2012年10月5日金曜日

サステナビリティ分析

サステナビリティ分析

 公益資本主義の思想に基づく経営を推進するために、以下のような手法を考えている。これはある意味では、企業のサステナビリティをいかに保っていくかに通じるものだ。


価値の基準は、❶持続性、❷公平性、❸改良・改善性をとる。 

次に、その価値基準に基づくKPIKRI(key Risk Indicator)の因子が特定される。

持続性は、企業にとって価値ある資産(財務資本、人的資本、知的資本、企業関係資本、自然資本)を増やす因子とリスクに対する備える29因子を特定化している。公平性7因子、改良改善性12因子である。

 次に、その重要度と発生確率に基づきリスクウェートを決める。そのウェートに基づき、総合スコアが特定される。

 ここで悩ましいのが、リスクウェートはアプリオリに決めるのが難しい点である。全体の環境変化のシナリオにしたがってそのリスクウェートが大幅に変化する。事後的にその事象が発生したら確率100%になり、事前確率との間に大幅な食い違いが生じる。この点を踏まえると、本来は企業はどういうシナリオを想定しているのかをいくつか用意し、そのシナリオごとに、リスクの変動幅を示し、全体がどう変動するかのシュミレーションを示すべきだろう。
 
 誰も指摘しないが、この辺りの議論は、非財務情報と財務情報を統合する「統合報告」の議論ですっぽり抜けている。 統合報告の趣旨が、財務情報と非財務情報を統合することにより、より柔軟で納得性のある持続可能性をステークホルダーに明瞭に示すという点からすると、明らかに片手落ちだろう。

 この結果どういうことが起こるか? 例えば、企業が想定外でした、という言い訳を許すことになる。ステークホルダーからすると、そんなことも想定していなかったのかという失望となる。本来はどういうシナリオを事前に想定しているのかを明示すべきである。この辺りのシナリオの想定にこそ、第三者意見などを付与すべきだろうと思う。

そして、最悪のシナリオでも持続可能水準を上回っているのを示すのが、本当の意味でのサステナビリティ分析ではないかと思う。


2012年10月1日月曜日

ステークホルダーの公平性の評価基準?



 公益資本主義の基準は3つの条件、「持続性」、「公益性」、「改良改善性」がある。公平性は価値観に基づく要素があるため、主観性が入りやすく公平性を測る基準をつくるのが難しい。

 今回は、東芝をケーススタディに考えてみる。ステークホルダーは、取引先、従業員、株主、債権者、政府行政、社会、環境、経営陣を想定している。

 東芝のステークホルダーの分配額は2010年度、2011年度で経済的付加価値の分配は以下の図表のように変化した。果たして、このようなステークホルダーの分配は公平性が保たれていると言えるだろうか? どう判断評価することができるだろうか?


ステークホルダーの経済的付加価値の分配を分析する上で重要な点が3点。

①ステークホルダーの分配の公平性を見る上では、その前提となる経営環境、経営状態のコンテクストの理解が必要となること

当然、売上、利益、キャッシュフローが伸びている経営状態が良い時と、経営状態が悪い時ではステークホルダーの分配のルール、分配の仕方に違いが生じる。この点を踏まえて、公平性の評価をする必要がある。


②ステークホルダーの分配には、自動的に決まる要素が強いステークホルダーと、経営の意図が反映しやすいステークホルダーがある。

 例えば、自動的に決まる要素が強いのは、政府への支払い、債権者などである。政府の税金は当期利益、課税所得が決まるとほぼ自動的に決まる分配である。また、債権者の支払いも、債券発行額、利払い契約によってほぼ自動的に決まる。比較的自由度が高いのは、経営陣に対する報酬と株主への支払い、社会貢献である。

 ③結果に影響を与えることができるステークホルダーほど、成果に責任をもつべき(リスクをとるべき)である。
 例えば、次のような順位を想定することができる。
株主 経営陣  >従業員 >取引先 > 債権者、政府

 売上、利益、キャッシュフローが伸びている時に、どのステークホルダーがその上昇分を一番多くの割合で獲得しているかという点や、経営状態の悪い時に、その痛みをどのようにわけているのかで、公平性を評価することができる。

これらを3〜5年間程度みることで、それぞれの分配がどう変化したかをみると、ステークホルダー間でパワーがどのようにシフトしたかを評価することができる。

③の評価基準を入れることで、分配の公平性を判断することができるようになる。今回の東芝のケースは、経営が急激に悪化したのに、他のステークホルダーの分配が減る、止まる中で、株主への分配がほぼ倍増と大幅に伸びており、公平性が極めて低いと評価することができる。

2012年9月30日日曜日

持続可能性の2つの基準



人間を含めた、あらゆる種が長期的に繁栄するためには、
自然淘汰に強いという基準(自然環境に適したものが成長し繁殖する)と、
性淘汰(異性にもてる)という基準、この2つの基準を同時にクリアーする必要がある。

 仮に、この2つの基準が異なった場合はどうなるだろうか?

長期的に繁栄するのが難しくなる。

この2つの基準が異なった例として、よく引き合いに出されるのはクジャクの雄である。クジャクの雄は尾っぽに飾り羽が立派なほど異性にもてる(第2の基準)、しかし、同時に動きが鈍くなり外的の餌食になりやすいのだ(第1の基準)。

結果として、クジャクも、人間が保護しなければ絶滅していたかもしれない。

人間の経済はどうだろうか?

グリーディに経済的利益を追求して環境変化に強いという基準と、
社会に貢献し社会に好かれるという基準、

 この2つの基準が異なる場合、長期的には持続可能ではなくなる。つまり、経済的価値と社会的価値の基準の調和が必要ということだ。両方を満たすソーシャルイノベーションが経済が持続可能になるには必要ということだ。