2012年12月6日木曜日

ソーシャルイノベーションカンパニー調査を斬る

 日本財団のソーシャルイノベーションカンパニー調査の報告会に参加。私も、この調査には企画段階で関わっていたので、報告書の質が低レベルになってしまったのは非常に残念。何故こうなってしまったのか? 自戒も込めて問題点を指摘しておこう。

内容的には、
ソーシャルイノベーションカンパニーという視点で包括的なアンケートやりました。個別ヒアリングで、比較的うまくいっている企業群を3通りのカテゴリーをまとめましたという流れ。

その3つのカテゴリーとは、
   従来は、政府、自治体等が行ってきた社会的課題をビジネスの手法で解決している企業
   短期的な収益を超えた長期的な視点から取り組みを行っている企業
   NGONPOとの連携によって社会課題を解決する人材育成をおこなっている企業
ざっとこんな感じ。

問題点
  1. アンケートと3つのカテゴリーの関係性が全く見えない。1700社という膨大なアンケートやったのだから、そこからインプリケーション、そこからの仮説をもとに個別ヒアリングにつなげるべきだろう。これは報告書作成の際の基本的なレベルの話。
  2.  マイケルポーターの共有価値との関連 CSR業界はポーターの共有価値の考え方が注目されている。ポーターの共有価値(CSV)の話がレポートには出ているが、ソーシャルイノベーションカンパニーと共有価値との関連が明確化されていない。
  3. 3つのカテゴリーの関係がわからない。ソーシャルイノベーションカンパニーは、①or②or③のどれか1つを満たせばいいとすると、条件が弱すぎる。この3つのカテゴリーはロジックモデルで言うと、インプット、活動レベルのものであり、最終成果、ソーシャルイノベーションにどう繋がっているのがわからない。
  4. カテゴリーの3つもよくみるとおかしい。カテゴリー①は一般的なソーシャルビジネスの定義。ソーシャルイノベーションカンパンー=ソーシャルビジネスをおこなっている企業ではないだろう。このことからすると、この①はソーシャルイノベーションカンパニーの条件とするのは間違い
  5. 調査の骨格の作り方に失敗 今回の調査は、ソーシャルイノベーションカンパニーの定義が曖昧なままにアンケートをスタートし、その結果、何をインサイトとして発見しようとしているのかが見えなくなってしまった。ソーシャルイノベーションカンパニーはどういう条件なのか、判断基準を示すことができていない。当然、読者にも伝わらない。
  6.  最後の「ソ—シャルイノベーションカンパニーの普及に向けた課題と今後の展望」は、内容のレベルが低すぎる。これでは大学生のレポートだ。ここが一番重要な箇所でしょう。
  7. 本来は、ソーシャルイノベーションカンパニーの客観的な評価基準を世の中に提示しようとしたのだが、ソーシャルインパクト・リサーチ社との条件が折り合わず、残念ながら今回は失敗に終わった。個別レポートの量を多くすることで、何とか取り繕う繕おうとしているのだが、その点が読者からすると見え見えで、内容が希薄化して読む気を失わせる。 つまり、報告書が読み手からすると、コストパフォーマンスが非常に低い報告書となっている。
教訓:内容を熟考した上でアンケートを作り出しましょう。とりあえず、アンケートを出すと、その後の修復は難しい。戦略の間違いは戦術では挽回することはできない。

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