2011年11月7日月曜日

ソーシャルインパクトの評価、計測についての考察

 
 日本でも社会的な課題の深刻化、複雑化するにつれて、社会的な課題の解決をビジネスの手法で解決する、いわゆる社会的企業が脚光を浴びている。近年、このような社会的企業の社会へのインパクトをどのように評価、測定するかに大きな関心が高まっている。

 これまでに、ソーシャルインパクトの評価法は米国REDFで開発されたSROI(Social Return On Investment、社会的投資収益)アプローチがある。また、英国では非営利系シンクタンクNEF(New Enonomics Foundation)が米国REDFで開発されたSROIを進展させ、2009年内閣府から「SROIガイドブック」を公表し、一部のNPOや自治体での導入が進められている。

 このようなSROIアプローチはこれまで見過ごされてきた、社会への貢献価値、社会へのリターンを明示化、数値化したという点で画期的であった。

 しかしながら、現状ではこのSROIアプローチは、日本のNPOや社会的企業で継続的には使われるに至っていない。

 SROIの欠点としては、①静態的なモデルであること、②将来を含めたポテンシャル評価に取り入れるかが曖昧なこと、③アウトカムを金銭的な価値に換算することが難しいケースがあること、また④ハードルレートは明示されず、どの水準のSROIならいいかの判断が難しく、意思決定に用いることが難しいという点も挙げられる。

したがって、SROIはその数値結果そのものよりも、利害関係者へのコミュニケーションツールとして、計画段階での対話ツールとして使われるケースが多い。

 このような従来型SROIアプローチの欠点を補うために、新しい社会的なインパクトの測定法「ソーシャルインパクト指数© (Social Impact Indicator©, SII)」の開発を試みた。

このソーシャルインパクト指数©は、5つの指標《①社会的課題の深刻さ、②投資対効果(修正SROI)、③地域・産業への波状効果、④スピード、⑤経営基盤・持続性》から構成されており、従来SROIアプローチの欠点を補うことが可能となっている。

 このソーシャルインパクト指数©を活用することで、異なるソーシャルビジネスを比較したり、価値の変化を算定したり、将来のポテンシャルを評価することが可能となる。

 このソーシャルインパクト指数©は誰にどのように役立つものだろうか? 
行政はこの指数を使うことで異なるソーシャルビジネスの優劣を比較したり、どのくらいの資金を税金で投入するのが合理的なのかを判断しやすくなる。また、企業は自社のCSR活動の費用対効果を検証する、もしくはどの団体と連携することで社会への貢献価値を高めることができるかを判断できる。

 今後、このようなソーシャルインパクトの可視化はますます重要となっていくと予想される。

 営利企業においても、本業を通じて社会にどのようなインパクトを与えているのかの説明責任がますます高まっていくと予想されるからだ。

また、ソーシャルインパクトの評価がNPOやソーシャルベンチャー等への寄付や投資の判断材料となるだろう。

行政も、ソーシャルインパクト指数を使うことで、Pay For performance(成果に基づいて税金を支払う契約形態)の道を開く契機となるからだ。

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