2011年10月15日土曜日

ソーシャル時代の新しい消費者購買モデル(CETAモデル)提唱



ソーシャルメディア時代の消費者の購買決定モデルとしてCETAモデル(セータモデル)を提唱したい。このモデルは4段階のステップに分けられる。

①C(Context)コンテクスト作り→②E(Engagement)エンゲージメントを深める→③T(Trust)信頼→④A(Action)購買などのアクション

ソーシャル時代の特徴としては、コンテンツ(情報)よりもコンテクスト(文脈)の重要性が高まってきたことが挙げられる。

モノやサービスを購入する上でも、自分が知りたい情報を入手する上でも、ソーシャルグラフという人間関係のコンテクストの重要性が高まった。

コンテクストを伴わない情報は結局のところ影響力が低いものとなる。その最たる例が検索である。検索は自分が知りたいことや買いたいモノとページランク(閲覧数ランクおよびリンク数から計算したグーグルが判断するサイトの有用性)を結びつけるが、それは往々にして自分にとっての有用性とは一致しない。

機械のアルゴリズムに代わり、ソーシャルグラフという人間関係のコンテクストが、一般的な情報と自分が求める有用な情報を選別するフィルターになってきているのだ。また、情報(コンテンツ)が影響力を持つかは、その前にどういうコンテクストにあるかによって大きく異なる。

CATAモデルとSIPSモデルと対比して、その有用性を考えてみたい

SIPSモデルは共感が第1ステップに入っているが、共感の前にはその共感が流れるコンテクストが必要になる。CETAモデルはその点を明示的に示した。この部分は消費者の購買決定モデルの中で最も重要な部分であり、省くことはできないのだ。また、企業にとっても生活者とのコンテクストをどう作るかこそが、ソーシャルメディアのマーケティングの重要な課題となる。

第2ステップはエンゲージメントの段階である。コンテクストは弱いコンテクストから強いコンテクストまで幅がある。第2ステップでは、エンゲージメントのステップを入れて、コンテクストを深めるプロセスを取り入れた。強いコンテクストと弱いコンテクストでは購買確率に大きな差が生じるからである。企業はこのエンゲージメントをどう深めるかが非常に重要なステップとなるのだ。

第3に、エンゲージメントが深まると、企業と生活者はトラストの段階に至る。そして第4に、トラストから購買段階への移行がある。

以上のステップは階段型であり、ステップを飛ばすことはできない。それぞれがアクション、購買に至るまでの道のり、購買の確率の違いを示すと捉えると理解しやすいだろう。

モデルの有用性は、その現実、現象の説明力と、現実の応用可能性から判断されるべきだろう。

2011年10月14日金曜日

ソーシャル化で消費者の購買決定モデルはどう変わったのか?

マーケティング前提条件の変化
消費者の購買決定モデルの変化



これまで、消費者の購買意思決定モデルとして、様々なモデルが提案され、利用されてきた。

古くは、AIDAMAモデルがある。消費者は、その製品の存在を知り(ATTENTION)、興味をもち(INTEREST)、欲しいと思うようになり(DESIRE)、動機を求め(MOTIVE)、最終的に購買行動に至る(ACTION)という購買決定プロセスを経る、というものだ。

 次に、インターネット時代に入り、ヤフーやグーグルなどの検索が重要な位置づけになったことから、AISASモデルが生まれた。消費者の購買にまつわるプロセスを「注意」「興味」「検索」「購買」「情報共有」のプロセスから成り立つとする理論である。
「AISAS」とは消費者の各行動が英語の頭文字で表されており、それぞれ次のような段階を意味している。
「ATTENTION」(注意が喚起され)
「INTEREST」(興味が生まれ)
「SEARCH」(検索し)
「ACTION」(購買し)
「SHARE」(情報を共有する)

現在、ソーシャルメディア時代に入り、電通から新たな消費者の購買モデルSIPSモデルが提案されている。
S(SYMPATHIZE : 共感する)  
I(IDENTIFY : 確認する)
P(PARTICIPATE : 参加する)
S(SHARE & SPREAD : 共有・拡散する)

このSIPSモデルの特徴は
1.共感を消費者の購買の起点としている
2.検索というプロセスがなくなったこと
3.購買を含めた行動を広く参加というプロセスにまとめてある
という3点に特徴がある。

このSIPSモデルの実務的な有用性はまた別途論じるとしても、

ソーシャルメディアの普及によって購買決定プロセスが変わりつつあるのは確かだ。しかしながら、何が根本的に変わったのかという点に関しては十分に理解されておらず、購買決定モデルは本質をついていない。

 これまでの消費者の購買決定モデルは、個人の意思決定モデルとして発展してきた。しかし、ソーシャル化の時代に入り、個人の意思決定が、集団の集合知を含めた「社会的な影響」を受けるようになってきているという点が一番大きく変わった点である。

社会的な影響とは他人とソーシャルグラフというコンテクストを共有したことによる影響である。

 極端なことを言えば、消費者個人の購買決定モデルは消滅した。より正確に言えば、個人の購買決定モデルがソーシャルライズ化され、個人の意思決定だったものが社会的な合意形成プロセスに組み込まれたのである。

この点を踏まえて、私は、ソーシャル化時代の新たな消費者の購買決定モデル「ソーシャライズモデル」を提案していきたい。

2011年10月13日木曜日

マーケティングに求められる新たなケイパビリティ(資源、能力)



 企業のマーケティングの主戦場が、マスメディアからソーシャルメディアに移るにつれて、企業に求められるマーケティグのケイパビリティ(資源、能力)にも大きな変化が生まれつつある。

 マスメディアのマーケティングにおいては、資金力、媒体を押さえるネットワーク、資金および人的資源を有効に配分する調整力などが重要であった。

 しかしながら、ソーシャルメディアのマーケティングにおいてはそのようなケイパビリティはもはや必要ではない。

 ソーシャルメディアマーケティングの「7つのステップ」で示したように、魅力的なコンテンツを定期的に発信して、顧客、および顧客間にインタラクションを生み出し、エンゲージメントを高めていくことが基本である。

 そのためのケイパビリティはあたかも雑誌の編集者のようなものである。魅力的なコンテンツを見つけ出したり、自ら作り出したり、それを編集して、発信して、読者の興味を引き、口コミを増やすという流れだ。

 ソーシャルメディア時代は全ての企業がメディアカンパニーの側面を持つようになり、編集者のような振る舞いが求められている。このケイパビリティを自社で養成するのか、外部からの人材を採用して保有することが企業にとっては喫緊の課題になっている。

米国においては、ソーシャルメディアが普及すると、まずコミュニティマネジャーという役職が生まれた。現在、新たなCEOが必要だと言われている。CEOとはChief editorial managerであり、会社が発信するコンテンツを編集するのを統括する人のことだ。これも、ソーシャルメディィア時代に企業がメディアカンパニーとしての側面を持ち始めたことを示唆している。

 現状、日本の企業のソーシャルメディア担当をIT担当者に兼任させているケースが多いが、IT担当者が編集者のような素養、能力をもつケースはそれほど多くはなく、このことも日本企業のソーシャルメディアマーケティングがうまく機能していない一つの要因になっていると推察される。

新たな葡萄酒には新たな革袋が求められるのである。

2011年10月12日水曜日

ソーシャルメディアマーケティングをコストではなく投資とみるべき3つの根拠

マーケティング前提条件の変化
マーケティング費用はコストではなく投資である

 これまでマーケティングに関わる費用はコストとして捉えられることが多かった。売上高に対する比率で予算が決められ、売上高との対比によって事後的に管理される。つまり、これまでのマーケティングの前提はマーケティングの費用とその効果は年度中で完結し、対比できるという前提である。

 しかしながら、ソーシャルメディア時代になり、マーケティング費用をコストと捉えるよりも投資として捉える方がしっくりくるようになっている。いや、それどころか、ソーシャルメディアのマーケティングは投資として見なければまともな意思決定ができなくなっているのだ。

ソーシャルメディアマーケティングに関わる費用はコストよりも投資である。
その理由は3点が挙げられる。

 第一に、その費用の回収は1期間よりももっと長い期間での回収が必要となる。つまり、1期間の売上対比で効果を計ることが難しくなっている。費用はすぐに発生するが、その効果は長期にわたるのである。

 第二に、どのくらいその費用を回収できるかの不確実性が高くなっている。
Facebookのファンを増やしたり、Twitterでフォロアーを増やしたとしても、そこからどれくらいの売上をあげられるかは分かりづらい。このようなソーシャルメディアの指数をどのように売上や利益などの財務的な指標に転換する「方程式」をもっているかどうかが企業に問われるのだ。また、企業によってその投資効果は大きな違いがある。同じ費用をかけたとしても、その効果は企業によって大きく異なる。

 第三に、実は投資効果は顧客がどういうエンゲージメントの段階にあるかによって大きく異なる。

 例えばソーシャルメディアのマーケティングを行い、Facebookファンになってもらったとする。しかし、ファンになってもらっただけでは売上には結びつかず、今後様々な情報やコンテンツを発信して、エンゲージメントを高めることによって、将来的に売上に結びつくかどうかが決まる。その効果は、そのキャンペーンで完結するわけではなく、今後もファンとして維持できる限り生まれる可能性がある。



 図表で示すように、エンゲージメントの段階から、信頼の段階、そしてアクションに結びつくことで、マーケティングの果実を刈り取ることができるのだ。

 エンゲージメントの段階、次に信頼の段階、そしてその次にアクションの段階である。財務的な数値は信頼からアクションに結びついたもののみが効果としてカウントされる。効果の数字に現れなくても、エンゲージメントを作る、エンゲージメントから信頼の階段を作るなど、コンテクストを深めることには実は大きな意味と将来価値があるのだ。

 この顧客の段階を見極めて、顧客が次の段階に移行できる梯子をうまくかけれるかが、実はソーシャルメディアマーケティングの本当の肝にあたる。ソーシャルメディアROIを計る場合にも、この点を理解しないと、正しくROIを計ることはできない。

以上の結果として、ソーシャルメディアのマーケティングを投資として活かせる企業と活かせない企業の差が大きく差が開くことになる。

 ソーシャルメディアのマーケティング効果を長期的に活かせない企業にとっては費用になる。ソーシャルメディアのマーケティングを費用としてしか捉えない会社は過小投資という間違いを犯す可能性が高いと言える。これに対して、その効果を長期的に活かすことができる企業にとっては投資となり、その果実を長期的に刈り取ることが可能となる。

この違いは、ソーシャルメディアに関する費用をコストと捉えるか、投資と捉えるか、そのフレームによる違いが大きく影響することを企業は理解すべきである。

コラボ消費が劇的に増える理由!?

レイチェル・ボッツマンがTedの中でコラボ消費について説明している。

通常、コラボ消費というと、消費者同士のシェアリング、消費者同士のコラボレーションのことを意味している。

私はもう少し概念を拡張して
生産者と消費者のコラボレーションも含めて考えている。

私なりのコラボ消費の定義
消費者同士、および生産者と消費者との情報交換、コミュニケーションによって、全体の消費がより効率的されたり、より楽しくなったりする。

ゲーム理論的に、生産者と消費者のモデルを考えると、
生産者は2つの選択肢がある。<協力する、協力しない>
消費者も2つの選択肢がある。<協力する、協力しない>

生産者と消費者がお互いに協力した場合に全体最適が達成できる一方で、お互いに協力しないと「囚人のジレンマ」に陥り、低い値、低い満足しか達成できない。

では、どうしたら生産者と消費者がお互いに協力し、お互いに賢い選択肢をとることができるのか?

その一つの答えが、消費者同士、及び生産者と消費者が情報のやりとり、コミュニケーションを活発化し、コラボ消費することである。

コラボ消費は楽しいだけでなく、賢い選択肢となるのだ。

今後、ますますコラボ消費が進んでいくと思う。
不況により、合理的な選択、賢い選択が促進されるとともに、何より楽しいから。

我々は消費に機能的な価値を置くとともに、経験的な価値を置く。経験的価値は他人との経験の共有によって、消費に新たな「意味」が付加されるからである。

2011年10月11日火曜日

マーケティング前提条件の変化 「顧客とは何か」の前提条件の変化



 第2に、ソーシャルメディア時代には、顧客とは何かという前提条件も大きく変化している。これまでのマーケティグでは、顧客は自社の製品サービスを購入する人を意味していた。図表で示すように、顧客を2つのセグメントで捉えていた。いかに見込み客を顧客にするかという観点からマーケティングは捉えられてきたのだ。



 しかしながら、ソーシャルメディア時代の顧客は、製品サービスを購入する人であるとともに、他の人に推奨してくれる人であり、アドバイザーであり、アイデアを一緒に生み出してくれる人であり、ネット上で影響力を及ぼしてくれる人である。

 このようにソーシャルメディア時代には顧客は単に製品サービスを購入していくれる以外にも、多彩な顔を持っているのである。また、この多彩な顔を引き出せるかどうかがソーシャルマーケティングでは極めて重要な意味を持っているのだ。

 顧客がこの多彩な顔をもつようになった背景にはソーシャルメディアの普及がある。簡単に自分の購入した製品サービスの感想をTwitterでつぶやいたり、Facebookでいいね!というボタンを押すことで自分の意見を表明できるようになっている。

 広告の信頼性は企業が発する情報が低下しつつある。自分の友達や知り合いの影響力はどんどんあがっている。したがって、顧客に自分の製品サービスのポジティブな感想や意見をソーシャルメディアで発信してもらうことは企業の広告以上に購買に影響力をもつようになりつつあるのだ。