2014年12月9日火曜日

実は、ムハマド・ユヌスさんはCSVに否定的。その理由は、、



ノーベル平和賞を受賞した、グラミン銀行総裁のムハマド・ユヌスさんは、CSVについてこのように予想しています。

「おそらくCSVは、CSRの域をわずかに拡充した程度で終わるのではないかと見ています。つまり、本当の意味で社会問題の解決に心血を注ぐビジネスにはなりえない。

ガーン。CSVをどのように企業にとって実現可能な概念、ツールにしようかと考えていた私にとってはショッキングな発言でした。

しかし、考えてみればユヌスさんにとってはごく自然な考え方だと思います。

ユヌスさんはソーシャルビジネスの7原則を掲げています。その原則の1つに、投資家は元本までしか回収できない。それ以上の利益は社会課題を解決するためにビジネスに再投資されるという考え方を持っています。

NPOでなく、企業でなく、ソーシャルビジネスで社会課題を解決しよう、そして解決できるという考え方には、以上の原則が含まれています。

NPOや企業という法的な形態ではなく、この原則を貫けるかどうか? 上場企業であればすごく難しいでしょう。これくらいやるメカニズムと心意気がないと社会課題は解決されませんよ、というユヌスさんのメッセージだと思います。
そういう意味では、企業のCSVはこのソーシャルビジネスの条件を全く満たしていません。

日本企業でも、グラミンと雪国まいたけやユニクロがジョイントで会社をつくって事業をやっていますが、今度どの程度成功するかが注目されますね。

ユニクロはCSV企業? ブラック企業?


今月のHBRで、ユニクロの柳井会長が、世界一の企業を目指すのであればCSVは当然であると喝破している。

この主張に違和感を覚えるひともいるだろう。

ユニクロは、5年以内に約半分の社員が辞めてしまう、いわゆるブラック企業であるという批判を浴びた企業であるからだ。

ブラック企業とCSV企業は果たして両立するのか?

CSVの定義が曖昧なので、会社側はCSVと主張しても、世間ではそうは考えないようなことがよく起こる。

公平を期すと、ユニクロの障がい者雇用比率は非常に高いし、ブラック企業批判の後は、社員の正社員化を進めたり、地域雇用で店長への過度の負担を軽減している。


我々は企業のソーシャルインパクトを25のKPIによって、重要度と開示度によって最適ウエート付けしてソーシャルインパクトを定量化している。この手法で企業群を明快に3つに分類することが可能になる。この手法によると、ユニクロは、従来型ブラウンカンパニーからグリーンカンパニーに近づいていく途上にあると捉えることができる。

CSV企業かどうかはを評価するには、ソーシャルインパクトを定量的に評価測定できるかがポイント
となる。

2014年12月8日月曜日

CSV経営は株式市場において超過リターンを生み出すか?



ハーバードビジネスレビュー(HBR)の1月号はCSV経営の特集である。ここ数年、CSV特集が1年に1回ぐらい繰り返されている。

マイケル・ポーターという経営学の大家が提唱しただけに、いまだに様々な議論を巻き起こすホットな経営イシューとなっている。


たして、CSVは理想的な絵に描いた餅なのか? それとも現実可能なこれからの新しい経営パラダイムなのか?

KBSの岡田先生が「CSVは企業の競争優位につながるものか?」を論じている。私は、むしろその先を見据えたい。投資家にこのCSVというパラダイムが受容されるかどうかだ。

CSVが競争優位を生み出したとしても、投資家に超過リターンを生み出せないのであれば、投資家から支持されない。したがって、CSV経営は株式市場において超過リターンを生むかどうかが、企業が今後CSVを追求できるかどうかの条件になる。そのためには、以下のフレームワークを使うとうまく分析できる。

 私の実証結果では、CSV企業は投資家に超過リターンを生み出すことができている。ただし、超過リターンは、個々のESG項目によって大きく異なる。自然資本関係はプラスが多く、社会資本関係は逆にマイナスになっているものも多い。各業界のMateriality(重要度)、各企業のビジネスモデルのMaterialityを特定をする必要性がある。この面の定量的な分析、アプローチが今後求められていくだろう。