2012年11月30日金曜日

Collective Impactの有用性


社会的課題の解決においてCollective Impactというアプローチが注目されるようになっている。

それはどういうアプローチなのか?
複雑な社会的課題は単独プレーヤーでの解決には限界がある。様々なセクター、レイヤーの協調が必要である。この点は多くの人が同意するだろう。

では、そのような社会的な課題の解決において、様々なセクターの協調はどのような条件でうまくいくのかを研究する演繹的なアプローチである。

以下の5つが条件として挙げられている。
①共通のアジェンダ
②共通の測定システム
③互いに補強し合う活動
④継続的なコミュニケーション
⑤ファシリテーターによるサポート

議論となるのが、

①これまでに類似の考え方はなかったのか? プラットフォーム論とどう違うのか?

②どの点が考え方としては新しいのか?

 社会的課題の解決という点は新しいが、組織論で長く研究されてきたうまくいくチームとどう違うのか? 例えば、ピーターセンゲの学習する組織の条件と、抽象度の違いはあるものの、似た要件が多い。
③実際に、このフレームワークは誰のどういう点に役立つという、実用的な有用性を有しているものなのか? 

 共通のアジェンダのものと、継続的にコミュニケーションによってうまくやりましょう、というかけ声は分かるが、現実にうまく機能するものなのか? 例えば、政府とNPO、企業が共通のアジェンダを持つことも難しいし、同一の評価指標のもとで協調行動を促すのも実際は難しい。それぞれの利害が異なり、特に社会的価値のような抽象的なもので合意形成をするのはさらに大変なはずだ。

④ 後、私が気になるのは、リスクという観点がこのフレームワークには入っていない点である。
 
 実際の経済活動においては、それぞれのプレーヤーの利害は異なり、それが様々なリスクの引受けや押しつけ、トレードが行われる。その点が欠けている点が、③の現実への適用性に疑問を感じさせる要因である。ゲーム理論で囚人のジレンマから抜け出すプレーヤーの協調をどう促すのかという研究がある。5つの条件は、協調行動を実現する根本原因というよりも、協調行動が実現した後にみられる特徴のレベルではないかという疑問も湧く。

今後、いくつか実例をもとに、このCollective Imapctという考えがどれだけ現実の説明力があるかを研究してみたいと思う。

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