2014年12月9日火曜日

実は、ムハマド・ユヌスさんはCSVに否定的。その理由は、、



ノーベル平和賞を受賞した、グラミン銀行総裁のムハマド・ユヌスさんは、CSVについてこのように予想しています。

「おそらくCSVは、CSRの域をわずかに拡充した程度で終わるのではないかと見ています。つまり、本当の意味で社会問題の解決に心血を注ぐビジネスにはなりえない。

ガーン。CSVをどのように企業にとって実現可能な概念、ツールにしようかと考えていた私にとってはショッキングな発言でした。

しかし、考えてみればユヌスさんにとってはごく自然な考え方だと思います。

ユヌスさんはソーシャルビジネスの7原則を掲げています。その原則の1つに、投資家は元本までしか回収できない。それ以上の利益は社会課題を解決するためにビジネスに再投資されるという考え方を持っています。

NPOでなく、企業でなく、ソーシャルビジネスで社会課題を解決しよう、そして解決できるという考え方には、以上の原則が含まれています。

NPOや企業という法的な形態ではなく、この原則を貫けるかどうか? 上場企業であればすごく難しいでしょう。これくらいやるメカニズムと心意気がないと社会課題は解決されませんよ、というユヌスさんのメッセージだと思います。
そういう意味では、企業のCSVはこのソーシャルビジネスの条件を全く満たしていません。

日本企業でも、グラミンと雪国まいたけやユニクロがジョイントで会社をつくって事業をやっていますが、今度どの程度成功するかが注目されますね。

ユニクロはCSV企業? ブラック企業?


今月のHBRで、ユニクロの柳井会長が、世界一の企業を目指すのであればCSVは当然であると喝破している。

この主張に違和感を覚えるひともいるだろう。

ユニクロは、5年以内に約半分の社員が辞めてしまう、いわゆるブラック企業であるという批判を浴びた企業であるからだ。

ブラック企業とCSV企業は果たして両立するのか?

CSVの定義が曖昧なので、会社側はCSVと主張しても、世間ではそうは考えないようなことがよく起こる。

公平を期すと、ユニクロの障がい者雇用比率は非常に高いし、ブラック企業批判の後は、社員の正社員化を進めたり、地域雇用で店長への過度の負担を軽減している。


我々は企業のソーシャルインパクトを25のKPIによって、重要度と開示度によって最適ウエート付けしてソーシャルインパクトを定量化している。この手法で企業群を明快に3つに分類することが可能になる。この手法によると、ユニクロは、従来型ブラウンカンパニーからグリーンカンパニーに近づいていく途上にあると捉えることができる。

CSV企業かどうかはを評価するには、ソーシャルインパクトを定量的に評価測定できるかがポイント
となる。

2014年12月8日月曜日

CSV経営は株式市場において超過リターンを生み出すか?



ハーバードビジネスレビュー(HBR)の1月号はCSV経営の特集である。ここ数年、CSV特集が1年に1回ぐらい繰り返されている。

マイケル・ポーターという経営学の大家が提唱しただけに、いまだに様々な議論を巻き起こすホットな経営イシューとなっている。


たして、CSVは理想的な絵に描いた餅なのか? それとも現実可能なこれからの新しい経営パラダイムなのか?

KBSの岡田先生が「CSVは企業の競争優位につながるものか?」を論じている。私は、むしろその先を見据えたい。投資家にこのCSVというパラダイムが受容されるかどうかだ。

CSVが競争優位を生み出したとしても、投資家に超過リターンを生み出せないのであれば、投資家から支持されない。したがって、CSV経営は株式市場において超過リターンを生むかどうかが、企業が今後CSVを追求できるかどうかの条件になる。そのためには、以下のフレームワークを使うとうまく分析できる。

 私の実証結果では、CSV企業は投資家に超過リターンを生み出すことができている。ただし、超過リターンは、個々のESG項目によって大きく異なる。自然資本関係はプラスが多く、社会資本関係は逆にマイナスになっているものも多い。各業界のMateriality(重要度)、各企業のビジネスモデルのMaterialityを特定をする必要性がある。この面の定量的な分析、アプローチが今後求められていくだろう。


2014年12月5日金曜日

今後、日本は、安倍政権は定常経済モデルを目指すべき?


ハーマン・デイリー教授の「定常経済」は可能だ!という岩波ブックレットを読んでみた。改めて、我々が成長というパラダイムに囚われすぎていることに気づかされる。

成長しなければ様々な社会課題は解決できないと思い込んでいる。

安部政権も同じだ。

格付け機関も、成長が鈍化すれば国も、そしてそのサブシステムの企業の格付けも下げるのが当たり前になっている。果たしてこのドグマは真実なのか?

 これに対して、デイリー教授は、先進国においては成長よりも定常経済を目指すべきだと提言している。かつては経済成長の制約条件は人口資本だったが、現在は天然資源、自然資本になっているからである。

これまでの企業モデルは自然資本を出来るだけ多く使うことで利益を上げてきたのに対して、今後の企業モデルはより少ない自然資本を使い質の高い製品サービスを生み出すべきだと考えている。

皮肉なことに、安倍政権も成長に強く囚われていることが、唯一最大のリスクになっている。最終的には、経済を成長するためには増税が不可欠だという、全く真実とは反対の結論を導くだろう。つまり、背理法で前提が間違っていることが証明されるのである。


2014年12月4日木曜日

自然資本を考慮した投資手法とは?



自然資本は、これまでは企業にとってコストフリーと捉えられることも多く、外部性や希少性が価格に十分に反映されてこなかった。自然を企業にとっての資本、社会にとっての資本であるという捉え方がされるようになったのも、まだごくごく最近の話である。

IIRCの統合報告も、企業活動を6つの経営資本の循環モデルとして提示し、これまであまり顧みられなかった自然資本や社会資本にフォーカスをあてるようになってきている。

 今後の環境規制の強化、自然の枯渇や価格高騰や様々なシステマチックリクスの連鎖を考えると、企業の自然資本への過度な依存が将来の経営リスクとなる時代がやってくる。

こう考えると、投資家サイドも、企業の「自然資本リスク」を考慮した投資が必要となるし、また、今後、新しい投資指標やメトリックス、投資のモノサシが求められる。

我々SIR社は社会・自然資本コストを考慮した投資評価指標、投資フレームワークの開発を進めている。非財務情報(自然資本、社会資本etc)と財務指標を統合する新しい投資評価指標、非財務情報と企業を結合するモデルを開発し、バックテストにおいても非常に有効に機能することを確認できている。

今後の想定するシナリオは、

1ステージ
非財務情報(ソーシャルインパクト、企業活動の環境や社会への影響)を投資家の投資決定情報に変わる
            ⇩
2ステージ
ソーシャルインパクトが企業活動のKPIやモデルにより広範に組み込まれる。
             ⇩
3ステージ
持続可能な社会の実現に貢献する

以上のステージが進んでいくだろう。

2014年12月3日水曜日

地球にやさしい企業への投資はそうでない企業への投資よりも3倍お得?



 TOPIX 1832社を対象としたビッグデータ解析で、炭素排出効率の高い企業と低い企業どちらに投資すべきかを調べてみました。

 CO2排出効率の高い企業を独自KPI(重要指標)でセレクトした上位50社とCO2排出効率の低い企業下位50社の過去5年間のモデル投資ポートフォリオをつくって投資リターンを比較してみました。

CO2排出効率の高い企業の投資リターン
トータルリターン:114.24%
TOPIXリターン:86.66%
超過リターン:27.58%
と大幅に超過リターンを生み出しました。

CO2排出効率の下位50社の投資リターン
トータルリターン:45.66%
TOPIXリターン:86.66%(同じ)
超過リターン: ▲41.00%大幅に、TOPIXをアンダーパフォームしています。

ちなみに、下位50社のモデル投資ポートフォリオの内訳は以下のようになります。

炭素効率性が高いか低いかの非財務情報は投資の意思決定の情報として十分に価値がありそうです。
 ①財務情報と②非財務情報、③株価評価指標、④トータルリターンがどのように結びつくかのモデル化は、投資家としても、また企業にとっても有用な情報になるのではないdしょうか?

 これまでのソーシャルインパクト・リサーチ社のビッグデータ解析では、社会的資本関係よりも、自然資本関係の非財務情報の方が株価との相関度は高いという結果が出ています。どうしてだか、分かる人いらっしゃいますか?

非財務情報は投資にどの程度有効か?

  今、非財務情報と財務情報の関係、また、非財務情報と企業価値との関係をTOPIX(1832社)のビッグデータ解析をして、モデル作りをしています。

 一般的には、いわゆるESGは社会や環境に良くても、企業価値、株価にはそれほど影響を与えないか、むしろマイナスに作用するのではないかと思われている人も多いのではないかと思います。しかしながら、今回のビッグデータ解析ではその予想を大幅に覆す結果になったので、非常に面白いです。

一例を挙げると、
TOPIXでROE7%以上の銘柄に5年間のモデル投資ポートフォリオを作って投資すると、

5年間の累積トータルリターン
:70.22%
TOPIX:86.66%
実は、 ROE7%以上の超過リターンはマイナス16.43%でした。

これに対して、
CO2排出効率の高い企業を独自のKPIでセレクトし上位50社加えると、
トータルリターン:135.42%
TOPIXリターン:86.66%(同じ)
超過リターン:48.66%
と大幅に超過リターンを生み出しました。



 この結果が意味していることの1つは、ROE
という公開情報だけでは超過リターンを得ることが難しく、CO2排出効率という非財務情報、かつその情報をまた投資家が十分に活かしていない非財務情報を活用することが、投資リターンを高めていく上で非常に有効であることを示しています。

 投資に有効である非財務情報、自然資本関係で12個、社会資本関係で8つ、発見することができました。こういうデータをたくさん蓄積していくと、持続可能投資研究所みたいなものが出来そうです。

2014年8月29日金曜日

サポートステーションのSROI分析


現在、厚労省は若者就労者のサポートステーションのSROI分析を進めています。公社研が受託して全国サポステのSROI分析をしていて、私も統括コーディネーターとして今週末に会議に出張してきます。

中間段階ですが、
SROI3.22倍と高い結果が出ているようです。つまり、費用(年間20億円)の3.2倍の65億円の便益が出ていることになります。

しかしながら、このサポステは事業仕分けでは効果がないということで仕分け対象になったのですが、いつの間にか復活してきた事業です。

SROIの計算上は非常に高いのに、どうして仕分け対象になったのでしょうか?
仕分け対象になったのに、どうして高いSROIの計算値が出たのでしょうか?

以上のような論点があり、非常に楽しみです。

インパクト評価の基本はwithとwithoutの差です。
サポートステーションがあった場合となかった場合にはどのような違いはステークホルダーに生じていたのか? サポートステーションがあった場合は現実に生じたのでデータがあります。しかしながら、なかった場合は現実にはないので、その差を計算するインパクト設計が必要になります。サポステに行った人が就労に成功したら全てがサポステの手柄になるわけではなく、サポステを使わなかった人の就労率と比較して、厳密にそのインパクトを計算する必要があります。また、サポステのどのような機能が就労支援に影響を与えているかのモデルも構築する必要があるでしょう。また、当然、地域性による違いもあるでしょうから。


2014年8月28日木曜日

ソーシャルインパクトボンドは誰のものか?


 日本でも、ソーシャルインパクトボンド(SIB)の知名度が徐々に高まっています。
これまではSIB情報はほとんど海外発でしたが、日経新聞の経済教室でも明治学院大学の原田先生がSIBを紹介されたりして、ソーシャルセクター以外の人も興味を持つようになってきています。

日本でも英国のように休眠預金を原資にして、ソーシャルインパクトボンドにお金を流そうという動きを推進しているグループもあります。ただ、 ソーシャルインパクトボンドってNPOのためだけではないよね、というのがあります。

最近、コンサル会社や大手企業もSIBに非常に興味を持つようになって、相談を受けたり、コンサルをしたりしています。

SIBをソーシャルセクターの新しい資金調達としてみるのは、狭い一面的な考えであることがわかります。

SIBの本質的機能は、これまで顕在化していなかった社会的価値や環境価値を可視化し、そこにPricingをつけることで新しいマーケットを作るという点が重要なところです。資本主義の失敗、市場の失敗をもう一度リデザインすることで資本主義的に解決する点が極めてユニークな点です。実は、これはソーシャルセクターに限らず、営利企業にとってもビジネス化が可能な部分です。

英国で2010年に始まったSIBはソーシャルセクターを対象としていますが、先ほどの本質的機能を考えると、環境エネルギー分野やIT分野、スマートコミュニティ分野、医療分野、町づくり分野にも様々な形で適用できるのではないかと考えています。また、今後のビッグデータ、オープンデータとの流れとも融合していくことも、ほぼ間違いない流れでしょう。

また、マクロ的に捉えると、高度成長期は財政赤字を拡大することがビジネスになりましたが、これからは逆に財政赤字を縮小させることが新しいビジネスになります。SIBにはこの面の、行政コストの削減も期待される面があります。

そうかといって、行政コストが削減された結果、国民や社会が不利益を被ってはSIBが国民から支持を得られることはないでしょう。単なる行政コストの削減手段という位置づけになることはSIBにとっては死を意味していると思います。

SIBの捉え方は各セクターによって異なりますが、 社会課題の解決には様々なセクターの恊働がますます必要となるのは間違いのないところで、恊働を促し、イノベーションを促進するツールとしてSIBが日本にどの程度根付くかは日本の将来にも大きな影響を与えると思うので、自分も協力していきたいと考えています。

2014年8月26日火曜日

Collective Impact 研究会


今日は、Collective Impactの研究会をやります。ソーシャルインパクトのコンサル会社であるFSGが打ち出したコンセプトです。FSGは有名なマイケル・ポーターとクレマーがいます。

 この考え方の前提としては、複雑な社会問題の解決や、大きな社会的インパクトを生み出すためには、様々なセクターやプレーヤーが恊働する必要があるということだと思います。では、そのような複数のプレーヤーがうまく恊働するためにはどういう条件が必要なのか? それをフレームワークにまとめた考え方だと思います。

ちなみに、その5つは
  1. common agenda(共通のアジェンダ)
  2. backbone infrastructure(バックボーンとなるインフラ)
  3. mutually reinforcing activities(相互に強化される活動群)
  4. shared measurement(評価尺度を共有すること)
  5. continuous communicaton(継続的なコミュニケーション)
になります。

Collective Imapctの5つの条件を聞くと、私はピーターセンゲのシステム論を思い出します。両者の考え方は非常に近い部分があると思います。それはさておき、

 様々な利害の対立したり、考え方が異ったりする人たちが効果的に働くには、
共通のアジェンダや、一緒に活動することによってより効果を出すことや、共通の評価尺度、またコミュニーションも必要になります。という意味では、ある意味では当たり前のことを当たり前にまとめたもの過ぎません。

しかしながら、この考え方が魅力的なのは、考え方が整理される面があることとともに、様々なプレーヤーの恊働がより求められてきたという背景と人々の認識の深まりがあると思います。

今日は、東北の復興の実際にプロジェクトに関っている方も参加されるので、理論と実践の融合を楽しみたいと思います。

ソーシャルインパクト・リサーチでインパクト評価のコンサルをおこなっていますが、今後は、より多くのプロジェクト評価はCollective Impactの要素や色彩が深まってくると思います。

2014年4月15日火曜日

持続可能性を後押しする広告



広告代理店のコンサルをやらせて頂き、広告について改めて考えさせられた。

これまでの広告は、消費者の欲求をあおることによって消費を活発化させてきた。その結果、資源のムダ、自然環境への破壊、不要な購買を促進し、外部性を生み出してきた面もある。

これから求められる広告は、
生活者に、正しい情報を提供して、持続可能な社会を後押しする広告ではないか。

これからの経済活動は「環境を破壊しないこと」は極めて重要な原則として捉えるべきだ。つまり、社会的、環境的インパクトを考慮しない消費を促進するのは、もはや無責任だと言われる時代になってしまっている。ソーシャルインパクトを考慮しない消費をあおるような宣伝ではなく、生活者に正しい情報を提供し、持続可能な消費に方向付ける、持続可能性をベースにした広告の存在は、今、まさに必要で、長期的な意味で最も社会に貢献するのではないでしょうか?


2014年2月25日火曜日

インパクト評価の役割



プロジェクトをやる場合の流れは、インプット→アウトプット→アウトカム(経済的価値+社会的価値+環境価値)

トリプルボトムライン(経済的価値と社会的価値と社会的価値)を高めることで、持続可能性を高めることができるか?

経済的価値は見えやすいが、社会的価値、環境価値は見えにくい

見えにくいものを正しく評価されないと、価値あるプロジェクトが実現されなかったり、価値ある資本(社会的資本、環境資本)が毀損されるリスクがある

インパクト評価の目的
  • ミッションの実現
  • ステークホルダーの納得
  • 寄付、投資を呼び込む
  • 人や関係者を呼び込む
  • ソーシャルイノベーションの実現等

2014年2月21日金曜日

SROiマニュアル


現在、国の助成事業の研究会で、NPO/社会的企業が自分たちでSROI等の推計ができるようなマニュアル作りを進めている。私はこの取り組みには否定的な見解。

SROIはインパクトの1つの表現形式に過ぎないので、それを世の中に押し進めることが果たしていいことなのか? がまず疑問。

SROIはコンテクスト依存度が高く、NPOが自社で推定したとしても、それは主張、オピニオンに過ぎず説得力も持たない。かといって、上から目線の第三者評価は有害以外の何者でもない。

SROIはアメリカで生まれたが、アメリカでは全然普及せず、英国では普及しているといっても限定的な形に過ぎない。その本当の理由がわかっている人が多いのが残念だ。

インパクトを生み出そうという思想、インパクトを測る考え方は重要であるし有益だ。しかし、その表現形式にとらわれるのは本末転倒。

ソーシャル評価に関わる人間として、自分で言い聞かせているのは、評価のための評価にはしないぞ、ということ。全ての人の時間の費用のムダになるから。

後、テクニシャンにはならないぞ、ということ。自分のインパクト評価のやりかたの論拠を海外機関がこうやっているから、とか。自分以外の外に求めるのがテクニシャンだ。

真央ちゃんのフリーの演技の演技のように。 魂をこめる。テクニシャンはたくさんいる。自分の唯一性はそこにはないのだ。


2014年2月13日木曜日

ソーシャルインパクトを投資の新しいモノサシに


企業の時価総額(非説明変数)を、ROE(説明変数1)に、ソーシャルインパクト(説明変数2)を加えることで、どのくらいうまく説明できるのか? モデルをつくることができるかを実験中。

上場会社50社ぐらいでやってみたが、Rスクエアが40%から70%ぐらいに高まる。この価値は投資パフォーマンスが5%から20%ぐらいに高まるインパクトがあると思う。

もし、モデルを実証できれば、ROEという経済のモノサシにソーシャルインパクトという社会のモノサシを加えることで、

投資家の投資パフォーマンスも高まることを意味し、
ソーシャルインパクトの重要性も企業の方々にもより理解されるようになる。

社会のモノサシをもたないと、株主も儲かりませんよ

キャッチフレーズは 
ソーシャルインパクトを投資の新しいモノサシに

2014年2月12日水曜日

クラウドサービスの社会的探索コスト



今月のHBRに「クラウドの知恵の活用法 他者の意見をいかに判断に取り入れるか」論文が寄稿されている。

「社会的探索」の必要性、重要性に言及している。意思決定を最適化する上で、他人の意見を参考にする社会的探索が実は意思決定の質を大きく左右する。

自分なりに解釈すると、
まず、自分が課題を解決したい時に、
①自分の周りに、そのテーマに詳しそうな人に話を聞く(グループ内探索)
②自分の周り以外の人でも、そのテーマに詳しそうに話を聞く(グループ外探索)
①よりも①+②を多くした方が、意思決定の質は高まる。また、②をどういうマッチングメカニズムが使われるかも、質を左右することになる。

特に、②のグループ外探索が、非定型の未知な複雑な問題解決には重要となる。

①は自分の日頃からの交流関係、努力、ソーシャルキャピタルによって決まる
②はクラウドサービスやソーシャルネットワーク等を活用することができる

様々なクラウドサービスが出てきているが、 この②の社会的探索コストをどういう仕組みで下げているか、どのような誘因の参加デザインを作っているかという観点から分析すると有意義である。

2014年2月7日金曜日

広告の外部性の内部化


今度、「企業2020の世界」の著者、パヴァンススクデフが来日する。この本は企業、産業は外部性をどう内部化すべきかを説いた本で、4つの提言をおこなっている。

  1. 外部性を開示すること。
  2. 資産課税をおこなうこと。
  3. 広告に対する説明責任を課すこと。
  4. レバレッジを制限すること。

3の広告に説明責任を課すというアイデアが自分的には面白い。広告の外部性を説明責任を課すということで内部化させるという発想である。
元と泡の関係でいうと、説明責任を課すとどこまでが広告の元で、どこまでが泡なのかがはっきりする。一体、本当の元は全体の何分の1まで縮小するのか? 泡のないビールのようにまったく味気ないものなってしまうのか?

別の味方をすると、広告をコンテンツとコンテクストにわけた場合、コンテクストがどのくらいの重要性をもっているのかという思考実験でもある。

広告会社にとって社会的価値評価の可能性?


広告会社にとって、社会的価値評価はどういう意味、どういう可能性をもつのか?

 資本主義の大前提は市場メカニズムが社会的最適につながるということ。しかしながら、市場メカニズムで評価されない外部性が生じる場合は市場に任せていても社会的最適は達成されない(市場の失敗)

そこで、政府の必要性が正当化される。しかしながら、当然、政府の失敗も起こる→NPOや社会的企業の必要性

 近年、企業活動の影響のトレーサビリティの高まり、またソーシャルメディアが普及し情報の拡散力があがり、企業が外部性を無視することが、社会にとって最適でないとともに、企業にとっても最適ではなくなってきている(社会からのしっぺ返し、炎上)


→そこで、企業自ら、企業活動の外部性(社会的価値の評価)を経営に取り込み、自己修正する必要性が高まってきている。(外部性の内部化)

 マイケルポーターもCSVを提唱し、企業経営の目的は経済的利益とともに社会的利益の両方を最大化するべきだと提唱。

 また、経済価値と社会的価値の両方を高める(ソーシャルイノベーション)ためには、企業のその境界を乗り越え、様々なセクターと協力、恊働する必要が高まり、恊働により社会へのインパクトをどう高めるか、collective impactという考え方も生まれている。

現在、様々な社会的価値の評価基準・評価手法、また認証などが出てきている段階。

一方、従来の広告の効果の低下も進んでいる。広告は自分の会社や製品の情報を広め、取引先や顧客からの信頼を高める手段(自己証明)であるが、

インターネットやソーシャルメディアの普及とともに、自己証明の効果は低下し、生活者は自分の知人や信頼する専門家からの情報や判断を購買の判断基準にするようになっている。つまり、社会的証明の重要性が高まっている
 このような流れは広告業の未来にとって、このような意味をもつのか? 広告会社はこの流れにどのように取り組むべきなのか? どこにリスクがあり、どこにビジネスチャンスがあるのか?
 
以上のような点を20-30ページのレポートにまとめる予定です、、ご興味ある方はご連絡下さい(e-mail:takukumazawa@gmail.com)

2014年2月5日水曜日

ソーシャルインパクト・リサーチのお仕事


ソーシャルインパクト・リサーチのお仕事

 最近、どんなお仕事をしているのですか?、どんなきっかけで会社を始められたのですか?と聞かれることが多い。

 もともとはベンチャーキャピタルで投資をしてきました。総額で800億円ぐらいベンチャー投資に関わってきました。自分自身は経済合理性の非常に強い人間です。しかしながら、リーマンショックを経て、資本主義は、ひいては自分がやってきたベンチャーキャピタルという仕事は人間、人類を本当に幸せにしているのか?という疑問を持つようになりました。

投資家は儲けが第一優先、企業は利益のみを考えて行動すると、環境や社会への影響(=ソーシャルインパクト)が生じています。

これまでの経済学は、
企業価値=株主に対する利益と算定してきたが、
本当の企業価値=株主に対する利益+社会や環境への影響(=ソーシャルインパクト)
と定義すべきではないかと改宗しました(笑)。

そこでベンチャーキャピタルを辞めて、ソーシャルインパクトの測定方法をいろいろと研究してみました。会社名はソーシャルインパクト・リサーチとつけました。

ソーシャルインパクトの評価測定コンサルを、企業向け、中間支援組織、NPO、行政向けに提供しているのが一つの仕事となっています。

実際、一番大きな仕事は大企業向けで、社会的価値の評価、そのソーシャルインパクトをどうすれば事業価値、企業価値全体を高めることができるかをコンサルしています。

 例えば、最近はブラック企業がメディアで批判されています。利益を最優先して従業員は使い捨て。それが中長期的に持続可能かどうか? その会社の社会的価値が低いと、短期的に利益をあげても、評判が下がり、ゆくゆくは応募数も下がり、従業員の質・モチベーションも低下し、最後には利益もあげられなくなる。

では、どうすれば、社会的価値を高めるとともに、それを事業価値を高めることにつなげることができるか等が考えるべきテーマになります。この辺りは超大企業でもまだ解答をもっていないのが現状です。

他にも、環境価値をどう評価すべきか、企業の活動の環境への影響を会計システムにどう統合できるかなどアカデミック的にもチャレンジングなテーマにも取り組んでいます。

 難しい言い方をすると、外部性の内部化です。これが資本主義を後100年間、持続可能にする上では必要だと考えていて、それを金融メカニズムを通じて解決する処方箋を出すのが私のミッションです。


2014年2月4日火曜日

広告代理店とSIR社の比較


大きな広告代理店と当社(ソーシャルインパクト・リサーチ社)を比較するのもおこがましいかもしれないが

広告代理店の資産は
媒体、クリエイティブ、クライアント、クライアントとのつながり、リーチ、アテンション、コンテンツ

当社の資産は
インパクト評価、社会的価値の算出、社会的価値を企業価値に転換する方法論、ビジネスモデル立案、ステークホルダーの価値、コンテクスト

この2つの資産をかけあわせると

広告代理店×ソーシャルインパクト・リサーチ→何を生み出すことができるか???

単純化すると、
コンテンツ×コンテクスより大きな意識・行動変容を生み出す可能性
というかけ算が成り立つ可能性がある。

現在はコンテンツの時代と言われるが、本当はコンテクストによって、人と人とのつながりによって、情報の取捨選択がおこなわれるので、コンテクストの重要性がより高まっているからだ。

CSVマトリクスによる分析



昨日、広告代理店の方との議論の中で、

  CSVマトリクス(縦軸:経済的価値、横軸:社会的価値)をプロットしたもので、例えば、ソーシャルゲーム系の会社はある時期、非常に高い事業価値を提供した、しかしながら、社会的価値は低いものだった。

そこにとどまっていては何故ダメなのですか?という質問があった。



現実をみてみよう。
 ソーシャルゲーム系の会社は一時は我が春を謳歌した。第2象限(高い経済的価値:低い社会的価値)。しかしながら、未成年の高額請求問題やコンプガチャの修正により、第3象限(低い経済的価値、社会的価値は改善)にリポジショニングを迫られることになった。

 つまり、高い経済的価値、低い社会的価値のセットは長期的には持続可能ではないのである。確率的には、社会的価値を改善しない限りは高い経済的価値を維持するのは難しくなる。

 今後、このCSVランキングを日本の時価総額上位100社ぐらいでレーテイングしてみたい。

2014年2月3日月曜日

インパクト評価は通貨になりうるか?


ソーシャルセクターでインパクト評価、例えばSROIによって、プロジェクトや事業の価値を客観的に示すことができるのではないかという期待感が高まりつつある。

いわば、インパクト評価が通貨になるのではないかという期待である。

通貨になる条件は、誰もが同じような価値として受け取ることができることである。その結果として、流通性が生まれる。

しかしながら、私はインパクト評価に対する過度の期待は大きな失望のもとになるのではないかと懸念する。

現状は、中途半端な、自己目的的なインパクト評価が横行し、数字が一人歩きし、 逆に、SROIやインパクト評価の信頼性が失われるリスクの方が高いように思われる。

プラス面
NPOや企業CSRの社会的価値評価が普及する

マイナス面
数字の1人歩き
逆に、SROIの信頼性が失われる

第三者評価によって客観性を担保しようとして、上から目線で価値の代理変数を設定しても、そのプロジェクト関係者からの共感は得られないだろう。

そのプロジェクトのインパクトは何か? 社会的な価値が本来何を意味するのかを、やはり関係者を含めて議論することからスタートするべきだろうと思う。


2014年1月31日金曜日

これまでのCSRの方向性:インパクト投資


今後、日本企業のCSRはどのように変わるべきか?

 私の持論はこれからのCSRはインパクト投資になるという考え。

 当然、投資であるから、投資資金を上回るリターンで回収されるべきで、投資対効果を測る必要性がある。ただし、ビジネスの投資と違う点は、社会への便益もリターンに含まれるという点だ。

大まかなフレームワークは以下のようになる。

CSVを目指そうと考える企業は多いが、目標をアウトカム、インパクトに設定し、効果測定をおこなえている企業はほとんどないのが現状だ。この点が大きな課題になるだろう。

質問形式に直すと、

  1. 自社のCSRは事業性と社会性はどの程度両立できていますか?
  2. CSRの目標設定はインプットやアウトプットではなく、社会への価値、アウトカム、インパクトレベルに設定されていますか?
  3. CSRの取り組む課題は社会のニーズと自社のコンピタンス、強みの両方を考慮して決めていますか?
  4. CSR活動で、お金以外の、人材、自社の強み、信用力、ネットワークなどをどの程度提供していますか?
  5. CSR予算の決定は、取り組む社会課題を考慮して、単年度ではなく、中長期的に決定されていますか? また、裁量的にCSRのテーマや予算を決めるのではなく、戦略的コミットメントがなされていますか?
  6. CSRの支出金額の規模は会社規模、利益の増減によって決めるのではなく、自社が生み出す社会的インパクトの大きさによって決めていますか?
  7. CSRの効果測定は事後的で曖昧に決めるのではなく、事前にインパクトレベルの目標設定とインパクト評価の瀬系をして、投資対効果を明確に測定していますか?
この7つの質問に答えることで、CSRをインパクト投資というパラダイムにシフトしていくことが可能となる。




2014年1月30日木曜日

ビジネスモデル VS ソーシャルビジネスモデル



 ビジネスモデルは1つの企業がどうやって利益を生み出すかを示たものである。経済的価値、株主にどれくらい利益を生み出せるかが評価基準となる。

 これに対して、ソーシャルビジネスモデルは、多数のステークホルダーが恊働して、どうやって価値(利益だけではない)を生み出すかを示すものである。この評価基準はトリプルボトムライン(経済的価値、社会的価値、環境価値)。このモデルには、関係するステークホルダー、その機能、価値の換算値、成果指標、価値を生み出すフロー図などが入る。

このソーシャルビジネスモデルは様々なものに応用可能である。これについてはまた今後説明したい。