2011年12月19日月曜日

日本の残念な点を挙げるとすると、、

日本は資本主義国家だけど、資本主義の良さを活かせていない点が残念な国だ、と思う。

資本主義は良い点も悪い点もあるが、

良い点の一つは、会社の所有権(株券)を売買できることだ、

しかしながら、多くの日本人はこの点に関しては奥手のままだ。日本の株式市場は相変わらず低迷している、投資に関して決して賢い国とは言えない。

震災後、非常にパフォーマンスが高かったのは勝ち組のイーコマース関連の会社だ。
外出しなくても自分の買いたい物が自宅で買える。そのような機会を提供した。

危機があれば、それをうまくチャンスとして活かす会社がある。個人としても、そのような機会を活かす発想が必要ではないかと思う。

高齢者で退職して仕事がなくても、自分のお金で株券を買うことで、自分が働く代わりに、働いてきたストックを活用して、お金を儲けることができる。
これができないと、先細りする年金を頼りにするだけで、政府に文句を言うだけだ。

これからますます高齢化が進む中で、お金を自分で稼ぐのではなく、賢く他人に稼いでもらうことが必要になる、

実験経済学で、日本人は実はあまり他人に対する信頼感が高くないという結果が出ている。自分の身内しか信頼しない、という閉鎖的なソーシャルキャピタルを醸成している。

2011年12月13日火曜日

SROIの問題点

今回は、あえてSROIの分析の批判をしてみたいと思います。

マイクロソフトのSROI分析のレポートが出ましたが、

今回の分析は、マイクロソフトがおこなった IT教育が就業を可能にしたというロジックに基づいてSROIは計算されています。

しかしながら、就業(アウトプット、アウトカム)を可能にした(に投入されたインプットはこのITプログラムだけではないはずです。

例えば、小中高の教育だったり、日頃のコミュニケーション活動だったり、本を読んだり、など、様々な教育投資がおこなわています。

ITプログラムの費用だけをインプットとしているので、明らかにインプットを過小評価してますね。そうすると、必然的に、SROI倍率は非常に高く出ることになります。

つまり、SROIの数値自体の信頼性はかなり低いものであることも、実際に計算してみた人はすぐにわかると思います。数値自体は事実というよりも、算定者側のオピニオンに過ぎないのです。

他のIT教育支援プログラムとも比較してますが、5%程度の差はそれほど決定的な違いとは言えないものです。

また、このプログラムのどういう点が(企業側から)評価されて、個々の就業に結びついたかのロジックはブラックボックスのままです。この点は、実際に、プログラムの質を高める上でも、この算出結果の信頼性を担保する上でも、この点は必要なことですね、

分子と分母の比率をとるということは、効率性の指標ですが、効果性の指標ではない点も、残念ながら、多くの人が理解できていません。この点は効率性と効果性の両面で、投資の効果を測定することが必要です。例えば、就労支援であれば、就業者を増やすという効果性を高めていくことが社会の目標で、効率性はその制約条件と考えた方がわかりやすいでしょう。

以上のような問題点を指摘できるとは言っても、
ソーシャルビジネスの社会的な価値を算出する重要性はますます高まっていると思います!社会に対する投資という視点が重要ですね、

2011年12月9日金曜日

ソーシャルインパクトボンド

社会的なインパクトを測定できると様々なスキームの開発も可能となる(英:ソーシャルインパクトボンド)

例えば、マイクロソフトの「IT活用による若者就労支援」を例に考えてみよう。

政府が11百万円の助成金、NPOとマイクロソフトがIT教育→その結果、31名の就労支援に成功
社会的便益/31名の200万円の年収+政府(所得税+社会保険料)35万円の収入増 31名×35万円=約11百万円 全体SROI=6.6倍
政府は1年間で実は費用を回収できてしまう

 例えば、政府がソーシャルベンチャーに就業者1人当り35万円支払う契約を結ぶ、
ソーシャルベンチャーは投資家に対して就業者1人当り32万円支払う契約(利回り3%)を結び、資金調達することも可能となる。

このメリット:
政府のリスクがなくなる(成果報酬で支払うことができる)
ソーシャルベンチャーは資金調達できる(インセンティブ契約となる)
投資家は投資機会が得られる

→社会的なインパクトが算出できたことで可能となる

ソーシャルベンチャーの存在意義=外部性、市場取引できない分野や領域→政府 or NPO/ソーシャルベンチャーと捉える人が多いが、

実は、外部性があっても、正しくその社会への効果、アウトカムが測定できたら、市場取引にすることが可能となることがわかる

2011年12月8日木曜日

SROIレポートからみえてきたこと

マイクロソフトの「IT を活用した若者就労支援プロジェクト」に関わる評価調査報告書を読んでいます。この中に、SROI分析がなされています。

なかなか興味深い事実が示されています。

このプログラムで政府が支払った費用は11416千円です。

その結果、
このプログラムで31人が就業に成功し、政府は、所得税額の増加と社会保険料徴収の増加で
31人×(84千円+264千円)=10788千円の収入増が見込まれます。

つまり、1年でほとんど政府は税金を回収できてしまうのです!
単にワードやエクセルを教える費用を一時的に負担するだけで、、、。

これが事実なら、是非、正規教育の中にこのプログラムを入れることを要望します、

また、民間業者に、就業が成功した場合(1年間の就業が条件)に、成功報酬で費用を支払うというインセンティブ契約を結ぶことができるはずです。1人当り約38万円程度で、

このように、アウトカムが金銭価値で示されると、いろいろな事実が浮き彫りになるとともに、より正しい意思決定に使うことができると思います。

2011年12月7日水曜日

SROIの分析レポートが出ましたね



 マイクロソフトの「若者就労支援プロジェクト」に関わる評価調査報告書が公表された。この中で、(株)公共経営・社会戦略研究所がSROI分析をおこなっている。日本の実例でSROI分析がなされるのは珍しいので、貴重なレポートである。

分析の結論は、
このプロジェクトのSROIを単年度5.6倍、5年間累計で21.28倍なので、非常に効果的なプログラムと結論づけている。

話はそんなに難しい話ではない。

①マイクロソフトが若者の無業者に対して、NPOサポートステーションを介して、ワード、エクセル等の教育をおこなう

②その結果、就業率がアップ。そのアップした部分を社会的な便益と考えて、その人がもらう給料で金銭価値換算をする

③マイクロソフトの受託費用約11百万円と比較した、価値の増加を倍率を示す=SROI、という流れだ。


SROIは価値分析として経済的な価値と社会的な価値の総計を捉える点が特徴であるが、就労支援の効果を初年度の就業者の年収で換算しているが、これは経済的な価値に近いものだ。

税金の使い道という観点からは、単に倍率が高いこと、プログラムの効果が高いこと=積極的に展開すべきとは言えない。つまり、その効果の便益がどこに及ぶかが問題なのだ。便益の最大の受益者である本人である場合、他のステークホルダーに対して対して便益が及ばない場合、それは本人が自己負担すべきではないかという意見もありうるからである。

また、SROIの倍率が高い原因が、どこから生じているのかがわからなければ、それは改善に有効なツールとも言えないだろう。

いずれにしてもいいケースなので、じっくり研究してみたい。

2011年12月4日日曜日

原丈人さんの公益資本主義の考え方

原丈人さんは公益資本主義という考え方を提唱している。
現在の資本主義の問題点を鋭く指摘していると思う。

簡単に考え方を整理すると2つある。

会社は株主のものという前提→短期的な株価の最大化を目標(経営陣にはストックオプションという餌)→ROE重視→長期的な研究開発やベンチャー投資がおこなわれない→新産業が育たない

金融セクターはもうけ第一主義→ベンチャー投資はせずに、ばくちにうつつをぬかす→ゼロサムゲーム→変動が大きくなる→金融危機が毎年起こる+貧富の差の拡大

そこで、企業の公益性を考える必要性を強く訴えている。

私が解釈するに、公益性はある意味では経済の外部性、スピルオーバー効果のことだと思う。

企業が私的な利益を追求するだけでは、社会の富を増やすことはできない。その公益性を考えて行動するように、考え方や税制などの仕組みを作り直す必要があるという主張である。

資本主義3.0の枠組みと共通する考え方である。
私は、経営の目標を経済的価値と社会的価値のトータルにし、ベンチマークは株価、時価総額の代わりに、ソーシャルキャピタルを、ROEの代わりにSROIやソーシャルインパクト指数を使うことを提案したい。経営目標を達成するためには、測定可能な指標が必要となるからだ。

これまでは目に見えなかったので実感しづらかった、つながりの効果、外部性を可視化、測定することが必要だろうと思う。

2011年11月30日水曜日

ソーシャルキャピタル仮説



資本主義2.0から資本主義3.0のパラダイム転換の中で、企業経営の目標とベンチマークは時価総額、ROEから、ソーシャルキャピタル、社会的なインパクトへ変わっていく。

企業ソーシャルキャピタル(SC)にはまだわかっていないことも多いが、以下のような命題が考えられる。
命題 企業SCが高まると、不況への抵抗力が強くなる
命題 企業SCが増えると、取引コストが下がり経済効率性が高まる
命題 企業SCが増えると、異種情報との接触が増えイノベーション力が高まる
命題 企業SCが高まると、共感よびこみ力が高まり、口コミが増える
命題 企業SCが増えると、双方向型インタラククションが増え、コミュニティ形成力が高まる
命題 企業SCが増えると、顧客の信頼が高まり、購買までのサイクルが短縮される

2011年11月29日火曜日

ソーシャルグラフ8分類




より包括的に、ソーシャルグラフの形と良い企業、個性的な企業の関係を示すと、2の3乗、8分類になる。

パラダイムシフト1
全ての企業がソーシャルに向かう

パラダイムシフト2
×企業は経済的価値を追求するだけでいい
○企業は経済的価値とともに社会的な価値を追求する
→経済的価値とともに社会的な価値の測定が必要になる

パラダイムシフト3
何かを知っている価値<誰かとつながっている価値

情報を独占する価値(マイクロソフト)→情報を見つける価値(ヤフー、グーグル)→情報を共有する価値(Facebook)

つながりの力、企業ソーシャルキャピタルを定量的に測定し、企業経営に活かせる、高める方法論を開発しています。

2011年11月28日月曜日

ソーシャルグラフの形で、良い会社が決まる時代に入った!?



人と人とのキズナの深さ、信頼の大きさで、企業の成功が決まる時代になってきた。このようなソーシャルキャピタルは、還元すると、社内同士、社内外でどういうソーシャルグラフになっているかということだ。

ソーシャルグラフのベクトルとしては3つ考えられる。
①企業内、②企業内外、そして、③社会に対するベクトルの3つである。

企業内で豊かなソーシャルグラフが築けていれば社内の効率は高まるだろう。
企業内外、顧客や取引先との間に豊かなソーシャルグラフが築ければ、社外との効率は高まる。ここまでは、優良な日本企業の中でクリアーできている会社も多い。
これから求められるのは、もう一つのベクトル、社会に対するベクトルである。社会の課題や問題に対する感度が低い会社は必ずしも社会から信頼を得ることができないだろう。

以上の3つの軸で分類すると、
ソーシャルグラフのパターンは6つに分類できる。
パターン1 理想型
パターン2 外弁慶
パターン3 内弁慶
パターン4 優良企業
パターン5 社会貢献バカ
パターン6 破滅型

あなたの会社はどのパターンに入るだろうか?

2011年11月25日金曜日

ソーシャルプロフィット・チェーンとは?



ソーシャルメディアに取り組んでも、様々な疑問がわいてくる。一見ばらばらな疑問も実はつながっていることが多い。その解決の糸口は、自分のアクションがカスタマー、ユーザーの価値を高めることに本当につながっているかを判断することだ。それを見分けるフレームワークがソーシャルプロフィット・チェーンだ。また、ソーシャル化が進むと何がどのように、これまでのビジネスを変えるか、その関係を押さえる必要がある。

・Twitterのマネタイズは断念、Facebookは数を追い求めたが実際の売上につながっていない
・ソーシャルメディアの管理ツールを導入したが、いろいろな指標があるがどこを見て、どう改善していくかがわからない? 
・魅力的なコンテンツがなかなか作れない、自分はIT畑で、コンテンツ作りは苦手、、
・自分の会社はB2Bなのでソーシャルメディアにあまり向かないのでは? 
・中小企業でもソーシャルメディアは何からやればいいのか? 
・従来のマス広告とソーシャルをどう組み合わせていけばいいのか?
・愛される会社になれと言われても、、、発信元の信頼が大切と言われても、、、 
・SEOの効果も落ちつつはあるがやめるにはまだ早い、、、
・メールマーケティングだけで大丈夫か? 
・新規顧客獲得、リードジェネレーションにうまく使いたいがどうすればいいのか?
・キャラクターは人気にはなったが大して収益に貢献していない、、、
・目標設定、効果測定が大切といっても、まだトップはよくわかっていない段階なのでなかなか目標を設定できない、etc

2011年11月23日水曜日

ブランド観の変化、コンテクストが全て



上記の図表はAlen(2008)、そして価値共創時代のブランド戦略(青木 幸弘)の中で紹介されたものを改編したものである。

対比することで、ブランド観が変化してきたことがよくわかる。

 従来のブランド観は、ブランドは情報であり、消費者の選択プロセスを支援する手段として機能した。また、消費者はブランドの情報の受け手として位置づけられ、価値を提供することが企業のみであった。

 新しいブランド観では、ブランドは意味となり、人々の生活を支援し、人生に意味を与えるための手段となった。消費者はブランドの能動的な創り手の1部と位置づけられ、企業は生活者と共に価値を共創する。

キーワードは、コンテンツからコンテクストの時代へ
そして、ブランドはメッセージから対話によって創られるようになる、

自分のソーシャルグラフの人たちのコメントやインタラクションが最も影響力のあるコンテクストとなりつつある。だから、ソーシャルメディアのマーケティングの一番大切なステップは企業は生活者の間に意味のあるコンテクストを作り出すことである。意味のあるとコンテクストとは大きな影響力を与えられるという意味である。

2011年11月22日火曜日

ソーシャルをいかにプロフィットに転換できるか?

日本企業の、ソーシャルメディアに対する期待も徐々に冷めつつあるのではないか?と日々感じる。特に、Twitterは難しいと言われるが、そうかといって、Facebookでうまくいっているわけでもない。

やはり、この根本的な原因は、ソーシャルをプロフィットに転換することがなかなかできないことからのいらだちだ。では、そのためには、何が必要とされるのか?

まずは、ソーシャルメディアのビジネスへの成果を何で測るか、どう測るかが問題となる。Altimeterが提案しているのが6つの基準である。

ソーシャルメディアがもたらすビジネスの成果尺度
❶ブランドの健全性、❷マーケティングの最適化、❸売上への貢献、❹オペレーションを効率化、❺カスタマーの経験価値を高める、❻イノベーションを引きおこす力である。

以上のような成果をもたらす上で、組織に新しいケイパビリティが必要になる。この部分が欠けていることが、はやりソーシャルをプロフィットに転換できない根本原因になっていると思われる。

一つ目は、オープンな企業文化、組織の新たなマインドセット。ソーシャルメィアのマーケテキィングパラダイムは価値と関係性が結びついたところ、価値の共創である。そのためには、オープンにカスタマー、生活者につながる必要があり、オープンな企業文化は不可欠となる。この面でまだまだ大きく踏め切れない企業が多い。

2つ目はデータの戦略的な活用能力である。ソーシャルメディアによって、大量のビックデータが入手することができるようになったといっても、それは活用する能力がなければただのノイズ、雑音とある。特に、会計データとソーシャルメディアデータの統合するソーシャルCRMが求められているのだ。

3つ目は新たな組織ケイパビリティ。広告やプロモーションから、ソーシャルオブジェクトがソーシャルメディアのマーケティングの武器である。この新たな武器をどう使いこなすか、コンテンツの制作、編集能力も含めて新たな組織ケイパビリティが求められる。


4つ目はリスクマネジメント体制である。炎上、予期しない口コミなど、クライシスの認定の基準、認定後の対応、シナリオも含めて作っていく必要がある。これまで以上にリアルタイムの対応が必要となっていることは言うまでもない。

その上で、ソーシャルをプロフィットに転換するソーシャルフィットチェーンを作り上げるロジックをもつ必要がある。

2011年11月21日月曜日

資本主義3.0のメカニズム



資本主義2.0から3.0へのパラダイムシフト
何故、時価総額からソーシャルキャピタルにシフトする必要があるのか?
時価総額は株主の財産価値が増えたことだけを意味している。
ソーシャルキャピタルはステークホルダーが満足しないと増えないという意味で、より社会にとって包括的な指標となっているからだ。しかし、このソーシャルキャピタルをどう測定するかは時価総額ほど簡単ではない。

ブータン王国のGNHが話題になった。我々もソーシャルキャピタルを測定する評価手法が必要である。

また、我々の活動は、
資源のインプット→アウトプット(短期、中期、長期)→アウトカム(ステークホルダーにとっての価値)で、時価総額よりもソーシャルキャピタルの方がより社会にとってのアウトカムに近いからだ。

ブータン王国のありかたをみせつけられて、GDPを増やしても幸せに限らない、ことに我々日本人は改めて気づかされた。

また、資源の調整メカニズムの変化も興味深い。これまでは、所有権が資源調整メカニズムのエンジンだったが、情報シェアリングが急速にその地位を浸食している。

ノーベル経済学者ロナルドコースは企業がなぜ存在するか?という根本的な問題に、市場取引にはコストがかかる、だから、組織がそのコストを節約できるから、組織が存在する、ということを発見した。

しかし、その市場取引コストが情報シェアリングによって急速に低下している、取引コストが極限的にゼロに近づいていっても企業は必要とされるのか? 所有権がなくなっても経済活動は円滑に行われるのか? この問いに答えを出すのが資本主義3.0の新しいフェーズになるだろう。

2011年11月20日日曜日

パラダイムシフトをデザインする



 
 ブータンのワンチュク国王 は、GDH(国民総生産)<GNH(国民総幸福度指数)を示した。我々が求めているのは経済的豊かさではなくて、その先の幸せだった・・・ことに日本人も気づかされた。経済的豊さはアウトプットであり、我々にとってのアウトカムではないのだ。ブータンでは97%が幸福を実感。日本ではさすがにその逆ではないが、幸せでも不幸でもないと答える層が多いだろう。

 管首相は幸せでなく不幸に注目して、最小不幸社会の実現を掲げたが、あまりに消極的すぎて、全く国民に支持されなかった。技術者らしい間違いである。幸せは定義できないが、不幸なら定義できると考えたのだ。

 シフトすべきタイミングに来ている。「企業:経済的利益の追求」→「企業:社会の幸せの総量を増やすこと」。そうなると、全ての企業がソーシャルビジネスとなる。

 ソーシャルビジネスの価値評価するSROI(社会投資収益率)という指標があるが難しくて使いにくい。そこで、ソーシャルインパクト指数を開発し、それをベースに「CSRソーシャルインパクト指数」を考案した。企業の本業、CSR活動の社会に与える価値を数値化する手法である。ポーターが主張するCSRからCSVへの転換には経済的便益と社会的便益の両方を測定するツールが必要になるだろう。

2011年11月19日土曜日

ROEからSROIへ 求められる新しい社会の評価軸



ブータンの国王夫妻の訪日は新鮮な感動を日本人によびおこしました。
今回、初めて、ブータンが採用している指標、国民総幸福度(GNH)を知った方も多かったと思います。

 我々は、現在の資本主義の危機に対して、どのような新しいメガネ、尺度をもつべきなのか?新しいメガネをかけると、世界は全く違ってみえてくる。

 私が考える新しいメガネは、SROIという社会的な投資収益率という指標です。もともとはソーシャルビジネスのリターンは経済的価値だけではないだろうということで、社会、様々なステークホルダーに対する便益を金銭換算して加えたものです。欠点もありますが、今のROIよりはbetterと思います。

これまでのパラダイム→これからのパラダイム
優先順位:株主→ステークホルダー
目標:時価総額→ソーシャルキャピタル
尺度:ROE(株主資本利益率)→SROI(社会的投資収益率)
価値創出の基盤:会社→地域、関心コミュニティのつながり
メカニズム:所有権インセンティブ→情報シェアリング
企業のありかた:競争→共創(コラボレーション)
価値フォーカス:価値の分配→価値の共創
目指す方向:成長性→持続性



いかがでしょうか?

2011年11月18日金曜日

日本型ソーシャルキャピタルのメルトダウン

2000年前半は、企業のもつ資産として、見えざる資産、知的資本が浴び、日本企業の中でも知的資本経営を標榜する会社が相次いだ。国際的にも、この分野の研究で伊丹、野中など世界をリードする経営論も生まれてきた。しかしながら、現在このパラダイムは急速に変化しているのではないかと思われる。

 私がみるに、知的資本の価値よりも、人とのつながり、ソーシャルグラフ、ソーシャルキャピタルの価値が重要性が増している。

何かを知っていることの価値よりも、誰かを知っていることの価値、誰かとつながっていることの価値が高くなっているのだ。これは、人材にも、そして企業にも当てはまる。

もろん、知的資本を生み出す担い手は人材である。その人材が質の高い知的資本を生み出せるかどうかは、どのような知的な交流ネットワークに属しているか、コミュニケーションのパターンによって決まってくる。いいソーシャルグラフを持つかどうかが重要なのだ。

 企業とは何か? 契約論で著名な経済学者オリバーハートは、企業とは「契約の束の中心」と定義した。私が再定義するとすれば、ソーシャルグラフの中心、フォーカスこそが企業の再定義にほかならない。そのソーシャルグラフとその関係性によって生み出される知的資本の質が決まってくる、強いては行動が決まってくるからだ。

質の高いいいソーシャルグラフをもつことが企業にとっても、人にとってもクリティカルになりつつある。

 実は、ここに日本企業の構造的な大きな落とし穴があるように思われる。
ソーシャルキャピタルには2種類ある。結束型SCと橋渡し型SCがあるが、日本企業は従業員間の結束型SCを中心に展開してきた。プラス面では、あうんの呼吸、暗黙知を生み出すことに長けていることである。マイナス面は、ソーシャルグラフの重複が多く、同種の情報の接触率が高く、新しいイノベーションが起こりにくい、組織の常識が外の常識とずれるケースが往々に起こることである。

 最近、大王製紙、オリンパスなど、日本企業の相次ぐ不祥事が続く。日本企業の構造的なガバナンスの不備と片付けることもできるだろうが、別の見方では、これまで日本が培ってきた結束型SC構造、ソーシャルキャピタルのパターンが時代にそぐわなってきたという見方もできる。つまり「日本型ソーシャルキャピタルの腐食、メルトダウン」が起こっているように思う。

2011年11月17日木曜日

ソーシャル時代の企業評価尺度?

企業は経済的価値を追求するだけでいい、と思っている人はとんどん少なくなっているのではないだろうか?

今後、企業は経済的価値とともに社会的な価値を両立しなければならないと考える人が増えてきている。

これまでの企業の評価尺度は時価総額。ただし、時価総額が増えて得をするのは株主だけだ。つまり、企業は株主のためのものだった。
社会的な価値を加える場合、様々なステークホルダーを考慮し、ステークホルダーへの価値を加えていかなければならない。

1つの考え方は、株主の時価総額に対して、ステークホルダー全体のソーシャルキャピタルという対比をすることができる。

次に問題になるのは社会的な価値をどのように測定、評価するのかということだ。

REDFが開発したSROI(社会的投資収益率)という尺度はあるが、複雑で使いにくいので、ソーシャルインパクト指数という新しい評価尺度を開発した。

SROIは社会へ便益を分子に、分母に投資金額を表す指標であり、1つの効率性指標だ。ソーシャルインパクト指数はこの効率化指標を簡略化するとともに、効果性、将来のポテンシャル評価、スピード、実現性などを加味してある。ソーシャルビジネスの評価のために開発したが、実は、企業の社会的価値の測定、評価に使える。

社会的価値を高めることで企業は何が得をするのか?
社会的価値を高めることで、ソーシャルキャピタルが高まる。そして、ソーシャルキャピタルが高まると、経済的価値を高めることができる。このロジックを作ることが大切だ。特に、ソーシャル時代には、共感と信頼が媒介変数となるので、ソーシャルキャピタルの機能性、投資回収率は高まると予想される。

モデルは、
経済的価値+社会的価値→ソーシャルキャピタル→共感、信頼→ソーシャルグラフ+インタレストグラフ→影響力→経済価値・・・

ソーシャルキャピタル、共感は経済価値だけで作り出すのは難しいことをはっきりと認識することだ。

東電のケースで考えてみれば、
東京電力の価値=経済的価値+社会的価値
経済価値は+であっても、様々なステークホルダーの社会的な価値を考慮すると、実は全体の東電価値がマイナスであったことが判明した。企業はマイナスの外部性を組織内に取り込むように、企業の境界を線引きしなければならない。

2011年11月16日水曜日

ソーシャルメディア時代の共感を定義する!?



ソーシャルメディアのコンサルタントは、これからは生活者に共感される企業、愛されるブランドになる必要があると説いている。多くのコンサルタントがソーシャルメディアは共感、共感と言うが、それが明確に定義されることはこれまでなかった。

では具体的に共感とは何なのか? この部分が明確に定義されないと、提言は絵に描いた餅だ。

私はコミュニケーション理論を緩用して、以下のように共感を定義したいと思う(おそらく、日本でも初めて?)

コミュニケーション理論では、情報の伝達をコンテクスト(文脈)とコンテンツ(内容)にわける。

この2つを用いることによって、共感を定義してみたい。

コンテクスト(文脈)を便宜的に、ローコンテクストとハイコンテクストにわける。よく日本はハイコンテクスト、米国はローコンテクストと言われる。

その上に流れるコンテンツを、送り手が発信した意図と、実際に受け手が解釈した結果にわける、つまり、その差は情報伝達の効率性、逆の部分は情報伝達のロスを意味する。

共感が生み出されるのは、ハイコンテスト+情報伝達の効率性の高さ(逆に、情報伝達のロスの少なさ)と定義されるのだ。

このように分解されると、
ソーシャルメディアで共感を生むには、
高いコンテクストを共有すること、情報伝達のロスを低めることが必要だとわかる!

ゆえに、ソーシャルメディアマーケティングはいかに情報の受け手と高いコンテクスト(エンゲージメント)を作り出すか、そのマーケティングが重要となる。

2011年11月15日火曜日

ソーシャルビジネスの評価

SROIは1990年代後半に米国REFによって開発された、ソーシャルビジネスの社会的価値を定量的に測定する評価手法である。当初は注目を浴びたが、その後は、それほど広く普及してはいない。

 その理由はこの手法にはいくつかの欠点があること。特に、そのプロセスが複雑で、アウトプカムの金銭価値の換算が難しいこと、手間がかかることなどがその理由である。しかしながら、ソーシャルビジネスの社会的価値を算出できること、価値ベースの評価手法であること、数値化による客観性・比較可能性など大きなメリットも有する。

 そこで、(株)ソーシャルインパクト・リサーチは従来型SROIの欠点は補い、より簡便に、より効果的に、ソーシャルビジネスの社会的価値を算出する新たな社会的価値の評価指標「ソーシャルインパクト指数© (Social Impact Indicator©, SII)©」を考案した。

 このソーシャルインパクト指数©は、5つの指標《①社会的課題の深刻さ、②投資対効果(修正SROI)、③地域・産業への波及効果、④スピード、⑤経営基盤・持続性》から構成されている。 これは、日本版SROIと位置づけることができる。

 内閣府地域社会的企業創出事業で助成対象の30社に関して、ソーシャルインパクト指数©を用いた、ソーシャルインパクト分析をおこなった。

その結果、わかったことは、

・ソーシャルビジネスによって、SROIには大きな幅があること、
・SROIとSII©にはかなりの差が生じていた。つまり、従来SROIだけでは十分に社会的価値の大きさを計ることができないことを示唆している。

・また、投資対効果と波及効果を比較すると、この2つのファクターはかなりの差が生じている。これは、現時点の効率性と将来ポテンシャルは異なること、したがって、この2つを明確に区別することが正しい社会的価値の評価につながることを意味する。プロジェクトそのものとソーシャルビジネスを運営する組織の評価は異なる。後者はより波及効果やポテンシャルの価値が大きくなることがわかる。

・また、お金以外のボトルネックの存在が社会的価値に大きく影響することがわかった。つまり、この部分を正しくは把握することが重要である、

 以上を踏まえると、これまで、ソーシャルビジネスや社会的なプロジェクトの評価は、定性ベースで評価者の恣意的によって運用されてきたが、社会的価値の評価手法を、ソーシャルビジネスの中間支援団体や行政が理解し使いこなすことは、評価の客観性、明瞭性、説明責任を果たす上で、何よりも、社会的な価値を増やす上で大切なことであることがわかる。

 今後、東日本大震災もあり、財政が逼迫する中で、NPOや社会的企業へ回ってくるお金も細っていくことが予想される。お金のムダ使いを減らすという観点もそれなりには重要であるが、社会的価値を増やすという観点から、より効果的に資金が使われることが豊かな社会の実現には不可欠となる。その意味で、最終価値ベースで社会にとって価値があるプロジェクトを採択していくことの重要性が今後ますます高まることが予想される。

 今後、ソーシャルインパクト指数©を、社会的価値を組み込んだ公契約においても活用できるかどうかを研究していきたい。また、通常の営利企業においても、社会的価値を考慮した上で事業を展開すること、意思決定をおこなうことの必要性がますます高まっているので、その方面での研究も続けたい。

2011年11月14日月曜日

ソーシャルメディアって利益には結びつかない!?って本当?

NPS、究極の質問は「あなたはその製品を友人に薦めますか?」
NPSの測定の仕方は推奨者から推奨しない人の比率を引いたもの
NPSはソーシャルメディア時代にも適する指標と言われる。ザッポス等が採用。

ただし、NPSは結果にすぎない
結果は原因(プロセス)がないと生まれない
原因、プロセスを説明する理論が、サービス・プロフィット・チェーン理論
だから、NPSとサービス・プロフィット・チェーンはある意味では一体のもの

ただし、どちらもソーシャルメディア時代以前に開発されたので、
前提、モデル修正、チューニングが必要

そこで、ソーシャル・プロフィット・チェーンを考案した

さかのぼってみると、
口コミは顧客ロイヤリティから生まれる
顧客ロイヤリティは顧客満足から生まれる
顧客満足は顧客価値から生まれる
だから、ソーシャルメディアでいかに顧客価値を高められるかが肝となる!

チェーンは、成長と利益←口コミ←顧客ロイヤリティ←顧客満足←顧客価値
と続く


では、どこで顧客価値を高められるか?

顧客価値=(①結果+②プロセスのクオリティ)/(③売価+④カスタマーの入手コスト)

顧客価値を高められる領域は大きく4つ
それを分解していくと
 ①プロセスの質を改善、②いいソーシャルグラフをもつ、③ターゲットされた広告、④顧客とのインタラクション、顧客同士のインタラクション、⑤顧客ニーズの把握、⑥双方向のCSサポート・・・・

サービス・プロフィット・チェーンに
9つの命題で補強して、ソーシャル・プロフィット・チェーンが完成!

上記の問いの私の回答
:利益に結びつくソーシャル・プロフィット・チェーンが見えていないから

2011年11月13日日曜日

ソーシャル化時代の究極の質問を1問考えるとすると



フレドリック・ライクヘルドが考案したNPS、「そのブランドをあなたの同僚や友人に進める可能性はありますか」は究極の質問と言われている。ただ、1つの質問を調べることで、そのブランドの状態を判断することができるからだ。

 実際には日本では米国と比較するといい結果が出ないことから、これまでは日本ではあまり使われてこなかった。

 私が、ソーシャル化時代に究極の質問を1つ考えるとすれば、
「あなたの企業はいいソーシャルグラフを持っていますか?」ということになる、と思う。

いいソーシャルグラフを定義するとすれば、

①その企業のソーシャルグラフは顧客、および潜在顧客ターゲットにつながっていること

②ソーシャルグラフ上のエンゲージメントが高く企業とのインタラクションが活発であること

③ソーシャルグラフの顧客同士のインタラクションが活発であり、コミュニティが形成されていること

④企業のソーシャルグラフ上のインタラクションを通じて、新規顧客の流入が生まれること

④そのソーシャルグラフから企業イノベーションに有益な意見や情報が得られること

が挙げられる。

つまり、企業がいいソーシャルグラフをもつことによって、企業が顧客により大きな価値を提供しやすくなるのである。そして、その結果は企業と顧客が両方とも得をすることにつながる。

 顧客価値を定義する方法としては、(結果+サービスプロセスのクオリティ)/(売価+サービス入手のコスト)がある。

 企業と顧客インタラクション、顧客同士のインタラクションにより、顧客が求める結果、およびサービスプロセスのクオリティを高めることが可能となる。顧客ニーズを正しく把握することが可能になること、また、顧客とのインタラクションも価値を提供するからだ。

 また、やみくもなマスメディアへの広告宣伝コストが必要なくなり、サービス入手のコストを低下させることができる。顧客にとっては必要な情報や製品に出会いやすくなることを意味する。

以上よりわかることは、単に、Facebookのファン数を増やすことが必ずしもいいソーシャルグラフを意味していない。

「ソーシャル・プロフィット・チェーン」モデル

キーワード:ソーシャルメディア,サービス・プロフィット・チェーン,顧客価値


ヘスケットは成功したサービス企業の分析をもとに「サービス・プロフィット・チェーン」モデルを提唱した。この考え方は、従業員の満足と顧客の満足は高い相関があること、顧客の満足は顧客のロイヤリティと高い相関があること、そして、顧客ロイヤリティは企業の成長性と収益性に密接に結びついていることを示している。あたかもチェーンのように、従業員の満足が最終的に企業の収益性と成長性に結びつくロジックを提供している。

図表●
 このモデルは、サービス業をもとに開発されたが、経済のサービス化の進展により、有効性はさらに高まっているのではないかと推測される。

 ただし、サービス・プロフィット・チェーン」モデルはソーシャルメディア以前に提唱されたものであり、ソーシャルメディアによる影響、およびそのポテンシャルをモデルにとりこんだものではない。

 したがって、私はこのモデルの再構築をおこない、新たに9つの命題を加えて、ソーシャルメディア時代の影響力、ポテポテンシャルを取り込む新たなモデル開発をおこない、この新しいモデルを「ソーシャル・プロフィット・チェーン」モデルと命名した。

 「ソーシャル・プロフィット・チェーン」モデルの特徴は、①ソーシャルメディアの影響、ポテンシャルをモデルに取り込んでいること、②ソーシャルメディアが顧客価値に対して与える要素、影響関係を明示していること、③ソーシャルメディアが従来のモデル要素に与える影響とともに、新たな要素とその影響関係を取り込んでいること、などに特徴である。

 「ソーシャル・プロフィット・チェーン」モデルは、企業がソーシャルメディアを有効に活用するための鳥瞰図、全体像を与えるとともに、顧客価値を高めるという観点からソーシャルメディアの影響を再考することが有効であることが示さている。

2011年11月10日木曜日

ドラッカーのマーケティング定義はソーシャル時代も有効?




マーケティングのフレームワークに、製品カテゴリーを、2つの軸(高関与/低関与、ロジック/エモーション)でわけ、4つの領域に分類する考え方がある。

この分類方法も、ソーシャルメディア時代にはふさわしくなくなっている。

製品カテゴリーだけでは分類するのが難しくなっているからだ。

ソーシャル時代には、製品のカテゴリーに、顧客とのインタラクションがつけ加わるからである。

製品カテゴリーでどの領域に入るかを考えるよりも

顧客とのインタラクションをどうやったら高めることができ、自社の製品を高関与のエモーショナルな領域に持ち込むことができるかが、うまくいくマーケティングの決め手になるだろう。

ソーシャルメディア時代のマーケティングの定義は、
顧客の創造から、生活者との価値の共創へと変わってきたからである。ドラッカーがマーケティングを不要にすると定義したが、この定義はソーシャルメディア時代も有効である。

2011年11月9日水曜日

ソーシャルメディア時代のソーシャルキャピタル論

ソーシャルメディア時代に入り、ソーシャルキャピタルも新たな定義づけが必要になっているのではないかと考えています。

これまでのソーシャルキャピタルは形態的には2つに分けています。


一つは「結束型ソーシャルキャピタル」、自分の周りに密接な関係を築いて、閉鎖的な集団の持つ協調力を発揮する形です。

もう一つは「橋渡し型ソーシャルキャピタル」です。こちらは、むやみに周囲と結束するのではなく、自分を媒介に人々をつなげる役割を果たすものです。

この2つのソーシャルキャピタルはともに、リアルな接触というものが暗黙に想定されているように思います。


明らかに、ソーシャルキャピタル、人と人とのつながりが生まれるのは、情報、コミュニケーションの流れがそこにあるからですね、

さかのぼると、
リアルな接触→①情報、コミュニケーションが生まれる→②人と人の結びつき→③関係性が生まれる→④信頼(相互信頼、片務的信頼)という流れではないでしょうか?

今、ソーシャルメディア時代は、情報の流れは必ずしも双方的ではなく、片務的な情報の流れが圧倒的に多くなっていると思います。

これまでのソーシャルキャピタル論は、いわばリアルな関係を暗黙に想定していたので、関係の形だけで、情報の流れの方向性は関係要素に入れる必要はなかった、ことに気づきました。

しかしながら、現代は、ソーシャルキャピタルの構造をみる際に、情報の流れの方向が重要となっている、、

例えば、TwitterでBさんはAさんのフォロワーになっている場合、
情報の流れはA→Bであって、逆の方向性はない。信頼も、BさんはAさんを信頼しているかもしれないが、逆はない。Google+でも同じです。

これまでのソーシャルキャピタル論に、情報の方向性を入れることによって、ソーシャルメディア時代に適したソーシャルキャピタル論を展開できるのではないかと思います!

そうすることで、企業ソーシャルキャピタルをどう高めていくか、考えやすくなると思います。

2011年11月8日火曜日

ソーシャルメディアがソーシャルキャピタルをどう変えたか?

ソーシャルメディア普及によって、ソーシャルキャピタルはどう変わったのか?
①構造、②機能、③投資回収、④可視化という観点から考えてみたい。

ソーシャルメディア以前
①構造:ボンドキャピタル中心(地縁、血縁のリアルな密な関係が中心)
②機能:困った時の互助的役割
③投資回収:長期間でソーシャルキャピタル(信頼)を蓄積し長期で回収する形
④可視化:×

ソーシャルメディア以降
①構造:ブリッジキャピタル中心(興味関心のネットワーク、コミュニティが中心へ)
②機能:情報シェアリング、求める情報を受動的に入手
③投資回収:短期間で投資回収が可能に
④可視化:○

ブリッジキャピタルのハブ的役割を果たすインフルエンサー(影響者)、キュレーターの価値、役割が増大。ソーシャルキャピタルの可視化によって、レバレッジがかかる、、

企業ソーシャルキャピタルをどう測るか?①


ソーシャルキャピタルという概念とソーシャルメディアをどう結びつけられるか、考えてみたい。

証明したい命題は、
企業は、企業ソーシャルキャピタルを高めることで、企業がソーシャルメディアをうまく活用できる、というものだ。

そのためには、企業ソーシャルキャピタルをどの指標で測定するか、ベンチマークできるが問題となる。

これまで、社会学、経済学、政治学など様々なな領域でソーシャルキャピタルの研究は数多く行われているが、ソーシャルメディアと結びつけた研究はまだほとんどない。ソーシャルメディアの普及自体がここ数年の話だからだ。

ソーシャルキャピタルにはブリッジ型とボンド型があるが、特にソーシャルメディアはブリッジ型のソーシャルキャピタルを高めるのに有効と思われる。また、この2つのソーシャルキャピタルは相互補完的なものだが、ある一部は代替的な要素もあると考えている。

ソーシャルキャピタルに関する代表的な論文をいくつか読んでみた。
日本総合研究所が、地域、コミュニティのソーシャルキャピタルを指数化しているものがある。
以上のデータを地域毎にアンケートで集計して可視化した。
一般的な信頼/旅先での信頼/近所づきあいの程度/近所づきあいのある人数/職場外でのつきあい頻度/親戚とのつきあい頻度/スポーツ等への参加/地縁活動への参加/市民活動への参加

この発想、アプローチは、企業ソーシャルキャピタルの評価測定にも応用できるものと思われる。これらのデータは、関係の濃淡と深さの二次元に分類できる。これを敷衍すると、企業ソーシャルキャピタルも、対象の広さ(タッチポイント)と深さ(エンゲージメント)の2軸で分類できるのではないかと思う。

2011年11月7日月曜日

ソーシャルインパクトの評価、計測についての考察

 
 日本でも社会的な課題の深刻化、複雑化するにつれて、社会的な課題の解決をビジネスの手法で解決する、いわゆる社会的企業が脚光を浴びている。近年、このような社会的企業の社会へのインパクトをどのように評価、測定するかに大きな関心が高まっている。

 これまでに、ソーシャルインパクトの評価法は米国REDFで開発されたSROI(Social Return On Investment、社会的投資収益)アプローチがある。また、英国では非営利系シンクタンクNEF(New Enonomics Foundation)が米国REDFで開発されたSROIを進展させ、2009年内閣府から「SROIガイドブック」を公表し、一部のNPOや自治体での導入が進められている。

 このようなSROIアプローチはこれまで見過ごされてきた、社会への貢献価値、社会へのリターンを明示化、数値化したという点で画期的であった。

 しかしながら、現状ではこのSROIアプローチは、日本のNPOや社会的企業で継続的には使われるに至っていない。

 SROIの欠点としては、①静態的なモデルであること、②将来を含めたポテンシャル評価に取り入れるかが曖昧なこと、③アウトカムを金銭的な価値に換算することが難しいケースがあること、また④ハードルレートは明示されず、どの水準のSROIならいいかの判断が難しく、意思決定に用いることが難しいという点も挙げられる。

したがって、SROIはその数値結果そのものよりも、利害関係者へのコミュニケーションツールとして、計画段階での対話ツールとして使われるケースが多い。

 このような従来型SROIアプローチの欠点を補うために、新しい社会的なインパクトの測定法「ソーシャルインパクト指数© (Social Impact Indicator©, SII)」の開発を試みた。

このソーシャルインパクト指数©は、5つの指標《①社会的課題の深刻さ、②投資対効果(修正SROI)、③地域・産業への波状効果、④スピード、⑤経営基盤・持続性》から構成されており、従来SROIアプローチの欠点を補うことが可能となっている。

 このソーシャルインパクト指数©を活用することで、異なるソーシャルビジネスを比較したり、価値の変化を算定したり、将来のポテンシャルを評価することが可能となる。

 このソーシャルインパクト指数©は誰にどのように役立つものだろうか? 
行政はこの指数を使うことで異なるソーシャルビジネスの優劣を比較したり、どのくらいの資金を税金で投入するのが合理的なのかを判断しやすくなる。また、企業は自社のCSR活動の費用対効果を検証する、もしくはどの団体と連携することで社会への貢献価値を高めることができるかを判断できる。

 今後、このようなソーシャルインパクトの可視化はますます重要となっていくと予想される。

 営利企業においても、本業を通じて社会にどのようなインパクトを与えているのかの説明責任がますます高まっていくと予想されるからだ。

また、ソーシャルインパクトの評価がNPOやソーシャルベンチャー等への寄付や投資の判断材料となるだろう。

行政も、ソーシャルインパクト指数を使うことで、Pay For performance(成果に基づいて税金を支払う契約形態)の道を開く契機となるからだ。

2011年11月4日金曜日

政治家のソーシャルメディア活用

政治家のソーシャルメディア活用

政治家のソーシャルメディア活用ということについて考えてみたいと思います。
ソーシャルメディアを活用する政治家養成学校も出来ましたし(笑)

政治家がソーシャルメディアを活用するというのは、
単に、ブログを書いてますよ、演説がうまいですよ、というのとは全く違うと思う。

ソーシャルメディアを活用することで自分の影響力を高められるかどうかがポイントなのだ。これは、企業も個人(政治家)も同じことである。

影響力とは、自らが望む方向に他人を説得したり行動させたりする力、と定義されるかもしれない。オバマの選挙が典型的であったが、その影響力を高めることができたことが、寄付金を集める力に転嫁されたのだ。その逆ではない。

政治家の影響力は土壇場で力を発揮する。
相撲で言えば粘り腰で土俵ぎりぎりで粘る力、土壇場力と言えるかもしれない。
今の、メディアの内閣の支持率はうまくエンゲージメントの深さを反映していないと思う。

野田首相もブログ(かわら番)をやっているが、一方向型な話が多く、対話型ではなく、読者を引き込むことに失敗している。何かを説明しているのだが、それを読んだ読者に、何か考える機会を与えたり、それについてコメントしたくなるようなものではない。

間違いないように、誤解がないように、という配慮はあるが、対話ではない、
これでは、エンゲージメントが深まらない。(企業のソーシャルメディア活用でももよく犯す間違いだ)

エンゲージメントを深める上で、企業でも、その企業が目指すビジョンやミッション、世界観が重要だが、野田首相の演説にはそれがみえない、やるべきことを淡々とやります、俺の背中をみてくれよ、みたいな。この透明性の時代にそれでは駄目だと思う。

自らを、自らの言動をソーシュルオブジェクト化できるかが、野田首相のソーシャルメディアで影響力を高められるかどうかのポイントだと思う。

ソーシャルメディアの6つの評価軸


ソーシャルメディアの6つの評価軸

企業のソーシャルメディアの活動、そしてその成果をどう測定するか、様々なコンサルタントが模索しています。AltimeterのSusan Etlingerさんが1つ参考となるフレームワークを提供してくれていますので、私なりの解釈を加えてご紹介します。

6つの評価軸です。

1番目はブランドの健全度です
一言で言うと、オンラインでどれくらい好意的に口コミされているか、です。オンラインの口コミが購買行動に非常に影響を与えていますから、まずはそこを押さえることが必要です。

2番めは、マーケティングの最適化という観点です
ソーシャルメディアを活用することによって、マーケティング全体の効率性が高まる側面があるわけです。それはソーシャルメディア単独の効率性の良さという側面と、メディアミックスによる効率性が高まる2つの側面があります。

3番目は、売上の貢献度です。
ソーシャルメディアは見込み客を増やすという側面と会話を増やす側面がありますが、最終的に売上にどの程度貢献するか、それも極めて重要な評価の尺度になります。

4番目は、オペレーションを効率的にするという側面です。
カスタマーサービス部門が効率されたり、苦情処理が効率されたりという側面があります。

5つ目はカスタマーの経験を豊かにするという側面です。

企業のコントロールできないタッチポイントが増えていますが、それぞれのタッチポイントでその企業ブランドの経験を豊かにする、一貫した良い印象をもってもらうということが重要になってきています。

6つ目は、イノベーションを引きおこす力です。
カスタマーとの協同によって、新しいアイデアを生むことができるようになっています。

以上の6つの評価軸をもとに、自社のソーシャルメディアの活動を他社と比較したり、時系列でその改善を図ることができると思います。そのためには、この6つの評価軸をどのようなデータで測定していくか、どうデータを解釈すべきかという次の課題を解決する必要がありますね。

この評価軸を、段階と考えることもできますね、日本企業の場合は1段階目、2段階目を模索している企業が多いように思います。

2011年11月2日水曜日

野田首相ってホントにソーシャル向きなの?


野田首相ってホントにソーシャル向きなの?

ループスの斉藤さんが、野田さんは演説もうまいですし、ソーシャル向きっぽい方だなと思います、と発言している。
http://news.livedoor.com/article/detail/5990292/?p=1

これってあっている?

ソーシャルメディアを選挙で活用した事例でよく挙げられるオバマと比較すると、まったく真逆ではないかと思う。

オバマ チェンジという行動を呼びかけるわかりやすいメッセージを発信

対して、野田首相は自らをどじょうと称した点ではその点だけは話題にはなったが、増税、震災復興、福島原発問題などの政策も、感情をよびおこさせるメッセージにはほど遠い。


情報発信力 ×

行動や言動が人のうわさになる ×

感情をよびおこさせるメッセージや行動をよびかかけるメッセージ ×

透明性 ×

つまり、国民にとって野田首相は(低関与、論理性)のセグメントに位置しており、ループスの斉藤さんが言うソーシャルに向く領域(高関与 感情)領域には全く入っていない。

歌手でソーシャル向きは言えばレデイガガだ。自らをソーシャルオブジェクトに徹して、情報発信、インタラクションを生み出す姿はまさにソーシャル向き。


野田首相は冷えたピザと称された小渕元首相に近く、とっても、彼の、言動や行動がソーシャルメディアを通じて様々なソーシャルグラフで伝播するという形になっていないのだ。これはTwitterの引用件数を検索してみるとはっきりわかる。

ソーシャル化の本質は自らが発信するよりも、それが多くの人によってシェアされるかどうかが本質なのだ。

結論:演説がうまいのとソーシャルに向くかは関係ないのだ。
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クラウドファンディングの本質③

クラウドファンディング(CF)が注目される理由として以下の点が挙げられる。


アイデア段階で個人がお金を集めることができる

プロジェクトは芸術、クリエイティブ、製品の制作、何かのチャレンジでも何でも構わない。その資金をアイデア段階でお金を集めることができる。

お金の出し手が意思決定者と一致するのでスピーディにお金集めを実現できる
銀行や機関投資家のような資金仲介者ではなく、お金の出し手と意思決定者は一致している。プロジェクトとP2P型で結ばれ、スピーディに意思決定することができる。

お金の出し手に対するリターンを柔軟に設計することができる

お金を出した人に対するリターンの種類として3つある。
「寄付型」 : リターンを一切求めないタイプ(提供者に見返りなし)。
「購入型」 : 金銭以外のリターンがあるタイプ(作品やイベント招待など)。
「投資型」 : 金銭的リターンを想定するタイプ

お金の出し手はお金を出すことによってそのプロジェクトの支持・支援を社会的に表明できる。

多くのCFはソーシャルメディアと連動しており、そのプロジェクトに支援することがソーシャルグラフでつながった人などに明らかにすることができる。

集合知によってプロジェクトが実行される。

個人のお金を出すかどうかの判断の結集によってプロジェクトが実行されるかどうかが決まる。それを決めるのは個人の判断とともに集合知だ。

プロジェクトのファンディングを通じて、これまでになかったつながり、結びつき、キズナを作ることができる、
リアルなイベントなどとも組み合わせることができ、プロジェクトを通じて、コミュニティが形成される。逆にそういうコミュニティが形成されるかどうかが資金を集められるかどうかのポイントにもなる。

このようなCFで共感によってお金を集めることができるようになると、資本主義もまた別の道を歩んでいると言わざるを得ない。

共産主義は生産手段を資本家が独占することによって貧富の差が拡大することによって崩壊すると予言した。それに対して、クラウドファンディングは共感=マネーの新しいパラダイムだ。この共感は誰によって独占されるものではなく、誰でも生み出すことができるものだ。つまり、はじめて資本が市民に解放されたということができるかもしれない。

2011年11月1日火曜日

クラウドファンディング②




クラウドファンディングの面白い点を考えてみたい。

舞台裏を見せる効果

お金が何にかかるか、制作過程を見せる、透明に、ミッションオリエンテッド型で何をやりたいのかを示して共感を集める。

お金の出し手に対するリターンをカスタマイズできる
リターンは別にそのプロジェクトの生産物でなくても構わない。エンゲージメントの階段を多様にもうけることで、お金の出し手のニーズに応えることができる。

ゲーミフィケーション
期限を決める、all or nothingでハラハラドキドキ、そのプロジェクト成立に対する関心を高める

広告とお金集めを同時に、一体型でできる
クラウドファンディングではお金を集めをしつつ、その一方で、そのプロジェクトの認知度を高める、広告宣伝に役立っている。

アイデア段階、制作過程でお金を出すことによって、プロシューマー的
生活者がお金を出すことで制作過程に関与し、生産者の役割の一端を担う。

お金を出した人同士のつながりをつくり出すことができる
ソーシャルメディアで誰がどのプロジェクトにお金を出したかが可視化され、お金を出した人同士のコミュニティを形成できる

目標を共有、ビジョン、世界観を共有できる?
大成功したプロジェクトでは単にお金を集めることができたという以上に、プロジェクト側とお金の出し手が目標、ビジョン、世界観を共有できたケースが生まれる。

ニーズがないと作られないことによるムダの排除

お金が集まらないと制作はおこなわれない、そういう意味ではムダの排除が自動的に行われる。

プロジェクト側のリスクの低下
ムダの排除はプロジェクト側からみるとリスクの低下につながっている。ニーズがないものは作られないからだ。

広告モデルの変化

一般の製品は大衆向けに広く広告宣伝をして、そのわずかな一定割合が購入することで、採算があっていたが、クラウドファンディングはその興味をもつ一定割合をダイレクトにアクセスして支援してもらう形である。

2011年10月31日月曜日

クラウドファンディング①



クラウドファンディング①

ソーシャルマーケティングについてはだいたいまとまったので、
次は、クラウドファンディングについて考えていきたいと思います。

日本でも、ソーシャルメディアが人々の購買行動、ライフスタイルに大きな影響を与えつつあります。その一方で、クラウドファンディングという金融イノベーションが静かに進みつつあると思います。

クラウドファンディングを考えることで、さらにソーシャルメディア時代のマーケティングについて深い理解が得られると思います。なぜなら、後述するように、クラウドファンディングは単なる資金調達ではないからです。人を参加(引き込ませる)させる高度なメカニズムデザイン、舞台装置と考えればより近いのではないでしょうか?

 クラウドファンディング(以下、CF)はプロジェクトに関わる資金を、ネットを通じて多数の支援者から集め、プロジェクトを実現する方法のことを言います。アメリカのKicksterが有名で、日本でもReady for? 、Campfireなど類似のサービスを開始し始めた段階です。

クラウドファンディングをソーシャルメディア時代の新しい購買の形と位置づけることもできるのではないでしょうか?

CFという舞台にたつことによって、

購買という見えない行為がみんなに見える行為に変わり、
購買者は支援者に変わり、
独立した購買が、みんなの購買に変わり、
購買者同士のつながりが作り出され、
機能便益を得るための購買が、そのミッションや目指す世界観への応援支援となり、
生産側と消費者の融合(プロシューマー化)が起こり、

つまり、クラウドファンディングは単なる資金調達ではないということです。
つまり、クラウドファンディングは単なる購買行為ではないということです。

ですから、プロジェクト側も、この点を十分に考えて設計する必要があると思います。

新たな関係性を作り、コミュニティを作り出す、
そのことを、より劇的に、イベント化、劇場舞台化、非日常化したという方が近いのではないでしょうか?

このCFを可能としているのが、
ソーシャルメディアによる購買(支援?)の可視化、インタラクティブ性、リアルタイム性です。

企業側も、モノを売る際に、以上のような発想をもつことが、ソーシャルメディア時代には必要なのではないでしょうか?

ということで、今後、いろいろと考えていきたいと思います。

2011年10月27日木曜日

エンゲージメントの要素とは?




アメリカだと、Facebookの利用率とソーシャルキャピタルには相関がある、というデータ、分析が出ています。

つまり、Facebookの利用率が高まると、より市民の参加意識が高まり、選挙などの投票にも積極的に行き、人生の満足感、社会への信頼感も高まる、というデータが出ています。

つまり、ソーシャルメディアはソーシャルキャピタルを高めるツールとして機能しているということです。

このことを企業の文脈に当てはめるとどうなるでしょうか?

ソーシャルメディアを使うことで、市民のソーシャルキャピタルを高めることができるならば、企業もソーシャルメディアを効果的に使うことで、企業ソーシャルキャピタルを高めることは十分に可能と思われます。

そのためには、エンゲージメントを高めていくということになると思います。

エンゲージメント、日本語ではキズナでしょうか? この言葉はソーシャルメディアのキーワードとしてよく使われますが、その意味するところは多様な意味を含んでおり、一義的に定義が難しいと思います。

参考までに、Razorfishはエンゲージメントを構成する6つの要素を挙げています。

1. Valued:相手に価値を提供しないと、喜ぶことをしないと駄目だということです。独りよがりは効果が低い。

2.Efficiency:相手の時間をムダにしたり、煩雑、めんどくさいのは嫌われます。

3.Trust:信頼される関係を構築しないといけません。この会社は信頼できる会社と思われるかどうか。

4.Consistency:前述の3つに比べると重要性は落ちますが一貫性も必要とされます。一貫性は信頼性も高めますし、ブランド認知を高める上でもばらばらなメッセージを発していると関係は深まらない。

5.Relevance:関連性も重要となります。その会社は何に強いのか、何の会社なのかが認識されることが必要です。

6.Control:自分がコントロールしているという感覚がエンゲージメントを高めます。

2011年10月26日水曜日

情報経済パラダイム第3フェーズ



 企業も、個人も、情報を独占することで価値を生み出す時代から、情報を共有(シェアリング)することで価値を生み出す時代に転換しつつあるように思います。

個人も企業も、オープンにつながり、つながりの価値を活かすという発想が求められているようです。

これまでの、情報経済のパラダイムを大きく分類してみると、

第1フェーズ ①情報を独占することの価値(マイクロソフト)、Copyrightという特許以上に強力な独占

第2フェーズ ②情報を見つけることの価値(ヤフー、グーグル)、人力の情報整理から、機械検索へ

第3フェーズ ③情報を共有することの価値(Facebook)

①→②→③と進んでいき、現在は③に入っていると思います。アップルも、③の情報を共有する価値を提供する会社と位置づけられるといいと思います。

情報を共有する仕組みとして、ソーシャルグラフ、そしてインタレストグラフの重要性がどんどん増してくるので、この第3フェーズの覇者が生まれてくると思います。

2011年10月25日火曜日

ソーシャルメディア疲れが広がりつつある!?



 日本企業、特に大企業の中に、「ソーシャルメディア疲れ」がますます広がっているように思います。何故、日本の企業はソーシャルメディアをうまく使えこなせないのか? 目に見える経営の成果をあげることができないのか?

別のいい方をすると、上図のLadder of engagementの階段の2段階目に踏みとどまっている企業が多い、ということです。

私がみるに、大きくは4つの原因があるように思います。

①企業文化の問題(オープンで透明性の高い企業文化を作り、顧客とコラボレーションで価値をつくりあげていくことに不得手)

②新しいマーケティングパラダイムの変化についていけていない(エンゲージメントモデルの理解、マーケティングを投資という考え方・運用の仕方がまだ未整備)

③ソーシャルメディアのデータを活かしきれていない(目標(Goal)設定の曖昧さ、ソーシャル化で生まれる大量のコミュニケーションデータの活かし方がわからない、コミュニケーションデータと財務データの統合が整備されていない、自社にまつわるキーワードのモニタリングとセンチメント分析だけに終始している)

④リアルタイムのリスクマネジメント体制ができていない(リアルタイムのモニタリング体制、社内の危機管理体制、危機の認定→連絡フローの決定、ガイドライン、運用マニュアルなど)


逆に言うと、以上の4つの領域をさらに踏み込んでいくということが日本企業の処方箋となるだろう。

企業文化をよりオープンにし、新しいマーケティングのパラダイムをみにつけ、ソーシャルメディアから生まれる大量のコミュニケーションデータを経営の成果に転換する方法論をマスターし、リアルタイムのリスクマネジメント体制を作り上げることだ。

2011年10月24日月曜日

大企業とベンチャー企業のマーケティングの接近

マーケティングの前提条件の変化
大企業とベンチャー企業のマーケティングの接近



 これまでは、大企業のマーケティングとベンチャー企業のマーケティングのフレームワークは大きな違いがあった。大企業は潤沢な広告費をもちマスメディアを使うことができたのに対して、ベンチャー企業はその資金的な余裕がなかったからである。

 しかしながら、ソーシャルメディアのマーケティングにおいて、その状況は大きく変わってきている。ソーシャルメディアのマーケティングでは媒体費用は無料かごくわずかな費用しかかからない。

 また、これまでのマーケティングの4Pに加えて、5番目のP(人)が重要になり、ヒューマンタッチが重要になり、このことはむしろベンチャー企業にとって有利になる要素もあるからだ。

ソーシャルメディアのマーケティングにおいてベンチャー企業も大企業に競争上大きく不利になることはないのだ。ソーシャルメディアのマーケティングにおいて大企業の方がベンチャー企業よりも効果をあげやすいかというとそういうこともない。

 実際に、Facebookのファン数にでも、大企業に伍してベンチャー企業が健闘しているケースも多いみられている。

むしろ、ソーシャルメディアの基本を押さえて正しいステップを踏んでいるかどうかの違いの方が大きいと言える。

 図表●は筆者が企業のソーシャルメディアのマーケティングを提案する際に用いるフレームワーク、戦略マップである。このフレームワークは大企業でもベンチャー企業でも区別なく使うことができる。

手順は7つのステップに分けられる。
1目標の設定
2ブランディング
3顧客ターゲット
4ソーシャルメディアミックス
5コンテンツ配信管理
6ブレインストーイング(戦術の決定)
7ソーシャルメディア効果測定

(詳細は省略)

2011年10月20日木曜日

ソーシャルキャピタルをソーシャルメディアに活かす!?



ソーシャルキャピタルという言葉をご存知でしょうか?

社会学や経済学で使われる概念で、「社会の信頼関係、規範、ネットワークといった社会組織の重要性を説く概念で、簡単に言うと、人と人とのつながりの力のことです。

では、そのソーシャルキャピタルとソーシャルメディアはどう関係するのでしょうか?

 多くのソーシャルメディアの本が出版され、企業がソーシャルメディアをどう活用すればいいかを多くのコンサルタントが説いています。しかし、最終的なアドヴァイスは、「愛されることが大切です、愛される会社になりなさい」とか、「ソーシャルメディア時代は購買決定プロセスが変わりました。共感が最初の購買決定ステップになります。共感を得なさい。その企業に対する信頼、共感が得られていないと難しい」など、結局は、実用性が低いアドヴァイスで終わるのがこれまでのオチとなっています。

 私は、ソーシャルキャピタルという概念を用いることで、この辺りを変えることができるのではないか、と考えています。

一般的なソーシャルキャピタルと区別して、企業のソーシャルキャピタルをCorporate Social Capital C-Social Capital、企業ソーシャルキャピタル)と定義して考えます。

企業が共感を得られるのは、その前に、企業ソーシャルキャピタルの存在が必要になると考えます。実は、共感はフロー概念で、ソーシャルキャピタルはストック概念だからです。そして、企業ソーシャルキャピタルは、「その企業が影響を及ぼすことができる範囲の広さとその関係(エンゲージメント)の深さ」として捉えます。別の言葉ではコミュニティ力とも言えると思います。

 このように定義することで、企業ソーシャルキャピタルの大きさをある程度定量的に捉えることができるようになりますし、その推移も把握することが可能となります。

方程式は、
企業のソーシャルキャピタル(ストック)→共感(フロー)→ソーシャルグラフやインタレストグラフで伝播される→影響力(購買、長期的な収益)(フロー)という流れになります。

いかがでしょうか? やる気になれば、違う企業同士の、共感指数/ソーシャルキャピタルを比較することもできると思います。

 つまり、企業の提言としては、共感を増やしなさいではなくて、企業ソーシャルキャピタルをこういう方法によって、範囲をこういう形で増やし、エンゲージメントをこのレベルに増やしなさい、という形になり、より具体的な戦術を考えることが可能となります。いずれも、フローではなく、その元のストックを捉えるところがポイントになります。

2011年10月19日水曜日

企業マーケティングのソーシャルマーケティング化?

マーケティング前提条件の変化
企業マーケティングとソーシャルマーケティングとの融合



 企業が利益追求中心のマーケティングであるのに対して、ソーシャルマーケティングは社会との関わりを重視するマーケティングの考え方であり、これまでは、公共機関や非営利企業のためのマーケティングとして位置づけられてきた。

 公共機関や非営利企業は、ソーシャルマーケティングによって、解決を図ろうとする社会的な課題を世の中に啓蒙したり、その団体の目指すビジョンやミッションに対する共感を喚起するために用いてきた。

しかしながら、ソーシャルメディア普及により、企業のマーケティングも、社会とのかかわりが重要性を増しソーシャルマーケティングの色彩が濃くなってきた。

 また、ソーシャルメディアにより、企業の活動が赤裸々に世間の目にさらされるようになったこともこのこのことを後押ししている。企業の活動に一貫性がないと、信頼感を得られなくなったからである。

ソーシャルメディアの果たす意味を考えるには以下の2つを比較してみるといい。製品を購入することと、人に知らせた上でその製品を購入することである。後者は、前者よりも、購入に社会的な側面が加わるので、その企業に対する応援や共感、支持の表明という色彩を持つようになり、どの製品を購入するかが自分自身のアイデンティティを示すという意味合いが強くなる。

ソーシャルメディアのこのような側面が企業マーケティングのあり方も変えていくのだ。


企業と消費者を3つにつながりのレベル、コンテクストで分類することができる(図表●)。

第1層は、企業と消費者は製品レベルのつながりである。この第1層では消費者は機能面の違い、コストパフォーマンスの違いによって簡単に他社製品に乗り換える。

第2層は、その製品を提供する企業への情感、感情的なつながりである。この第2層は第1層よりも消費者と企業とのコンテクストは深まる。例えば、その企業の製品を購入した時に、きちんとサポート対応してくれたから、もう一度買おうとか、そういうレベルである。この第2層では人的なサービスが差別化要素となる。

第3層は、その企業の目指すミッションやビジョン、企業文化に対する敬意、その企業の世界観に対する共感によるつながりである。この第3層になると、消費者は他社製品にスイッチしなくなる。また、他人にもその製品の良さや、その企業の良さを推奨するようになる。

 当然、企業は、第1層から第2層へ、そして第2層から第3層にコンテクストを移行することが望ましい。そのためには、企業は自らのミッションやビジョン、企業文化、その企業が目指している世界観などを人々に理解してもらうことが重要となり、営利企業もソーシャルマーケティングが必要となってきたのだ。

第3層とのコンテクストの割合が高い企業には、ユニクロ、ソフトバンク、ソニー、アップル、スターバックス、ザッポスなどが挙げられるだろう。

以下、ザッポスのCEOのトニー・シェイの言葉を引用しよう。
「我たちは、企業の文化と会社のブランドは本質的1枚のコインの表と裏だと信じているのです。ブランドは初めは文化に遅れを取るかもしれませんが、いつかは追いつきます。企業文化こそがブランドなのです」

2011年10月18日火曜日

企業のマーケティングは4Pから5Pモデルへモデルチェンジが必要

マーケティングの前提の変化
企業マーケティングパラダイムの変化(4Pモデルから5Pモデルへ)



 これまでのマーケティングは4Pというフレームワークで語られてきた。言わずと知れず、4Pとは、(Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション) のことである。企業はこの4Pをコントロールすることができ、これらを効果的に組み合わせる(マーケティングミックス)することで企業はマーケティングで最大の成果をあげることができるという考え方である。

 しかしながら、ソーシャルメディア時代に、4P以外に、いやこれまでの4P以上に重要な新たな要素が生まれつつある。新たなPとはPeople(人)である。

 ソーシャルメディアを一言で言えば人のつながりのネットワークであり、自分を中心とした人とのつながりが、ネット上の人々の行動や考え、そして購買に様々な影響力を与え始めてきている。

 自分の友達がMac book Airを買ってその感想をソーシャルメディアで述べると、自分もその製品が欲しくなったり、実際に自分も購入したりする。つまり、People(人)がマーケティングを考える上で欠かせない要素になってきたのである。

 ネット上で影響力をもつインフルエンサーという人たちも存在する。例えばTwitterで何万人のフォロアーをもつインフルエンサーのつぶやきはがフォロアーのタイムラインに流れ、フォロアーの購買行動や考え方に影響力を及ぼすことになるのだ。

 しかしながら、5番目のP、People(人)を企業はこれまでの4Pのように、コントロールすることはできない。企業にとっては、コントロールすることができないものがマーケティングに影響を与えるということは脅威であるが、同時に新たな機会にもなりうるのだ。

4Pのフレームワークでは要素を組み合わせて最適化するという考え方であったが、5Pモデルでは最適化はできない。5つ目のPは企業側がコントロールできないからである。

 また、4Pをベースにするマーケティングと5Pモデルではそもそものマーケティング施策も全く異なるものになることを企業は改めて認識する必要がある。

企業は4Pモデルから5Pモデルに大きく転換する必要がある。5Pモデルに転換する上での注意点としては3点が挙げられる。

1.企業自身も、ヒューマンタッチ、人間らしくある必要性が高まっている。人には人として向き合う必要性があるのだ。

2.オープンな企業文化であることの重要性が高まっている。つながりを活かすにはオープンな形でないとつながりにくいのだ。これまでのような媒体を通じたタッチポイントだけでなく、生活者の側から様々なタッチポイントを作り出してもらう必要があるのだ。

3.ソーシャルオブジェクトを軸にマーケティングを組み立て直せ。
ソーシャルネットで人はなぜインタラクションを生んだりコミュニケーションするのか? それはソーシャルオブジェクトを媒介にする。企業は生活者の間でインタラクションを生む価値が高まっており、企業は効果的なソーシャルオブジェクトを生み出す必要性がある。

4Pをベースにするマーケティングと5Pモデルではそもそものマーケティング施策も全く異なるものになることを企業は改めて認識する必要がある。

4Pから5Pモデルにモデルチェンジできるかが、今後の企業のマーケティングの成果に大きな差を生むだろう。

2011年10月17日月曜日

カスタマーサービスとマーケティングの融合

マーケティング前提条件の変化
カスタマーサービスとマーケティングの融合



企業の中には、自社のTwitterアカウントでカスタマーサービスを行う企業も増えてきた。お客さんからの問い合わせをTwitterで受け付け、それに対して、他の人にも見えるオープンな形で返答や対応していく。このようにソーシャルメディアを介したカスタマーサービスが普及するにつれて、カスタマーサービスとマーケティングの境界は融合していくことが予想される。
 
 オープンな形で対応するので、カスタマーサービスの対応がいい企業にはファンがついたり、口コミによって評判が広められたりする。その結果、新たな顧客ができたり、リピート率が高まったりする。これはまさにマーケティングそのものだ。

最近では、ソーシャルメディアの先進的な企業の中にはアクティブサポートを提供する企業も見られるようになった。アクティブサポートとは積極的に自社がソーシャルメディア上でどのように語られているかをモニタリングし、場合によってはその語っていた人にアプローチし語りかけたり、不満を解消したりすることである。従来のカスタマーサービスは顧客から電話やメールでの問い合わせに対応する受け身にすぎなかったのに対して、アクティブサポートはまさに積極的に、リアルタイムに企業から顧客に語りかけ問題を解決する点に特徴がある。

 USではザッポスやジェットブルー、コムキャストが有名であり、国内でもブックオフオンラインやソフトバンクモバイルがアクティブサポートアクティブサポートを提供している。必ずしも、全ての企業に向く万能の方法論ではないが、顧客とのゆるいつながりを積極的に企業の資産に転換しようとするものであり、ソーシャルメディア時代のカスタマーサービスとして一考の価値はあるだろう。

 米国ザッボス社はソーシャルメディアをうまく活用している企業として知られている。ザッポス社は広告をほとんど出さずに、カスタマーサービスを非常に重視する。圧倒的なカスタマーサービスにより、顧客体験をデザインし、顧客を驚かせるくらいの対応をする。そのような対応に接したお客は、そのことをソーシャルメディアで発信してくれる。この好循環によって、ザッポス社は急成長した。

顧客との個人的なつながりを作り出すことが同社にとって重要な資産、投資となることを見抜いたのだ。カスタマーサービスを充実されることで顧客は積極的に口コミしてくれる。顧客のポジティブな口コミを増やすことこそがマーケティングである。

以下、ザッポス社CEOトニーシェイの言葉
この何年も、ザッポスの成長の一番の原動力となっているのがリピーター顧客と口コミです。

広告にはほとんど費用をかけずに、その費用をカスタマーサービスと顧客体験に投資し、私たちに代わって顧客に口コミでマーケティングを担ってもらおうというのが私たちの哲学なのです。

情熱的な人々や口コミが生んだ利益は、最初は目に見えません。しかし、時間が経つにつれて、その投資は何倍にもなって戻ってきてくれるでしょう。

私たちは顧客生涯価値を流動的なものと見なしており、あらゆるやり取りを通じて、顧客の心の中に私たちとのブランドとのよりポジティブな絆を作り出せば、顧客生涯価値は向上できると考えています。

私たちにはマニュアル原稿がありません。私たちは、顧客と個人的なつながりを育むことができるように、電話でのやり取りではいつもオペレーター各自が自分本来のパーソナリティを発揮してほしいと願っています。

2011年10月15日土曜日

ソーシャル時代の新しい消費者購買モデル(CETAモデル)提唱



ソーシャルメディア時代の消費者の購買決定モデルとしてCETAモデル(セータモデル)を提唱したい。このモデルは4段階のステップに分けられる。

①C(Context)コンテクスト作り→②E(Engagement)エンゲージメントを深める→③T(Trust)信頼→④A(Action)購買などのアクション

ソーシャル時代の特徴としては、コンテンツ(情報)よりもコンテクスト(文脈)の重要性が高まってきたことが挙げられる。

モノやサービスを購入する上でも、自分が知りたい情報を入手する上でも、ソーシャルグラフという人間関係のコンテクストの重要性が高まった。

コンテクストを伴わない情報は結局のところ影響力が低いものとなる。その最たる例が検索である。検索は自分が知りたいことや買いたいモノとページランク(閲覧数ランクおよびリンク数から計算したグーグルが判断するサイトの有用性)を結びつけるが、それは往々にして自分にとっての有用性とは一致しない。

機械のアルゴリズムに代わり、ソーシャルグラフという人間関係のコンテクストが、一般的な情報と自分が求める有用な情報を選別するフィルターになってきているのだ。また、情報(コンテンツ)が影響力を持つかは、その前にどういうコンテクストにあるかによって大きく異なる。

CATAモデルとSIPSモデルと対比して、その有用性を考えてみたい

SIPSモデルは共感が第1ステップに入っているが、共感の前にはその共感が流れるコンテクストが必要になる。CETAモデルはその点を明示的に示した。この部分は消費者の購買決定モデルの中で最も重要な部分であり、省くことはできないのだ。また、企業にとっても生活者とのコンテクストをどう作るかこそが、ソーシャルメディアのマーケティングの重要な課題となる。

第2ステップはエンゲージメントの段階である。コンテクストは弱いコンテクストから強いコンテクストまで幅がある。第2ステップでは、エンゲージメントのステップを入れて、コンテクストを深めるプロセスを取り入れた。強いコンテクストと弱いコンテクストでは購買確率に大きな差が生じるからである。企業はこのエンゲージメントをどう深めるかが非常に重要なステップとなるのだ。

第3に、エンゲージメントが深まると、企業と生活者はトラストの段階に至る。そして第4に、トラストから購買段階への移行がある。

以上のステップは階段型であり、ステップを飛ばすことはできない。それぞれがアクション、購買に至るまでの道のり、購買の確率の違いを示すと捉えると理解しやすいだろう。

モデルの有用性は、その現実、現象の説明力と、現実の応用可能性から判断されるべきだろう。

2011年10月14日金曜日

ソーシャル化で消費者の購買決定モデルはどう変わったのか?

マーケティング前提条件の変化
消費者の購買決定モデルの変化



これまで、消費者の購買意思決定モデルとして、様々なモデルが提案され、利用されてきた。

古くは、AIDAMAモデルがある。消費者は、その製品の存在を知り(ATTENTION)、興味をもち(INTEREST)、欲しいと思うようになり(DESIRE)、動機を求め(MOTIVE)、最終的に購買行動に至る(ACTION)という購買決定プロセスを経る、というものだ。

 次に、インターネット時代に入り、ヤフーやグーグルなどの検索が重要な位置づけになったことから、AISASモデルが生まれた。消費者の購買にまつわるプロセスを「注意」「興味」「検索」「購買」「情報共有」のプロセスから成り立つとする理論である。
「AISAS」とは消費者の各行動が英語の頭文字で表されており、それぞれ次のような段階を意味している。
「ATTENTION」(注意が喚起され)
「INTEREST」(興味が生まれ)
「SEARCH」(検索し)
「ACTION」(購買し)
「SHARE」(情報を共有する)

現在、ソーシャルメディア時代に入り、電通から新たな消費者の購買モデルSIPSモデルが提案されている。
S(SYMPATHIZE : 共感する)  
I(IDENTIFY : 確認する)
P(PARTICIPATE : 参加する)
S(SHARE & SPREAD : 共有・拡散する)

このSIPSモデルの特徴は
1.共感を消費者の購買の起点としている
2.検索というプロセスがなくなったこと
3.購買を含めた行動を広く参加というプロセスにまとめてある
という3点に特徴がある。

このSIPSモデルの実務的な有用性はまた別途論じるとしても、

ソーシャルメディアの普及によって購買決定プロセスが変わりつつあるのは確かだ。しかしながら、何が根本的に変わったのかという点に関しては十分に理解されておらず、購買決定モデルは本質をついていない。

 これまでの消費者の購買決定モデルは、個人の意思決定モデルとして発展してきた。しかし、ソーシャル化の時代に入り、個人の意思決定が、集団の集合知を含めた「社会的な影響」を受けるようになってきているという点が一番大きく変わった点である。

社会的な影響とは他人とソーシャルグラフというコンテクストを共有したことによる影響である。

 極端なことを言えば、消費者個人の購買決定モデルは消滅した。より正確に言えば、個人の購買決定モデルがソーシャルライズ化され、個人の意思決定だったものが社会的な合意形成プロセスに組み込まれたのである。

この点を踏まえて、私は、ソーシャル化時代の新たな消費者の購買決定モデル「ソーシャライズモデル」を提案していきたい。

2011年10月13日木曜日

マーケティングに求められる新たなケイパビリティ(資源、能力)



 企業のマーケティングの主戦場が、マスメディアからソーシャルメディアに移るにつれて、企業に求められるマーケティグのケイパビリティ(資源、能力)にも大きな変化が生まれつつある。

 マスメディアのマーケティングにおいては、資金力、媒体を押さえるネットワーク、資金および人的資源を有効に配分する調整力などが重要であった。

 しかしながら、ソーシャルメディアのマーケティングにおいてはそのようなケイパビリティはもはや必要ではない。

 ソーシャルメディアマーケティングの「7つのステップ」で示したように、魅力的なコンテンツを定期的に発信して、顧客、および顧客間にインタラクションを生み出し、エンゲージメントを高めていくことが基本である。

 そのためのケイパビリティはあたかも雑誌の編集者のようなものである。魅力的なコンテンツを見つけ出したり、自ら作り出したり、それを編集して、発信して、読者の興味を引き、口コミを増やすという流れだ。

 ソーシャルメディア時代は全ての企業がメディアカンパニーの側面を持つようになり、編集者のような振る舞いが求められている。このケイパビリティを自社で養成するのか、外部からの人材を採用して保有することが企業にとっては喫緊の課題になっている。

米国においては、ソーシャルメディアが普及すると、まずコミュニティマネジャーという役職が生まれた。現在、新たなCEOが必要だと言われている。CEOとはChief editorial managerであり、会社が発信するコンテンツを編集するのを統括する人のことだ。これも、ソーシャルメディィア時代に企業がメディアカンパニーとしての側面を持ち始めたことを示唆している。

 現状、日本の企業のソーシャルメディア担当をIT担当者に兼任させているケースが多いが、IT担当者が編集者のような素養、能力をもつケースはそれほど多くはなく、このことも日本企業のソーシャルメディアマーケティングがうまく機能していない一つの要因になっていると推察される。

新たな葡萄酒には新たな革袋が求められるのである。

2011年10月12日水曜日

ソーシャルメディアマーケティングをコストではなく投資とみるべき3つの根拠

マーケティング前提条件の変化
マーケティング費用はコストではなく投資である

 これまでマーケティングに関わる費用はコストとして捉えられることが多かった。売上高に対する比率で予算が決められ、売上高との対比によって事後的に管理される。つまり、これまでのマーケティングの前提はマーケティングの費用とその効果は年度中で完結し、対比できるという前提である。

 しかしながら、ソーシャルメディア時代になり、マーケティング費用をコストと捉えるよりも投資として捉える方がしっくりくるようになっている。いや、それどころか、ソーシャルメディアのマーケティングは投資として見なければまともな意思決定ができなくなっているのだ。

ソーシャルメディアマーケティングに関わる費用はコストよりも投資である。
その理由は3点が挙げられる。

 第一に、その費用の回収は1期間よりももっと長い期間での回収が必要となる。つまり、1期間の売上対比で効果を計ることが難しくなっている。費用はすぐに発生するが、その効果は長期にわたるのである。

 第二に、どのくらいその費用を回収できるかの不確実性が高くなっている。
Facebookのファンを増やしたり、Twitterでフォロアーを増やしたとしても、そこからどれくらいの売上をあげられるかは分かりづらい。このようなソーシャルメディアの指数をどのように売上や利益などの財務的な指標に転換する「方程式」をもっているかどうかが企業に問われるのだ。また、企業によってその投資効果は大きな違いがある。同じ費用をかけたとしても、その効果は企業によって大きく異なる。

 第三に、実は投資効果は顧客がどういうエンゲージメントの段階にあるかによって大きく異なる。

 例えばソーシャルメディアのマーケティングを行い、Facebookファンになってもらったとする。しかし、ファンになってもらっただけでは売上には結びつかず、今後様々な情報やコンテンツを発信して、エンゲージメントを高めることによって、将来的に売上に結びつくかどうかが決まる。その効果は、そのキャンペーンで完結するわけではなく、今後もファンとして維持できる限り生まれる可能性がある。



 図表で示すように、エンゲージメントの段階から、信頼の段階、そしてアクションに結びつくことで、マーケティングの果実を刈り取ることができるのだ。

 エンゲージメントの段階、次に信頼の段階、そしてその次にアクションの段階である。財務的な数値は信頼からアクションに結びついたもののみが効果としてカウントされる。効果の数字に現れなくても、エンゲージメントを作る、エンゲージメントから信頼の階段を作るなど、コンテクストを深めることには実は大きな意味と将来価値があるのだ。

 この顧客の段階を見極めて、顧客が次の段階に移行できる梯子をうまくかけれるかが、実はソーシャルメディアマーケティングの本当の肝にあたる。ソーシャルメディアROIを計る場合にも、この点を理解しないと、正しくROIを計ることはできない。

以上の結果として、ソーシャルメディアのマーケティングを投資として活かせる企業と活かせない企業の差が大きく差が開くことになる。

 ソーシャルメディアのマーケティング効果を長期的に活かせない企業にとっては費用になる。ソーシャルメディアのマーケティングを費用としてしか捉えない会社は過小投資という間違いを犯す可能性が高いと言える。これに対して、その効果を長期的に活かすことができる企業にとっては投資となり、その果実を長期的に刈り取ることが可能となる。

この違いは、ソーシャルメディアに関する費用をコストと捉えるか、投資と捉えるか、そのフレームによる違いが大きく影響することを企業は理解すべきである。

コラボ消費が劇的に増える理由!?

レイチェル・ボッツマンがTedの中でコラボ消費について説明している。

通常、コラボ消費というと、消費者同士のシェアリング、消費者同士のコラボレーションのことを意味している。

私はもう少し概念を拡張して
生産者と消費者のコラボレーションも含めて考えている。

私なりのコラボ消費の定義
消費者同士、および生産者と消費者との情報交換、コミュニケーションによって、全体の消費がより効率的されたり、より楽しくなったりする。

ゲーム理論的に、生産者と消費者のモデルを考えると、
生産者は2つの選択肢がある。<協力する、協力しない>
消費者も2つの選択肢がある。<協力する、協力しない>

生産者と消費者がお互いに協力した場合に全体最適が達成できる一方で、お互いに協力しないと「囚人のジレンマ」に陥り、低い値、低い満足しか達成できない。

では、どうしたら生産者と消費者がお互いに協力し、お互いに賢い選択肢をとることができるのか?

その一つの答えが、消費者同士、及び生産者と消費者が情報のやりとり、コミュニケーションを活発化し、コラボ消費することである。

コラボ消費は楽しいだけでなく、賢い選択肢となるのだ。

今後、ますますコラボ消費が進んでいくと思う。
不況により、合理的な選択、賢い選択が促進されるとともに、何より楽しいから。

我々は消費に機能的な価値を置くとともに、経験的な価値を置く。経験的価値は他人との経験の共有によって、消費に新たな「意味」が付加されるからである。

2011年10月11日火曜日

マーケティング前提条件の変化 「顧客とは何か」の前提条件の変化



 第2に、ソーシャルメディア時代には、顧客とは何かという前提条件も大きく変化している。これまでのマーケティグでは、顧客は自社の製品サービスを購入する人を意味していた。図表で示すように、顧客を2つのセグメントで捉えていた。いかに見込み客を顧客にするかという観点からマーケティングは捉えられてきたのだ。



 しかしながら、ソーシャルメディア時代の顧客は、製品サービスを購入する人であるとともに、他の人に推奨してくれる人であり、アドバイザーであり、アイデアを一緒に生み出してくれる人であり、ネット上で影響力を及ぼしてくれる人である。

 このようにソーシャルメディア時代には顧客は単に製品サービスを購入していくれる以外にも、多彩な顔を持っているのである。また、この多彩な顔を引き出せるかどうかがソーシャルマーケティングでは極めて重要な意味を持っているのだ。

 顧客がこの多彩な顔をもつようになった背景にはソーシャルメディアの普及がある。簡単に自分の購入した製品サービスの感想をTwitterでつぶやいたり、Facebookでいいね!というボタンを押すことで自分の意見を表明できるようになっている。

 広告の信頼性は企業が発する情報が低下しつつある。自分の友達や知り合いの影響力はどんどんあがっている。したがって、顧客に自分の製品サービスのポジティブな感想や意見をソーシャルメディアで発信してもらうことは企業の広告以上に購買に影響力をもつようになりつつあるのだ。

2011年10月8日土曜日

企業パラダイムの変化、外部性を企業内にどう取り込むか?

企業パラダイムの変化、外部性を企業内にどう取り込むか?

震災後、日本の主力銘柄の1角が暴落している。
東京電力然り、
トヨタ、野村証券、第一生命、ソニー、任天堂・・・・

これまでの企業パラダイムが明らかに変化したのだと思う。

これまでのパラダイム
企業→市場メカニズム
市場メカニズムで対応できない外部性がある→公共セクター
という役割分担。その間をNPOやソーシャルベンチャーがわずかに埋めてきた。

その企業も、負の外部性に対応することを社会から要求される。それが企業の社会的な責任として課せられるようになってきた。

そうすると、企業の境界も組み直しが必要にある、
これはまた、営利企業と非営利企業の境界が曖昧になりつつあることにも通じる話だ。

そうすると、新しい公式が必要となる、
震災前の時価総額 – 負の外部性=震災後の時価総額

また、逆にこれはチャンスでもある。企業によっては、
震災前の時価総額+正の外部性=震災後の時価総額

正の外部性をどうやったら企業の境界内に取り込むことができるかは、
今後の企業戦略の中でも最上の戦略の一つになるだろう。

2011年10月7日金曜日

ジョブスの社会的なインパクトは約20兆円?

ジョブスの死によって考えた、個人の社会的なインパクト

社会的なインパクトとは、世界の人の意識と行動の変化を生み出すということである。

新しく生み出した製品(Mac、ipod,iPhone,その他)→世界の人の行動の変化→雇用、別のイノベーションの誘発→(連鎖)→(連鎖)

インパクトの計測

限界分析(marginal analysis):
もしジョブスがいなかったら、生まれなかったものは何か? もしくはいなかったら、その誕生が遅れてたものは何か?

影響の範囲: 身内<企業<産業<全世界
影響の持続性: 短時間<年<数十年<永遠
影響の強さ: 計量可能< 計量不可能(計り知れない)

全世界に、永遠に、計量不可能な社会的なインパクトを与えたという意味で、本当に偉大な人物だと思います。

推定するに、ジョブスの社会的なインパクト価値は、20兆円強ではないかと想定されます。

マーケティング前提条件の変化 広告の担い手の変化


マーケティング前提条件の変化
広告の担い手の変化(企業から→顧客、顧客間へ)


 ソーシャルメディア時代のマーケティングの変化の一つに、「広告の担い手の変化」が挙げられる。これまでの常識は、広告は企業がおこなうものであった。しかしながら、今や、それが非常識、少なくとも非効率になりつつある。

 図をみてもわかるように、企業が自ら発信する広告の信頼性は低下している。

信頼できる情報源として、一番に友達、次に家族、ネットでの商品レビューという順番である。つまり、企業が発信する情報よりも、信頼できる友達や家族、そしてその商品を購入した知らない人の意見の方が影響力は高くなりつつあるのだ。

 今後、さらにソーシャルメディアが普及すると、このトレンドはますます強まることが予想される。広告は企業がやるものという大前提が崩れつつあるのだ。企業は、広告費を増やすよりも、積極的に顧客の声を活かすことを考えなければならなくなっている。

経済学に比較優位という概念がある。もともとは国家の貿易の利益を説明するのに使われた概念である。それぞれの国が他の国に比べて競争優位なものに特化して生産し、交換(貿易)することで、お互いの国がより豊かになれるという考え方である。

企業と消費者にも、この比較優位という概念を用いることができる。企業と消費者でどちらの方が広告に優位性をもっているか? 現在は企業よりも消費者である。であるならば、広告を消費者に担ってもらう方が企業の競争優位性は高まるのである。

2011年10月6日木曜日

ソーシャルメディア時代のマーケティングパラダイム

 
この1年間で任天堂の時価総額は1.5兆円、約70%減少した。
これに対して、ソーシャルゲームを展開するDeNA、グリーの時価総額は倍増した。

 ソーシャルメディア普及にともない、これまで絶対安泰と思われていた大企業が苦境に陥っている。一方で、ベンチャー企業の中で急速に成長している企業も目立つ。

 これは、大企業とベンチャー企業 のマーケティングのパラダイムが根本的に変わりつつあることの前兆ではないのか?

 同じようなことはゲーム業界以外でも起きている。

 例えば、ぐるなびと食べログ。ぐるなびは、これまで飲食店のクーポン市場を席巻してきたが、食べログがユーザーからの評価を取り入れることによって、後発であったが、先発者ぐるなびの牙城を切り崩すことに成功した。

 これも、価値を提供するのは企業側ではなく、ユーザーからの情報、ユーザー同士であるという象徴的な事例である。

2011年10月4日火曜日

ソーシャルベンチャーは投資の対象となりうるのか?

昨日のイベントで、「ソーシャルベンチャーは投資の対象となりうるのか?」をテーマにプレゼンを行いました。

ソーシャルベンチャーの主な資金調達手段として、助成金以外には、融資、寄付、投資がありますが、

融資は、担保、実績が求められるので今後も拡大が難しいでしょう。

寄付は、震災から時間がたちJustGivingの寄付額の低下、日本赤十字の資金使途の不透明感もあり、純粋な寄付が今後伸びていくシナリオの実現性はだいぶ減ったのではないでしょうか?

ということで、消去法としても、投資の可能性について考えていきたいと思っています。リターンとしては特典のようなソーシャルリターンも含めたものですが。

いろいろな意見がでてまとめきれませんが、毎回、ソーシャルなのか?ベンチャーなのか? で議論が分かれるように思います。この部分は頭の切り替えがすんなりとは難しいですね。

投資インパクトをどう高めるかの議論もありました。

プレゼンしてくれた佐藤さんのソーシャルビジネスのフランチャイズモデルが面白いと思いました。持続可能性がないと、そもそもの社会的なインパクトもそもそもないですからね。

この会はソーシャルベンチャー系の人と、金融畑の人がいて2極化していて、水と油の面もありますが、それをうまく融合できれば面白い可能性があるのではないかと思っていますので、

来月以降もやりますので是非ご参加下さい。

2011年10月2日日曜日

ソーシャルキャピタルのリバイバル

 講演会で、ソーシャルメディアのワークスタイルについて話しました。
ソーシャルキャピタルについて考えたことをまとめました。

経済学のソーシャルキャピタルはソーシャルメディア時代に新しい概念化が必要だと思っています。オープン化が生み出す新しいメカニズムが期待できるからです。


ソーシャルキャピタル2.0

2011年9月30日金曜日

摩擦なきシェアリングのコストは?

 今回の勉強会では、ソーシャルネットのプライバシー問題について議論した。フェイスブックの仕様変更もあり、ソーシャルネットのプライバシー問題はホットなテーマである。

 ソーシャルネットワークによって、一般人でもその私生活がどんどんオープンになってきている。あたかも、セレブでもないのに、セレブのように振る舞わなくてはいけないような強迫観念にとらわれる。

 フェイスブックはシェアにともなう摩擦をどんどん減らし、コミュニケーションの活発化、効率化を善として邁進する十字軍のようなものだ。

 しかし、我々はそのスピードや新たな振る舞いについていけずに、戸惑ったり、不快に感じたり、時にはミスを犯し後悔したりする。他人が自分はどう見るかは我々のオンラインの振る舞いによってどんどん決められるようになっているのはまぎれもない事実であり、それを否定することはできない。

 10年前は「摩擦なき資本主義」という言葉がよく出てきたが、今は、frictionless share(摩擦なきシェア)とういう言葉が頻繁に出てくる。これはとても大切な時代のキーワードだ。

この摩擦なきシェアは当然そのコストを伴うものである。

プライバシーはもともとは個人に関する概念であるが、企業に果たしてプライバシーはあるのか? なども興味深いテーマだ。

フリクションフリーのシェアリングのコストがプライバシーだとすると、プライバシーがない企業はシェアリングの恩恵を多大に被るはずだが、それでもソーシャルネットの世界に躊躇したり、うまく活用できないでいる。

オープンにつながることの価値が高まるほど、ソーシャルネットの活用は正当化はされるだろうが、そうかといって、マイナスのコストがなくなるわけではないのだ。

プライバシーとは何か? どこまでがプイバシーとして保護されるべきなのか? ソーシャルネット普及によって得るものは何か? プライバシーを犠牲にしても正当化されるものなのか? など、この辺りのコンセンサスがつくにはもう少し時間が必要だろう。

2011年9月29日木曜日

ソーシャルメディア時代の「囚人のジレンマ」の解き方

ゲーム理論では有名な「囚人のジレンマ」という問題がある。
プレーヤーAとBがお互いの利得を高めようと努力する結果、お互いの利得を減らす状況に陥り、そこから抜け出せないというものだ。

かつての米国とソビエトの軍拡競争、企業の寡占市場での値下げ競争など、いろいろな形で現実にこの囚人のジレンマをみつけることができる。

この囚人の解き方の一つは繰り返しゲーム。何回もゲームを繰り返すことが前提になっていると、一時の利得を得ることに固執せずに協調が生まれる。

もう一つはお互いにコミュニケーションをとり、信頼を得るというもの。

ソーシャルメディア時代にもう一つの解法が生まれたと思う。プレーヤーAとBの行動を第三者が常にみている、監視しているというものである。仮に、AがBをだますとすると、第三者はAは人をだます人と烙印を押され、ゲームの相手にしてもらえなくなったり、だますことを前提に取引をせまられる。このような将来の利得の減少を防ぐために、プレーヤーAはいい人でなくてもだますことがなくなる。つまり、いい人になってしまうのだ。

ソーシャルメディア時代にはいい人でなくても、いい人に振る舞わせる力がある(笑)。この点は興味深い点だ。

普通の人でも、神社のお賽銭で、人がみている時と人が見ていない時では賽銭金額も変わるのでは?

2011年9月28日水曜日

SROIの利用法と限界についての考察

SROIのセミナーに参加して、利用法と利用の限界などがわかったのでまとめておきます。

SROIの使い方はステークホルダー間のコミュニケーションを高める、そのプロセス自体に意味を見いだすことだ。端的に言うと、SROIの結果には残念ながら意味がないから。意思決定には使えないのだ。

そのことを簡単に証明してみよう。

SROIが有用な指標と言えるためには、

「SROIを高めることが、社会への価値を高めている」という命題が成り立つ必要がある(命題1)

しかしながら、そうは言えないのだ。

命題1が成り立つためには、
あるプロジェクトが社会への価値を高めているが、別のプロジェクトが社会への価値を高めないということが示されないといけない。

つまり、その分岐点、ハードルレートが示される必要があるのだ。

しかしながら、SROIはハードルレートを示すことはできない。

この点を理解するには、営利企業の場合で考えてみるとよくわかる。
営利企業、ビジネスの意思決定でROIのみで採択プロジェクトの意思決定をやっている会社はほとんどない。むしろNPV(ネットプレゼントバリュー)やDCF(ディスカウントフロー)を使うケースが多い。ROIは意思決定の判断基準を示さないが、NPVやDCFは意思決定の判断基準を示すからだ。NPVがプラスであれば、その投資が企業の価値を高めるが、マイナスの場合は企業価値を低めるのだ。

 SROIもROIと状況は同じことだ。インプットとアウトプットの分子と分母の比率にすぎないからだ。SROIが1より高いから社会への価値を高めるとは言えない。

むしろ、NPOや社会的企業はSROIをギャップ分析に利用すべきだと思う。高いSROIなのになぜマネタリーベースのROIは低いままなのか? その原因は何か? どういうコミュニケーション、施策でそのギャップを改善できるのか? こういう点を考えることは有益だろう。

 逆説的だが、非営利企業、ソーシャルベンチャーにSROIを勧めないが、営利企業はSROIを導入して、社会、様々な利害関係者の、外部性を理解する上での補完的なツールとして導入するのがかなり有益ではないかと考える。

利益を出していても、社会への外部性を考えると、活動は社会への価値を生み出していないということを再考する貴重な機会を与えるからだ。

 企業にとって、社会、様々なステークホルダーの影響力を正しくは把握することは、ソーシャルメディア時代には特に求められると思う。影響、評判、信用がメディアを通じて伝播するから、これまでステークホルダーと考えていない人にも影響力があるということは日常茶飯事だ。

2011年9月26日月曜日

ソーシャルインパクト、雑感

ソーシャルインパクト分析

あるNPOのプロボノの最終報告会に参加。教育のソーシャルインパクトの数値化に挑んだ意欲的な報告会だった。

 事業の社会的なインパクトを分析することは、ソーシャルベンチャーにとってだけでなく、一般の営利企業にとっても必要なものだ。東京電力の例をみるまでもなく。社会にどういう効果、外部性(プラスもマイナスも)をもたらしているかを把握することがますます求められている。負の外部性をまきちらすことは社会から許されない。

 既に外部性を内部化する時代に入っていることを認識すべきだと思う。そのためには、正しくステークホルダーを把握して、その社会へのインパクトをどう測定するか、正しい方法論をみにつける必要がある。

報告会で感じたことや考えたこと。

■社会的なインパクトを数値化するのは確かに意義あるが、数値化にこだわりすぎて会社のミッションとの関係を失うと本末転倒になる。→ソーシャルインパクトの分析も、会社のミッション実現のツールと心得る

■数値化以前に、社会的なインパクトを出すには、そもそも、効果の因果関係がないといけない。まずはそれを言葉で説明して、人を説得できることが先→ロジックモデルで、経営資源→活動→ステークホルダーへの短期・中期・長期の効果→ビジョン・ミッションのフローを作る

■社会的なインパクトの数値化は、一言で言うと、社会への、ステークホルダーに対する限界分析である。限界的な差、自分たちがいなかったら実現していなかったことと、自分たちがやったことで実現したこととの差、つまりは本質的な社会に対する存在意義を明らかにすることである。→ソーシャルインパクトを考える上で、ドラッカーの次の問いが最も示唆に富む。「もし自分にしかできないことで、成功すれば重大な変化をもたらすことになるとすればそれは何か?」

■社会的なインパクトをはかりづらいのは、①因果関係が複雑、②効果があらわれるのに時間がかかる、または、③実はユニークなことをやっていないから、という見方もできるかもしれない。→特に、③の可能性が高いので、どこをターゲットにどういう活動をするとレベレッジが高まるかにインパクト分析する必要がある。

今後、ソーシャルインパクト分析法を、ステークホルダーへの説明責任を果たしたり、活動のアピールだけでなく、意思決定の質を高める切れる道具にしていきたい。

2011年9月22日木曜日

ソーシャルインパクト指数(SII©)について

ソーシャルインパクト指数(SII©)についてのご説明
         
(株)ソーシャルインパクト・リサーチが開発した、ソーシャルインパクト指数(SII©)について簡単にご説明いたします。

 営利企業の場合は、企業の価値を評価する際に、安全性、生産性、成長性、などの指標ではかられます。上場企業であれば時価総額が会社を評価する尺度になります。企業は株主のものであるという前提にたち、利益をどれくらいあげたのか? 株主をどれくらい儲けさせたかが、営利企業の判断の基準となります。

 それに対して、社会的企業の場合はどうでしょうか? 名前が知られている、助成金を多くとっている、スタッフの数が多いなど、様々な比較の観点はあるますがどれも決定的なものとは言えません。

 社会的企業が、誰のために、何のために事業をおこなっているのか? この根本的な問いに立ち返ると、社会の課題を独自のアプローチで、よりよい社会を実現させていく、という本来の姿がみえてきます。

 この観点から考えると、社会的企業の評価軸は、どのくらい社会をよりよくしているのか? もしくは、よりよい社会をつくることに貢献できると期待できるか? という観点から評価すべきではないかと考えられます。

 そこで、(株)ソーシャルインパクト・リサーチは、この社会をどれくらいよくしたかを社会的なインパクトを、ソーシャルインパクト指数(SII©)として体系化することに成功致しました。

 社会という漠然としたものを、よりわかりやすく定量化するために、社会はステークホルダーの集合と捉えています。ですから、このソーシャルインパクト指数(SII©)は、ステークホルダーに対する意識、行動変容のインパクトをはかるものとなっています。

このソーシャルインパクト指数(SII©)は4つのファクターに分解されます。
①提供価値、②量、③持続性、④影響力の4つです。

 提供する価値が定義され、価値を提供できるものにするのが第一段階。そして、その価値が提供できるようになると、対象者の広さ、問題の深刻さに応じた量的な拡大が可能になる第二段階になります。ただし、それが一時的なもので終わるようならば社会的なインパクトは小さなものにとどまるでしょう。したがって、持続性をどう高めるかという第三段階が必要となります。最後に、経営資源をさらに投入したり、メディア活用などで社会的な影響力を高める段階、また、その解決方法を他の地域や領域への応用する第四段階を経ることになります。

①提供価値
SROI/利害関係者の資源インプットとアウトプットの比率
提供する解決法の有効性(段階:模索段階~確立~拡大段階)

②量
社会的課題の深刻さ(対象層の広さ×問題の深刻さ)

③持続性
収益の安定度がどの程度あるか?
自立収益の高さ(助成金以外の収益基盤の有無)

④影響力
スケーラビリティ(解決法の確立→応用範囲・地域の広さ)
資源の集まり度合い(ボランタリー資源を集められているか)
メディアの活用度・露出度
自社の取り組む社会的課題の啓蒙、社会の理解

上記のチェックに基づき指数化することで、社会的企業のソーシャルインパクトを横断的に比較したり、時系列でその推移をモニタリングスコアーすることが可能となります。ご興味ある方はお問い合わせください。

ヤフーはソーシャル化時代の主役ではなく脇役?

ソーシャル化時代にうまく対応している企業群をソーシャルビジネスストックインデックス(SBSI©)、うまく対応できていない企業群をアンチソーシャルビジネスストックインデックス(ASBSI@)と分類し直すことにした。

SBSI©に、小売業としては、良品計画、ドクターシーラボ(+製造)、ファーストリテイリングを追加。



ASBSI@には従来型ネット広告の生態系でビジネスをやっている会社を追加した。電通、博報堂、ヤフー、オプト、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアなどである。




米国のヤフーはソーシャル化に対応できずに苦境に陥った。日本のヤフーはいろいろなローカルなサービス開拓がうまく、今のところは収益を確保できており、米国ほど深刻な状態ではない。

ただし、ポータル型の一方向型のインダイレクトモデルという点は本質的に変わらない。今後も、ソーシャル化にキャッチアップすべく、資本提携(Gyao)や事業提携(Yahoo!モバゲー)を進めていくだろうが、ソーシャル化の主役ではなく脇役である点は変わらない。独自のソーシャルグラフをもっていないからだ。したがって、アンチソーシャルビジネスストックインデックス(ASBSI@)に分類した。株式市場も、この点を反映して、株価もこの6ヶ月で約20%の下落。

参考
(SBSI©)分類の基準は以下の通り
①経営者がソーシャル化におけるビジネス機会を正しく認識している
②ソーシャル化にふさわしい事業の定義がなされている
③ソーシャル化によって市場が大きく拡大するポテンシャルをもっている
④ソーシャル化のポテンシャルを活かす戦略をもっている
⑤生産者と生活者の協同という新しい経営パラダイムが認識されている
⑥ソーシャル化が及ぼすリスクに対する備えが十分にできている

2011年9月21日水曜日

アンチソーシャルビジネスとは?

ソーシャル化が進む中で、それをうまく活用できる企業があるとともに、
反対に、うまくソーシャル化を活用できない「アンチソーシャルビジネス」もまだ多い。

 任天堂はこの1年間でソーシャル化の逆風をもろに受け、かつその認識が遅れたことから、この半年に至っても株価は半減した。アンチソーシャルビジネスの典型である。

ぐるなびも食べログがソーシャル化の波に乗るのと反対に、だいぶ牙城を明け渡した。これもアンチソーシャルビジネス。

原発事故発生後にTwitterアカウントを作った東京電力などもアンチソーシャルビジネスと言える。ソーシャル化時代のリスクマネジメントができない企業は生き残るのは難しい。

SEOビジネスもますますアンチソーシャルビジネス領域に入ってきている。

ソーシャルストックインデックスに入る会社の株価があがるのとは対象に、アンチソーシャルビジネスの会社の株価は対照的に下がっている。この違いを見分けることが重大だ。

ゲーム会社の中にはソーシャル化の重大性に気づき、それに対応することができる会社も出始めている。コナミなど。この銘柄は新たにソーシャルストックインデックスに入れたい。

2011年9月20日火曜日

ソーシャルストックインデックス

 ソーシャルが進む中で、ソーシャルメディアの活用などソーシャル化を梃に成長する企業と、逆にうまくソーシャル化を活かせない企業、産業の格差が急速に広がってきた感じがします。

 そこで、その差がどのくらい、株価に反映しているかを調べるために、「ソーシャルストックインデックス」を考えてみました。

ソーシャルストックインデックスの条件として、

①経営者がソーシャル化における機会を正しく認識している
②ソーシャル化にふさわしい事業の定義がなされている
③ソーシャル化によって市場が大きく拡大するポテンシャルをもっている
④ソーシャル化のポテンシャルを活かす戦略をもっている
⑤生産者と生活者の協同という新しい経営パラダイムが認識されている
⑥ソーシャル化が及ぼすリスクに対する備えが十分にできている

以上の条件でスクリーニグした銘柄が11銘柄です。



この震災後の半年のリターンは約28%と、大幅にTOPIXをアウトパフォームしています。今後、ゲーム関連、コミュニケーション産業など、どんどん進んでいくことが予想されます。

ソーシャルストックインデックスファンドはかなりパフォーマンスが期待できます! 今後、このファンドに合致する企業の選択をおこなっていきたいと思います。

そして、新しい企業を評価する指標、基準をつくっていきたいです。

CSRファンド、SRIファンドはしょせんインチキですから。だいたい東京電力が入っています(笑)。ソーシャルをうまく活用した企業はどんどん伸びるし、株価もあがっていくと思います。

2011年9月4日日曜日

新しい金融のグランドデザイン


今や、既存の金融機関は死んだ。
そして、新しい金融が芽生えている。

既存の金融は岩だが、
新しい金融は水だ。

既存の金融は専門家によって牛耳られているが、
新しい金融は完全に市民のものだ。

既存の金融はお金を儲けるために使われるが、
新しい金融はよりよい社会を実現していくために使われる。

既存の金融は何かを誰かに強いる「フォース」だが、
新しい金融は人をより豊かにしていく「パワー」となる。

既存の金融はお金の出し手にはお金の受け手の顔が見えないが、
新しい金融はお金の出し手とお金の受け手の顔をみることができる。

既存の金融は豊かな社会を求める道具であった金融が社会を支配したのに対して、新しい金融では豊かな社会を作り出すという目的に、金融が正しい道具として機能するのだ。

既存の金融は疑うこと、不信によってシステムが成立しているが、
新しい金融は信頼、愛によってシステムが成立する。

既存の金融は、人間の置かれた状況、環境を利用することを手段とするのに対して、新しい金融は、人間の才能、能力、タレントをより豊かにすることそれ自体を目的とする。

既存の金融は、情報を秘密にするのがセキュリティであるのに対して、
新しい金融は情報をオープンに誰にでもアクセス可能にすることでセキュリティを保つのだ。

既存の金融は無機質であるのに対して、
新しい金融は、そこには愛情、応援、感情が流れるのだ。

既存の金融は、お金を出すのはお金を儲けることだけが目的であるのに対して、
新しい金融は、お金以外の価値を社会に生み出すことが目的となるのだ。

既存の金融は、専門家の知識、経験をシステムの基盤にするのに対して、
新しい金融は集合知、みんなの力と参加を基盤とするのだ。

既存の金融は、資金の出し手と資金の受け手は、単にお金を出すという関係だが、新しい金融は、資金の出し手と受け手はよりよい社会を実現していくパートナーなのだ。

既存の金融ではメディアと金融業は相対立する、敵対する存在だったが、
新しい金融ではメディアと金融が一体となり完全に調和していく。

既存の金融はファイナンシャルリターンのみを求め(結果として失敗し)
新しい金融はソーシャルリターンをまず求め、その結果としてファイナンシャルリターンも得るのだ。

既存の金融は利己的なシステムを具現化し、暴騰暴落を繰り返す不安低なシステムであるのに対して、新しい金融は利己と利他が完全に調和した持続可能なシステムになっていく。

もう一度繰り返そう。既存の金融の前提は時代遅れだ。完全に時代遅れだ。
さあ、今こそ、立ち上がろう。

金融を一部の専門家の手に委ねることはやめて
自分たちの手に取り戻そう。
それが我々の豊かな未来の社会をつくる一番短く、そして確かな方法だからだ。

2011年8月5日金曜日

The Rise of the Social Advertiser

今日は、勉強会で、The Rise of the social advertiserというレポートを読んだ。
米国マーケッターのソーシャルメディアに取り組む意識がアンケート調査で示されている。

ソーシャル広告がBanner Blindnessの治療になるかという表現が面白かった。
マーケッターにアンケート調査すると、どうしても結果が楽観的になりやすい。経営者にアンケート調査すればもうちょっと慎重な結果だろうと思う。

結局のところ、ソーシャルメディアのROIでは苦労しているという結果もでていて、それでも楽観的になれるという点が面白い。

日本では逆に、効果が見えなければ、悲観的になりやすいところだ。

相変わらずキーワードはエンゲージメント。やはり、メディアの双方性があるから、一方的な関係でなく、双方の関係性ということでこのエンゲージメントがソーシャルメディアではキーワードになる。

SEOの場合はキーワードの競争原理が働く。また、同業界で優良なキーワードは限られているから、そのキーワードの競争が働く。

それに対してソーシャルメディアの場合は、エンゲージメントという言葉に代表されるように、競争原理とはちょっと違った原理で動いている。全ての会社が同じ方向を向いて競争する必要はなく、自分の会社にとって意味のあるアウトカム、そして、自社にとってのファンなりの価値を見いだすということが求められるだろう。

2011年7月28日木曜日

クラウドファンディングから学ぶこと

クラウドファンディングとは、ウェブを使って、多くの人から資金を集める行為のことを意味する。

寄付型、購入型、出資型などの様々な見返りを提供するパターンがある。

様々な会社があるが、kickstarerがうまくいっている(評価軸は仲介資金額)

成功要因は、all or nothing方式で目標金額に達しない場合はプロジェクト不成立になるゲーム性を高めたこと。

プロジェクトの厳選!(クリエイティブの質の高さ)など。

他にも、企業に参考になるポイントがある。

購入、お金を出させるだけが、最終ゴールではないということ!
様々なエンゲージメントのはしごをもうけることで、 ユーザーにあったリターン設計を行うことで、関与、エンゲージメントを高めることができる。

2011年7月22日金曜日

英語×ソーシャルメディアの早朝勉強会の紹介

今日は、英語×ソーシャルメディアの早朝勉強会の紹介。

ソーシャルメディア業界の第一人者Brian Solisのブログを読み、メディアのフューチャーを考える会をスタート。

いろいろなバックグランドの方が参加して、意見交換できたので有益だった。

後は、考えたこと、議論去れたことなどをつらつらと。

ソーシャルメディアは実はメディアではない!(ガーン)
テレビのような一般的なメディアではなく、電話のようなものである。

海外の成功事例を学ぶのもいいが、成功例を本当に真似することができるか?

実際に、ソーシャルメディアが明確に自分のビジネスの結果、利益にどう影響を与えるのか? どう顧客に価値を提供しているのか? これを明確に説明できる企業は少ないのでは?

foursquare now 10M strongというブログからも学ぶ。

メディアの未来という視点からモバイルフォーンによって、人、場所を結びつけることができ、全く新しいメディアが生まれた。自分が行った場所、そのコメントが、ソーシャルオブジェクト化し、インタラクション、新たな出会いを生み出す。ビジネスオーナーにも価値を生むことができる。

人がメディアとなる時代に、人をメディアとする新しいサービスが生み出せないか?
例えば、感情をベースにしたソーシャルグラフ。自分の気分を5色のボタンで表し、その同じ色(感情)同士がマッチングしインタラクションを生むサービスなど。

話が尽きない・・・

今後も続けますので、英語とソーシャルメデキィアの両方に興味がある方がいれば 是非、是非。

2011年7月21日木曜日

ソーシャルメディアの学ぶべき手本は?

いまだに、日本のソーシャルメディア業界は海外の成功事例を追い求めている段階だ。

一般化することで学ぶべき点があること一方で、

自分の頭で考えるということがなおざりになるという弊害もある。現在は、その弊害が目立ち始めていると思う。

ツールはツールだ。よくツールの特徴を把握して、そのツールの性能を活かすべきは当たり前の話である。

その上で、
自分のビジネス、自分のお客さん、ユニークなニーズに対して、どう対応していくべきか?

お客さんの価値をどう高めることができるのか? 最終的に自分のビジネスの利益にどうインパクトを与えるのか? ここを明確に答えることができる人は少ないのではないかと思う。

2011年7月6日水曜日

震災後のマーケティング

震災後、何が変わったか?
一つはマーケティングが変わった。

ソーシャルマーケティングの流れが加速してきたと思う。

企業としては、
株主のために利益をあげる前に、
社会に対して自らの活動がプラスの価値を生み出していることを示す必要がでてきた

これに伴い、
企業の評価軸、企業価値の尺度もまた変わる必要がある。

東電は地域独占の元で安定した利益をあげてきた
高い配当によって高齢者、年金生活者にとっては優良銘柄であった。

しかし、原発事故を巡って、株価は大幅に暴落

企業の評価は、利益をあげることとともに、社会への外部性を考慮する必要があるのだ。

実は、負の外部性が巨額であることが明からになり、それを自らが負担しなければならなくなると、株価は暴落だ。

全ての企業はソーシャルカンパニーになる時代かもしれない。

昔の商売、長寿企業は、
自分がよし、
取引相手がよし、ここでwin-winであるが、さらに+して、
社会にとっていいか?(おてんとう様に顔向けできるか?)を問う姿勢が重要視された。

2011年6月24日金曜日

SROIについて

昨日はセミナーでSROIについて学ぶ。

SROIは何もソーシャルメディアに限定された話ではない。
ROIが投資収益率であるのに対して、SROIは「社会的投資収益率」を意味している。

ある事業なり、社会的貢献を行なった時に、広くステークホルダーへの社会的な影響、効果をもとに、その費用対効果を測定すべきという考え方に基づく。一種の経済学の限界(marginal)費用対効果分析である。

SROIの面白さは費用対効果を数値化する点にある。ある社会的貢献事業のSROIは3倍になるなど数値で示される。しかしながら、効果の数値化は簡単ではなく必ずしも客観的なものではない。直接効果間接効果、期間をどこまで取り込むかが議論になる。

特に、効果の計り方で難しいのは、関係性やつながりの価値の算定である。
この点はソーシャルメディアROI測定でも常に議論されるところだ。

やはり、SROIも1つの指標なので、誰が、どのような目的で使うのかを明確にすることが非常に大切なことだ。ステークホルダーとのコミュニケーション手段の一つとして割り切り、SROIの数値にこだわらないのもの一つの使い方だ。

SROIはソーシャルメディアのROI測定にも使える考え方を多く含んでいるので、興味がある方は研究されるといいと思う。

2011年6月21日火曜日

誰がソーシャルメディアを発明したのか?

シスコのJohn Ewrhardtが自分の母親がソーシャルメディアを発明したと、少しコミカルに書いています。

母親は、自分のことをいつも気にかけてくれて、自分が興味を持ちそうな記事があると、破って自分にコメントとともに送ってきてくれます。これは、まさに今ソーシャルメディアで行なわれていることではないでしょうか?

ソーシャルとは価値あることをシェアすることです。また、その根本には、人がどういう情報を求めているかを気遣うことです。

シェアがいろいろなツールができてきたお陰でどんどん簡単になってききました。ただ本質的な部分には他人への気遣いがあります。

むやみに情報を拡散しようとしたり、受け手にとっての情報の価値を考えない情報を無理矢理広めようとすることは、誰の特にもなりません。

シスコのコンテンツの編集方針としては
1 価値を提供すること
2 その情報を欲しがる人達に情報を届けること
3 コアとなるテーマに一貫性をもたせること
4 自分自身の宣伝をしないこと
5 繰り返すこと

以上によって如何に意味ある会話を生み出すかにポイントを置いているそうです。

よく言われるキャッチフレーズにEC=MCがあります。Every Company is a Media Company.

このマインドセットを日本の企業がどこまで持っているでしょうか? また、今後、どこまで持てるかが問われていくと思います。

2011年6月14日火曜日

ソーシャルメディアの基本の1つは・・・

・・・は、ヒューマナイゼーションだと思う。

先日、ナショナルクライアントの方と打ち合わせする機会があった。

これまでもソーシャルメディアを活用しようとしたが、新規顧客獲得に結びつけることができないという悩み。

ソーシャルメディアで非常に重要なことの一つは、
「ヒューマナイゼーション」だと思う。
温かい人間らいしい対応、トーン、ペルソナ、気遣いなど。

Twitterのアイコン一つにしても、商品そのままではなかなか相手に伝えるのは難しいのではないかと思う。

その企業がコンプレックス商品を販売しているので、CMは機能重視でがんがんやっている。
マス広告ではそれでいいにしても、
ソーシャルメディア、ツイッターで機能宣伝をがんがんやってもフォロワーは増えない。

マスでは機能面、ソーシャルメディアでは感情面。1人1人との感情の結びつきをどう深められるかがポイントとなる。

ソーシャルメディアの双方向性という武器を活かすにしても、その前に、人間らしくあるということがベースにないとなかなか活きてこないと思う。

2011年6月10日金曜日

企業がソーシャル化するための必要なこと?




まだ日本ではソーシャルメディアのツール的な使い方の議論が主流ですが、海外では組織変革と絡めた議論が多くなっていますね。シャーリーン・リーのフェイスブック時代のオープン企業戦略もそういう視点ですしね。

ソーシャルメディアを本当に使うこなす上では、結局はカルチャーまで含めた組織の変革まで議論が進んでいくようにに思います。

Social Media Examiner でThe 3pillars of Social Medeia Readinesssという記事で、その辺りをうまくまとめてくれています。

まず基本認識は、ビジネスのソーシャル化は一時的なブームではなく、これからの企業の新しい進化の姿なのだということが論じています。

企業は双方向の対話を通じて、ソーシャルエクイティというべきものを増やす。3つのF(Freiends,fans,Followers)が重要な指標となった。また、カスタマーとのエンゲージメントを作る上では、オープンであることと透明性の確保が鍵となっています。

企業がソーシャル化(ソーシャルビジネス化)するには、ツールを使いこなすだけでは不十分です。ソーシャルビジネスは、カルチャー、内部コミュニケーション、トレーニング、従業員のモチベーションなど、様々なことが関係してきます。

米国では、企業がRadian6やMeltwaterBuzzなどのモニタリングツールを使って、カスタマーの会話に耳を傾けるようになったり、また、自分たちのコミュニティを活性化するためにコミュニティマネジャーという新しい役職も生まれています。こういう過程を通じて、ほとんどの企業はソーシャルビジネスになる途上になる。

ただ単に、ソーシャル的な振る舞いができるようになるだけでなく、ソーシャルビジネスに進化していかなければ、今後の企業は生き残れなくなる。

ですから、ソーシャルビジネスのためには、新しい柱(人、ガバナンス、テクノロジー)を持つ必要がある。


組織の壁、垣根を取り払って、内部のチームがコミュニケーションできるようになり、組織の最も重要な資産である従業員の活性化が図られなければならない。

ガバナンス
トレーニング、ソーシャルメディアガバナンス、ポリシーは組織がモニターし、組織内で協調する上では不可欠になる。一貫性を保証し、組織を守るとともにエンパワーする役割を果たす。

テクノロジー
コラボレーションを活性化するプラットフォームへの投資が不可欠になる。ソーシャルCRMが重要な役割を果たす。カスタマーと意味のなる価値ある対話する際に、何を言うべきか、どう言うべきか、いつ言うべきかを知らなければならない。

今後、日本企業でも必要になる視点と思うので、こういうことが将来必要になるんだなという認識を予めもっておくことは大切ではないかと思います。

2011年6月9日木曜日

ソーシャルメディアはメールマーケティングを代替するものか?

2011年のsocial media marketing report において、興味深かったのは

現状、ソーシャルメディアと併用しているマーケティング手法のベスト3は
メールマーケティング  81%
SEO 68%
イベントマーケティング 64%

ソーシャルメディアの普及はもちろんですが、メールマーケティングは幅広く活用、併用されています。

また、今後のメールマーケティングの活用予定においても、

増加予定 64%
減少 3%
同じ 27%
予定なし 5%

まだまだメールマーケティングを積極的に活用する意向があるようです。

特に、大企業よりも中小企業において、メール活用の意向が強いようです。ソーシャルメディアを使いつつ、既存メールマーケティングを強化するにはどうしたらいいかも考えてみる必要があるでしょう。

現状では代替ではなく、補完という位置づけのようです。

ただ今後を考えると、フェースブックの新しいセンドボタンはメールマーケティングにどういうインパクトを与える可能性があるか? などテクノロジーが影響を与える可能性もまたあります。