2014年8月29日金曜日

サポートステーションのSROI分析


現在、厚労省は若者就労者のサポートステーションのSROI分析を進めています。公社研が受託して全国サポステのSROI分析をしていて、私も統括コーディネーターとして今週末に会議に出張してきます。

中間段階ですが、
SROI3.22倍と高い結果が出ているようです。つまり、費用(年間20億円)の3.2倍の65億円の便益が出ていることになります。

しかしながら、このサポステは事業仕分けでは効果がないということで仕分け対象になったのですが、いつの間にか復活してきた事業です。

SROIの計算上は非常に高いのに、どうして仕分け対象になったのでしょうか?
仕分け対象になったのに、どうして高いSROIの計算値が出たのでしょうか?

以上のような論点があり、非常に楽しみです。

インパクト評価の基本はwithとwithoutの差です。
サポートステーションがあった場合となかった場合にはどのような違いはステークホルダーに生じていたのか? サポートステーションがあった場合は現実に生じたのでデータがあります。しかしながら、なかった場合は現実にはないので、その差を計算するインパクト設計が必要になります。サポステに行った人が就労に成功したら全てがサポステの手柄になるわけではなく、サポステを使わなかった人の就労率と比較して、厳密にそのインパクトを計算する必要があります。また、サポステのどのような機能が就労支援に影響を与えているかのモデルも構築する必要があるでしょう。また、当然、地域性による違いもあるでしょうから。


2014年8月28日木曜日

ソーシャルインパクトボンドは誰のものか?


 日本でも、ソーシャルインパクトボンド(SIB)の知名度が徐々に高まっています。
これまではSIB情報はほとんど海外発でしたが、日経新聞の経済教室でも明治学院大学の原田先生がSIBを紹介されたりして、ソーシャルセクター以外の人も興味を持つようになってきています。

日本でも英国のように休眠預金を原資にして、ソーシャルインパクトボンドにお金を流そうという動きを推進しているグループもあります。ただ、 ソーシャルインパクトボンドってNPOのためだけではないよね、というのがあります。

最近、コンサル会社や大手企業もSIBに非常に興味を持つようになって、相談を受けたり、コンサルをしたりしています。

SIBをソーシャルセクターの新しい資金調達としてみるのは、狭い一面的な考えであることがわかります。

SIBの本質的機能は、これまで顕在化していなかった社会的価値や環境価値を可視化し、そこにPricingをつけることで新しいマーケットを作るという点が重要なところです。資本主義の失敗、市場の失敗をもう一度リデザインすることで資本主義的に解決する点が極めてユニークな点です。実は、これはソーシャルセクターに限らず、営利企業にとってもビジネス化が可能な部分です。

英国で2010年に始まったSIBはソーシャルセクターを対象としていますが、先ほどの本質的機能を考えると、環境エネルギー分野やIT分野、スマートコミュニティ分野、医療分野、町づくり分野にも様々な形で適用できるのではないかと考えています。また、今後のビッグデータ、オープンデータとの流れとも融合していくことも、ほぼ間違いない流れでしょう。

また、マクロ的に捉えると、高度成長期は財政赤字を拡大することがビジネスになりましたが、これからは逆に財政赤字を縮小させることが新しいビジネスになります。SIBにはこの面の、行政コストの削減も期待される面があります。

そうかといって、行政コストが削減された結果、国民や社会が不利益を被ってはSIBが国民から支持を得られることはないでしょう。単なる行政コストの削減手段という位置づけになることはSIBにとっては死を意味していると思います。

SIBの捉え方は各セクターによって異なりますが、 社会課題の解決には様々なセクターの恊働がますます必要となるのは間違いのないところで、恊働を促し、イノベーションを促進するツールとしてSIBが日本にどの程度根付くかは日本の将来にも大きな影響を与えると思うので、自分も協力していきたいと考えています。

2014年8月26日火曜日

Collective Impact 研究会


今日は、Collective Impactの研究会をやります。ソーシャルインパクトのコンサル会社であるFSGが打ち出したコンセプトです。FSGは有名なマイケル・ポーターとクレマーがいます。

 この考え方の前提としては、複雑な社会問題の解決や、大きな社会的インパクトを生み出すためには、様々なセクターやプレーヤーが恊働する必要があるということだと思います。では、そのような複数のプレーヤーがうまく恊働するためにはどういう条件が必要なのか? それをフレームワークにまとめた考え方だと思います。

ちなみに、その5つは
  1. common agenda(共通のアジェンダ)
  2. backbone infrastructure(バックボーンとなるインフラ)
  3. mutually reinforcing activities(相互に強化される活動群)
  4. shared measurement(評価尺度を共有すること)
  5. continuous communicaton(継続的なコミュニケーション)
になります。

Collective Imapctの5つの条件を聞くと、私はピーターセンゲのシステム論を思い出します。両者の考え方は非常に近い部分があると思います。それはさておき、

 様々な利害の対立したり、考え方が異ったりする人たちが効果的に働くには、
共通のアジェンダや、一緒に活動することによってより効果を出すことや、共通の評価尺度、またコミュニーションも必要になります。という意味では、ある意味では当たり前のことを当たり前にまとめたもの過ぎません。

しかしながら、この考え方が魅力的なのは、考え方が整理される面があることとともに、様々なプレーヤーの恊働がより求められてきたという背景と人々の認識の深まりがあると思います。

今日は、東北の復興の実際にプロジェクトに関っている方も参加されるので、理論と実践の融合を楽しみたいと思います。

ソーシャルインパクト・リサーチでインパクト評価のコンサルをおこなっていますが、今後は、より多くのプロジェクト評価はCollective Impactの要素や色彩が深まってくると思います。