2012年9月15日土曜日

社会的な課題を解決する評価指標?

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多くの社会的な課題は、コストと価値を混同することで解決が妨げられているケースが非常に多い。

価値とコストとは全く違う。これを混同することが多くの人間の間違い、悲劇、誤った意思決定につながっている。

コストとは何か? 何かを手に入れる時に支払うお金のことである。これに対して、価値とは何か? 価値とは、お金を支払うことによって手に入れるもの(果実)である。

 意思決定には、コストにみあうだけの価値を生み出しているのかどうかをみる必要があり、例えば、「価値/コスト」のような投資対効果をみる必要がある。

 例えば、現在、生活保護バッッシングが続いている。毎年、生活保護関連コストがあがる中、不正受給に該当するものも増えており、何か対策をたてないとどんどんコストがあがることに対する懸念が生じている。しかしながら、これらは全てコストの話なのである。

コスト情報だけでは正しい意思決定はできない。価値もあわせてみる必要がある。

不正受給は、先ほどの「価値/コスト」指標を考えてみると、
生活保護の不正受給は、分子に追加コストとして加算されるのに対して、分母の効果はゼロに近い。つまり、「価値/コスト」指標は、

「(価値+0)/(コスト+不正受給コスト)」と修正される。

上記の式をみてわかるように、不正受給を見逃すことは、この政策の投資効果を劇的に下げる。分母はコストが加算されるのに分子の効果は0だからだ。しかし、もともとの価値/コストの比率自体が変わったわけではない。

 現在のように、雇用状況が厳しい状況では生活保護の分子の価値はあがっていると予想される。したがって、それを不正受給があるからといって、いっしょくたんに生活保護費を圧縮すると、政策効果自体も減じてしまう。

だから、不正受給があるからといって、直ちに、生活保護費を下げようとするのは誤りなのである。

政策論的には、いかに投資対効果を高めることができるか? もしくは、他にどのような施策が政策目的を実現できるのか? などを事実、数値に基づいて考えることが必要である。

(株)ソーシャルインパクト・リサーチが開発した、ソーシャルインパクト指数®は、ソーシャルビジネスの価値を定量化するために開発された。実は、社会的プロジェクトの価値計算にも適用でき、政策間同士の効果比較をより的確におこなうことができる



是非、政治家、政策担当者の方々は導入を検討されたい。

2012年9月14日金曜日

坂本教授の良い会社とビジネスモデルの関係性は?


「日本でいちばん大切な会社」シリーズで有名な、坂本光司教授の講演会に参加した。

坂本教授は、良い会社の条件として、以下の11つの共通点を挙げている。
1.       人を大切にする
2.       人財の確保、育成を怠らない
3.       社会貢献する
4.       景気、流行を追わない
5.       価格競争をしない
6.       ある特定の企業、商品に過度に依存しない
7.       昨年までの商品に過度に期待しない
8.       トコトン顧客に尽くす
9.       ぬくもりのある家族的経営
10.    業績や成長ではなく、継続、幸福、正義を重視する
11.    自己資本比率を重視する

 良い会社の条件は、人に関するもの、組織に関するもの、経営スタンスに関するもの、企業の目的に関するものにわけることができる。

では、ビジネスモデルはどこに位置づけられるのか?
この疑問を、講演後に坂本教授に質問してみた。

 坂本教授のフレームワークの中ではどのように位置づけられるのか?
坂本教授の解答は、自分のフレームワークはいわゆるMBAのフレームワークとは異なるとの解答であった。

私は以下のように理解した。

坂本教授が選定した良い企業は、存続年数が長い長寿企業であったり、企業利益率が高い企業が選ばれている。だから、坂本教授のこれらの良い企業も、儲かる仕組みつまりビジネスモデルをもっているはずだ

しかしながら、比較的中小企業やサービス業が多いので、社員のやる気や経営者の能力、熱意などの重要性が高いのではないか? そのため、儲かる仕組みや結果よりも、何のために儲けようとするのかという企業の目的や理念の重要性が高いのだ

国と企業のサステナビリティをどう評価すべきか?


 東洋経済が毎年おこなってきた「環境報告書賞・サステナビリティ報告書賞」が今年から「休止」となった。環境やサステナビリティの取り組みをアンケート調査で評価するのに無理があることは最初からわかりきっている。

今回は サステナビリティをどう評価すべきかを考えてみたい。

そもそもサステナビリティとは何か?

 サステナビリティ将来の世代が自らのニーズを充足する能力を損なうことなく、現在のニーズを満たすような発展と定義される。簡単に言えば、今もハッピー、将来もハッピーな発展、成長を実現することである。

 図で示すと以下のようになる(植田教授資料より引用)。


上図はサステナブル(持続可能な状態)と考えられるが、下図は減耗分だけ資産ストックの総量と制度が減少しており、持続可能な状態ではない。この状態がずっと続くと資産ストックはなくなってしまい、何も生み出すことができなくなるからだ。

 ソーシャルインパクトリサーチでは、営業利益と企業ソーシャルキャピタルという2つの軸で、企業のサステナビリティ(持続可能性)を評価する手法を開発している。これが、上記の説明では、現世代のニーズと資産ストックにそれぞれ対応するものである。



 実は、このサステナビリティはソーシャルイノベーション力と読みかえることもできる。今や、サステナブルな成長をすることは容易なことでなく、そのためにソーシャルイノベーションが必要とされるからだ。P&Gのサステナブル報告書でもこの点が鋭く指摘されているので参考にされたい。http://jp.pg.com/sustainability/message.jsp


下図は、VOLANSの資料だが、時代とともに、コンプライアンスからCSRへ、そして、今やCSRからソーシャルイノベーションに移行していることを示している。


 ソーシャルインパクトリサーチでは、企業ソーシャルキャピタルの増分(△)と営業利益の増分(△)の比率をソーシャルイノベーション指数と定義している。この指標は、ステークホルダーからの信頼から利益を生み出す力を示しており、まさにソーシャルイノベーション力の代理指標となりうるからだ。

 サステナビリティの取り組みやソーシャルイノベーションをアンケートで測ろうとする恣意的な調査は意味がなく、納得感も得られない、ナンセンスなものなので、今すぐ早く止めた方がいい。もっと、客観的な評価手法、指標が既に開発されているからだ。





2012年9月13日木曜日

ソーシャルビジネスの持続可能性(サステナビリティ)の測り方

 社会にいいことをビジネスにしようと思いソーシャルビジネスを志しても、なかなかその志を続けるのはハードルが高い場合が多い。いいことをやるには(やり続けるには)、そのソーシャルビジネスの、そのモデルに持続可能性(サステナビリティ)が必要になるからだ。

今回は、ソーシャルビジネスの持続可能性(サステナビリティ)をどうやったら測ることができるかを考えてみる。


ソーシャルビジネスは、以下の3つの段階、およびその関係性が重要となっている。①経営資源リソースを用いて、②ステークホルダーに対する価値創造がなされ、③その価値創造のある部分がマネタイズ(換金化)されるという流れである。



①経営資源リソース獲得の段階
 経営資源リソースのうち、無料で獲得したリソースの比率を共感比率として表す。この共感比率が高いほど、経営効率を高めることが可能となるので、優れたビジネスモデルと言える。

②経営資源リソースから生み出された価値創造の比率
 経営資源リソースを用いることでステークホルダーに対して価値創造をおこなうことができる。経営資源リソースに対して、生み出された価値創造が大きいほど、優れたビジネスモデルと言える。

③価値創造とマネタイズ(換金化)できた部分の比率
 生み出された価値はマネタイズ(換金化)できる部分とマネタイズできない部分にわかれる。生み出された価値に対してマネタイズできる部分の比率が高いほど、優れたビジネスモデルと言える。

ソーシャルビジネスの持続性を考える上で、特に重要なのが、「マネタイズ/有償による経営資源リソース」の指標である。

この指標で、ソーシャルビジネスをレベル1〜レベル3にわけることができる。有償の経営資源リソース取得コストとマネタイズを比較して、前者が後者より大きいビジネスは持続可能性が低いと考えられる。これが、ソーシャルビジネスの持続可能性(サステナビリティ)を測る指標になる。

レベル1はそもそもの辻褄があっていない段階。
レベル2はビジネスプランコンペや助成金獲得には成功できる段階だが持続性を有していない。助成金などの臨時的な収入を含めることで、上記の指標が1を上回るレベル。
レベル3は継続的な事業収入で上記指標が1を上回り、持続可能なマネタイズが可能となるレベルである。


あなたのソーシャルビジネスは上記のレベルのどれに当てはまるだろうか? ちなみに、このモデルは、ソーシャルビジネスに限らず、一般の営利ビジネスにも応用可能なものだ。

2012年9月12日水曜日

クラウドファンディングリスク顕在化


Campfireで資金調達したプロジェクト「非常食定期宅配サービス」が事業からの撤退を発表したhttp://bit.ly/RvZQbz  月未発送分に関しては清算される見通しである。個人的には、忘れやすい非常食を低価格で定期サービス化した点に面白さを感じたプロジェクトであり、残念だ。また一方で、このサービスがこの価格(リターン金額)で可能なの?と当初思っていた懸念が顕在化した形でもある。

 プロジェクトは、Campfireで目標金額を当時史上最短で達成し、当初目標金額12万円に対して、実際に集まった金額は61万円と約5倍に達した。まさに、期待されたプロジェクトであった。

 ある面で、今回はクラウドファンディングリスクが顕在化した形だ。クラウドファンディングは、支援者からリターンを約束して小口でお金を集めて、それからそのプロジェクトの実行をする。したがって、約束したリターンがちゃんと支援者に返せるかどうかはリスクがあるのだ。

 今後も、クラウドファンディング市場拡大により、善意にしろ、悪意にしろ、クラウドファンディングで約束したリターンが達成されないケースや、期待はずれのリターンとなるケースが増えていくだろう。

 このリスクを最小化するには、やはり、プロジェクト実行者が、その進行プロセス、資金使途を透明化し、どういう状況にあるかを支援者に逐次伝えていくべきだろう。また、プラットフォーム側もお金を集めればそれで終わりではなくて、市場を健全に広げていくに、まさにこの面を促していく必要がある。

 本来、このようなリスクが顕在化した場合は誰がこのリスクを負うべきだろうか?
 そもそも、クラウドファンディングが寄付ではなく、リターン(サービス)の事前購入という位置づけと考えれば、リターンが達成されない場合はそのプロジェクト主体者側がこのリスクを負うのが一番自然な考え方だ。

 しかしながら、どのプラットフォームも、事前の約定では実際に約束したリターンが提供できない場合は、そのリスクは支援者(お金の出し手)が負ってくださいとうたっている。最近、Kickstarterでもこの点を再度リリースしたし、日本のクラウドファンディングプラットフォームもこの考え方を踏襲している。ただし、集めた金額が小さい場合は、善意あるプロジェクト実行者はお金を弁済するという今回のようなケースもありうる形だ。

 個人的には、この点に、あまり目くじらをたてることは必ずしも好ましいことではないと考えている。リターンの確実性をあまりに追い求めると、クラウドファンディングの良さが損なわれてしまうからだ。

ただし、以下の点は正しい認識しておく必要がある。

 クラウドファンディングはこれまでの金融市場ではお金を集められない、集めにくいプロジェクト(もしくはプロジェクト実行者)にもお金を集めることを可能にするという「市場の革新性」がある一方で、「お金の出し手の権利保護が弱い」という面があるのだ。これは表裏一体となっている。



2012年9月11日火曜日

クラウドファンディングの最適化戦略とは?


前回のソーソヤルインパクトレポートで、具体的なプロジェクトで、クラウドファンディングの成功要因を分析した。

今回はもう少し抽象化して考えてみる。私自身、非常に抽象思考の人間だから。

一言で、クラウドファンディングの成功を定義すると、THE LADDER OF ENGAGEMENTの最適化と言うことができると思う。

THE LADDER OF ENGAGEMENTとは、その名の通り、参加者のエンゲージメント、関与度の階段である。参加人数×関与度の面積を最大化、最適化することが、クラウドファンディングの成功につながるのだ。



図表は、NPO業界で、有名なエンゲージメントモデルである。

これが何を意味しているかお分かりだろうか?

ポイントは、クラウドファンディングで成功するには、顧客の支払うお金の最大化を目指すのではうまくいかないということである。

×顧客→○関与者
×支払うお金→○関与度

何故なら、できるだけ多くの人がインタラクションを生み出すことが、お金の支払い手の価値を高めるから。お金を支払わない人にもできるだけ多く参加してもらい、インタラクションを生んでもらいたいのである。お金を支払っていない人も、プラットフォームに価値を提供しているのである。

これは、ソーシャルゲームと同じ構造になっている。無料で、できるだけ多くの人に参加してもらい、後は、アイテムや武器なでを有料化して回収するフリーミアムモデルである。


もう1つ重要なポイントは、リターンの設計を、エンゲージメントの階段を適切に設定することで、確実に、その人が評価する最大価値まで階段をのぼってもらうことだ。 関与度の違いを生み出すリターンを設計できるかどうかが重要なのだ。

コストベースではなく、Willing to Payベースのプライシングと言える。
参加者同士のインタラクションの差が価値、Willing toPayに近いことも、実証されている。

2012年9月10日月曜日

日本最大のクラウドファンディングの成功事例から、絶対成功法則を導く



これまで、READY FOR?で最も資金を集めたのは、「陸前高田市の空っぽの図書室を本でいっぱいにしようプロジェクトである。862名の人から支援で、8245000円を集めることに成功した。https://t.co/oBkSf5SX

このプロジェクトから、クラウドファンディングの成功法則、ファンドレイズの失敗しない、絶対成功法則を導くことができる

 何故、このプロジェクトは大成功できたのか? 理由は一言でいうと、クラウドファンディングの特性をうまく引き出したから。

では、クラウドファンディングの特性とは何か?

 クラウドファンディングは幅広い人から小口資金を集めることを意味する。そのために、魅力的なリターンを使う。クラウドファンディングでお金を集めるとは、どうやったら支援者にとって魅力的なリターンとなるのかを考えることなのであるここがクラウドファンディングの一番の本質だ

その答えが今回のプロジェクトの成功を探ることで見えてくる。

要因分析
   テーマ性の共感性
このプロジェクトのテーマは被災地、子供、本。本というのは誰にでもなじみやすいテーマだ。テーマの共感性で幅広い人からの関心を引き出す。しかし、テーマで幅広い関心を引き出すことに成功しても実際にお金を出すまでいかないケースが圧倒的に多い。そこで次のポイントが重要になる。

   支援者にとって魅力的なリターンの設定
お金を出すスイッチを押すには、支援者にとって魅力的なリターンの設定が必要なのだ。あくまで支援者にとってであって、支援しない人に取って魅力的なリターンになってもしょうがないのである。ここが多くの人が誤るポイントである。今回のプロジェクトは、10000円で496名、20000円で85名を集めることに成功しており、この2つのリターン設計がうまくいったことがわかる。通常のクラウドファンディングの平均支援金額は10000円よりもずっと低い。



具体的にみてみよう。10000円のリターン設計は、「ご希望の本を一冊お名前入りで、蔵書として図書室に収めさせていただきます。」となっている。自分の好きな本を贈れる、これがまさにカスタマイズ化、パーソナライズ化された、その人ならではのリターンになっている。次の20000円のリターン設定は、「上記に加えて、岩手の伝統工芸品である南部裂織の栞を送らせていただきます。」となっている。この20000円でも85名、トータル170万円集めており、この地元の名産品のリターンも効果的であったことがわかる。

③ソーシャルメディアを活用しインタラクションを生むこと
今回は、応援コメント欄には862回のコメント、いいね!は2791名、ツイート1698回を生み出している。応援コメント欄に自分が寄贈したい本を書くようになっており、これが大量のインタラクションを生み出したもとになっているカスタマイズ化、パーソナライズ化されたリターン設計がインタラクションを生み出すことに寄与したことがわかる。

④お金の使い方とその透明性の確保
1万円で自分が好きな本を寄贈する形なので、資金使途は非常に透明だ。このことも、お金を出すスイッチを押すことに寄与した。また、支援金は本の購入原資で資金がいくらあってもいいプロジェクトであるから、目標金額を上回った後も支援者を抑制しなかった。通常のクラウドファンディングは目標金額を超えると、支援者を集める力が減速する。しかし、今回は違った。寄付とクラウドファンディングの違いがよく活用できた事例である。

以上の4つの法則は、クラウドファンディングだけでなく、様々なファンドレイジング戦略に応用が効くだろう。

同一の、誰にでも魅力的なリターンよって多くの支援者を集めるのではなく、パーソナライズ化したリターンを設計することによって、幅広い支援者を集めるということがポイントとなること」が示されている。

2012年9月9日日曜日

営利企業マーケティングと非営利マーケティングの違い



コトラーはマーケティングの神様と言われるが、自分の最大の業績は何か?と問われると、非営利にもマーケティングが必要なことを発見したことと述べている。以前は、非営利にマーケティングは必要という概念はなかったのだ。

 現在では、非営利、ソーシャルセクターにもマーケティングは必要ということは常識になっているが、何が営利企業のマーケティングと異なっているのだろうか? この点に関してはまだ確立された見解はないし、明確な答えを持っている人は少ない。


 まず目的であるが、営利企業のマーケティングの目的が自社の製品サービスを販売することであるのに対して、ソーシャルセクターでは社会の課題を解決することが挙げられる。

 手段は、営利企業が4Pを軸にマーケティング戦略が構成されるのに対して、私は、この4Pに加えて、ソーシャルインパクト、ステークホルダーマネジメントが非常に重要な位置づけを占めていると考える。

 何故なら、ソーシャルセクターは、製品サービスの受益者とお金の支払い手が異なるケースが多いから。受益者は社会的な弱者であったり、資金的には恵まれないことが多い。この点が、営利企業のマーケティングと非営利企業のマーケティングの最大の違いになっている。

 このことが、マーケティングにどのような違いを生じさせるか? まり、製品サービスを提供するのに要するコスト、およびその運営費を誰か別のステークホルダーに負担してもらう必要性が生じるのだ。


別の主体に負担してもらう上で、ソーシャルインパクトとアカウンタビリティがより求められる。

この結果、ソーシャルセクターではマーケティングとファンドレイジングの境界も曖昧になる。これももう1つの特徴である。
1つのアドヴァイスは、「最も自社の活動を評価するステークホルダーを探し出し、その関係性の上に、ソーシャルインパクトを売れ」となる。