2012年6月9日土曜日

広告ブランディングと企業ソーシャルキャピタルを高めることでは、どちらが本当に効くのか?


広告によるブランディング
潜在購買者に対して、
需要を喚起するため
広告という手段で
一方向にメッセージを伝えること、
と定義されるだろう。
したがって、市場をセグメント化し、ターゲティングがマーケティングの有効な手段となる

企業ソーシャルキャピタルを高めることはこれとは異なる

ステークホルダー、生活者全体に対して
信頼、エンゲージメントを高めるために
対話、コミュニケーションという手段を用いて
双方型の関係構築を目指すものである。
各ステークホルダーのエンゲージメントの段階を見極め、その段階をさらに高める施策を実行することが重要なマーケティングとなる

この違いをパラダイム変化としてまとめている。
大きな違い、前者がマーケティング=費用であるのに対して、後者はマーケティング=投資となる点である。

 図表 マーケティングパラダイムの変化












どちらが効果的か? それは条件によるが、、

a.信頼できる製品サービスの情報源を自分で探す
b.生活者同士のコミュニケーション、連携が活発化

これらの条件を満たすと、広告によるブランディングよりも、企業ソーシャルキャピタルを高めることがより効果的に働くことになる。

まさしく、これが、現在、ウェブの世界、広告の世界で起こっていることである。

これまでの調査で、
企業ソーシャルキャピタルと企業の売上高利益率、売上高成長率は強い相関があることがわかっている。つまり、企業ソーシャルキャピタルを高めることは、最終的に企業にとってもわりにあう投資になる。

ソーシャルメディア普及により、企業に高いレベルの透明性、一貫性が求められるようになっている。

口先だけの言葉、その場限りの約束は信頼を失うだけ。
製品メリットを広告で過大に売り込んで購入してもらっても、期待を下回れば、不満や失望を生み、それがソーシャルメディアで拡散され、かえって需要を下げるだけに終わるということにもなりかねない。

従来型広告を従来の方法で用いることの有効性は薄れつつある。
重要視すべきは、短期的な売上ではなく、その企業の信頼、企業ソーシャルキャピタルなのである

企業の社会に対する姿勢を明確に打ち出し、自分たちは何のために社会に存在するのか? どのような製品サービスで社会に貢献するつもりなのか?を明確にし、企業の社会に対するミッションを明確にすることが有効なマーケティングであり、有効な広告となってきているのだ。

(株)ソーシャルインパクト・リサーチでは、以下の7つの決定因子が企業ソーシャルキャピタル高める上で非常に重要な因子として特定化している。
①ミッション性
②透明性
③社会責任のアカンタビリティ
④対話・インタラクション
⑤価値共創のイノベーション
⑥持続可能性への配慮
⑦リスクモニタリング

また、これらをスコア化し、管理していく経営手法が、企業ソーシャルキャピタルを高めることを通じて、高い経営効果を生み出すことができる。

2012年6月8日金曜日

日本の家電産業の敗因 ソニーはアップルではなくディズニーから学ぶ点が多い


 日本の家電産業を考える上で、「何故、ソニーはアップルになれなかったのか」と問人が多いが、私は「何故、ソニーはディズニーになれなかったのか?」とい問いから、アプローチしてみたい。


 資本主義2.0と資本主義3.0ではメーカーもその根本的な設計思想、企業のOSとも言うべきものを大幅に入替えなければならない。企業の設計思想が異なるからだ。


 日本の家電産業のプレーヤーはまだ資本主義2.0の段階に留まっている。ただし、そこに留まる限りは明日の展望はみえてこない。いつまでたっても夜明け前のままなのだ。


 家電産業に最も影響を与えた環境変化は、アナログからデジタルの変化である。これが、企業のアーキテクチャー、最適戦略に根本的に影響を与えている。


資本主義2.0と資本主義3.0を対比すると、図表のようになる。




 今後の戦略フォーカスは、正の外部性をいかに企業内部に取り込むかが重要になる。企業の境界、範囲を線引きし直す必要があるのだ。この面で最も参考になるのは、アップルではなくディズニーなのだ。ディズニーは様々な相手とコラボレーションを臨機応変に組み替える。そのコンピタンスがものすごく洗練し、価値創造に貢献しているのだ。

例えば、美女と野獣はミュージカルに、トイストーリーはゲームに、リトルマーメイドはテレビ番組にという具合である。

 また、企業の成功基準は企業ソーシャルキャピタルとすることだ。株主のみならず、ステークホルダー全体の価値を高めるソーシャルイノベーションを起すことが戦略の要となる。

アップルにあってソニーにないものをねだるよりも、ディズニーにあってソニーにないものを認識し、そのコンピタンスを養うことが、ソニーの明日をつくることになるだろう。

2012年6月7日木曜日

ソニー 企業ソーシャルキャピタル分析




 ソニーが低迷しているのは、革新的な製品開発ができなくなったためと論ずる人が多いが、企業ソーシャルキャピタルの分析からはまた違った側面が浮き上がってくる。


 ソニーの低迷の真の原因は、製品開発力の低下よりも、企業ソーシャルキャピタルが枯渇したため。

 この12年間で、ソニーの企業ソーシャルキャピタルは株主資本対比で351%から▲49%と大幅に低下、長期的ダウントレンドはまだ続き、歯止めがまだかかっていない状態。

 企業ソーシャルキャピタルの減少幅が特に大きかったのは、2001年度、2008年度、2011年度の3年。また、2009年度はソニーの企業ソーシャルキャピタルは枯渇した。同時期は、メディア変革期にあたっており、ソニーの企業価値の源泉であるメディアをうまく活用できなかった、新しい波に乗り損ねたため価値を大幅に失った。

 企業ソーシャルキャピタル減少につれて、利益増減が大きくなり、企業が不安定化。企業ソーシャルキャピタルが低下した結果成長率も大幅に鈍化した。

 企業ソーシャルキャピタルが低下した結果、広告効率が悪くなった。信頼、ブランド、革新的イメージ、ソニーらしさという輝きを失った代償はあまりに大きすぎる。

今後のポイント
 特に、価値への影響が大きい新しいメディアの中でソニーをどう位置づけるかが重要となる。新しいメディア、スマートフォンに対して、どういう新しい価値を提供できるのか? 個々の製品、アプリケーションレベルを超えた、社会的イノベーションを狙うようなプラットフォームビジネスを展開できるかがソニーの再生のカギとなろう。