2011年11月19日土曜日

ROEからSROIへ 求められる新しい社会の評価軸



ブータンの国王夫妻の訪日は新鮮な感動を日本人によびおこしました。
今回、初めて、ブータンが採用している指標、国民総幸福度(GNH)を知った方も多かったと思います。

 我々は、現在の資本主義の危機に対して、どのような新しいメガネ、尺度をもつべきなのか?新しいメガネをかけると、世界は全く違ってみえてくる。

 私が考える新しいメガネは、SROIという社会的な投資収益率という指標です。もともとはソーシャルビジネスのリターンは経済的価値だけではないだろうということで、社会、様々なステークホルダーに対する便益を金銭換算して加えたものです。欠点もありますが、今のROIよりはbetterと思います。

これまでのパラダイム→これからのパラダイム
優先順位:株主→ステークホルダー
目標:時価総額→ソーシャルキャピタル
尺度:ROE(株主資本利益率)→SROI(社会的投資収益率)
価値創出の基盤:会社→地域、関心コミュニティのつながり
メカニズム:所有権インセンティブ→情報シェアリング
企業のありかた:競争→共創(コラボレーション)
価値フォーカス:価値の分配→価値の共創
目指す方向:成長性→持続性



いかがでしょうか?

2011年11月18日金曜日

日本型ソーシャルキャピタルのメルトダウン

2000年前半は、企業のもつ資産として、見えざる資産、知的資本が浴び、日本企業の中でも知的資本経営を標榜する会社が相次いだ。国際的にも、この分野の研究で伊丹、野中など世界をリードする経営論も生まれてきた。しかしながら、現在このパラダイムは急速に変化しているのではないかと思われる。

 私がみるに、知的資本の価値よりも、人とのつながり、ソーシャルグラフ、ソーシャルキャピタルの価値が重要性が増している。

何かを知っていることの価値よりも、誰かを知っていることの価値、誰かとつながっていることの価値が高くなっているのだ。これは、人材にも、そして企業にも当てはまる。

もろん、知的資本を生み出す担い手は人材である。その人材が質の高い知的資本を生み出せるかどうかは、どのような知的な交流ネットワークに属しているか、コミュニケーションのパターンによって決まってくる。いいソーシャルグラフを持つかどうかが重要なのだ。

 企業とは何か? 契約論で著名な経済学者オリバーハートは、企業とは「契約の束の中心」と定義した。私が再定義するとすれば、ソーシャルグラフの中心、フォーカスこそが企業の再定義にほかならない。そのソーシャルグラフとその関係性によって生み出される知的資本の質が決まってくる、強いては行動が決まってくるからだ。

質の高いいいソーシャルグラフをもつことが企業にとっても、人にとってもクリティカルになりつつある。

 実は、ここに日本企業の構造的な大きな落とし穴があるように思われる。
ソーシャルキャピタルには2種類ある。結束型SCと橋渡し型SCがあるが、日本企業は従業員間の結束型SCを中心に展開してきた。プラス面では、あうんの呼吸、暗黙知を生み出すことに長けていることである。マイナス面は、ソーシャルグラフの重複が多く、同種の情報の接触率が高く、新しいイノベーションが起こりにくい、組織の常識が外の常識とずれるケースが往々に起こることである。

 最近、大王製紙、オリンパスなど、日本企業の相次ぐ不祥事が続く。日本企業の構造的なガバナンスの不備と片付けることもできるだろうが、別の見方では、これまで日本が培ってきた結束型SC構造、ソーシャルキャピタルのパターンが時代にそぐわなってきたという見方もできる。つまり「日本型ソーシャルキャピタルの腐食、メルトダウン」が起こっているように思う。

2011年11月17日木曜日

ソーシャル時代の企業評価尺度?

企業は経済的価値を追求するだけでいい、と思っている人はとんどん少なくなっているのではないだろうか?

今後、企業は経済的価値とともに社会的な価値を両立しなければならないと考える人が増えてきている。

これまでの企業の評価尺度は時価総額。ただし、時価総額が増えて得をするのは株主だけだ。つまり、企業は株主のためのものだった。
社会的な価値を加える場合、様々なステークホルダーを考慮し、ステークホルダーへの価値を加えていかなければならない。

1つの考え方は、株主の時価総額に対して、ステークホルダー全体のソーシャルキャピタルという対比をすることができる。

次に問題になるのは社会的な価値をどのように測定、評価するのかということだ。

REDFが開発したSROI(社会的投資収益率)という尺度はあるが、複雑で使いにくいので、ソーシャルインパクト指数という新しい評価尺度を開発した。

SROIは社会へ便益を分子に、分母に投資金額を表す指標であり、1つの効率性指標だ。ソーシャルインパクト指数はこの効率化指標を簡略化するとともに、効果性、将来のポテンシャル評価、スピード、実現性などを加味してある。ソーシャルビジネスの評価のために開発したが、実は、企業の社会的価値の測定、評価に使える。

社会的価値を高めることで企業は何が得をするのか?
社会的価値を高めることで、ソーシャルキャピタルが高まる。そして、ソーシャルキャピタルが高まると、経済的価値を高めることができる。このロジックを作ることが大切だ。特に、ソーシャル時代には、共感と信頼が媒介変数となるので、ソーシャルキャピタルの機能性、投資回収率は高まると予想される。

モデルは、
経済的価値+社会的価値→ソーシャルキャピタル→共感、信頼→ソーシャルグラフ+インタレストグラフ→影響力→経済価値・・・

ソーシャルキャピタル、共感は経済価値だけで作り出すのは難しいことをはっきりと認識することだ。

東電のケースで考えてみれば、
東京電力の価値=経済的価値+社会的価値
経済価値は+であっても、様々なステークホルダーの社会的な価値を考慮すると、実は全体の東電価値がマイナスであったことが判明した。企業はマイナスの外部性を組織内に取り込むように、企業の境界を線引きしなければならない。

2011年11月16日水曜日

ソーシャルメディア時代の共感を定義する!?



ソーシャルメディアのコンサルタントは、これからは生活者に共感される企業、愛されるブランドになる必要があると説いている。多くのコンサルタントがソーシャルメディアは共感、共感と言うが、それが明確に定義されることはこれまでなかった。

では具体的に共感とは何なのか? この部分が明確に定義されないと、提言は絵に描いた餅だ。

私はコミュニケーション理論を緩用して、以下のように共感を定義したいと思う(おそらく、日本でも初めて?)

コミュニケーション理論では、情報の伝達をコンテクスト(文脈)とコンテンツ(内容)にわける。

この2つを用いることによって、共感を定義してみたい。

コンテクスト(文脈)を便宜的に、ローコンテクストとハイコンテクストにわける。よく日本はハイコンテクスト、米国はローコンテクストと言われる。

その上に流れるコンテンツを、送り手が発信した意図と、実際に受け手が解釈した結果にわける、つまり、その差は情報伝達の効率性、逆の部分は情報伝達のロスを意味する。

共感が生み出されるのは、ハイコンテスト+情報伝達の効率性の高さ(逆に、情報伝達のロスの少なさ)と定義されるのだ。

このように分解されると、
ソーシャルメディアで共感を生むには、
高いコンテクストを共有すること、情報伝達のロスを低めることが必要だとわかる!

ゆえに、ソーシャルメディアマーケティングはいかに情報の受け手と高いコンテクスト(エンゲージメント)を作り出すか、そのマーケティングが重要となる。

2011年11月15日火曜日

ソーシャルビジネスの評価

SROIは1990年代後半に米国REFによって開発された、ソーシャルビジネスの社会的価値を定量的に測定する評価手法である。当初は注目を浴びたが、その後は、それほど広く普及してはいない。

 その理由はこの手法にはいくつかの欠点があること。特に、そのプロセスが複雑で、アウトプカムの金銭価値の換算が難しいこと、手間がかかることなどがその理由である。しかしながら、ソーシャルビジネスの社会的価値を算出できること、価値ベースの評価手法であること、数値化による客観性・比較可能性など大きなメリットも有する。

 そこで、(株)ソーシャルインパクト・リサーチは従来型SROIの欠点は補い、より簡便に、より効果的に、ソーシャルビジネスの社会的価値を算出する新たな社会的価値の評価指標「ソーシャルインパクト指数© (Social Impact Indicator©, SII)©」を考案した。

 このソーシャルインパクト指数©は、5つの指標《①社会的課題の深刻さ、②投資対効果(修正SROI)、③地域・産業への波及効果、④スピード、⑤経営基盤・持続性》から構成されている。 これは、日本版SROIと位置づけることができる。

 内閣府地域社会的企業創出事業で助成対象の30社に関して、ソーシャルインパクト指数©を用いた、ソーシャルインパクト分析をおこなった。

その結果、わかったことは、

・ソーシャルビジネスによって、SROIには大きな幅があること、
・SROIとSII©にはかなりの差が生じていた。つまり、従来SROIだけでは十分に社会的価値の大きさを計ることができないことを示唆している。

・また、投資対効果と波及効果を比較すると、この2つのファクターはかなりの差が生じている。これは、現時点の効率性と将来ポテンシャルは異なること、したがって、この2つを明確に区別することが正しい社会的価値の評価につながることを意味する。プロジェクトそのものとソーシャルビジネスを運営する組織の評価は異なる。後者はより波及効果やポテンシャルの価値が大きくなることがわかる。

・また、お金以外のボトルネックの存在が社会的価値に大きく影響することがわかった。つまり、この部分を正しくは把握することが重要である、

 以上を踏まえると、これまで、ソーシャルビジネスや社会的なプロジェクトの評価は、定性ベースで評価者の恣意的によって運用されてきたが、社会的価値の評価手法を、ソーシャルビジネスの中間支援団体や行政が理解し使いこなすことは、評価の客観性、明瞭性、説明責任を果たす上で、何よりも、社会的な価値を増やす上で大切なことであることがわかる。

 今後、東日本大震災もあり、財政が逼迫する中で、NPOや社会的企業へ回ってくるお金も細っていくことが予想される。お金のムダ使いを減らすという観点もそれなりには重要であるが、社会的価値を増やすという観点から、より効果的に資金が使われることが豊かな社会の実現には不可欠となる。その意味で、最終価値ベースで社会にとって価値があるプロジェクトを採択していくことの重要性が今後ますます高まることが予想される。

 今後、ソーシャルインパクト指数©を、社会的価値を組み込んだ公契約においても活用できるかどうかを研究していきたい。また、通常の営利企業においても、社会的価値を考慮した上で事業を展開すること、意思決定をおこなうことの必要性がますます高まっているので、その方面での研究も続けたい。

2011年11月14日月曜日

ソーシャルメディアって利益には結びつかない!?って本当?

NPS、究極の質問は「あなたはその製品を友人に薦めますか?」
NPSの測定の仕方は推奨者から推奨しない人の比率を引いたもの
NPSはソーシャルメディア時代にも適する指標と言われる。ザッポス等が採用。

ただし、NPSは結果にすぎない
結果は原因(プロセス)がないと生まれない
原因、プロセスを説明する理論が、サービス・プロフィット・チェーン理論
だから、NPSとサービス・プロフィット・チェーンはある意味では一体のもの

ただし、どちらもソーシャルメディア時代以前に開発されたので、
前提、モデル修正、チューニングが必要

そこで、ソーシャル・プロフィット・チェーンを考案した

さかのぼってみると、
口コミは顧客ロイヤリティから生まれる
顧客ロイヤリティは顧客満足から生まれる
顧客満足は顧客価値から生まれる
だから、ソーシャルメディアでいかに顧客価値を高められるかが肝となる!

チェーンは、成長と利益←口コミ←顧客ロイヤリティ←顧客満足←顧客価値
と続く


では、どこで顧客価値を高められるか?

顧客価値=(①結果+②プロセスのクオリティ)/(③売価+④カスタマーの入手コスト)

顧客価値を高められる領域は大きく4つ
それを分解していくと
 ①プロセスの質を改善、②いいソーシャルグラフをもつ、③ターゲットされた広告、④顧客とのインタラクション、顧客同士のインタラクション、⑤顧客ニーズの把握、⑥双方向のCSサポート・・・・

サービス・プロフィット・チェーンに
9つの命題で補強して、ソーシャル・プロフィット・チェーンが完成!

上記の問いの私の回答
:利益に結びつくソーシャル・プロフィット・チェーンが見えていないから

2011年11月13日日曜日

ソーシャル化時代の究極の質問を1問考えるとすると



フレドリック・ライクヘルドが考案したNPS、「そのブランドをあなたの同僚や友人に進める可能性はありますか」は究極の質問と言われている。ただ、1つの質問を調べることで、そのブランドの状態を判断することができるからだ。

 実際には日本では米国と比較するといい結果が出ないことから、これまでは日本ではあまり使われてこなかった。

 私が、ソーシャル化時代に究極の質問を1つ考えるとすれば、
「あなたの企業はいいソーシャルグラフを持っていますか?」ということになる、と思う。

いいソーシャルグラフを定義するとすれば、

①その企業のソーシャルグラフは顧客、および潜在顧客ターゲットにつながっていること

②ソーシャルグラフ上のエンゲージメントが高く企業とのインタラクションが活発であること

③ソーシャルグラフの顧客同士のインタラクションが活発であり、コミュニティが形成されていること

④企業のソーシャルグラフ上のインタラクションを通じて、新規顧客の流入が生まれること

④そのソーシャルグラフから企業イノベーションに有益な意見や情報が得られること

が挙げられる。

つまり、企業がいいソーシャルグラフをもつことによって、企業が顧客により大きな価値を提供しやすくなるのである。そして、その結果は企業と顧客が両方とも得をすることにつながる。

 顧客価値を定義する方法としては、(結果+サービスプロセスのクオリティ)/(売価+サービス入手のコスト)がある。

 企業と顧客インタラクション、顧客同士のインタラクションにより、顧客が求める結果、およびサービスプロセスのクオリティを高めることが可能となる。顧客ニーズを正しく把握することが可能になること、また、顧客とのインタラクションも価値を提供するからだ。

 また、やみくもなマスメディアへの広告宣伝コストが必要なくなり、サービス入手のコストを低下させることができる。顧客にとっては必要な情報や製品に出会いやすくなることを意味する。

以上よりわかることは、単に、Facebookのファン数を増やすことが必ずしもいいソーシャルグラフを意味していない。

「ソーシャル・プロフィット・チェーン」モデル

キーワード:ソーシャルメディア,サービス・プロフィット・チェーン,顧客価値


ヘスケットは成功したサービス企業の分析をもとに「サービス・プロフィット・チェーン」モデルを提唱した。この考え方は、従業員の満足と顧客の満足は高い相関があること、顧客の満足は顧客のロイヤリティと高い相関があること、そして、顧客ロイヤリティは企業の成長性と収益性に密接に結びついていることを示している。あたかもチェーンのように、従業員の満足が最終的に企業の収益性と成長性に結びつくロジックを提供している。

図表●
 このモデルは、サービス業をもとに開発されたが、経済のサービス化の進展により、有効性はさらに高まっているのではないかと推測される。

 ただし、サービス・プロフィット・チェーン」モデルはソーシャルメディア以前に提唱されたものであり、ソーシャルメディアによる影響、およびそのポテンシャルをモデルにとりこんだものではない。

 したがって、私はこのモデルの再構築をおこない、新たに9つの命題を加えて、ソーシャルメディア時代の影響力、ポテポテンシャルを取り込む新たなモデル開発をおこない、この新しいモデルを「ソーシャル・プロフィット・チェーン」モデルと命名した。

 「ソーシャル・プロフィット・チェーン」モデルの特徴は、①ソーシャルメディアの影響、ポテンシャルをモデルに取り込んでいること、②ソーシャルメディアが顧客価値に対して与える要素、影響関係を明示していること、③ソーシャルメディアが従来のモデル要素に与える影響とともに、新たな要素とその影響関係を取り込んでいること、などに特徴である。

 「ソーシャル・プロフィット・チェーン」モデルは、企業がソーシャルメディアを有効に活用するための鳥瞰図、全体像を与えるとともに、顧客価値を高めるという観点からソーシャルメディアの影響を再考することが有効であることが示さている。