2012年12月31日月曜日

2012 ソーシャル業界の雑感と来年のトレンド


今年のソーシャルセクターの自分の雑感と来年の展望を考えてみたい。

 ソーシャルセクターの中でも、様々な予算がついた復興支援がウェートとしては高まったソーシャルの中で、農業、環境エネルギーのウェートが高まっていく方向にある

 復興支援型地域社会雇用創造事業は事業仕分けにあい、来年は継続されないだろう。事業の効果が見えづらい、曖昧という点で仕分けになったが、ソーシャルセクターをどう評価すべきかという点は課題が残った

 社会的価値の評価手法、SROI、ソーシャルインパクト指数等に徐々に興味をもつNPO/ソーシャルベンチャーの人たちも増えてきている。しかしながら、それが実際にどう役に立つのか、例えばNPOの寄付を集める等に役に立つを示す必要があるだろう。 

 ソーシャルセクターの資金調達、ファンドレイジング、ソーシャルインベストメントに関心をもつ人たちが増えてきた。前者は、日本ファンドレイジング協会の努力が大きい。後者はまだ一部の人たちの関心事という印象である。

ソーシャルな資金調達ではクラウドファンディング、Ready For? 、Campfire等が注目を浴びるようになってきている。NPOでも活動をプロジェクト化すれば利用できるので、来年もこの流れは大きくなるだろう
 統計をみないとわからないが、寄付は、震災復興の寄付疲れから、少しトーンダウンした印象を受ける。

 NPOの寄付税制が変更されたことの世間の理解、周知がまだ徹底されていないようだ。寄付もまだ少額なので申請処理が面倒という面もあるのだろう。
 
 民主党の「新しい公共」の流れでソーシャルセクターはだいぶ恩恵を受けた。自民党政権に変わり、これまでの流れがどう変わるかが注目される。休眠口座の検討会等は夏頃から中止されており、おそらくソーシャルセクターは逆風になるのではないか。

 もう一つ、自民党政権に変わって大きな影響を受けそうなセクターは生活保護者、弱者保護のスタンスの変更でる。  

 自分の注目の団体としては
TABLE FOR TWO。ビジネスモデルという発想から生まれた団体でまだスケーラビリティがありそうだ。今年、ソーシャルセクターで新しいビジネスモデルが開発されたという例は少なかったように思う。


 相変わらず、ソーシャルセクターでは、持続可能な経済性をどう確保するかが大きな課題である。

 来年、ソーシャルセクターが大きく変化する、社会的なインパクトを与えられるかどうかはソーシャルな資金調達方法がどう変わるかが大きい。ソーシャルインパクトボンド等が注目されるでしょう。

2012年12月10日月曜日

インパクト・インベスティングの可能性



 インパクト・インベスティングとは、金融市場を通じた融資や投資を通じて、貧困や教育など途上国の社会的な諸問題を解決しようとするものである。 米国でもまだ依然として、寄付や政府援助が中心であるが、特に2008年の金融危機以来、既存の金融システムが限界を露呈する中、インパクト・インベスティングが社会に変化を起こし得る資本の1形態として注目度が高まっている。 インパクト・インベスティングの市場は、今後10年で、5,000億ドル(40兆円)にもなると言われている。 

 インパクト・インベスティング同様、途上国の生活水準の向上を目指すマイクロファイナンスは、既にバングラデシュ、インド、メキシコで、1億人以上の極小(マイクロ)企業家に対して、500億ドル(4兆円)もの融資を行っている。 マイクロファイナンスの大手であるインドのSKSマイクロファイナンスやメキシコのバンコ・コンパルタモスなどは、当初は非営利団体であったが、今や民間の投資家が出資する存在となっている。 一方、インパクト・インベスティングは市場原理を通じた資本の提供を行う点に特徴があるが、それが果たしてうまく機能するかという問題も存在する。

 地球上の20億人の人々が、水、医療、電気が不足しており、25000万人の子供が教育や予防接種の機会が持てず毎日250万人が死亡するという現実を前にして、インパクト・インベスティングがすべてを解決してくれるというのは幻想である。 その点で、公的な援助の役割は今後とも重要であり続けることは間違いないが、市場原理に基づく民間の投資家の参加を、インパクト・インベスティングを通じて促すことで、政府単独での援助よりも、より効率的かつ効果的に、途上国の貧困などの諸問題の解決が可能となると思われる。 

インパクト・インベスティングは、市場原理を通じて行うものであるだけに、元本の保全が重視される。インパクト・インベスターは、インパクト・ファースト・インベスターとファイナンシャル・ファースト・インバスターの2種類に分類される。 

 インパクト・ファースト・インベスターは何よりも、社会や環境の問題の解決をめざし、投資収益の獲得は二の次とする。 一方、ファイナンシャル・ファースト・インベスターは、投資収益の獲得を第一義とし、諸問題の解決はより低位と位置付けている。 しかし両者とも、民間の投資家であるため、投資の収益がマイナスとなることは望んでいない。

 インパクト・インベスティングの投資家には、途上国援助を行う金融機関、民間の基金、民間商業銀行、事業会社、個人富裕層などがある。 また投資手法には、ミッション・リレイテッド・インベストメンツ(MRI)と、プログラム・リレイテッド・インベストメンツ(PRI)に大別できる。

 
 ミッション・リレイテッド・インベストメンツ(MRI)は、基金など投資家が、社会的善の目的追及に合致する投資を行い、かつ市場平均並みの収益を目指すものである。 一方、プログラム・リレイテッド・インベストメンツ(PRI)は、社会的善を専ら追及し、収益は市場平均以下でもよいとする。 米国では、基金が税制上の特典を得るためには、資産の最低5%を毎年、収益を生まない無償の社会的事業に投じなければならないとされる。

 上記投資家と途上国の事業者をつなぐ仲介業者が次々に生まれている。 アキュメン・ファンド、グラスルーツ・ビジネス・ファンド、IGNIA、オミディアール・ネットワーク、やルート・キャピタルなどがある。 これらは、株式、債券、融資、助成金、ベンチャーキャピタル、不動産、ヘッジファンドなど種々な形態を通じた援助を行う。

 米国では、毎年3,000億ドルが慈善目的の投資であるが、そのうち基金が450億ドル、事業会社が150億ドルとなっている(2009年)。 興味深いことに、1969年以降、米国の基金は、税務上の非課税特典を得るため、資産の5%を慈善事業に配分したためか、PRIでは市場平均以下の収益しかあげれなかった。 2011年の調査では、1,200の基金のうち、14%しか、ミッション投資をしていなかったが、さらにそのうち半分がPRIを行っており、28%PRIMRIの両方を行っていた。 この低いPRIに比率は、基金が保守的なためか、質の高い投資対象が少ないためか、不明である。

成長するインパクト・インベスティングの市場のインフラとしては、ANDEAspen Network of Development Entrepreneurs)やGIIN(Global Impact Investing Network)などのネットワークが円滑な情報交換の場を形成している。 またGIINが中心となって、IRIS(Impact Reporting and Investment Standards)という業界標準ともなるべき共通の評価システムの構築も進んでいる。

2012年12月7日金曜日

オバマ政権のソーシャルインパクトボンド(SIB)



オバマ政権の予算は総額3.7兆ドル
中身は、安全保障、ヘルスケア、防衛、輸送、教育、、、

しかし、最も興味深い部分は
0.003%の部分

たった1億ドルだけど、、、


それは何だろうか???

ソーシャルインパクトボンド(SIB

SIBって何?

SIBはパブリックセクターが改善された社会的なアウトカムに対してお金を成功報酬で支払う契約のことなんだ

それってどういうこと?

基本的に、民間からの投資によってパブリックサービスの支出をまかなう仕組み。ただし、政府は、そのプロジェクトが完遂できた時、つまり社会が良くなった時のみお金を支払う仕組みなんだ。

そこにキッカーがある。だから、投資家は社会が良くなると得をするし、社会が良くならないと損をする仕組み。

政府はそのプログラムが成功した時のみお金を支払えばいい

納税者はそのプログラムが社会を良くすることに失敗した場合はお金を支払う必要はない

すごくいいように聞こえるけど、何か落とし穴はないの?

どんなプログラムも万能ということはなく、プラスマイナスがあるよね、

プラスは、SIBは公的な問題を解決するイノベーションを促すことになる

もう1つのプラスは、納税者のお金がうまく働かなかったソリューションに使われることはないというのはいいことだね、

政府はそのプログラムがうまくいくことで節約されたお金で支払えばいい

プロジェクトを請け負った業者はスタートからお金を使えるしね。

では、マイナスは何かな?

マイナスは、結果を測定するのに時間がかかるし難しい面もある

また、マイナスとして、プラン実行するには政府を含めて調整も必要なことも挙げられるね、

コスト削減分以上の成果に対しては誰がお金を支払うのだろう? 例えばもし、住宅供給プログラムが健康保険に入っていない人のER(救急センター)受診数を減らしたり、保護施設に入れない子供たちを学校で保護したり犯罪を減らしたりしたとしたら? 保健省か?厚生省か?それとも刑務所の予算から出すのか?

一つのプログラムから複数の効果(コスト削減)が生まれたら、どこが成果を支払うの?
これに対してはまだ答えがないんだ。
 
もしSIBが成功するなら、政府が公共サービスの予算がない途上国では非常に有望だよね、

凄く可能性があるよね、投資家と社会的課題を結びつけるのがまさにソーシャルインパクトボンドだからね



2012年12月6日木曜日

ソーシャルイノベーションカンパニー調査を斬る

 日本財団のソーシャルイノベーションカンパニー調査の報告会に参加。私も、この調査には企画段階で関わっていたので、報告書の質が低レベルになってしまったのは非常に残念。何故こうなってしまったのか? 自戒も込めて問題点を指摘しておこう。

内容的には、
ソーシャルイノベーションカンパニーという視点で包括的なアンケートやりました。個別ヒアリングで、比較的うまくいっている企業群を3通りのカテゴリーをまとめましたという流れ。

その3つのカテゴリーとは、
   従来は、政府、自治体等が行ってきた社会的課題をビジネスの手法で解決している企業
   短期的な収益を超えた長期的な視点から取り組みを行っている企業
   NGONPOとの連携によって社会課題を解決する人材育成をおこなっている企業
ざっとこんな感じ。

問題点
  1. アンケートと3つのカテゴリーの関係性が全く見えない。1700社という膨大なアンケートやったのだから、そこからインプリケーション、そこからの仮説をもとに個別ヒアリングにつなげるべきだろう。これは報告書作成の際の基本的なレベルの話。
  2.  マイケルポーターの共有価値との関連 CSR業界はポーターの共有価値の考え方が注目されている。ポーターの共有価値(CSV)の話がレポートには出ているが、ソーシャルイノベーションカンパニーと共有価値との関連が明確化されていない。
  3. 3つのカテゴリーの関係がわからない。ソーシャルイノベーションカンパニーは、①or②or③のどれか1つを満たせばいいとすると、条件が弱すぎる。この3つのカテゴリーはロジックモデルで言うと、インプット、活動レベルのものであり、最終成果、ソーシャルイノベーションにどう繋がっているのがわからない。
  4. カテゴリーの3つもよくみるとおかしい。カテゴリー①は一般的なソーシャルビジネスの定義。ソーシャルイノベーションカンパンー=ソーシャルビジネスをおこなっている企業ではないだろう。このことからすると、この①はソーシャルイノベーションカンパニーの条件とするのは間違い
  5. 調査の骨格の作り方に失敗 今回の調査は、ソーシャルイノベーションカンパニーの定義が曖昧なままにアンケートをスタートし、その結果、何をインサイトとして発見しようとしているのかが見えなくなってしまった。ソーシャルイノベーションカンパニーはどういう条件なのか、判断基準を示すことができていない。当然、読者にも伝わらない。
  6.  最後の「ソ—シャルイノベーションカンパニーの普及に向けた課題と今後の展望」は、内容のレベルが低すぎる。これでは大学生のレポートだ。ここが一番重要な箇所でしょう。
  7. 本来は、ソーシャルイノベーションカンパニーの客観的な評価基準を世の中に提示しようとしたのだが、ソーシャルインパクト・リサーチ社との条件が折り合わず、残念ながら今回は失敗に終わった。個別レポートの量を多くすることで、何とか取り繕う繕おうとしているのだが、その点が読者からすると見え見えで、内容が希薄化して読む気を失わせる。 つまり、報告書が読み手からすると、コストパフォーマンスが非常に低い報告書となっている。
教訓:内容を熟考した上でアンケートを作り出しましょう。とりあえず、アンケートを出すと、その後の修復は難しい。戦略の間違いは戦術では挽回することはできない。

2012年12月5日水曜日

ソーシャルインパクトボンドの可能性?


 明治大学、公社研の塚本先生の英国視察報告会に参加した。特にソーシャルインパクトボンド(SIB)を重点とした視察報告。

 ソーシャルインパクトボンド(SIB)は英国で20103月に発行された、社会貢献と投資家のリターンの両立を目指す新しい形の金融商品である。最初のSIBはピーターボロウ刑務所の出所者の再犯率の低下に適用された。しかし、SIB発行はこれまでのところこの1件にとどまっている。

ポイントしては以下の4点。

   果たしてSIBは英国においてうまく機能しているのか? 

 うまくいっているかどうかの基準は、利払い、元本返済がきちんとなされているのか? 本当に再犯率の低下につながっているのか? トータルの政府コストの削減につながっているのか? 

②今後、英国ではSIBはどのくらいの普及が見込まれるのか?
 インパクトインベストメントは盛り上がってきているが、SIBはその一部でしかない。今後、SIBはどういう分野に適用され、ソーシャルインパクトインベストメントの中でどのくらいの位置づけを占める可能性があるのか? 

③また、日本にSIBを持ち込むことは可能なのか? 法制上の問題はないのか?

 社会課題の解決には長い時間が必要である。対して、日本の財政予算は単年度主義である。社会課題の解決を目指すSIBは長期になる。この点が、SIBを日本で持ち込む場合のネックにならないか?

SIBが普及しない理由としてリスクの高さを挙げられていたが本当か?

 SIBが普及しない、広まらない理由して原本が0になる可能性、そのリスクの高さを挙げる意見もあった。しかし、全ての債券は0になるリスクはあるし、リスクリターンを変える方法はいくらでもある。英国のSIBはハイリスクハイリターン型であったが、ニューヨーク市のSIBはグルームバーグ財団が保証に入ることでリスクが抑えられている。

 むしろ、リスクリターン、もしくはこれまでの経済的リターンではない社会的リターンを組み合わせることで、投資家を引きつける商品になりうるかどうかが焦点だろう。

2012年12月1日土曜日

社会的価値の評価手法

中間支援団体の社会的価値評価の話があり、いくつか先行する研究をチェックしてみる。

一つは、公社研がおこなった、マイクロソフト社と育てあげネットの「IT研修を活用した若者就労支援プロジェクト」をSROI評価した事例がある。

もう一つは、グランドワーク三島が内閣府・地域社会雇用創造事業「グラウンドワーク・インキュベーション」の社会的効果を算出した事例である。

社会的価値の評価はソーシャルビジネスの研究分野の中でも最も注目されている分野の1つである。

前者の研究は、
IT講習を受講した場合の進路達成率(45.5%)と受講しなかった若者サポートステーションの進路決定率(39.6%)の差(5.9%)を社会的価値として、年収をベースに価値評価してある。

プロジェクトの社会的価値(便益)/請負金額(コスト)=5.6倍、5年間の継続累計は21.3倍という結果を導いている。

 流れは、サービス提供した側が第三者に評価を依頼する構造のため、たいていは高い評価が出る形となる。政府の助成金が使われているので、どうしても成果を示したいというインセンティブを与えている。この点が事業仕分けとは根本的に異なる点だ。

 本来ならば、例えば、 内閣府・地域社会雇用創造事業を請け負っている中間支援団体の全てが政府の依頼により、第三者評価を受け、プログラム間の効果の高低を比較し、その原因が追求する形が理想的である。

以上の結果も、専門家の眼からみるとだいぶ杜撰な計算が行われているからだ。 

私の関心は、単なる計算を確認するのではなく、その数値からどういうインプリケーションを導くことができるか、という点である。

  •  SROIを使用する際の注意点は何か?
  • アウトカム、便益の定量化は納得できるものか? その他の可能性はないのか?
  •  SROIという単一の手法だけでいいいのか? 他の手法も使うべきではないのか?
  • SROIが高いことは具体的に何を意味するのか?
  • どうして高いSROIにつながっているのか? その論拠が納得感ある形で示されているのか?
  • 高いSROIをこのプロジェクトの効果に限定して考えることができるか?
  • 高いSROIが出るながら、政府としてもっとこのプログラムを拡大することが公益を高めると考えていいものなのかどうか?
  • 政府が他のプログラムとの費用対効果に使えるほど頑強な結果と考えることができるかどうか?
  • この結果を、新しい政府とサービス提供者との公契約に盛り込むことができないか?
  • ソーシャルインパクトボンドが成立する条件を満たしているか?
 以上の点を踏まえて、自己宣伝型の、単なるSROIの値が高い低いを云々するレベルを超えた評価が今後、行われることが必要だろう。

2012年11月30日金曜日

Collective Impactの有用性


社会的課題の解決においてCollective Impactというアプローチが注目されるようになっている。

それはどういうアプローチなのか?
複雑な社会的課題は単独プレーヤーでの解決には限界がある。様々なセクター、レイヤーの協調が必要である。この点は多くの人が同意するだろう。

では、そのような社会的な課題の解決において、様々なセクターの協調はどのような条件でうまくいくのかを研究する演繹的なアプローチである。

以下の5つが条件として挙げられている。
①共通のアジェンダ
②共通の測定システム
③互いに補強し合う活動
④継続的なコミュニケーション
⑤ファシリテーターによるサポート

議論となるのが、

①これまでに類似の考え方はなかったのか? プラットフォーム論とどう違うのか?

②どの点が考え方としては新しいのか?

 社会的課題の解決という点は新しいが、組織論で長く研究されてきたうまくいくチームとどう違うのか? 例えば、ピーターセンゲの学習する組織の条件と、抽象度の違いはあるものの、似た要件が多い。
③実際に、このフレームワークは誰のどういう点に役立つという、実用的な有用性を有しているものなのか? 

 共通のアジェンダのものと、継続的にコミュニケーションによってうまくやりましょう、というかけ声は分かるが、現実にうまく機能するものなのか? 例えば、政府とNPO、企業が共通のアジェンダを持つことも難しいし、同一の評価指標のもとで協調行動を促すのも実際は難しい。それぞれの利害が異なり、特に社会的価値のような抽象的なもので合意形成をするのはさらに大変なはずだ。

④ 後、私が気になるのは、リスクという観点がこのフレームワークには入っていない点である。
 
 実際の経済活動においては、それぞれのプレーヤーの利害は異なり、それが様々なリスクの引受けや押しつけ、トレードが行われる。その点が欠けている点が、③の現実への適用性に疑問を感じさせる要因である。ゲーム理論で囚人のジレンマから抜け出すプレーヤーの協調をどう促すのかという研究がある。5つの条件は、協調行動を実現する根本原因というよりも、協調行動が実現した後にみられる特徴のレベルではないかという疑問も湧く。

今後、いくつか実例をもとに、このCollective Imapctという考えがどれだけ現実の説明力があるかを研究してみたいと思う。