株式会社ソーシャルインパクト・リサーチ代表パートナー。慶応大学大学院(KBS)卒。早稲田大学院環境エネルギー研究学科博士課程在籍中。証券アナリスト。持続可能な社会の実現のために、ソーシャルインパクトの評価測定、そしてソーシャルインパクトをお金にかえる仕組みを提案。ソーシャルインパクトの評価測定、インパクトファンドの運営等を事業としておこなう。Twittier:kumataku1
2012年9月8日土曜日
「良い会社」に関する仮説について
世の中には、良い会社を判断する様々な基準や考え方にあふれている。今回は、良い会社が満たすべき条件、良い会社の7つの仮説を提示してみたい。
まず大前提として、企業は株主のみならず様々なステークホルダー(従業員、取引先、顧客、行政等)と取り巻かれている。これらのステークホルダーとの良好な関係構築がなければ、その企業の中長期的な持続的な成長は難しいものと思われる。
良い会社の判断基準は、ステークホルダーからの視点、ステークホルダーとの関係性になるのである。
良い会社の判断基準は、ステークホルダーからの視点、ステークホルダーとの関係性になるのである。
大前提
「良い会社はステークホルダーと良好な関係を保ち、ステークホルダーから高い信頼を得ている。いわゆる、企業ソーシャルキャピタルが高い」
また、その企業がどういう方向に向かっているのかが分からなければ、ステークホルダーからの協力が得られにくい。
仮説1
「良い会社は高いミッションを掲げ、ステークホルダーに対して、機能性価値のみならず、情緒的価値、精神的価値を提供する」
信頼を得るには、絶え間のない誠実なコミュニケーションが不可欠である。
仮説2
「良い会社は、オープンな企業文化をもち、ステークホルダーに対して高い透明性がを保っている」
仮説3
「良い会社は、ステークホルダーとのコミュニケーションチャネルを確保し、対話型、双方向のコミュケーションを活発にしている」
ソーシャルメディア普及もあり、経営に高いアカウンタビリティが求められるようになっている。
仮説4
「良い会社は、ステークホルダーに対して高いアカウンタビリティを果たしている」
また、社会的課題の解決には様々なステークホルダーとの協力関係を築く必要があり、
仮説5
「良い会社は、ステークホルダーとの価値共創を通じて、社会にイノベーションをおこしている」
また、地球の持続可能性が問題になり、様々な自然環境や有限の資源の利用に関しても意識が問われるようになっている
仮説6
「良い会社は、サステナビリティに関して高い意識をもち、環境等にも企業行動で配慮をもっている」
企業には様々なリスクがあり、そのリスクにうまく対処することが不可欠である。
仮説7
「良い会社は、リスクに対して十分な注意をし、リスクモニタリング体制を備えている」
以上の結果、
良い会社は、良質で低コストの経営資源を集め、ステークホルダーに高い協力インセンティブを生み出し、「囚人のジレンマ」から抜け出し、高い協力関係を獲得している。この7つの条件を高い水準で満たす良い会社が、いかに高い投資パフォーマンスを示すかは後日報告したい。
2012年9月7日金曜日
シェアエコノミーの本当の価値計算方法は?
DCF法などの経済計算手法では、柔軟性を失うコストは取り込むことができないか、過小評価されているケースがほとんどなのだ。
あらゆる分野でシェアリングが広まっている。シェアリングエコノミーの到来を予感させる(図表)。しかしながら、購入とシェアリングの便益比較も、リアルオプション計算に基づく方法でもっと正確に計算したら、シェアリングの価値をもっと判定できるようになると思う。
かなり前だが、HBRで、It May Be Cheaper to Manufacture at Homeという論文で、「遠距離だが低コストの生産地と近距離だが高コストの生産地の便益価値の比較を、リアルオプションによる評価方法」でおこなっていた。これも同じ発想に基づく。
他にも、結婚と独身の便益価値も、同じように計算することが可能だ。結婚によって、新しい出会いのチャンスを失う、自分のライフスタイル変更、そして柔軟性を失うなどのマイナス価値が生じる。結婚は思った以上にコストは高い。小栗旬さんは結婚してこのコストの大きさを実感しているでしょう。また、この柔軟性を失うコストは所得水準によっても大きく異なる。所得水準と婚姻率の関係をこの考え方と計算方法でもっとうまく説明できると思う。
ただし、男性と女性では計算方法がやや異なる。相手方からみた、経年変化に伴う価値の変化率が女性の方が男性よりも急激だからである。個人的には、今の妻に結婚を迫られて結婚を決めたことは人生最良の決断の1つだったと思っていますが、、、
2012年9月6日木曜日
CSRは企業の利益につながるかどうかを判断する方法
「企業の社会貢献、CSRは企業利益につながるかどうか?」。この問いは、これまで多くの企業人、CSR業界の人たちを悩ましてきた問いである。また、実証研究も数多くおこなわれてきたにも関わらず、なかなか結論が出せずにいる。
私からすると、この問い自体、問いの設定自体が間違いで、ナンセンスなのだ。
(株)ソーシャルインパクト・リサーチがおこなった実証調査(上場企業2286社)で、企業CSRの利益に与える影響は各社の信頼度によって大きく異なっていた。
問うべきは、自社のCSRは利益につながるかどうか? どの程度、利益につながっているか? である。
この問いに、答えを与えてくれるのが、企業ソーシャルキャピタルだ。企業ソーシャルキャピタルは、「様々なステークホルダーが企業に寄せる信頼、好意、期待感、関係性、コンテクストの強さ」と定義される。一言でいわば、企業の信頼度である。
(株)ソーシャルインパクト・リサーチはこの定量化に成功しており、この企業ソーシャルキャピタルの利益に与える感応度を、「ソーシャルイノベーションスコア」と定義する。
この数値は、企業の信頼をうまく利益につなげることができる程度を示している。現在のところ、日本企業でこの数値が高いのが、ヤフー(0.44)、テルモ(0.8)、日本電算等である。
このソーシャルイノベーションスコアを使うことで、①CSRは利益にどの程度つながっているのか? ②同業他社に比べてCSR活動は効果的に行われているのか? ③どの点を改善するとCSR活動をより効果的にできるか?を判断することができる。
2012年9月5日水曜日
ソーシャルイノベーションをどう定量化するか?
ソーシャルイノベーションという概念が非常に注目されるようになってきた。しかし、これをどうやって定量化するか?どうモデルかするか?が示されることはない。
ソーシャルインパクト・リサーチ社はソーシャルイノベーションの定量化とモデル化に日本で初めて成功したと思っています。
以下のように考えます。
以下のように考えます。
営業利益を増やしていくことが必要だが、そのために、価値ある企業資産(企業ソーシャルキャピタル)が減少する場合は、その企業の成長は持続可能ではなく、ソーシャルイノベーションをおこしているとは言えない。
具体的に示そう。
第1象限をソーシャルイノベーション領域と定義する。
第2象限は営業利益は増やしているが企業ソーシャルキャピタルは減少する。資産を食いつぶしている状態である。
第3象限は、営業利益もマイナス、企業ソーシャルキャピタルもマイナス。企業としては危険水域にある。
第4象限は営業利益はマイナスであるが、企業ソーシャルキャピタルは増えている。潜在的な実力を発揮できていない。
レベル4企業:営業利益もマイナス、そして企業ソーシャルキャピタルも減少する段階は、企業のガンバナンスに問題がある。
レベル3企業:営業利益は増加に転じる。企業としてのブランド管理には成功した段階だが、企業ソーシャルキャピタルはマイナスでまだ持続可能性は低い。
レベル2企業:企業ソーシャルキャピタルはプラスに転じる。顧客に対するブランド管理以外にも、幅広いステークホルダーからの信頼構築に成功する。しかしながら、その企業ソーシャルキャピタルを利益に転じるビジネスモデルにまだ問題がある。
レベル1企業:この企業群は営業利益(フロー)も企業ソーシャルキャピタル(ストック)もプラスになり、持続可能なソーシャルイノベーションが可能となっている。
また、レベル1企業の「営業利益の増分/企業ソーシャルキャピタルの増分」をソーシャルイノベーションスコアと定義する。
この数値が大きいほど、企業ソーシャルキャピタルという信頼を利益に転換する力が大きいので、ソーシャルイノベーションカンパニーのベンチマークとすることができる。このランキングを今後公表していくが、このランキングで日本企業の驚くべきことがわかるので、乞うご期待。
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