2012年11月24日土曜日

ソーシャルイノベーションに関する4つの質問

私はソーシャルイノベーションに関して、以下の4つの観点が重要であると考えている。

①ソーシャルイノベーションとは何か? どう定義されるのか? イノベーションとソーシャルイノベーションはどう違うのか? ソーシャルとは何なのか?

②ソーシャルイノベーション力の源泉は何か? これまでの企業戦略論のリソースベースビュー、BRIO分析では何が説明でき、何が説明できないのか?

 ③ソーシャルイノベーションをどうやって測定すべきなのか? 例えば、日本でソーシャルイノベーションが高い企業はどこだろうか?

④そもそも、ソーシャルイノベーションは経営管理できるものなのか? どこまで狙っておこなうことができるものなのか?

 私は上記の質問に自分なりの解答をもっているが、世の中のレポートや論文をみても十分に私の質問に答えることができているものはないように思える。皆さんも、上記の難問に挑戦されてみてはいかがでしょうか?

国土強靭化計画のウソを見破る



 自民党が推進する「国土強靭化計画」の賛否が議論されている。民主党は「コンクリートから人へ」のスローガンのもとに公共投資を大幅に削減した。これに対して、自民党は必要な公共事業はやるべきだ、しかももっと強烈に。それが国土強靭化に寄与するのだと主張している。

この主張が正しいかどうかはどう判断されるだろうか?

 まずは、通常の費用対便益を考える。Bを金銭的な経済便益、Cはコスト、投資とする、B/Cでは、例えば、国土強靭化のための道路建設は大幅に1を下回るだろう。

ただし、これは必ずしも正しくはない。分子に、金銭換算できない「社会的な便益S」も加えるべきだ。

正しくは、(B+S)/C1を上回るかどうかで、公共事業の投資を判断すべきである。

このSには、
  • 道路が避難路につながる効果
  • 地域分散化によるしなやかな国土形成
  • 国民が感じる安心の価値
なども含まれる。

これまでのところ、この社会的便益は国民に十分に伝わっていないし、評価もされていないように思う。

国土強靭化計画の実行により、国民にどういう社会的便益が生じるのか? それは地域によって一律なのか? その社会的便益は金銭的にはどれくらいの価値があるものなのか? これが明快に説明できて初めて、この国土強靭化計画は初めて正当化されるだろう。

これには、ソーシャルインパクト指数が役立つだろう。
  • 上記の、誰にどれくらいの社会的便益が生じるのかを定量化するとともに、
  • そもそも、この問題がどれだけ社会的な課題なのか?
  • どれくらい迅速にその社会的課題の解決に役立つのか?
  • 波及効果はどれくらいあるのか?
  • この計画の実行基盤は十分なのか?
を定量評価することが有益だろう。

2012年11月21日水曜日

マニフェストと政策インパクトとの根本的な違い


マニフェストでは国民の幸せを担保できない。

民主党のマニフェストの結果評価が始まっているが、あまり意味はないし、時間のムダだ。。マニフェストは政策効果測定には向かないからである。

そもそも、マニフェストはこういうことをやりますよ、という事前の『やりますリスト』である。選挙前にやると約束した項目のうち、いくつやったとかを示しても、それはその政策が国民に与えた効果ではない。

ここにマニフェストと政策インパクトの大きな違いがある。

政策インパクトは、ある政策が国民を豊かに幸せにするという最終目標にどれだけ寄与したかを示すものである。

今、必要なことは、マニフェストの採点にムダに時間を使うことではなく(民主党が採点をすれば及第点にあり、国民が採点すれば落第点になるだろう)、政策インパクトをもとに、本当に国民の幸せに寄与する政策をロジカルに作りあげることである。この点で、政策ソーシャルインパクト分析が役立つだろう。


2012年11月20日火曜日

ナチュラルアートの社会的価値


ナチュラルアートの鈴木社長からお話を伺った。鈴木社長ご自身では敢えてソーシャルとか、ソーシャルアントレウレーナーということを言う必要はなく、そもそも企業はソーシャルでなければ生き残れないというご認識である。

ナチュラルアートのソーシャル性について、どう判断すべきかを考えてみたい。


儲けとミッションのバランス
 まず、当社は儲けることよりも、ミッションを重んじている。これは、ソーシャルであるための一番の条件と言えるかもしれない。

組織形態、資本構成
 普通の株式会社形態。出資者が多く、資本金も5億円を超える。出資者は金銭的リターンよりも、当社がおこなっていることの社会的意義、つまり社会的リターンを目的に投資しているという。この社会的リターンで投資する株主をみつけられたことで当社の創業からの事業が支えられている。ハイブリッド化が進んできており、組織形態が必ずしもソーシャル性を示さなくなってきている。

事業内容
 農家という経済的、社会的には苦境にさらされているセクターを応援し、寄り添うというスタンスをとっている。自社を仕入れ団体と位置づけている。極力、農家からの仕入れでは値切りをしないでいかに農家を楽にしつつも、消費者の満足をたかめることで売上、収益を伸ばすことができるかを追求する。

自社の収益性
 当社は売上で100億円を超えるそうだが、あまり儲かっていない(儲けていない)という。当社が儲けすぎることは農家からの仕入れを値切る必要であるが、当社はそれを望んでいない。

ステークホルダー間の利害調整
 ステークホルダーには、農家、消費者、農協、スーパー等の小売りがある。農家を支援するというスタンスが強く、スーパーとはやや対立的な関係にあるようだ。生活者の安心安全、新鮮なものを求めるニーズに答えつつ、農家もある程度もうけられるということを軸にしており、当社はその間にたつ存在となっており、オイシックスやらでいっしゅぼーやとは一線を画するモデルとなっている。

マイケル・ポーターの共有価値(経済的価値と社会的価値)
 この枠組みで捉えると、経済的価値をあまり生み出していないが社会的価値は大きいとという評価ができる。値切りをしないでいかに農家を楽にしつつも、消費者の満足をたかめることで売上、収益を伸ばすことができるか? さらに、社会的な価値を経済的価値に転換するモデルに昇華できるかが最大のポイント。そのためにはうまく環境を活かす必要がある。今後、食の安全、安心と、TPP等でグローバル化が求められている中で、当社が農業バリューチェーンの中でさらに重要な位置づけを占められるかどうか? 還元すると、農家、農作物の価値をさらに高めることができるか? この点は、農家と消費者の間に一しているので、物流と情報化という「つなぐ役割」をうまく機能させられるかにかかるだろう。バちゅーチェーン全体の生産性が重要であり、Collective Impactの視点を取り入れることができるだろう。

2012年11月19日月曜日

世界を変える偉大なNPO6条件の再構築


 
  世界を変える偉大なNPOの条件の著者の講演会に参加した。

 このリサーチの問題点は偉大なNPOを選択する基準が一般人へのアンケート等も含まれ、必ずしも正しくない点である。非営利企業の偉大さは、営利企業の財務的数値のようなもので測ることはできない。ソーシャルセクターの偉大さの基準は社会への影響力の大きさ、ソーシャルインパクトであるべきである。ただし、世の中にソーシャルインパクトの測定法は確立されてものはない。この点に、著者も大変苦労したようだ。(SIR社の開発したソーシャルインパクト指数でこの問題は解決できる。)

また、6つの条件は以下のように鳥瞰的に整理することができる。


 縦軸を企業の内への働きかけと外への働きかけ、横軸をパワーの大きさ(小さい〜大きい)の2軸で分類すると図表になる。つまり、外への働きかける力が増えるとその組織のパワーも増すという関係性が見いだされる。


企業との比較の視点
 企業戦略の世界では、リソースベースビューで企業が競争優位を獲得するにはコンピタンス、ケイパビリティ、資産が重要であるという考え方が支配的になった。6条件にはこのリソースにあたるものが少ない。

 私は、NPOももっとこのリソースという面に注目すべきではないかと思う。例えば、共感力、オープンな組織文化、つながる力、自分たちの活動の意義を広げる力などの無形資産の価値はNPOにとっても非常に重要ではないかと考える。仮に、組織特有の資産がそれほど重要でないという考え方をとると、ある意味では誰でもそのような偉大なNPOをつくることができるという話になってしまうからだ。以上の点を考慮して修正したものが下図になる。




2012年11月18日日曜日

世界を変える偉大なNPOの条件を再考する



 偉大なNPOの条件、偉大とはソーシャルセクターにおいて、社会的なインパクトが大きいということを意味する。

以下の式に分解することができる。社会的なインパクトを代理する社会的投資効果の比率は、

Aアウトカム/Bインプット←Cコンピタンス
を示すことができる。

世界を変える偉大なNPO6条件は以下の通り。
   政策アドボカシーとサービスを提供
   市場の力を利用
   熱烈な支持者を育てる
   NPOのネットワークを育てる
   環境に適用する技術を身につける
   権限を分担する

整理すると、
Aアウトカムを高める(①、②)
Bインプット(③、④、⑥)
Cコンピタンス(⑤)

と整理できる。
企業社会ではリソースベーストビューが支配的になり、リソース、コンピタンスが重要となっているが、以上の6条件にはそれが少ないのが象徴的であり、疑問を感じないでもない。

マイケルポーターのCSVと渋沢栄一の思想


  日本でも、マイケルポーターのCSV経営が注目されてきている。ポーターは、企業の目的を、共有価値、経済的利益と社会的便益の両方を高めることと再定義すべきと主張している。

 原丈人さんが唱える公益資本主義も、基本的には同じ思想である。株主利益追求の弊害をとなえ、より公益的な資本主義を実現させる方法を提案している。

 実は、同じような思想は、日本でも渋沢栄一がずっと前に唱えている。ドラッカーも渋沢栄一の思想を非常に評価していた。

以下引用
「国を豊かにするための基本はなにか。それは、いつくしみの心と道徳、正しい方法で得た財産である。そのため、論語と算盤という、一見かけ離れているように見えるふたつを一致させるのが、今日の急務だと私は考えている。」

「道徳と商才には何の関係もないように思えるが、商才もまた道徳を根底としている才能である。それは、嘘や不道徳、不誠実、他人をだまして得た商いは長続きしないのをみても明らかである。」

「時代が進むにつれ、実業界においても生存競争が激しくなるのは自然の結果である。だが、実業家がこのときもし私利私欲の考えに走ったら、社会はますます不健全になり、危険思想が徐々に萬延していくに違いない。社会のためこの状況を矯正しようとするなら、仁義道徳を大切にしながら金儲けを進めていくという方針を採り、人の道とお金儲けをあわせてひとつのことであるという考えを打立てなければならない。」

また、周時代の、文王、武王、孔子を比較して、人を評価する基準について考察している。孔子は小国も手に入れられなかったので、文王や武王より劣っているかと問いかけている。

この問いに関しては、「人を評価する場合には、何をやっているのか、その動機を観察し、そしてその結果が世の中や人々の心にどのような影響を与えたかまでみないと人の判断はできない」と唱えている。

これはまさに、ソーシャルインパクトを意味しています!

ソーシャルインパクト・リサーチの本当の創設者は渋沢栄一さんであることを認めます(笑) 。ソーシャルインパクト指数は当社の登録商標でありますが。

世界を変える偉大なNPOの条件


 「世界を変える偉大なNPOの条件、FORCES FOR GOODという、ソーシャルセクターにいる人間にとっては非常に有名な本がある。その筆者が来日セミナーをおこなうので、それに参加予定。

筆者は、偉大なNPOの条件として6つ挙げている。
   政策アドボカシーとサービスを提供する
   市場の力を利用する
   熱烈な支持者を育てる
   NPOのネットワークを育てる
   環境に適用する技術を身につける
   権限を分担する

 方法論としては、偉大なNPOを抽出して、演繹的にその特徴を挙げるというスタイルである。 

 つまり、これはストーリーである。ストーリーだから役に立たないというわけではない。むしろ、ストーリーだからこそ役立つ点が多いとも言えるが、実は注意が必要である。

 エクセレントカンパニーでもそうだったが、抽出したNPOは、その次点で、偉大な、偉大そうにみえるというものなので、20年経つと、エクセレントカンパニーで挙げた企業はどこも業績が悪化していたということにもなりかねない。

 また、本質的なトートロジーを有する。最初に偉大そうにみえるNPOをある条件で抽出し、最後に、その特徴を抽出するというところに本質的には矛盾があることを多くの人は気づくことはあるまい。
 
唯一言える真理は一つ。
大きな社会的なインパクトを与えるNPO、与え続けるNPOは長期的に存続する可能性が高いということだ。どうやってそれを実現するかは、そのNPOが取り組むテーマ、時代背景、文化的文脈によってケースバイケースと言えるだろう。

政策の定量評価


いよいよ、選挙が始まります。

 本来、選挙=有権者が望む政策を実行する政治家、政党を選ぶものだが、、、これまでのところは、選挙前に約束した公約、マニフェストは実行されず、選挙前の期待が大きいほど失望も大きいという残念な結果に終わっている。

 今回の選挙はどうか? 政党の数は乱立、政治家の鞍替え、政党間の合従連衡もあり、有権者が賢い選択をするのはさらに難しい状況。

 本当に実行すべき政策とは、多くの国民が切実にその解決を望むもの、つまり、国民に幅広く影響を与える影響の広さ×問題の深刻さ+政策の実行効果が高いと見込まれるもの、と考えます。

国民が強く望む問題、テーマ×政策効果が高い政策を実行→より国民が望む日本の実現へという道が開かれる。

 これまで、日本では政策が社会に与えるインパクトを曖昧なまま、なし崩しになることが多かった。この結果、賢い選択をすることができない。つまり、この政策評価のフレームワーク、とくに定量評価がまだまだ日本では遅れているという問題があるのだ。

ソーシャルインパクト指数の5つの要素を考えることで、政策効果の定量評価が可能となる。
①社会的課題の深刻さ
②社会的投資対効果
③波及効果
④スピード
⑤政策実行基盤

以上により、5つの軸を設定し、政策を定量評価することが可能となる。