市のSIBはグルームバーグ財団が保証に入ることでリスクが抑えられている。

 むしろ、リスクリターン、もしくはこれまでの経済的リターンではない社会的リターンを組み合わせることで、投資家を引きつける商品になりうるかどうかが焦点だろう。