2011年10月20日木曜日

ソーシャルキャピタルをソーシャルメディアに活かす!?



ソーシャルキャピタルという言葉をご存知でしょうか?

社会学や経済学で使われる概念で、「社会の信頼関係、規範、ネットワークといった社会組織の重要性を説く概念で、簡単に言うと、人と人とのつながりの力のことです。

では、そのソーシャルキャピタルとソーシャルメディアはどう関係するのでしょうか?

 多くのソーシャルメディアの本が出版され、企業がソーシャルメディアをどう活用すればいいかを多くのコンサルタントが説いています。しかし、最終的なアドヴァイスは、「愛されることが大切です、愛される会社になりなさい」とか、「ソーシャルメディア時代は購買決定プロセスが変わりました。共感が最初の購買決定ステップになります。共感を得なさい。その企業に対する信頼、共感が得られていないと難しい」など、結局は、実用性が低いアドヴァイスで終わるのがこれまでのオチとなっています。

 私は、ソーシャルキャピタルという概念を用いることで、この辺りを変えることができるのではないか、と考えています。

一般的なソーシャルキャピタルと区別して、企業のソーシャルキャピタルをCorporate Social Capital C-Social Capital、企業ソーシャルキャピタル)と定義して考えます。

企業が共感を得られるのは、その前に、企業ソーシャルキャピタルの存在が必要になると考えます。実は、共感はフロー概念で、ソーシャルキャピタルはストック概念だからです。そして、企業ソーシャルキャピタルは、「その企業が影響を及ぼすことができる範囲の広さとその関係(エンゲージメント)の深さ」として捉えます。別の言葉ではコミュニティ力とも言えると思います。

 このように定義することで、企業ソーシャルキャピタルの大きさをある程度定量的に捉えることができるようになりますし、その推移も把握することが可能となります。

方程式は、
企業のソーシャルキャピタル(ストック)→共感(フロー)→ソーシャルグラフやインタレストグラフで伝播される→影響力(購買、長期的な収益)(フロー)という流れになります。

いかがでしょうか? やる気になれば、違う企業同士の、共感指数/ソーシャルキャピタルを比較することもできると思います。

 つまり、企業の提言としては、共感を増やしなさいではなくて、企業ソーシャルキャピタルをこういう方法によって、範囲をこういう形で増やし、エンゲージメントをこのレベルに増やしなさい、という形になり、より具体的な戦術を考えることが可能となります。いずれも、フローではなく、その元のストックを捉えるところがポイントになります。

2011年10月19日水曜日

企業マーケティングのソーシャルマーケティング化?

マーケティング前提条件の変化
企業マーケティングとソーシャルマーケティングとの融合



 企業が利益追求中心のマーケティングであるのに対して、ソーシャルマーケティングは社会との関わりを重視するマーケティングの考え方であり、これまでは、公共機関や非営利企業のためのマーケティングとして位置づけられてきた。

 公共機関や非営利企業は、ソーシャルマーケティングによって、解決を図ろうとする社会的な課題を世の中に啓蒙したり、その団体の目指すビジョンやミッションに対する共感を喚起するために用いてきた。

しかしながら、ソーシャルメディア普及により、企業のマーケティングも、社会とのかかわりが重要性を増しソーシャルマーケティングの色彩が濃くなってきた。

 また、ソーシャルメディアにより、企業の活動が赤裸々に世間の目にさらされるようになったこともこのこのことを後押ししている。企業の活動に一貫性がないと、信頼感を得られなくなったからである。

ソーシャルメディアの果たす意味を考えるには以下の2つを比較してみるといい。製品を購入することと、人に知らせた上でその製品を購入することである。後者は、前者よりも、購入に社会的な側面が加わるので、その企業に対する応援や共感、支持の表明という色彩を持つようになり、どの製品を購入するかが自分自身のアイデンティティを示すという意味合いが強くなる。

ソーシャルメディアのこのような側面が企業マーケティングのあり方も変えていくのだ。


企業と消費者を3つにつながりのレベル、コンテクストで分類することができる(図表●)。

第1層は、企業と消費者は製品レベルのつながりである。この第1層では消費者は機能面の違い、コストパフォーマンスの違いによって簡単に他社製品に乗り換える。

第2層は、その製品を提供する企業への情感、感情的なつながりである。この第2層は第1層よりも消費者と企業とのコンテクストは深まる。例えば、その企業の製品を購入した時に、きちんとサポート対応してくれたから、もう一度買おうとか、そういうレベルである。この第2層では人的なサービスが差別化要素となる。

第3層は、その企業の目指すミッションやビジョン、企業文化に対する敬意、その企業の世界観に対する共感によるつながりである。この第3層になると、消費者は他社製品にスイッチしなくなる。また、他人にもその製品の良さや、その企業の良さを推奨するようになる。

 当然、企業は、第1層から第2層へ、そして第2層から第3層にコンテクストを移行することが望ましい。そのためには、企業は自らのミッションやビジョン、企業文化、その企業が目指している世界観などを人々に理解してもらうことが重要となり、営利企業もソーシャルマーケティングが必要となってきたのだ。

第3層とのコンテクストの割合が高い企業には、ユニクロ、ソフトバンク、ソニー、アップル、スターバックス、ザッポスなどが挙げられるだろう。

以下、ザッポスのCEOのトニー・シェイの言葉を引用しよう。
「我たちは、企業の文化と会社のブランドは本質的1枚のコインの表と裏だと信じているのです。ブランドは初めは文化に遅れを取るかもしれませんが、いつかは追いつきます。企業文化こそがブランドなのです」

2011年10月18日火曜日

企業のマーケティングは4Pから5Pモデルへモデルチェンジが必要

マーケティングの前提の変化
企業マーケティングパラダイムの変化(4Pモデルから5Pモデルへ)



 これまでのマーケティングは4Pというフレームワークで語られてきた。言わずと知れず、4Pとは、(Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション) のことである。企業はこの4Pをコントロールすることができ、これらを効果的に組み合わせる(マーケティングミックス)することで企業はマーケティングで最大の成果をあげることができるという考え方である。

 しかしながら、ソーシャルメディア時代に、4P以外に、いやこれまでの4P以上に重要な新たな要素が生まれつつある。新たなPとはPeople(人)である。

 ソーシャルメディアを一言で言えば人のつながりのネットワークであり、自分を中心とした人とのつながりが、ネット上の人々の行動や考え、そして購買に様々な影響力を与え始めてきている。

 自分の友達がMac book Airを買ってその感想をソーシャルメディアで述べると、自分もその製品が欲しくなったり、実際に自分も購入したりする。つまり、People(人)がマーケティングを考える上で欠かせない要素になってきたのである。

 ネット上で影響力をもつインフルエンサーという人たちも存在する。例えばTwitterで何万人のフォロアーをもつインフルエンサーのつぶやきはがフォロアーのタイムラインに流れ、フォロアーの購買行動や考え方に影響力を及ぼすことになるのだ。

 しかしながら、5番目のP、People(人)を企業はこれまでの4Pのように、コントロールすることはできない。企業にとっては、コントロールすることができないものがマーケティングに影響を与えるということは脅威であるが、同時に新たな機会にもなりうるのだ。

4Pのフレームワークでは要素を組み合わせて最適化するという考え方であったが、5Pモデルでは最適化はできない。5つ目のPは企業側がコントロールできないからである。

 また、4Pをベースにするマーケティングと5Pモデルではそもそものマーケティング施策も全く異なるものになることを企業は改めて認識する必要がある。

企業は4Pモデルから5Pモデルに大きく転換する必要がある。5Pモデルに転換する上での注意点としては3点が挙げられる。

1.企業自身も、ヒューマンタッチ、人間らしくある必要性が高まっている。人には人として向き合う必要性があるのだ。

2.オープンな企業文化であることの重要性が高まっている。つながりを活かすにはオープンな形でないとつながりにくいのだ。これまでのような媒体を通じたタッチポイントだけでなく、生活者の側から様々なタッチポイントを作り出してもらう必要があるのだ。

3.ソーシャルオブジェクトを軸にマーケティングを組み立て直せ。
ソーシャルネットで人はなぜインタラクションを生んだりコミュニケーションするのか? それはソーシャルオブジェクトを媒介にする。企業は生活者の間でインタラクションを生む価値が高まっており、企業は効果的なソーシャルオブジェクトを生み出す必要性がある。

4Pをベースにするマーケティングと5Pモデルではそもそものマーケティング施策も全く異なるものになることを企業は改めて認識する必要がある。

4Pから5Pモデルにモデルチェンジできるかが、今後の企業のマーケティングの成果に大きな差を生むだろう。

2011年10月17日月曜日

カスタマーサービスとマーケティングの融合

マーケティング前提条件の変化
カスタマーサービスとマーケティングの融合



企業の中には、自社のTwitterアカウントでカスタマーサービスを行う企業も増えてきた。お客さんからの問い合わせをTwitterで受け付け、それに対して、他の人にも見えるオープンな形で返答や対応していく。このようにソーシャルメディアを介したカスタマーサービスが普及するにつれて、カスタマーサービスとマーケティングの境界は融合していくことが予想される。
 
 オープンな形で対応するので、カスタマーサービスの対応がいい企業にはファンがついたり、口コミによって評判が広められたりする。その結果、新たな顧客ができたり、リピート率が高まったりする。これはまさにマーケティングそのものだ。

最近では、ソーシャルメディアの先進的な企業の中にはアクティブサポートを提供する企業も見られるようになった。アクティブサポートとは積極的に自社がソーシャルメディア上でどのように語られているかをモニタリングし、場合によってはその語っていた人にアプローチし語りかけたり、不満を解消したりすることである。従来のカスタマーサービスは顧客から電話やメールでの問い合わせに対応する受け身にすぎなかったのに対して、アクティブサポートはまさに積極的に、リアルタイムに企業から顧客に語りかけ問題を解決する点に特徴がある。

 USではザッポスやジェットブルー、コムキャストが有名であり、国内でもブックオフオンラインやソフトバンクモバイルがアクティブサポートアクティブサポートを提供している。必ずしも、全ての企業に向く万能の方法論ではないが、顧客とのゆるいつながりを積極的に企業の資産に転換しようとするものであり、ソーシャルメディア時代のカスタマーサービスとして一考の価値はあるだろう。

 米国ザッボス社はソーシャルメディアをうまく活用している企業として知られている。ザッポス社は広告をほとんど出さずに、カスタマーサービスを非常に重視する。圧倒的なカスタマーサービスにより、顧客体験をデザインし、顧客を驚かせるくらいの対応をする。そのような対応に接したお客は、そのことをソーシャルメディアで発信してくれる。この好循環によって、ザッポス社は急成長した。

顧客との個人的なつながりを作り出すことが同社にとって重要な資産、投資となることを見抜いたのだ。カスタマーサービスを充実されることで顧客は積極的に口コミしてくれる。顧客のポジティブな口コミを増やすことこそがマーケティングである。

以下、ザッポス社CEOトニーシェイの言葉
この何年も、ザッポスの成長の一番の原動力となっているのがリピーター顧客と口コミです。

広告にはほとんど費用をかけずに、その費用をカスタマーサービスと顧客体験に投資し、私たちに代わって顧客に口コミでマーケティングを担ってもらおうというのが私たちの哲学なのです。

情熱的な人々や口コミが生んだ利益は、最初は目に見えません。しかし、時間が経つにつれて、その投資は何倍にもなって戻ってきてくれるでしょう。

私たちは顧客生涯価値を流動的なものと見なしており、あらゆるやり取りを通じて、顧客の心の中に私たちとのブランドとのよりポジティブな絆を作り出せば、顧客生涯価値は向上できると考えています。

私たちにはマニュアル原稿がありません。私たちは、顧客と個人的なつながりを育むことができるように、電話でのやり取りではいつもオペレーター各自が自分本来のパーソナリティを発揮してほしいと願っています。