2011年9月28日水曜日

SROIの利用法と限界についての考察

SROIのセミナーに参加して、利用法と利用の限界などがわかったのでまとめておきます。

SROIの使い方はステークホルダー間のコミュニケーションを高める、そのプロセス自体に意味を見いだすことだ。端的に言うと、SROIの結果には残念ながら意味がないから。意思決定には使えないのだ。

そのことを簡単に証明してみよう。

SROIが有用な指標と言えるためには、

「SROIを高めることが、社会への価値を高めている」という命題が成り立つ必要がある(命題1)

しかしながら、そうは言えないのだ。

命題1が成り立つためには、
あるプロジェクトが社会への価値を高めているが、別のプロジェクトが社会への価値を高めないということが示されないといけない。

つまり、その分岐点、ハードルレートが示される必要があるのだ。

しかしながら、SROIはハードルレートを示すことはできない。

この点を理解するには、営利企業の場合で考えてみるとよくわかる。
営利企業、ビジネスの意思決定でROIのみで採択プロジェクトの意思決定をやっている会社はほとんどない。むしろNPV(ネットプレゼントバリュー)やDCF(ディスカウントフロー)を使うケースが多い。ROIは意思決定の判断基準を示さないが、NPVやDCFは意思決定の判断基準を示すからだ。NPVがプラスであれば、その投資が企業の価値を高めるが、マイナスの場合は企業価値を低めるのだ。

 SROIもROIと状況は同じことだ。インプットとアウトプットの分子と分母の比率にすぎないからだ。SROIが1より高いから社会への価値を高めるとは言えない。

むしろ、NPOや社会的企業はSROIをギャップ分析に利用すべきだと思う。高いSROIなのになぜマネタリーベースのROIは低いままなのか? その原因は何か? どういうコミュニケーション、施策でそのギャップを改善できるのか? こういう点を考えることは有益だろう。

 逆説的だが、非営利企業、ソーシャルベンチャーにSROIを勧めないが、営利企業はSROIを導入して、社会、様々な利害関係者の、外部性を理解する上での補完的なツールとして導入するのがかなり有益ではないかと考える。

利益を出していても、社会への外部性を考えると、活動は社会への価値を生み出していないということを再考する貴重な機会を与えるからだ。

 企業にとって、社会、様々なステークホルダーの影響力を正しくは把握することは、ソーシャルメディア時代には特に求められると思う。影響、評判、信用がメディアを通じて伝播するから、これまでステークホルダーと考えていない人にも影響力があるということは日常茶飯事だ。

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