2012年7月23日月曜日

社会的企業の投資モデルの有効性?



ムハマド・ユヌス博士が来日しており、その著書「ソーシャルビジネス革命」を読み返してみた。その中で、ユヌス博士はソーシャルビジネスに対する投資の必要性や有効性に関して触れている。

このテーマは私も非常に関心がある分野である。

寄付と投資によって何が変わるのか?
果たして、寄付と投資によって、社会的なインパクトにどう違いが生じるものなのか? 

Acumen fundBOCOThe Best Available Charitable Option)は寄付と投資の社会的なインパクトの差の大きさをもって、投資モデルの有効性を説明している。

私は、この寄付と投資の違いは、その概念の違いよって差が生じるわけではなく、その前提条件の違いによって差が生じるケースがありうるものと解している。(何のことだかわかりませんよね、、もう少し説明させて下さい)

実際に、社会的投資と唄っても、金銭的リターンが充分に生まれるわけでもない。むしろ、事後的に金銭リターンが生まれない可能性が大きいことを理解して投資して下さいというエクスキューズに使われているケースが圧倒的に多い。

仮に、元本が全部返済されなかったら、そのお金の寄付と投資の資金フロー的な違いは事後的には生じなかったことにもなる。

ケース1
投資家→投資先に資金が移動→投資家には戻りはなし。以上(笑)

ケース2
寄付者→寄付先に資金が移動→寄付者に戻りはなし

ケース1とケース2では資金フローに違いは生じない。

うまくその投資プロジェクトが金銭リターンを生じたら、それがまた投資家に戻ってきて、さらに別の社会的な投資プロジェクトに有効に投資されたら、その社会的なインパクトは寄付の場合に比べてはるかに高くなる、乗数的な効果を生むことは理論的にはありうる。

ケース3
投資家→投資先に資金が移動→投資家には戻り→再投資→投資先に資金が移動→戻り→(乗数効果)→

社会的なインパクトの大きさ
大(うまくいった投資モデル)>>>>> 小(失敗した投資モデル=寄付) 

社会的なインパクトという観点では、成功した投資モデルは大きな社会的なインパクトを生むが、失敗した投資モデルは寄付と同様に小さな社会的なインパクトしか生み出さない。


ただし、この説明だと、きっちとお金が返ってくるところ、逆に敷衍すれば、ソーシャルリターンが低いところにお金を出すのが社会的インパクトを高めるという面があるので、経済的リターンと社会的リターンの統合した評価軸が必要だろう。

また、寄付と投資のお金が投じられる領域の違い、役割の違い、などの議論がありうる。社会的投資の意義は、通常の民間金融機関が出しにくい分野にお金を出せるというところが価値が高いところでもある。日本でも震災直後は、緊急的支援に寄付が必要だったが、ある程度メドがたって、復興段階に入ったら、より多くの資金を引きつけるため、投資モデルを取り入れるべきだという議論もある。









2012年7月22日日曜日

実は、戦後の日本株式会社はソーシャルビジネスだった



 ノーベル平和賞のムハマド・ユスス氏が来日している。
ユヌス博士は、ソーシャルビジネスを2種類の定義をしている。

タイプ、社会的な課題の解決に専念する「損失なし、配当なし」の形態で、投資家は元本以上のリターンを得ることはできない。投資家は元本以上を得られないので、要求リターンは低いので、社会的課題の解決の投資が活発に行なわれる。

タイプⅡは貧しい人々が所有する営利会社だ。直接所有される場合も、特定の社会的な目標に専念するトラスト(信託機関)を通じて所有される場合もある。グラミン銀行はタイプⅡのソーシャルビジネスに分類される。

日本は、戦後から80年代前半までは、猛烈な勢いで成長した。今とは違い、雇用が社会的な問題になることなどなかった。

考えてみると、日本の80年代前半までの期間は、ユヌス博士が言うところの、日本株式会社はタイプⅠのソーシャルビジネスをやっていたのだ

投資家は元本をそのまま寝かしつけて、投資回収をおこなわなかった。結果、再投資されて、最大の社会的課題である雇用問題を見事に解決することができていたのだ。

今、日本は様々な社会的な課題に囲まれている。

もう一度、様々な社会的課題を解決するために、ソーシャルビジネスをおこすべきではないのか?

そのための原理は、タイプⅠのソーシャルビジネスになるだろう。

2012年7月20日金曜日

TABLE FOR TWOから学ぶソーシャルビジネスのビジネスモデルのあり方

TABLE FOR TWOも用いた、ビジネスモデルジェネレーションのワークショップをおこなった。

この団体がユニークなのは、
このアイデア自体が、ダボス会議を主催する世界経済フォーラムの2006年若手リーダー向け会議に参加した近藤ジェームスさんらが立案し、翌年法人化した。ということで、まさにビジネスモデルから事業が始まった点である。

また、
日本のソーシャルビジネスにとっては非常に珍しいことだが、既にグローバル展開をしている。優れた、ユニークなビジネスモデルがスケールアウトを可能にしている。今の勢いをみると、今後もまだまだ成長が可能なように思う。現在の収益は1.4億円だが、10倍ぐらいまでは少なくとも可能なのではないか、と思う。

ビジネスモデルキャンバスを作成する際に、ワークショップの参加者が迷ったのは、顧客セグメントの箇所であった。つまり、この事業にとっては顧客は誰か?という点である。通常のビジネスではお金を支払う人が顧客であり、その顧客が一番偉い。

TABLE FOR TWOの場合は、先進国の肥満に気にする人たちが20円を支払いヘルシーな料理を楽しみ、その20円が途上国の給食1食分に寄付される形になる。お金を支払うのは先進国の人だが、その目的な途上国の貧困に苦しむ人たちを救うことである。

では、どちらが顧客なのか?

私は、ビジネスモデルキャンバスの顧客セグメントに、この2つの顧客を並列に表記した。先進国の人がいなければ、途上国の人も救うことができないからだ。

顧客というよりもステーホルダーと表記した方が適しているように思う。

また、ソーシャルビジネスの場合はサービスの受益者とお金を支払う人が異なるケースが多い。そのようなケースをつなぐ役割を果たすのが、ソーシャルインパクトの可視化である。

TABLE FOR TWOの場合も、20円が途上国の1食分の給食になるという、わかりやすく説得力のある「ーシャルインパクトの可視化」に成功したことが、このビジネスの肝であり、スケールアウトを可能にした仕掛けである。

以上を踏まえると、
ソーシャルビジネスのビジネスジェネレーションを考える際には、①顧客セグメントを顧客からステークホルダーに拡張し、②サービスの受益者がお金の支払い手ではないケースが多いケースに、ソーシャルインパクトの可視化をフレームワークに修正を加えた方がより適したものになると思う。

2012年7月19日木曜日

クックパッドからソーシャルビジネスの未来を考える


クックパッドとTABLE FOR TWOも用いた、ビジネスモデルジェネレーションのワークショップをおこなった。

まず、何故この企業を選んだか? その理由について述べたい。今回はクックパッドについて。

クックパッドが面白いのは、この会社は97年に設立されて10年間全く儲からなかった。それが、10年たってビジネスモデルができると狂ったように儲かるようになり営業利益率で約50%という高収益企業になった、ことがまず興味深い。経営者にはとてつもない根気と執念がある。

クックパッドの資産は無償でレシピを投稿してくれる人たちの無償の行為によって支えられている。それを可能とするデザイン、インターフェースからいろいろ学ぶことができるはずだ。ソーシャルビジネスをやっている人は共感、共感というワリには、この当りに鈍感な人が多い。ユーザーに価値ある経験を提供できなければ共感は得られない。クックパッドは忙しい主婦を相手にしているから、検索のスピード、レスポンスにものすごい投資をしているのだ。そのインターフェース、ユーザーの価値ある経験が投稿してくれるユーザーを支えているのだ。この無償で価値ある資産を共感で集めることができ、この資産を使った複数のビジネス、顧客を生み出せることが、クックパッドの高収益体質を支えている。

裏側の利益を生み出す仕組みも面白い。普通の人はクックパッドを無料ユーザーとしてク利用しているが、有料課金があり、これがかなり収益を支えるようになっている。無料会員の約5〜6%ぐらいの数にあたる。無料と有料の間に機能の差(人気レシピの検索等)を設けて、エンゲージメントの階段の違いを作り、有料課金を可能としている。この当りは、クラウドファンディングでも使われるテクニックだ。

実は無料のユーザーは会社に何も貢献していないかというと、とんでもない話だ。彼らの投稿やコミュニケーションがあるから有料ユーザーが生み出される。無料ユーザーの外部性というものが有料課金ユーザーを引き寄せる蜜のような役割を果たしている。ソーシャルゲームの無料、有料会員も同じ理屈だ。

また、ミツカンの酢を使ったレシピコンテストのような打ち出し方をしており、メーカー企画も、ユーザーからすると広告のような感じがしない。広告のように感じさせない広告はユーザーとメーカーのwin-winの優れた広告である。この中立性を生み出せるという点にメーカーはものすごく魅力を感じるのだ。

最後に、私がワークショップの参加者に聞いたのは、「クックパッドはソーシャルビジネスではないですか?」という質問である。みな、ソーシャルとは何か? 営利企業はソーシャルとは言えないのか? どういう要件を満たせばソーシャルビジネスと言えるのかを考えてみてもらいたい。

このケースを徹底的に学ぶとソーシャルビジネスを考えるヒントがたくさん見えてくるので、是非トライしてもらいたい。


2012年7月15日日曜日

ソーシャルファイナンスの7大原理


今後、発展が見込まれるソーシャルファイナスの指針となる、「ソーシャルファイナンスの7大原理を示してみたい。
1.       ソーシャルファイナンスはお金の出し手がお金の受け手を制御する1つの制御(ガバナンス)メカニズムである

2.       ソーシャルファイナンスはお金の出し手にとって、経済的なリターンと社会的リターンを満たす手段を提供する。

3.       投資家は、経済的なリターンと社会的なリターンの総和による効用最大化を目指す。

4.       社会的なリターンを提供するガバナンスメカニズムは、お金の出し手とお金の受け手がダイレクトに結ばれるP2P型がより適している

5.       企業の資金調達は負債と資本がある。これに加えて、ソーシャルファイナンスにおいては、条件付き契約(例 匿名組合契約)が第三の手段として用いられる。これは、資金の受け手と出し手に、より柔軟な契約することでより効率的契約となる。契約締結コストの低下とモニタリングコストの低下によって可能となる。

6.       ソーシャルファイナンスにおいて、お金の出し手の効用は、その可視化により、集合的投資、共感、投票、志を実現する意味合いが深まっていく。

7.       クラウドファンディングの革新性は、これまでは資金を調達することが難しかったプロジェクトや個人が資金の調達を可能とした点にある。クラウドファンディングは比較的ゆるい契約形態(不完備契約)であるが、プロジェクトのミッションの明確化、実名制、プロセスの可視化によりモニタリングコストの低下、情報の双方向性、コミュニティ化による社会的信頼(ソーシャルキャピタル)醸成がそのメカニズムを補完する。