2012年9月17日月曜日

国の尖閣諸島買取りの社会的なインパクトの定量評価?


 尖閣諸島を巡る中国の反日運動、反日デモが激化している。いろいろな意味で、日本政府の意思決定に誤りがあったことが既に明らかになってきている。

 もともと、野田政権は尖閣諸島を国が買取るという方針はもっていたわけではなく、民主党マニフェストにも当然書かれていない。石原都知事の行動に突き動かされて、単に受動的におこなわれた意思決定であった。

 石原都知事が尖閣諸島を買取る交渉を地権者としていたが、最終敵に地権者は国に売ることに決めた。地権者は東京都から国に売り先を変えることで、145000万円から205000万円に売値をあげることに成功した。国が尖閣諸島を買取った隠された意図は、東京都が尖閣諸島を買取っり、施設などを作った場合に中国側から多大な反対が出ることが予想され、それを阻止するためであった。

 しかしながら、実際は、尖閣諸島に施設を作るかどうかよりも、国が買取ったという事実に対して、中国国内で激烈な反日運動、反日デモが生まれたのだ。この点で、日本政府、外務省も含めて、情報収集ミス、見通しの甘さがあった。

 また、今回の不気味さは、反日運動、反日デモはごく一部の地域ではなく、既に、ほぼ中国全域で展開されている点である。

 現在、既に、中国国内の施設や工場で被害が生じている。単に、野田首相が通り一辺当の声明を出すだけでは全く埒があかない。具体的な解決に向けたアクションが求められているフェーズだ。このような深刻な危機のケースでは、危機発生から数日の初動が重要だが、現在のところ、野田首相は、「情報収集に万全を期して、関係省庁と連携をとって、邦人保護を万全にせよ」との指示したが、本当にこの程度でいいのか?という疑問も湧く。中国国内の日本人の声明にまで危険が及ぶ可能性がある。

 今後のシナリオを考える上で、以下の4点がポイントとなる。①日本人の負傷者、死者が出るかどうか? ②中国の反日運動、反日デモはどのくらいの期間続くかどうか? ③その結果、中国現地の活動の制限、撤退がどの程度生じるのかどうか? また、④日本国内の影響(中国人観光客の減少、中国への日本人観光客の減少、中国から日本への投資の減少等)がどの程度及ぶのかどうか?

 尖閣諸島の買取りを1種のプロジェクトと考えれば、最終的にはこの投資を回収する戦略、シナリオ、ストラテジーがなければならない。

採算シナリオを考えてみよう。

最初の投資金額は205000万円の投資でスタートした。今回の反日運動、反日デモの損害額はどのくらい続くかにもよるが、現在のところは▲150億円、これが続くと1500億円程のマイナス(推定)になるのではないかと予想する。

初期 ▲205000万円
現在 ▲150億円〜▲1500億円
将来  ?円

この投資金額を、エネルギー資源採掘によって回収できるのか? それは中国側の対応もあるので、不確実性のある確率的なものになる。

採掘金額そのものも推定であるし、採掘ができるのか? その結果みつかるかどうか? これに加えて、中国側の反発も予想される。

採掘されるエネルギー資源額×採掘がみつかる確率×中国の反発さずに採掘できる確率である。

今回、仮に、尖閣諸島の実行支配に成功したとしても、実際に採掘になった場合は、中国側の反発は今回の反発を上回ることは十分に予想される。


 より詳細にプロジェクトを分析するには、ソーシャルインパクトリサーチ社が開発したソーシャルインパクト指数®が有益である。ソーシャルインパクト指数は、社会的なプロジェクトの価値を定性、定量的に評価する手法で、5つのファクターを測定する。①社会的な課題の大きさ、②社会的投資対効果、③波及効果、④スピード、⑤実行基盤

今回の場合の適用を簡単に考えてみる。
①社会的な課題の大きさ
尖閣諸島を日本が買取ることは、採掘を早め、日本のエネルギー問題の解決に資する可能性がある。

②社会的投資対効果
 費用には、採掘費用に加えて、今回の中国反日運動、反日デモのコストも含まれる。エネルギーの埋蔵量が大きいほど投資効果は高まるが、中国の反日デモが大きいほど投資効果は減少する。また、埋蔵量、見つかる確率を高めていくこと、不確実性を減少されることが投資効果を高める。

③波及効果
産業への波及効果は非常に大きい

④スピード
日本が実際に採掘に至るまではまだまだかなりの時間(10年単位)を要するだろう。埋蔵からマネタイズするにはまだいくつかのマイルストーンを経る必要がある。

⑤実行基盤
 採掘そのものの資金基盤はあるが、中国政府、中国民衆の反発に屈せずに、採掘まで到達するにはかなりの国内の政治的な基盤、世界の支持が必要である。また、期間も腰をすえた対応が必要となるが、近いうちに解散が予定されているタイミングではその点は難しい。

以上を総合的に考えると、
 尖閣諸島買取りは、日本のエネルギー問題の解決に資するという点で重要度は高いものの、中国の反発次第で採掘できるかどうかの不確実性が高く、投資対効果は大きくブレル可能性がある。また、エネルギーという産業で波及効果は見込まれるものの、実際のスピードは長くかかる。この点を踏まえると、野田政権で、国内の政治的な基盤、世界からの支持が弱く、この尖閣諸島という大きな問題を、この時期(近いうち解散)に、短時間で解決できるメドもなく、中途半端に手をつけたのは早計だったと結論づけることができる。

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