ソーシャルイノベーション研究会で、HBRのThe True Measures of Successを研究した。有効な効果測定指標は何か?というテーマである。例えば、あなたが野球のスカウトだったとしたら、投手であれば何を基準にスカウトすればいい投手をとることができるのか? 勝利数か? 防御率? 奪三振数? 企業の場合でも、様々な効果測定指標、経営管指標が開発されている。筆者が言うには、企業は安易に入手可能な指標に飛びつくが、その指標が、真の価値を反映していない場合は、結果は悲惨なことになる。
ここからは私の意見であるが、例えば90年代後半から日本企業はこぞってEVAを導入した。グローバル競争の時代には資本コストを考えた経営が必要という主張で、例えばソニーやパナソニックが一斉に導入したが、結果はどうだったか? 正直言って、結果は悲惨なことになったと言えるだろう。
また、企業にとってはイノベーションの重要性が増しており、この辺りの効果測定指標を開発する必要性が高まっていると思う。ROEのような資本の効率よりも、イノベーション効率の方が企業のこれからの明暗を分けるだろう。
一つ大切なことは相関関係と因果関係は違うということだ。これまでの景気変動をみると、スカートの長さと景気は関係があるという。女性が短いスカートをはく年は景気が悪い(?)という。ただし、そこに相関があったとしても、因果関係はない。したがって、そのみせかけの相関は常に次回の景気変動の時は裏切られるかもしれない。ただし、因果関係が明確であっても、あまりに遅行した効果測定指標は指標としての有効性、価値が低いということも理解しておく必要がある。
また、もう一つ大切なことはその指標を使う目的を常に考えることだ。株主価値最大化のパラダイムのもとでは、時価総額経営やROE最大化が正当化されたが、ステークホルダー全体を考える経営に移行した場合には、時価総額やROEだけでは不十分な指標になるのだ。現在、ステークホルダー重視が強まっているが、必ずしもその経営に有効な指標が開発されたとは言えない状態なのだ。ポーターの共有価値、経済的便益と社会的便益の両方を追求するという考え方が、パラダイムシフトとなりつつあるが、そのための有効な効果測定指標が開発されてないのだ。
ソーシャルメディアにおいても、Facebookのいいね!を各社こぞって増やそうと時間と労力をかけたが、実際にマネタイズに成功した企業は数えるほどしかないのが現状だ。つまり、いいね!を自社のソーシャルメディア戦略の有効な経営指標と想定した企業はむしろ企業価値を損なったと言えるだろう。では、どう考えればいいのか? 私はエンゲージメントROIというフレームワーク、考え方を開発しており、またの機会に紹介したい。
0 件のコメント:
コメントを投稿