2014年8月28日木曜日

ソーシャルインパクトボンドは誰のものか?


 日本でも、ソーシャルインパクトボンド(SIB)の知名度が徐々に高まっています。
これまではSIB情報はほとんど海外発でしたが、日経新聞の経済教室でも明治学院大学の原田先生がSIBを紹介されたりして、ソーシャルセクター以外の人も興味を持つようになってきています。

日本でも英国のように休眠預金を原資にして、ソーシャルインパクトボンドにお金を流そうという動きを推進しているグループもあります。ただ、 ソーシャルインパクトボンドってNPOのためだけではないよね、というのがあります。

最近、コンサル会社や大手企業もSIBに非常に興味を持つようになって、相談を受けたり、コンサルをしたりしています。

SIBをソーシャルセクターの新しい資金調達としてみるのは、狭い一面的な考えであることがわかります。

SIBの本質的機能は、これまで顕在化していなかった社会的価値や環境価値を可視化し、そこにPricingをつけることで新しいマーケットを作るという点が重要なところです。資本主義の失敗、市場の失敗をもう一度リデザインすることで資本主義的に解決する点が極めてユニークな点です。実は、これはソーシャルセクターに限らず、営利企業にとってもビジネス化が可能な部分です。

英国で2010年に始まったSIBはソーシャルセクターを対象としていますが、先ほどの本質的機能を考えると、環境エネルギー分野やIT分野、スマートコミュニティ分野、医療分野、町づくり分野にも様々な形で適用できるのではないかと考えています。また、今後のビッグデータ、オープンデータとの流れとも融合していくことも、ほぼ間違いない流れでしょう。

また、マクロ的に捉えると、高度成長期は財政赤字を拡大することがビジネスになりましたが、これからは逆に財政赤字を縮小させることが新しいビジネスになります。SIBにはこの面の、行政コストの削減も期待される面があります。

そうかといって、行政コストが削減された結果、国民や社会が不利益を被ってはSIBが国民から支持を得られることはないでしょう。単なる行政コストの削減手段という位置づけになることはSIBにとっては死を意味していると思います。

SIBの捉え方は各セクターによって異なりますが、 社会課題の解決には様々なセクターの恊働がますます必要となるのは間違いのないところで、恊働を促し、イノベーションを促進するツールとしてSIBが日本にどの程度根付くかは日本の将来にも大きな影響を与えると思うので、自分も協力していきたいと考えています。

2014年8月26日火曜日

Collective Impact 研究会


今日は、Collective Impactの研究会をやります。ソーシャルインパクトのコンサル会社であるFSGが打ち出したコンセプトです。FSGは有名なマイケル・ポーターとクレマーがいます。

 この考え方の前提としては、複雑な社会問題の解決や、大きな社会的インパクトを生み出すためには、様々なセクターやプレーヤーが恊働する必要があるということだと思います。では、そのような複数のプレーヤーがうまく恊働するためにはどういう条件が必要なのか? それをフレームワークにまとめた考え方だと思います。

ちなみに、その5つは
  1. common agenda(共通のアジェンダ)
  2. backbone infrastructure(バックボーンとなるインフラ)
  3. mutually reinforcing activities(相互に強化される活動群)
  4. shared measurement(評価尺度を共有すること)
  5. continuous communicaton(継続的なコミュニケーション)
になります。

Collective Imapctの5つの条件を聞くと、私はピーターセンゲのシステム論を思い出します。両者の考え方は非常に近い部分があると思います。それはさておき、

 様々な利害の対立したり、考え方が異ったりする人たちが効果的に働くには、
共通のアジェンダや、一緒に活動することによってより効果を出すことや、共通の評価尺度、またコミュニーションも必要になります。という意味では、ある意味では当たり前のことを当たり前にまとめたもの過ぎません。

しかしながら、この考え方が魅力的なのは、考え方が整理される面があることとともに、様々なプレーヤーの恊働がより求められてきたという背景と人々の認識の深まりがあると思います。

今日は、東北の復興の実際にプロジェクトに関っている方も参加されるので、理論と実践の融合を楽しみたいと思います。

ソーシャルインパクト・リサーチでインパクト評価のコンサルをおこなっていますが、今後は、より多くのプロジェクト評価はCollective Impactの要素や色彩が深まってくると思います。

2014年4月15日火曜日

持続可能性を後押しする広告



広告代理店のコンサルをやらせて頂き、広告について改めて考えさせられた。

これまでの広告は、消費者の欲求をあおることによって消費を活発化させてきた。その結果、資源のムダ、自然環境への破壊、不要な購買を促進し、外部性を生み出してきた面もある。

これから求められる広告は、
生活者に、正しい情報を提供して、持続可能な社会を後押しする広告ではないか。

これからの経済活動は「環境を破壊しないこと」は極めて重要な原則として捉えるべきだ。つまり、社会的、環境的インパクトを考慮しない消費を促進するのは、もはや無責任だと言われる時代になってしまっている。ソーシャルインパクトを考慮しない消費をあおるような宣伝ではなく、生活者に正しい情報を提供し、持続可能な消費に方向付ける、持続可能性をベースにした広告の存在は、今、まさに必要で、長期的な意味で最も社会に貢献するのではないでしょうか?


2014年2月25日火曜日

インパクト評価の役割



プロジェクトをやる場合の流れは、インプット→アウトプット→アウトカム(経済的価値+社会的価値+環境価値)

トリプルボトムライン(経済的価値と社会的価値と社会的価値)を高めることで、持続可能性を高めることができるか?

経済的価値は見えやすいが、社会的価値、環境価値は見えにくい

見えにくいものを正しく評価されないと、価値あるプロジェクトが実現されなかったり、価値ある資本(社会的資本、環境資本)が毀損されるリスクがある

インパクト評価の目的
  • ミッションの実現
  • ステークホルダーの納得
  • 寄付、投資を呼び込む
  • 人や関係者を呼び込む
  • ソーシャルイノベーションの実現等

2014年2月21日金曜日

SROiマニュアル


現在、国の助成事業の研究会で、NPO/社会的企業が自分たちでSROI等の推計ができるようなマニュアル作りを進めている。私はこの取り組みには否定的な見解。

SROIはインパクトの1つの表現形式に過ぎないので、それを世の中に押し進めることが果たしていいことなのか? がまず疑問。

SROIはコンテクスト依存度が高く、NPOが自社で推定したとしても、それは主張、オピニオンに過ぎず説得力も持たない。かといって、上から目線の第三者評価は有害以外の何者でもない。

SROIはアメリカで生まれたが、アメリカでは全然普及せず、英国では普及しているといっても限定的な形に過ぎない。その本当の理由がわかっている人が多いのが残念だ。

インパクトを生み出そうという思想、インパクトを測る考え方は重要であるし有益だ。しかし、その表現形式にとらわれるのは本末転倒。

ソーシャル評価に関わる人間として、自分で言い聞かせているのは、評価のための評価にはしないぞ、ということ。全ての人の時間の費用のムダになるから。

後、テクニシャンにはならないぞ、ということ。自分のインパクト評価のやりかたの論拠を海外機関がこうやっているから、とか。自分以外の外に求めるのがテクニシャンだ。

真央ちゃんのフリーの演技の演技のように。 魂をこめる。テクニシャンはたくさんいる。自分の唯一性はそこにはないのだ。